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第二十八話:最後の試練

ぼくは、老師の部屋で、すべての材料を準備した。


・乳鉢

・星詠の石

・影の薬草


中央に石の乳鉢。これは混じり気のない純粋な調合を実現する『磨き上げる鍵』だ。


その脇には、クロイツ院長の特級貯蔵室から持ち帰った、虹色の光を放つ『星詠の石』が置かれている。これは暴走を防ぐ『制御の鍵』だ。


そして製法図に記された、最高の「心の波」を持つときに収穫された、選りすぐりの影の薬草の数々。


三つの鍵が揃い、製法図の最終ページを広げた。



ぼくは、まず『星詠の石』を、石の乳鉢の横に置いた。虹色の光を放つその石は、薬の強大な力を吸収し、暴走を抑える抑止力として機能し始めた。


乳鉢に両手を置く。

意識的に心の奥底にある「淀み」を受け入れ、制御下に置く。


そして薬草を乳鉢に入れ、通常の調合よりも遥かに強い力ですり潰し始めた。


乳鉢の中で薬草が砕けるたび、ぼくの精神そのものが薬の触媒として機能し、体内の奥底から熱が湧き上がってくるのを感じた。


乳鉢から立ち上る蒸気は、以前の『微睡みの雫』のような穏やかな青ではない。それは、紫と金色の光を帯びて、激しく揺らめいていた。この揺らぎこそが、クロイツ院長が恐れ封印した、制御不能な浄化の力の表れだ。


調合が佳境に入った、その時だった。


下の階、シドの薬問屋の方から鉄の扉を乱暴に叩く、激しい衝撃音が響いた。


「ドンドン!」と轟音と共に、ライオスの怒りに満ちた声が聞こえる。


「シド! 開けろ! 違法な調合の臭いがする! 今すぐその裏の薬師を引き渡せ!」


きっとライオスは、今夜ぼくが何かを企てていると直感し、クロイツ院長の命令や規律をすべて無視して、個人的な目的でここへ来たようだ。


老師は、眉一つ動かさずに、静かに言った。


「来おったか。奴は、院の規律よりも、自分の正義を選んだ。シドは簡単には開けんだろうが時間の問題だ。急げアレン! この調合は中断すれば暴走するぞ」


階下から、シドの、わざとらしいほど、とぼけた声が聞こえてくる。彼が時間を稼いでいる。


「何の用だ、薬師様。ここはただの問屋だ、違法なものなど……」


「黙れ! この臭いは、院が禁じた影の薬の調合の臭いだ! そして、その薬を調合しているのは、院長の寵愛を受けている雑用係だろう!」


ライオスの声は興奮で震えていた。

ぼくは、雑音を遮断しようと深く集中した。薬の持つ紫と金色の光が、さらに強まる。


「心の淀みを、触媒に……」


ぼくは、自分の心の奥底にある、影の薬師としての真の証明、そして未来を切り開きたいという強い執着を薬の力と共鳴させた。その瞬間、乳鉢の中の液体が一瞬にして、世界を洗い流すような透明な光を放ち、すべての濁りが消えた。


真に完成した。

クロイツ院長が恐れて封印した『生命の露』が。


「真の生命の露……」


しかし、その瞬間、階下で鉄を捩じ切るような鈍い衝撃音が響いた。ライオスが、扉をこじ開けた音だ。


「アレン! どこだ!」


ライオスの足音が、秘密の階段を一段、また一段と、荒々しく踏みつけながら上がってくる。ぼくは完成したばかりの究極の薬を前に、最後の試練に直面していた。

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