表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/31

第二十一話:院長室下の秘密炉

ぼくは、なにを置いても、真っ先に老師の元へと向かった。

ライオスの疑念が老師に向かっていることを、すぐに伝えなければならない。


「老師! ライオスが、あなたの存在に気づき始めています。院を追放された老薬師が、裏の小路に潜んでいるという噂を追っているようです」


ぼくの予想とは違い、老師はどこ吹く風と、まるっきり慌てた様子もなく、静かに煙草を吸いながらぼくの話を聞いた。


「ほう。あの規律の番人も、ようやくこちらの動きに気づき始めたか。クロイツの命令ではなく、彼自身の探求でおれの存在に気づいたわけか」


その表情は、どこか嬉しそうにも見える。


「感心している場合ではありません! もし彼がここを見つけ、あなたの存在が院長に知られれば……」


「その時は、この知識が失われるだけだ」


老師は淡々と答えたが、その目には覚悟の色が宿っていた。


「そんなことよりも、ほれ。どうなった?」


「あっ……!」


老師に急かされ、本題を忘れていたことに気づく──。


「そうそう……収穫がありましたよ!」


老師に助言された「調合室」ではなかったけど、ボイラー室で見つけた例の物と、そのスケッチを報告した。しかし老師の当てが外れたことを言うと、どうせまた不機嫌になるので、そのことには触れずに報告をした。


「ぼくは院内の初期設計図から、秘密の精製炉がある場所が院長室の真下だと突き止めました。こここそが、生命の露を精製していた場所のはずです」


そう言って、ぼくは書き写した設計図のスケッチを老師に見せた。熱供給がその一室に集中していることを示す図面を指差す。


「クロイツ院長は、この場所も製法と共に封印したはずです。ここに潜入できれば、生命の露の製法を解き明かす、手がかりになると思います」


老師は、図面を一瞥し、小さく笑った。


「見事だ、アレン」


老師は、ぼくに一つ助言を与えた。


「潜入はいい。だが、この秘密の部屋を探る間、ライオスの目は一時も離れないだろう。奴の監視を完全に無力化する方法が、一つだけある」


「そうなんですね! なんでしょうか!?」そう言って、ぼくは大袈裟に身を乗り出した。


「それは、奴の意識を完全に『別の場所』へ逸らすことだ。お前が次に動くときは、お前の裏の炉ではなく、シドの薬問屋の方へ、奴の注意を向けさせろ」


老師は得意げにそう言った。


「シドの店に?」


「シドは、お前が裏の師から知識を得ているというライオスの疑念を『確信』に変える手助けをしてくれるだろう。そうすればライオスは規律を破ってでも、この裏の小路へやってくる。その隙に院へ潜入しろ」


「それは……」


「アレン、心配するな。あくまでも『疑念・・』だよ」


それは、ライオスの「規律の番人」としての誇りを逆手に取った作戦だった。


「分かりました。ライオスの目は、ぼくの体ではなく、この薬問屋に向けさせます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ