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第十七話:罠(トラップ)の地下貯蔵庫

夜明け前、ぼくは急いでシドの店に戻り、秘密の階段を駆け上がった。老師はぼくの顔を見るなり、すべてを悟ったように静かに座っていた。


「見つかったか。クロイツが隠した真の理由が」


ぼくは、資料室で目にした機密文書の内容を伝えた。


「『生命の露』は病を治すだけでなく、使用者の精神を不安定にさせ、過去の記憶を破壊するほどの力を持っていた。クロイツ院長は、その制御不能な力を恐れて製法を封印したんです」


老師は深く頷き、ぼくに羊皮紙を広げさせた。


「生命の露の真髄は、薬草の生命力と、使用者の魂の淀みを共鳴させることにある。これを理解しろ。さもなければ、お前は単なる裏の調合師で終わる」


ぼくは、その深遠な知識の前に、改めて薬師としての道がいかに深いかを知った。


だけど──。

一連の今の会話の中で、ぼくには、思うところがあった。


なぜ老師は、そこまで深く「生命の露」の事を知っているんだろう。そして、なぜそこまで理解をしていながら、それを自ら試そうとしないんだろう……。


また、ぼくに秘密を探れと言いながら、ぼくが真実を持って帰ると、はじめから知っていたかのように理解していて、その上で、それ以上の知識で返してくる。


直接ぼくに教えるんではなく、必ずぼくに探らせる。

少なくとも「生命の露」それ自体の知識に関しては、はじめから何もかもすべてを知っているようにも思える……。


だけど、今のぼくは、盲目的に老師を信じるしか道はない。



翌日。ぼくは早速ライオスからの明確な敵意に直面した。


日中の雑用中、ぼくは薬師院の古い薬草を処分するよう命じられた。指示された場所は、院の地下にある、ほとんど使われていない古い貯蔵庫だった。


ぼくが貯蔵庫の扉を開けると、中は埃っぽく、湿った空気が鼻をついた。処分するはずの薬草の束は床に無造作に積み上げられていた。


ぼくが薬草を抱え上げようとした、その瞬間──。


「動くな!」


背後から低い声が響いた。振り返るとそこにはライオスと、見習い薬師が二人立っていた。ライオスの目は燃える炎のようだった。


「アレン。君は今、院の最重要機密を盗もうとしているな」


「何を言っているんですか。ぼくは、処分を命じられた薬草を片付けているだけです」


ライオスは、ぼくが抱えようとした薬草の山を蹴飛ばした。すると薬草が崩れ、その中から小型の蒸留器の部品が二つ床に転がった。それは院の正規の薬師しか使用を許されない高価な機材だ。


「処分されるはずの薬草の中に、なぜ機密部品が紛れている? 君は、この機材を盗み出し、裏の炉で非正規の薬を作るつもりだったのだろう!」


ライオスは、ぼくの肩を乱暴に掴んだ。


「君の功績など、知ったことではない。君は王都の薬学を汚す泥棒だ。今すぐ院長室へ連行する」


すべてが罠だと悟った。


ライオスが、ぼくを泥棒に仕立て上げ、院から完全に排除しようとしているのだ。これはクロイツ院長にバレないよう、ライオスが独自に仕掛けた排除の計画だ。


ぼくは反射的にライオスの手を振り払った。このまま捕まれば老師との研究も、ぼくの薬師としての道も、すべて閉ざされてしまう。


「ぼくは、盗んでいません!」


「うるさい! 規則の番人である、このおれが、その汚れた手で院の機材に触れるのを許すわけがない!」


(うわ……自分で言ってるよ)


ライオスが見習いたちに合図を送った。見習いたちが、ぼくを取り囲むように一歩前へ出る。


ぼくは、絶体絶命の窮地に立たされた。

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