第三話
思えば、お兄様は今まで学校の話をアリアにした事がなかった。
一度だけ会いに行った時だって、試験期間中の緊張感もあってかほとんど会話をしなかったと思う。
でも「会いに行ったタイミングが悪かったのかも知れない」とアリアも今となっては思っている。
ただ、家でその話をしなかったのは……多分。家にいる間は学校の事を忘れたかったのかも知れない。
「……すごいな。アリアは」
「え」
アリアの予想に反してケビンお兄様の反応は静かなモノだった。
「一位は……キュリオス殿下か」
「う、うん」
「俺が学校にいた頃は何とか上位のクラスに入っているくらいだったからな。それを考えると、アリアがいかにすごいかよく分かる」
「……」
でも、今まで学校の話を聞いた事がなかったアリアにとっては、かなり新鮮に感じた――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「今回で二回目の試験が終わったところか」
「うん」
「なるほどな。つまり、これからが本格的な学校生活のスタート……というワケか」
「……」
ケビンの言葉をアリアは言ったお兄様本人よりも重く受け止めていた。
そう、実はゲームでも学校に入学してから長期休暇に入るまでの間はどちらかと言うと、登場人物。つまり「攻略キャラクターたちの紹介」や「ゲームの仕組みの説明」するための期間という感じだった。
つまり、その後からがようやくストーリーが本格的に動き始めるというワケだ。
そして、休暇を終えたすぐ後にあるイベントでプレイヤーがどう行動するかによって攻略出来るキャラクターが決まると言っても過言ではない。
簡単に説明をすると、そのイベントではリチャード王子が喜ぶ選択肢を選んだけれど、次のイベントではステファンの選択肢を選ぶという事も出来るのだが、そうすると一番良いエンディングが見られなくなってしまう。
それくらい、このゲームではイベントの選択肢が重要だ。
「……」
しかし、それを踏まえて考えると……改めて主人公がどういった方法で今の状況を作り出したのかものすごく気になる。
何かまたアリアの知らない方法を使ったのだろうか……。
やはり「情報」は知っていれば知っているだけ有利に物事を進める事が出来る様だ。
「――ア。アリア」
「あ」
「どうした? 疲れているのか?」
「う、ううん。何でも……」
いけないいけない。
どうにも考え事をしてしまうとアリアは固まってしまう癖があるらしい。
「……そうか。それならいいが」
「ごめんなさい」
「いや。気にするな」
そう言ってお兄様は優しく笑う。本当に……小さい頃はこんな優しいお兄様によく助けられた。
「――お兄様。実はお聞きしたい事がありまして」
「? なんだ」
「その。今度、休暇が明けた後に『星空会』というモノがあるのですが……」
アリアが『星空会』という言葉を出した瞬間。お兄様は「ああ。あれか」とすぐに反応した。
「その『星空会』とは一体どういった催しなのでしょうか? 何やら聞いたところによると毎年退学者が出てしまう行事との事ですが……」
そう、実は「魔法学校を卒業するのが難しい」と言われている一番の理由が、毎年退学者が出る『学校行事』にあったのだ――。




