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第五話


「――お嬢様、着きました」

「……うん」


 馬車が止まったのを確認すると、アリアはメイドの言葉に「ふぅ」と一呼吸を置いて返事をした。


 ただ、コレが『悪役令嬢』であればこれから「生き残り」をかけた人生の戦いの幕開けになるのだから一呼吸を置くのも分かるだろう。


 しかし、アリアはただの『モブ令嬢』だ。


 むしろ、ストーリーを楽しんで主人公たちのお邪魔にならない程度にしていればいい。本当に余程の事をしなければ私の日常なんて取るに足らないモノだろう。


 ――本来であれば。


「……みんな。ご家族の方と来ているのね」


 チラッと馬車の外から様子を窺うと、そこにはきらびやかに着飾った同い年の子供たちとその両親の姿。


「……」


 たとえ父と母が揃わなくても、代表で親のどちらかは来ている様だ。


「お二人はケビン様の看病でお忙しいとの事ですので」

「……ええ。分かっているわ」


 実は数日前に『ケビンお兄様』が溺れそうになっている貴族を助けようとして池に入ったのだ。


 しかし、今は肌寒くなってきた前世で言うところの秋頃。そんな時に水浸しになれば風邪を引いてしまうのは当然で……。


 そしてその一件を両親は「私に付き添えない言い訳」として利用した。


 アリアとしては元々期待なんてしていなかった上に、下手に付いて来られてもそれはそれで困るのでどうでも良かった。


「……」


 しかし、言い訳に利用されたお兄様は……本当に気の毒である。


 しかも、お兄様が入ったその池は実は意外に浅く、お兄様が立っても腰ぐらいの高さしかなかった。


 つまり、その貴族が暴れたり大騒ぎしたりせずに冷静に対処していればどうって事はなかった話だったのだ。


 しかし、その貴族があまりにも騒ぐモノだから……きっとお兄様はその様子から「本当に危ない!」と思ったのだろう。


 まぁ結局のところ、その貴族はお礼どころか「なんで早く助けに来なかった!」と逆ギレしていたらしいが……。


 どちらにしても、今日両親がいないのはあくまで『お兄様の看病の為』という事らしい。


 多分、慈悲深い国王陛下や王妃様は「それは大変ね」などと言ってくれるはずだ。


 でも実際に看病をするのはメイドや執事たちであって、あの二人はきっと何もしないだろう。


 そんな事は火を見るよりも明らかだ……と思いながらアリアはゆっくりと馬車を降りた――。


◆  ◆   ◆   ◆   ◆


「――招待状はお持ちでしょうか」


 いよいよお茶会の会場……というところでアリアたちは会場の入り口で王宮の使用人に止められた。


「……」


 一応、王宮の入り口でも確認はされたのだけれど……。


 何せ私たちの格好はキレイに着飾っている彼女や彼らとは全然違う。それこそ比べるのもおこがましい程だ。


 そうして着飾っている子たちを見ればお茶会の参加者だとすぐに分かるだろう。


 しかし、私は精一杯オシャレをしてもこうして入り口で止められる始末……。


「何あれ」

「場違いよね」


 元々乗り気ではなかった事もあり、周囲の視線やヒソヒソと聞こえてくる声と「クスクス」と笑う声。


 そういう事が重なってアリアは「帰りたい」という気持ちが一層強くなっていた。


「――何をしているの?」


 そんな時、よく通る少年の声がお茶会の会場から聞こえてきた。


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