7.降嫁するんだよね?
「おい、お前。王女と婚約って本当か?」
「本当です」
「となると、王女が降嫁してうちに来るんだな?」
「そうですね~」
父さんは何やら気にしているがなんだろう?
「母さんは王女とうまくやれるだろうか?」
「母さんはドッキドキよ~」
「大丈夫じゃないですか?俺が淑女に仕立て上げた方ですし」
「あとなぁ、リア家のやっかみが…仕事がしにくくてかなわん」
あ、ありそう。
「そういうのは陛下に苦情を言ってくださいよ~」
そもそもリア家ってどんな感じなんだろう?
「リア家か?どうやらこの国では代々宰相をしてきたと自負しているフシが見え隠れするけど、でもなぁ本人の資質ってもんがあるだろ?
騎士の家系で代々騎士ができるわけじゃないだろう?そんなわけで、今の宰相は肩書は‘宰相’だけど、実質そうでもないかな?私が就業時間内にこなす仕事量の方が多いからな」
なるほど、わかりやすい。特に騎士のあたり。プライドは高いけど、それに実力がついていかないタイプか…。なんかご愁傷さまです。
俺も城内でやっかみに遭うようになった。「他国から来たんだろう?」「噂によると国外追放でこの国に来たらしいぞ」と聞こえてくる。
しまいには廊下の幅は広いのに、肩をぶつけてくる人までいる。狭いならともかく。広いのに??
このようなことをエリン様と話をすると、
「まぁ、私のせいで…なんかゴメンなさい」
と、謝罪をされるので、
「噂については9割方真実ですし、気にしていませんよ。それよりも、貴女が私の家で暮らすときに私の母とうまくやれるだろうか?と父が気にしていました」
「お義母様はどのような方ですか?」
「うーん、俺にとってはアレが標準だからなぁ。まぁ、穏やかですよ。エリン様が気にすることでもないですよ」
「お義母様の趣味とかわかるといいんですけど」
「母の趣味?うーん、刺繍かなぁ?気が向いた時に集中して一気にって感じなんで、気が向かない時は全く何もしてませんよ。仲のいい使用人とお茶をしたりもしてるかなぁ?」
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リア家では―――
エイプリル家のやつら、いきなりこの国に来たと思ったら宰相補佐のポストについたり、王女殿下と婚約したりやりたい放題だな。うちの方が歴史も伝統もあって優れているというのに。まったく陛下の信任まで持って行くとは本当にやりたい放題。うちにはエリン王女と釣り合うような年齢の男児がいないからなぁ。王女殿下との婚約は仕方ないにしても、いきなり来て、宰相補佐のポスト。
最近では宰相補佐でありながら、文官たちの信頼も篤く、『エイプリル様が宰相の方が…』などとふざけたことを言う輩まで現れ始めた。本当に邪魔くさい。なんとかならないものだろうか?
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「あんちゃん、アーサー様の妹のエリン様と婚約が決まったんだって?こりゃあ目出度いな。うちの鯛を持って行っておくれ」
「ありがとうございます!えーっとこれから一度王城に戻ってまた仕事をしなければならなく、鮮度が落ちてしまう。今、地図を書きますので、その邸に届けてくれませんか?地図に私のサインも書きましたので、門番や執事たち使用人も信用するはずです」
「スゲーなー。あんちゃん。使用人がいるような邸に住んでるのかい?」
「はい。まぁ一応侯爵の爵位をいただきました」
「ありゃ、あんちゃんも貴族だよ。あんちゃん、気軽に来てくれなくなるのかい?」
「そんなことはないですよ?エリン様も連れてみんなで来たいものですね!」
市場の人たちはいい人ばかりだ。
なんだかエイプリル家も大変そうです。受け入れる方もそれなりに大変そう…。というか、大変なんだろう。