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なぜ山羊は死んだのか ― 千年之大帝國、完成ス。  作者: 天津青生 / 赤目のサン
【第一部『盟邦たる日独』】:第一章 ―『トルキスタン紛争』
3/5

1.3 ― 日独国境紛争に際して、独政府緊急閣僚会議。

 南ドイツ有数の景勝地 "オーバーザルツベルク" 。風光明媚なる山々を望むこの地には、大ドイツ国の元首(総統及びライヒ大統領) "アドルフ・ヒトラー" の療養地(クアオルト)が存在している。


 …パーキンソン病を患い、1946年には盟友ムッソリーニも病によって(・・・・・)死去。

精神的・身体的負担を背負う事となったヒトラーは隠居し、この〈山上御殿(ベルクホーフ)〉での療養生活を送っていた。


 「お前…信じられるかい?

あの日本がトルキスタンに侵攻したそうだ。」

 彼は〈 お前 〉と呼んだ。…ドイツ語では〈 Du 〉と言うが、ドイツでは非常に親しい間柄(・・・・・・・・)において使用される二人称である。

 だが…この会話の相手は、大ドイツ国の元首たるアドルフ・ヒトラー、正にその人であった。

「…そう、日本だ。

お前も日本に関して色々言ってたじゃないか。」


 『近い将来に、我らは東洋の覇者と対峙せざるを得ない段階が来る』

 ―――総統及びライヒ大統領、アドルフ・ヒトラー。―――


 …度々ヒトラーが側近に語っていた "その言葉" が、第二次世界大戦終戦から僅か1年弱で〈バリクソル湖事件〉として現実になったのである。

「…そうか、お前のアジア贔屓(びいき)は健在か。」


 ミュンヘン党本部のマルティン・ルートヴィヒ・ボルマン官房長が持ち歩いているメモ(所謂(いわゆる)「ボルマン・メモ」)によれば、ヒトラーは「例えば、中国人或いは(あるいは)日本人が人種的に劣等などと思った事は一度も無い。」と語ったとされる。


…それは本心かは分からないが。


「―――…いや、ゲーリング閣下も考えを改める。改めざるを得ぬだろうよ。」






 バリクソル湖畔事件の翌日。トルキスタン国家弁務官区行政府の通報によって、この重大事件はベルリンの知る所となった。臨時総統代行者たるヘルマン・ゲーリング空軍大臣は、全国党大会の一部行事の中止を決定し、総統官邸において緊急閣僚会議を実施した。

 「…やはり何かの間違いに違いない、日本は盟邦であるぞ。」

閣僚等の声には、明らかな困惑の色が見て取れた。

「日本軍は戦車、自走砲、航空機を動員しては居るものの、部隊は一師団程度。…国家を挙げた奇襲作戦とは思えません。」

「…では今度の事件、少数による個人的な行動であると?」

"ヴィルヘルム・カイテル" 国防軍最高司令部(OKW)総長の言葉の裏には、 "今度の事態は支那事件と同じく、日本軍部の暴走に原因があるのでは無いか"と言う予測も含まれていた。


 すると、アルベルト・シュペーア軍需大臣が口を開く。

「今日のドイツに再び総力戦を完遂出来る余力は無い。…之が全面戦争では無く個人の暴走であるならば、それは不幸中の幸いか。」

「…日本との総力戦を?」

「総統閣下が仰っていた事だ。」

 先の大戦による膨大な負債、その返済の為の軍備縮小。

"今、ドイツは東洋の覇者と対峙する段階では無い。"

シュペーアを始め、ヒトラー内閣の閣僚等はその様に考えていた。




 …とは言え、ドイツには ある"優位性" が存在した。

1号、2号、3号に次ぐ報復兵器。

〈Vergeltungswaffe 4(報復兵器4号)〉と呼称される存在である。

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