第96話 『飢える魔王』の「ヘンシン」と再会
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白波浪音が魔導機械人形の索敵から位置情報を導き白波翔へと送る。
ズドッドッドドドドーーーン!!!
白波翔の放った広範囲殲滅魔法の光の槍が新たに出現した魔獣の群れに突き刺さり爆散させていく。
それと同時に『賢者』からの『以心伝心』で全域に連絡が来る。
【お待たせしました!!! 撃ちます! 射線から避けて!!】
「……助かる。魔石の残りが心もとなかった」
「どうしたんでしょうね、すごく間が長かった」
『お!! やっと来たか!!』
『少々きつかったな……』
『飢える魔王』にとりつく様に攻撃していた前衛部隊が蜘蛛の子を散らすように射線から離れて行く。
それとほぼ同時に強烈な『ギフト相乗効果砲』が『飢える魔王』を直撃する。
『飢える魔王』が反撃しようと『口』を開くたびに陽花里の『光の槍』が突き刺さり、魔獣を召喚するたびに範囲殲滅魔法で消し飛ばされ、触手で光の聖女と殲滅魔導士を攻撃しようとすると触手が断ち切られ、行動が抑止され打つ手がないところに『ギフト相乗効果砲』が叩き込まれていた。
海波達は『賢者』の射撃コールのたびに好転する戦況を把握し、型にはまって抜け出せないでいるのを理解していた。
(いけそうだね!!)
(ああ……しかし、やはりどこからか変な魔力が流れ込んでいる感じだな……)
(俺たちが先に向かう?)
(そうだな……これだけ戦況が落ち着けば……陽花里がいれば場所がわかるが……一緒に行くか……しかし『口』を封じれないか……)
海波が『爆心地』にあった門に移動するか迷っていると、突然異様な地響きがおこり『飢える魔王』の方に力が収束していく。
「「「ボクをいじめるなぁ!!!! 僕は強いんだ!! ムテキなんだ!!」」」
『飢える魔王』から突然「日本語」の大きな声が放たれ、その場の空気が震える。
それと同時に小規模な爆発が『飢える魔王』を中心に起こり、禍々しい邪気のものが集中して集まっていく。
近接戦闘を仕掛けていた戦士達は、『飢える魔王』から放たれたものすごい風で吹き飛ばされてしまう。
「……なに?」
「日本語??」
(転生者だったのか?)
(……そうだろうな……)
(随分幼い感じだね……ムテキなんて無いのに……)
『飢える魔王』は周囲の物質などを体表に吸着させながら人型へと変わっていく。
吸着していた物質はさながら岩の鎧の様になり、武骨なロボットのような形状になっていく。
『なんだあれは!!』
『ゴーレム!!! 魔王がゴーレムになったぞ!!』
『なんと禍々しい姿だ……』
「おいおい!!なんだあれ! 凄まじいパワーだぞ!」
「戦隊もののロボットみたいだぞ??」
「何が起きてんだ!!?」
異世界の戦士達はその姿と魔力に畏怖を抱き、転生者や地球人達は見た事がありそうなロボットの鎧のデザインに困惑を隠しきれていなかった。
「「「来たれ!! イマジンブレード!! イマジンシールド!!!」」」
武骨な鎧の騎士となった『飢える魔王』は爆音で何かしらの決め台詞を吐くと、両手を大の字にあげて流れ込んでくる魔力を集める様に空中に剣と盾を生成していく。
羽雪優斗がとんでもない魔力の流れで吹き飛ばされそうになっていた仲間を地面に剣を突き立て支えながら耐えていた。
「くっ!! なんて魔力だ……これじゃ……えっ? 師匠?」
その場にいる人間達は『飢える魔王』の変化に圧倒され戸惑っていたが、海波だけが違った。
彼だけが『飢える魔王』の懐にもぐりこみ、拳に魔力と電撃と『神の加護』を纏っていた。
(好機!!)
(チャンス!!)
「うおりゃああああ!!!」
(いっけぇえええ!!)
ドゴーーン!!!
海波の腹パンは『飢える魔王』のロボットの様な鎧を粉々に破壊していた。拳は人間化した『飢える魔王』の腹に突き刺ささっていた。あまりの威力で『飢える魔王』の身体が耐えられなくなり、吹き飛びビルの壁を破壊しながらたたきつけられ貫通して行ってしまう。
「「「がっ!! ごほっ!!! 痛い!! イタイ!!」」」
『飢える魔王』は何が起きたか理解できずに、砂の様に崩壊していく『最強の鎧』とダメージで動けなくなって制御できなくなっていくからだを見て呆然としていた。
(やった!!)
(すばらしい! やはり神の加護のおかげで鎧を吹き飛ばせた!!)
(……と言うより、なんか瀕死になってない??)
(瀕死ではない……力が散っている……制御できていない様だ)
上空から状況を見ていた白波翔は事態を完全に呑み込めていなかったが『飢える魔王』に同情をしていた。
「……かわいそうだな……変身シーンで一撃……」
「んなこと言ってられないでしょ! 魔王ですよ!! 変身シーンなんてないですから!!」
「……って、あれ……海波?? 海波なのか???」
「へ? 息子さんですか? 話に出てきていた……」
倒れてうずくまる『飢える魔王』にその場の一同は勝利の片鱗を見ていた。
半ば気が緩む人間が多数のところに『飢える魔王』に黒い嫌な何かが流入していく。
『飢える魔王』は身体を膨張させ、違う、「異形」な生物に変化を続けていた。
「なんだあれは?」
「キモイんですけど!!」
『邪神ソベーレの力か?』
状況を把握していた犬族の重戦士がその場にいる人間に聞こえる様な大声で質問をする。
『おい! 魔王の魔力の出どころわかるやつはいるか!! 力の供給元があるみたいだ!!』
白波陽花里が大きな声で返事をする。
『わかります!!』
『よし! いるなら……ショウ!! 転移魔法を!! 神の加護を持った人間を集めて元を断ってくれ!!』
(俺たちも行こう。まだ神の加護は残っているし……導きがある!)
(そうだな……)
海波は白波陽花里の元に降りてくる白波翔に気が付く。着ているものが異世界のものな上、日焼けして一瞬誰だかわからなかったが、海波の方を見る懐かしい瞳ですぐに彼だと理解した。
「……海波……」
「父さん……」
白波翔は駆け寄って海波を力強く抱きしめる。
「……大きくなった……大人になって……ぐっ……」
「おかえり……生きていて……よかった……って……ちょっと痛い……」
「あ、すまない……こんなに立派になって……」
白波翔は半泣きになりながら海波の体を触りながら隅々までなめるように見ていた。
陽花里がぐちゃぐちゃの表情になっていく翔と、形態の変わっていく『飢える魔王』をチラチラと見ながら困惑していた。
「父さん……感動しているところすまないんだけど、行かないとこの世界が危険じゃないの?」
「……ああ、そうだった……」
(こんなに涙もろかったのか……)
(何時も勝ち気で楽しそうにしている人間だったからな……君も……)
(……ああ……こんなに嬉しい事って……心がうまく制御できないね……)
(……俺は知らなかったが……これが愛というものなのか……)
白波翔に付き添っていた転移者らしき魔術師が何とも言えない表情で陽花里に話しかける。
「陽花里ちゃん、位置は出せるかい?」
「うん……こっち……」
「ありがとう……代表。位置を特定しました」
竜族の戦士が周囲を警戒しながら翔に近づく。
『俺も行こう。守りが必要だろう』
「ありがとう……ではいくよ」
白波翔の周りに転移魔法陣が展開され、翔、海波、陽花里、竜族の戦士の四人がその場から一瞬で消えていく。
§ § §
正津成有は双眼鏡を片手に状況を観察していた。
『飢える魔王』が小さくなってしまった後、暴走している様に見えていた。
「予想外の展開ですね。あのサイズだと砲撃は無理ですね」
『賢者』も同様に状況を観察しながら次の手を考えていた。
「ええ、『飢える魔王』に流れる何かを止めないと……恐らく『次元の門』が開いているのでしょう」
雲梯摩帆が感覚で推測する。
「ねぇ、琴音ん。『異界の門』って、アジトから飛べるところ?」
振水ユキナが異界の門を探知しながら答える。
「確かに魔力の供給源……源を探ると、あっちの方向ね。『爆心地』のあそこみたい」
蓮輝が自分の手を見ながらうっすらと先日『神エネリエス』からもらった加護を見て考えていた。
「よし、いこっか。今、僕には神の加護が残ってる。なんかできるかも」
紅華が今回のターンでは使わなかった新品同様の盾を持ち直す。
「わかった。守り役はいるよね」
瑠衣も、『飢える魔王』が開いた異次元の穴から流れてくる『女神の加護』を感じていた。
「邪なものならば……封じられるかもしれません。私も行きます」
丸亀礼音が珍しく前に進み出てくる。
「私は『爆心地』を把握している。案内しよう」
『賢者』与謝峰琴音も慌てて意思を表明する。
「えっ?? 私も行きます!」
雲梯摩帆が人数を見て
「定員オーバーだよぉ! 遅れるのは4人まで!」
琴音が及び腰の摩帆を見て冷静に現状を分析する。
「瑠衣さんのブーストがあれば行けます! マホさんも「一緒」に行けば……行けるはずです。」
「……え、私もいくの??」
紅華が摩帆の腕をしっかりとロックする。
「さぁ、行きましょうか、先輩」
「……目が怖いんですけど……わかったよぉ……ヤバかったら一人で逃げるからね!」
伝地力弥は自分のギフトでは活躍で来そうになかったので早々に辞退する。
「俺はパスだな。石だらけなんだろ? 爆心地って」
早風切那は目の先に『飢える魔王』を捉えていた。
「神の加護がないアタシ達は突撃だな。行くよ! 『磁力』君。電気サーフィンで送れ!」
「わかった……磁力君……」
遠地寛治は魔道機械人形に乗って空を飛びまわっている愛しの未来の妻を見ていた。
「俺も前線まで送ってくれ。空を飛び回ってる未来を回収しないとな……場合によっては送り届ける」
振水ユキナは戦闘に参加できなさそうなので一歩下がって控えめに応援していた。
「みんながんばってね!!」
真直歩夢が申し訳なさそうに言う。
「俺たちは後ろで魔獣退治の仲間達に合流するよ……あの戦いにはついていけない」
重石要が礼音に近づき、心配そうに話しかける。
「礼音! 気を付けて……」
力を使い果たした伴戸志姫はふらふらとしながら移動し始める仲間に声をかける。
「みなさん、よろしくおねがいします! この世界に平和を!!」
一同は頷き、軽く微笑み、それぞれの使命を果たすために散っていった。
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