第80話 告白
§ § §
海波が瑠衣の事を探していた。彼の持つ気配察知と経験。ルイーゼ時代の行動パターンですぐに居場所がわかった。
「瑠衣……」
「……」
海波は体育座りで顔をうずめている瑠衣の隣に座る。
「……何で直ぐ場所が分かるのよ……」
「叱られると見晴らしのいい場所で不貞腐れていただろう?」
「……そうね……近いわ……」
瑠衣はすぐ近くに座った海波を気にしながらも微動たりしなかった。
「すまない、気が付けなくて」
「……私も気が付いたのは最近だから……いいよ……」
「まさかルイーゼ……きみが瑠衣だったなんて……」
「そうね……」
「まさかあの……スラムの人間が転生しているとは思わなかった……あの後、あの町も戦争に巻き込まれたのか?」
「ううん。あなたが死んだ後……しばらくして私は邪神軍との戦いに参加したから。街は大丈夫だった思う……いや、わからないかも……私も戦争の後の事は知らないし」
海波はあちらの世界と比べると、とても少ない星空を見上げていた。
「そうだったな……レヴィもセレスも転生してこの世界に来てしまっていたものな……」
「『神の騎士』と『賢者』様だよね……」
「……ああ。守りたかった人達だ……君もだが……」
海波の目が遠くなる。瑠衣は雰囲気が変わった海波の方をちらりと見る。
「ねぇ、ラケシス様の事どうするつもり?」
「どうとは?」
「……あ、いや前世の約束……とか……」
「前世は前世だな……彼女も先に進めたんだ。俺も進まないとな」
「……え? あんなに好きだったのに?」
「あ、ああ、そうだな……確かに……記憶ではそうなんだが……よくわからなくて」
「わからないって……」
「子供がいるのはショックだったが……幸せになって欲しい気持ちの方が強くてな」
「……そう言うものなの?」
「それに白波海波の記憶だと……」
「……記憶だと?」
「……」
「……」
「……」
「……」
海波が地面を見つめ赤面していた。瑠衣は気になって隣に座る海波の顔を覗き込む。
海波の表情を見て彼女も照れて地面を見つめてしまっていた。
「……」
「……」
バガッ!
「グフゥ!」
海波の脇腹にパックゼリー飲料の塊が直撃をしていた。
「え、だ、大丈夫??」
「大丈夫……だ」
海波が投げた先を見ると、紅華がにらみつける様な目で、美来が興奮したようなランランとした目でこちらを見ていた。
(……あの時と同じだな。)
(そうだね……)
(……ここは君が言うところだ。俺は関与しない)
(え?? ちょっとまって、いきなり「俺」が???)
海波は顔を上げて瑠衣に向き直る。
「俺は……るーちゃんが好きだ。ずっと前から……」
「え?……あたしも……ずっと好き……小さいときから……ずっと……」
(!?!)
(……だから言っていただろうに……)
瑠衣が海波の方を見つめながら距離を軽く詰める。海波が狼狽し、周りを見て助けを求めていた。
「よかった……戻ってきたんだね……」
「もどってきた……とは?」
「海君……白波海波の魂が……死んじゃったのかなって……」
(性格が変わったからか?)
(口調も行動も違うからね。別人レベルで)
「あ……いや、違うんだ……ゼフはあちらの世界での俺、今の俺も……全部ひっくるめて俺なんだ」
「え? そんな……海君があんなに行動力あって暴力的で猪突猛進じゃ……あ、でもゼフは街のみんなには優しかったし……ファンも多かったな……」
(……そんな風に見られてたのか……)
「母さんにも……俺とゼフは……魂の本質は一緒って言われた。だから……俺は俺だよ」
「……そうなんだ……良かった……ルイーゼだってわかったら、娘とか妹みたいだって言われて恋愛対象外とか言われちゃって……ダメなのかと思っちゃって……」
海波はすぐそばに接近している瑠衣の存在に圧倒され心臓が飛び出るほどの鼓動になっていた。
「そ、それはない。君は十分もう……大人の女性だ……」
「……う、うん。それは……もうわかったかも……」
瑠衣の目にはラケシスへのプロポーズの時なみに表情が変わっていく『ゼフ』と『白波海波』の姿がダブって見えていた。
「すまない……俺が弱くて……しっかりとできなくて……」
「ううん……こう言うところまでしっかりできちゃう海君は……想像できないよ……」
「そ、そうか……すまない……」
「い、いいよ」
「……」
「……」
二人は見つめ合うと目をそらす。特に抱き合うでもなく、地面を見ながら照れ合い、たまに目が合うとまた照れ続けていた。
§ § §
「……」
「♪」
物陰……いや、かなり堂々と見える位置に来ていた美来は二人を見て微妙な気分になっていた。
隣にいる紅華は映画のワンシーンを見るかのように目が光り輝いていた。
「……なんかモヤモヤするわね……」
「え? 転生前の彼氏だったら……そんなもの……なのかな?」
「……思った以上に複雑な気分ね。おかしいわ……」
「もう相手がいるからいいじゃない……」
「そうね。そのはずなんだけど……あなたもあのイケメン君とうまくいくといいわね……」
「……ははは……それは……ちょっと難しいかも……ね……」
「……大変ねぇ……」
「ですねぇ……」
微妙な空気が流れる中、魔道機械人形が彼らの中心に着地をする。
「会議ガ始マリマス。「時詠みの聖女」「師匠」「守護騎士」「命の聖女」ハコチラニ来テクダサイ」
「……師匠……」
「師匠……レヴィの命令か……」
「師匠ね……」
「……あのゼフが……師匠ね……」
美来は話の顛末を聞いていたが、まさか『神の騎士』達の師匠になっているとは想像できていなかった。




