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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第78話 作戦の練り直し

§  §  § ♠ ♠ ♠ §  §  §


召田宗麻(しょうだそうま)の体に憑依した邪神ソベーレはビルの屋上から周囲を見渡す。

赤黒く染まった空に覆いつくされていた。場所によっては黒いひずみが生まれそこから新たな魔獣が出現していた。

その傍らでは自衛隊の迷彩服を着たままの鼓動正史(こどうまさし)が直立不動で控えていた。


「ソベーレ様。次はいかがしましょうか?」

「しばらくは静観だな。あちらでも丁度開戦したところだ……分体だと……やはり調子は悪いようだな……この男のスペックが低いのか……」

「この世界の一般高校生レベルのはずですからね。この世界の平均くらいかと……」


「まぁ、そんなもんか……こんな高度な文明が栄えているんだ……文明が発達すると生物的な強さは減る……俺の持論が正しかったようだね」

「……目的は文明の破壊……ですか?」

「……いや。成り行きを見に来ただけだよ。面白そうだからねぇ、クククッ」


「……はぁ……」

「わからないよねぇ。俺はずっと見てきたんだ。願望のためにすべてを食らいつくした『飢える魔王』がどうなるのか……それを見たいんだよね。クククッ」


邪神ソベーレはビルの階下で行われている自衛隊の特殊対策課と魔獣の戦闘が一方的なのを見届けていた。


「こちらの世界の兵器と、あちらの世界の魔力が融合すると……厄介なもんだな。魔力のない訓練されてない兵士でも簡単に倒せているみたいだな、うちの世界で転移者が絡むと強くなるのはこのせいだねぇ」

「銃……と言うより打ち出し型の……槍に見えますね。魔力を感じられます。槍になにかしこんでいるみたいですね」


邪神ソベーレは顎に手を当てて何かを考え始める。

「……このままだと『飢える魔王』がフルボッコになりそうだねぇ……ちょっとだけ手助けしてやるか」


「その体で大丈夫なのですか?」

「まぁ、この体も使い捨てだからネ。期間いっぱい楽しませてもらうよ」


邪神ソベーレは目を閉じて魔力を集中させると、『黒い魔力の手』を四方八方に伸ばして何かを探し始めた。



§  §  § 



特殊対策課が設営した本陣に集められた転生者達は騒然としていた。

見張りについている自衛隊員達はついていけずにただ見守るだけだった。


早風切那(はやてせつな)が『賢者』与謝峰琴音(よさみねことね)に詰め寄り、若干震えながら話す。興奮か恐れからくるのかは他者から判断できなかった。


「お、おい、『飢える魔王』とは……あの黒いぐちゃぐちゃしたやつか?」

「ぐちゃぐちゃ?」

「そうだ、ぐちゃぐちゃ……こう、黒いものが、なんていえばいいんだ??」


雲梯摩帆(うんていまほ)が興奮しだしている切那(せつな)に気が付き話に割って入る。

「ちょっと、それじゃ伝わらないよ。えっと、恐竜みたいに大きくて、黒い手みたいな触手が体中から生えていて、あたりのものを手あたり次第食べちゃうやつ?」


琴音(ことね)はしばらく考えた後、若干戸惑いながら返答をする。

「そうですね……黒い巨大なウニかと思ってましたが……」


琴音(ことね)が隣に同席してた言預美来(ことよみく)の方を振り返って確認をする。

視線に気が付いた彼女は照れながら答える。

「え、ええ。そんな感じかと……すみません……絵が下手で……」

「……もしかして……遭遇経験があるのですか?」


琴音(ことね)に詰め寄っていた切那(せつな)摩帆(まほ)一休(いっきゅう)の三人は顔を見合わせてうなずく。


「ああ。あるね」

「そうだね。転生者の何人かはあちらの世界で『飢える魔王』にやられている」

「「異界倶楽部」の結成目的の一つだからな……」


琴音(ことね)だけでなくその場にいた、声が届く範囲にいた転生者達は一様に驚いていた。

優斗(ゆうと)が場が騒然となり、落ち着きを取り戻すまで時間がかかると判断して間に入ってくる。


「琴音、仕切りなおそう」

「……え、ええ……これは……これは……」


その場の人間が琴音(ことね)の声の変わりようと不思議な動向に注目をする。


「これはいけますね!!! 早速情報を!! 不安定だった作戦が一気に現実的なものに!! 文章だけで何とかしろってのも土台無理だったんです!! これで活路が!! 全ての預言の……文章がつながる!!」

「え、ええ? お、落ち着けって!」


琴音(ことね)の目が輝きだす。その場のほとんどの者が付いてこれずに呆然としてしまう。


「はい、それじゃ一旦解散で! すぐに作戦立て直しますので少々お待ちを!!」


その場は一時解散となり、作戦構築後にまた集合となった。

沈んでいた空気は琴音(ことね)の妙なテンションによって持ち直している感じだった。



海波達は新たに作戦を練り直す首脳部を遠巻きに見ていた。

蓮輝(れんき)は不安そうに海波に質問をする。


「僕たちはどうする? 戦いに参加する?」

「俺は参加する。戦う意思のあるものだけ残ればいいが……蓮輝(れんき)は後方支援……の方が良いだろうな」

「え? 僕だけ?」


紅華が諦めたように肩をすくめて手をあげひらひらと振る。

「……やっぱりあたし達は参加なのね……」

「なんか蓮輝(れんき)君だけ……いや……いいわ……」


紅華と瑠衣が非難がましい目で海波を見ていた。

海波は思わず目をそらしてしまう。


蓮輝(れんき)は二人のやり取りを完全に見ておらず、マイペースにしばらく考えていた。

「うーん、それじゃぁ、家に戻って作りためておいた『ポーション』を持ってくるか……」


「……え?」

「作れたの?」

「うん。僕が役に立てるのは錬金術だからね。この世界のものを分析しなおして、魔石を利用したら何とかできたよ。研究不足であちらの世界みたいにすごく回復はしないけど……少しくらいは傷を治せるし、少しだけだけど魔力切れは抑えられるはずだからね。それじゃいってくる!」


(え? 大丈夫かな……魔獣が……)

蓮輝(れんき)だけでは無理だろうな……)


海波が心配そうな表情をすると。伝地力弥(でんじりきや)が移動を始める蓮輝(れんき)についていく。


「あ、俺が護衛するわ。今回は役に立ちそうにないしな」

「おお、。力弥(りきや)くん! 心強いよ!! 頼りにしてるよ!」

「お、おう……素直すぎて……照れるな……」


振水(ふりみず)ユキナが足早に去っていく二人を見ながらオロオロし出す。


「あの……私も戦力外なんですけど……魔王と戦える力もギフトもないし……どうすれば……」

「大丈夫だ。俺が守るから。俺も魔王は無理だが魔獣は何とかできる。今は下手に動いた方が危険だ。力弥(りきや)なら鉄の多いこの世界なら無双できるしな」


真直歩夢(しんちょくあゆむ)が優しくユキナの肩を抱いて落ち着かせる。



「……なんかいいわね……」

「……うん」


紅華と瑠衣が再び非難がましい目で海波を見ていた。


(何でこっちを見るんだ?)

(……二人の強さを知っているから……女性らしい扱いをしてほしいんだろうけど……)

(貴重な戦力だからな二人は)

(そうなんだけど……どんな声をかければ……)



海波が何と言おうか迷っていると母親の白波浪音(しらなみなみね)が話しかけてくる。


「えっと、海波。ちょっといいかしら?」

「母さん……」


「戦いが始まる前に話しておきたいの」



§  §  §



海波は浪音に連れられて少し離れた公園のベンチに座る。

幻惑の魔法が解けた母親は別人のように美しく、この世界の人間とは思えないほどだった。


(それにしても……)

(まさか魔法にたけた耳長族とはね……)

(全然遺伝してないね、僕には……こんなにきれいなのに……)

(君は父親似だな……よく考えると妹の陽花里は……髪の色が違ったな)

(母さんと同じペンダント付けてたから……どうりで陽花里は可愛いわけだよね)

(……シスコンと言うのか?)

(……客観的な意見だよ!! ……多分)


浪音は海波の事を見て少々戸惑った感じになる。


「えっと……なにから……どうしましょう……話すことがたくさんあるわ……」

「最初から説明してくれる」


「そ、そうね。まずは……その。変な仮面は……つけたままなの?」

「……あ」


海波は周囲にひっそりと隠れてこちらの話を聞いている瑠衣と紅華だけしかいないのを確認すると、付け慣れた仮面を外す。


「ごめんなさい……やっぱり顔が見えないと不安で……」

「……外すの忘れてただけだから気にしないで……」

「い、いいのよ。カッコイイと思ってやるのよね。その年代は……あれ? でも前世の記憶があると……」

「!……いちおう身バレしない様につけてたんだけど……」

「あ、そ、そうよね。ショウさんもこちらの世界だとへんてこな仮面をつけてたわね」


(カッコイイと思ってたくせに……)

(……あちらの世界にはない素晴らしいデザインではないか!)



「それじゃ、仕切りなおして……えっと、まずは母さんと父さんはあちらの世界で出会ったの。酒場での祝勝会でね……そこで初めてショウさんを見たの。体に纏う魔力が輝いていたわ……」


「え? なれそめから??」

「え? 最初からでしょ?」


(しまった……父さんとの話になるとボケボケだったんだった)

(耳長族はおっとりした人間が多かったものな……)


「あの。その……要点をまとめないと。会議がすぐ終わるでしょ?」

「そうね……まとめると、父さんと母さん達が力を合わせてあちらの世界で『飢える魔王』を倒したの……いや、正確には倒せてないんだけど『飢える魔王』の心臓を切り離せたの。……まだ動いていたわ。何故か破壊しても再生されて……それでショウさんが心臓に近づいたときに魔法陣が広がっていったの。彼は「今なら俺は帰れるかもしれない。こいつを持ってあちらの世界に帰る」……って、それで、その……私はついてきたくて……こちらの世界に来たの」


海波は本気で照れながら話をする母親に若干引いていた。

(……そういえば父さんが家にいた時はボケボケだったな……)

(……なるほど……甘い家庭とはこういう光景を言うのだな……)


「それからは『飢える魔王』の心臓を封印して蘇れなくして……あとは幸せな暮らしを……裏では色々とあなた達みたいなことをやってたけど……それで例の『消失事件』が起きたの」

「……それであまり悲しんでなかったのか……」

「……そうね。多分あちらの世界に行ったのかと思ってたから。『飢える魔王』の心臓の位置……じゃなくて、ショッピングモールだったのが……物凄く疑問だったけど」


「ってことは……父さんも……陽花里も帰ってこられるのか?」

「多分。この世界のみんなには悪いけど、私は『飢える魔王』が降ってくるって予言がチャンスだと思っているの。その時に転移魔法陣……あちらの世界にこの世界の位置情報を送れたら……ショウさんは帰ってこられるわ」

(え? できるの??)


「そんなことが……」

「できるわ。父さんはあちらの世界では有名な最強の魔術師だったんですから」


(最強の魔術師??!)

「……『殲滅魔導士……ショー』……父さんだったのか……違う大陸でも名前が聞こえていた……」

「それがあなたの父親よ。あなたの魔力が高いのはそのせいね」


浪音が優しい目で海波の事を見つめていた。


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「バトロワ」無視して異世界サバイバルライフ! 
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