第76話 開く異界の門
§ § §
召田宗麻と鼓動正史が邪神の門の部屋の地下にいた。
轟音が鳴り響き、柄にもなく召田宗麻は不安になっていた。
「なんか上で戦闘している音が聞こえるな……」
「気にするな。あちらは囮だ。儀式をすれば……我々の勝ちだ……一泡吹かせたいんだろう?」
「もちろんだ」
召田宗麻が浮かれた表情になる。足取りも軽く、既に用意されていた魔法陣が描かれた祭壇へと移動をしようとすると、突然何かがはじかれた強烈な音がする。
バンッ!!!
「きゃっ!!」
「なんだっ!!」
「ネズミか!」
丸亀礼音が気配も無く召田宗麻の首を狙って短刀を突き立てようとしたが、魔法の守りの護符の力で吹き飛ばされていた。
彼女は吹き飛ばされながらも持っていた短刀を投げつけ、召田宗麻の無防備な腹へと突き刺さる。
(くっ! しくじった!! 守りの護符がこの世界にあるとは!! 退散!!)
「えっ? い、いてぇ!!!!」
「この!!」
鼓動正史がギフトを発動させ、丸亀礼音がいた周囲を振動で破壊しつくす。
「……逃げた……のか? いや……血があるな……効いてはいた……」
「い、いてぇよ。くそっ、あのやろー……」
「ちっ。そのくらいの傷で騒ぐな……」
鼓動正史が手を添えると黒い触手がはい回り、彼の傷を縫合していく。
「きもいな……治ってるが……痛いんだが……」
「女神の加護と比べると痛みは残る」
「これじゃ邪神の信仰は……はやらないな……」
召田宗麻は落ち着いてくると不安そうにソワソワする。
「仮面野郎に……海波に情報持ってかれたな……大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だ。この魔法陣が起動すれば。お前もかなりの力を扱えるようになるだろう。今妨害にあったのは……それを阻止するためだろうな。潔い撤退だ。あちらの世界でも工作員だったんだろう」
「なるほどな……」
召田宗麻は指示されるまま、魔法陣に立ち、召喚魔術の詠唱を始める。
「凄い力が湧いてくるな……これ、上に召喚で良いんだな?」
「そうだ……いい感じだ……」
召田宗麻は湧いてくる力に興奮を隠せなかったが、様子がおかしいので慌てて質問をする。
「お、おい、なんか体に……巻き付いてくるぞ?? どうなってんだ?」
「ああ、予定通りだ……小さな門が開いた……」
「……あ……ぐ……なに……が……」
召田宗麻は薄れゆく意識の中、鼓動正史がほほ笑むのを見て騙された事を知る。
鼓動正史が召田宗麻に対して跪く。
「ソベーレ様……上手くいかれたでしょうか?」
「……ああ。うまく行った……だがこの体は長くは持たないな……無理やりすぎたか……」
「この世界で黒の魔石を大量に利用したのはその体のみです。それ以上の者は」
「わかってる。まぁ、これで「現地観戦」して楽しめるね。あちらの世界でも面白い事になってるよ」
召田宗麻はゆっくりと手を広げて大げさに演技をする。
「さて、第二ラウンド開始と行こうじゃないか! エネリエスの信徒達よ!」
丸亀礼音は動かなくなった足を引きずりながらその場からゆっくりと逃げていた。
(伝えなきゃ……みんなに。やばい、やばい!)
§ § §
早風切那は爆心地周辺に出没した魔獣たちを切り刻み終えると上空の異変に気が付き見上げる。
「おい! 摩帆あれはなんだ?!」
「ん? 邪神側の召喚魔法かな……規模が大きすぎるね」
彼女たちの視線の先には町一個分はあろうかという超巨大な魔法陣が、上空数百メートルのところに展開されていた。
彼女たちが見上げると、周りもその存在に気が付き騒ぎが広がっていく。
伏野一休は体格に似つかわしくない怯えた感じで隣にいた縮圧元次に声をかける。
「お、おい、寛治達は失敗したのか?」
「……強い魔力反応を感じるな……ただ、嫌な巨大な魔力反応もだが……」
縮圧元次はスマホを開いて状況を確認する。
「特殊対策課が出てくるらしい! 一旦退避!! 美来達と合流! 仕切りなおすぞ!」
「あいよ!」
「わかった」
「やれやれだね」
§ § §
伴戸志姫と「光の女神教」の信徒達は湧き出た魔獣を退治していた。
住人の避難は終え、彼等だけが戦闘を続けている感じだった。
しばらくすると、その周囲に続々と特殊対策課、自衛隊の車両が到着し、中からは特殊な武器を持った隊員たちが出てくる。
「みなさん! あとは彼らに任せます!」
「わかりました!!」
伴戸志姫は頭の中に響く懐かしい声に気が付き耳を傾ける。
「えっ? ……わかりました。エネリエス様」
伴戸志姫は上空に出現した禍々しい魔法陣をキッとにらみつける。
「二人ほど護衛をお願いします。セレオース様と合流します」
「はっ! セレオース? この世界に「賢者様」がいるのですか?」
「そうみたいです。では参りましょう」
§ § §
海波達は急いで地上へと戻ると、上空に展開された巨大な魔法陣に唖然としてしまう。
(……なにあれ? 冗談みたいだね……)
(空一面の魔法陣……だと……見たことも聞いた事も無い……)
海波の隣にいた浪音がつぶやく。
「『飢える魔王』の力と同じね……やはり降ってくる『魔王』はアイツなのね……」
「母さんは……知っているのか?」
「……ええ、あちらの世界で戦っていた……アイツの心臓をこっちの世界に持ってきてたから……復活しないと思ってたのに……」
賢者と呼ばれている与謝峰琴音が話に入ってくる。
「浪音さん。恐らく『飢える魔王』は心臓をいくつか持っているかと……飲み込んだ生物の能力などを吸収する魔王……だそうです」
「……なるほど……私たちが倒したのはその一部だった……のね」
話を遠巻きに聞いていた人間たちが、これから来る『魔王』の異質さに気が付いて、不穏な空気が漂っていく。
そんな中与謝峰琴音が自信満々に宣言をする。
「大丈夫です! この時のためにしっかりと武器と戦力、戦術を用意しています。あなたの旦那さん仕込みですよ?」
「え? 翔の?」
(父さんもやっぱり転生者だったんだね)
(なるほど……転生者の子は転生者なのだな)
(……そうなの?)
海波は周囲を見渡すと、すでに自衛隊や特殊対策課が爆心地を中心に戦闘配備をしている様に見えた。
(これは……)
(既に色々知っていた……と言う事だな)
「さぁ、行きましょう! 戦いの肝は転生者である私たちです! エネリエス様の加護を信じましょう」
§ § §
追憶編終了
消失事件解明編へつづく
賢者や最終兵器君の話は以下の別の物語であるので前半だけ読んでいただければと。
「現代転生 どうやら異世界が前世だったみたいです」
2024/06/25日に続編開始
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