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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第61話 瑠衣の迷い


§  §  §


瑠衣は前世のルイーゼの記憶を思い出していた。


幼いルイーゼは孤児院の子供達に交じってスラムの教会の裏に隠れていた。

煮え切らない態度で中々踏ん切りのつかないでいたゼフだったが、神官や子供たちが焚きつけ、背水の陣の状態まで追い込まれてラケシスに愛の告白をしているところだった。


「ゼフ……気持ちはとてもうれしいのだけれども……私は子をなせない体なの……あなたの思い描く幸せな家庭は作れないわ」

「それでも良い、君と一生一緒にいたい。子供なら孤児院に沢山いるではないか」


「……ゼフ……それは結婚と言うのかしら……」

「違うのか?」


「……今と何も変わらないような気がするのだけれども……」

「ん……あ、そうか?」


ラケシスは少し考えた後に丁寧に諭すように語りかける。


「そうね……でも……既に未来は決まりかかっているわ……その約束は果たせない……」

「ならば俺が未来を変えてみせる」


普段は冷静な感じのゼフの熱い言葉にラケシスが驚いた感じになっていた。

「約束してくれ。あいつらをこの街から追い払って……街に平穏が訪れたら……俺と結婚をしてくれ」

「……ええ、変えられたら……ね」


「必ず。君を守る」

「……ええ……生き延びられたらね……」


ラケシスの目に涙が浮かび、ゼフは真意を測りかねていた。


「それは……」

「良いわ……全部うまくいったら結婚しましょう」


その言葉に反応し、のぞき見をしていた孤児院の子や教会のシスターたちから歓喜の声が上がり、一斉に二人に駆け寄ってくる。

「……ぐっ……」


ゼフは恥ずかしさで赤面し、ラケシスは呆れた感じだったが、優しい目で愛する子たちを見る。


「しかたがない子たちねぇ……」


幼いルイーゼの目には困惑しながらも心から嬉しそうな眼をしているラケシスが映った。


§  §  §


海波がすごい勢いで外に出て行ってしまったのを一同は呆然と見送っていたが、紅華が瑠衣の様子があまりにおかしいのに気が付く。


「ちょっと! 瑠衣ちゃん! 大丈夫?」

「……まさか、まさかそんな……海君……ゼフの生まれ変わり……だったの?」


「え?」

「ゼフ?」

「海波君は黒の双剣と呼ばれていたみたいだけど……名前までは……」


紅華はゼフ様の言葉にひっかかり、海波が前世の事を語っていたことを思い出していた。

「あ……たしか海波は……懸賞首……とか……名前なんだっけ……ゼファイスト? だったかな、そんな感じだったよ」


「ゼファイトスね……それ、ゼフの本名……やっぱり……」


突然瑠衣の目に涙があふれだし、時には嬉しい表情になったりしていて本人も困惑をしている感じだった。

「……あ、あれ、私……どうすれば……あれ?……どうしよう、私、嬉しいんだか悲しんだか……わからなくなっちゃったよ……」



蓮輝と礼音は混乱しながらも状況を理解しようと努めていた。


「えっと、確か、海波の前世の婚約者が……ミクさんで……」

「ミクさんがラケシスで……その婚約者がゼファイトスで海波君ってことだね。えっと、瑠衣ちゃん、ゼファイトスと、ラケシスとの繋がりがある……んだよね?」

「……うん。まだ小さいころ……二人が街を……スラムの孤児院を守ってくれていたの。私は孤児院にいて……お世話になっていたんだ……だけどラケシス様が死んで……ゼフが彼女の残した言葉をもとに色々がんばって街に平和が来たと思ったら……毒の龍の魔獣にやられて……」


瑠衣が本格的に泣き崩れてしまう。堰を切った様に泣く様は孤児院時代の少女の様だった。

紅華が隣に寄り添い、やさしく瑠衣の肩を抱いていた。


その場の空気に耐えられなくなった重石要(おもいしかなめ)は、外出の準備をしはじめる。


「そ、そ、それじゃ僕は打合せ通りに転生者自由主義のアジトに潜入捜査するよ。そ、そこには行った事あるからね」


言い残すと消えるような速度でその場を走り去っていった。


(まぁ、逃げ出したくなる気持ちわかるけどね……)


丸亀礼音(まるかめれおん)は仲の良いグループがバラバラになっていくのを見て悲しい気分になりつつも、これからどうするかを真剣に考えていた。



§  §  §


振水(ふりみず)ユキナ、真直歩夢(しんちょくあゆむ)の二人は蓮輝の家に向かって歩いていたが、駅前の雰囲気がおかしい事に気が付いた。


「あれ? どうしたんだろ?」

「何だろ? なんかの騒ぎか? え? 機動隊!?」


装甲のついた輸送車から盾や銃、見た事も無い槍などを持った人間がぞろぞろと出てきていた。突然のことに街ゆく人も何事かと立ち止まり、あたりは騒然となっていく。

暫くすると信号の色なども赤い点滅に切り替わり、なにやら重大な事件が起きたと察知した人間は足早にその場を去っていった。


『えーみなさん。本日は……あ、動物園から護送されていたかなり多数のライオン達が、事故で街中に放出されてしまった様です。速やかに安全な場所に避難してください。アナウンスがあるまでは家から出ない様に近所の方へも連絡をしてください』


装甲車らしきものについたスピーカーから、避難を促す妙な指示に二人は思わずお互いの目を見てしまう。


「……なにあれ?」

「……紅華のメッセージにもあったけど……魔獣の暴走だろうな」

「あ、機動隊に魔力持ちもたくさんいるんだね……」

「……急ごう。かなり大規模な何かだ……」

「う、うん」


ユキナと歩夢の二人は、パニック寸前の人間たちの流れに乗って蓮輝の家に向かって足早に走っていった。



§  §  §


瑠衣はしばらくすると落ち着きを取り戻し、渡されたウェットティッシュで顔を拭いていた。


「多分、神様は……私が守れなかった事を悔いていたのを……やり直しをさせてくれているのかもね……」

「……そうだったね……あたしも……守れなかった事。忘れられなかったからな」


蓮輝と礼音は、分かりあって話している二人に完全に置いてきぼりになっていた。

落ち着いたのを見計らって蓮輝が質問する。


「紅華ちゃんは理解してるみたいだけど……僕らには全然情報が無いんだ。何か起きているかわかるくらいに説明をお願いしたいんだけど……」

「前世の二人。仲がすごい良いのはわかった。でも今は情報が欲しい」


礼音も珍しく真剣なまなざしで瑠衣に説明を促す。


「そうだね……ミクさん……ラケシス様は私が小さい頃に死んじゃって、前世の幼かった私の視点になるんだけど……スラム街のシスター。街を仕切る悪徳貴族に……今でいうとゲリラ戦をしかけてたのかな? スラムだけじゃなくて街の圧政に苦しんでいる人を救ったり、食料を強奪したりしてたかも……ゼフも良く獲物が取れた……って」


「……反政府組織のリーダー的な感じだったの?」

「そうかも。孤児院の近くのアジトでスラムや下町……中には貴族みたいな人が来て色々話し合ってたのを見たことがあるかな……」


「なるほど……それじゃ、彼女の能力なんかは知らない感じ?」

「強い癒しの力を持ってた。分け隔てなく使って…………あ、後は転生した後に色々気が付いたんだけど、多分、予知の能力があったんだと思う」


その場の一同が前世では「予知」の能力に気が付いていなかったと聞こえたのでお互いに目を合わす。


「それは……隠して使ってたのかな……」

「うん。ギフトの事は話をしてなかった。それでも色々と、天気が変わる前に洗濯物を取り込んだり、色々な人が相談に来たり……兵士の調査が来る前に逃げ出したり……何が起きるか知っている感じだった。後はラケシス様が残した文章を大人たちが解読していて、未来がぼんやりと予測できるらしいの。それに従って作戦を立てると本当にうまく行くって……ゼフが嬉しいような悲しいような表情をしながら感謝の言葉を口に出していたかな……」


「……そうすると……もしかしたら現代でも同じ状況になっているのかもね」

「彼女が予知したことに基づいて他の組織のリーダーたちが動いている?」


「あ、カンジさんって人が、前の王国騎士団の人だったから、ミクさんの前世、ラケシスの事知ってるかもね」

「って事は、相手の転生者自由主義の幹部に関してはその情報は共有されている……」


「ってことは、ミクさんが、今後どうしたいかで目的が変わってくるね」

「どういうこと?」

「ミクさんが魔獣を出す手法を研究して阻止する方に考えている。のか、あちらの世界との門を開いてあちらの世界に戻りたい……行き来したいのか……」


「あ、それならこう言っていたわ。「この危機を乗り越えたら……終わったら……」って……海君の話だと、街全体に起こる大きな危機……そんな場合が多かったって」

「それだと阻止する方に動く可能性が高いね。ちょっと安心」


礼音が安心した表情をするが、蓮輝が何かに気が付いた様だった。

「……ちょっと待って。なんでそんな大事な事を繋がりのある「ゼファイトス」、海波君に話さないんだろ?」


瑠衣が若干答えにくそうに質問に答える。


「あ……海君……ゼフの行動力がありすぎて……未来が変わっちゃうんだって……」


「それは……」

「決めたら猪突猛進型だものね……」

「頼もしいときも多いんだけどね……」

「ヤマタノオロチに突っ込んだときは本気で驚いたよ……」

「ヤクザの事務所も片っ端からつぶしてたものね……」

「僕も助けてくれたし……」


四人が呆れながらも海波に信頼を置いているので、重かったその場が一気に軽い感じになっていった。


玄関の方からドアを開ける音と共に歩夢とユキナが慌てて入ってくる。


「大変タイヘン!」

「やばいぞ。駅前封鎖してる!」


「どうしたの?」

「封鎖?」


「うん。自衛隊の特殊部隊っぽい不思議な人たちがなんかわらわらとこう……」

「駅前封鎖してなんかするみたいだな。ライオンが逃げ出したはちょっと無理な言い訳に聞こえたか……あ、ちょっと情報を……テレビ借りるぞ」


歩夢がテレビのリモコンのスイッチを押すが、普段と変わらない映像が流れていた。


「あれ?」

「え?」


歩夢とユキナが驚いていると、蓮輝と礼音がスマホで情報を集め始める。


「SNSの方では……なんか騒ぎになっているね……」

「……え? こっちからは見えないよ?」

「ん? こっちもだ……さっき見た文章も画像も消えてる……」

「検閲入ったのかもね……」


「俺が打った文章も消えた……」

「……本気でヤバいかもね」


一同は顔を見合わせ、また厄介なあちらの世界がらみの事件が起きたことを悟った。



§  §  §


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