第54話 竜太、助けを求める
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元自宅への潜入捜査が終わると、海波と蓮輝は神社の魔力ジャミングスポットに来ていた。
武器の錬成や話し合いに使われる事が多く、秘密の会合場所になっていたのだが、紅華や瑠衣、礼音、要以外に今日は珍客が来ていた。
海波が到着するやいなや、その珍客は土下座をして海波の前に立ちはだかる。
「……どう言うことだ?」
「お願いします! 提子を助けてください! お願いします!」
土下座をして動かない豪利竜太を見て海波は困惑する。
(豪利君……どうしたんだ?)
(捨てておいて良いだろう。君は過去にやられたことを思い出さないのか?)
(だけど……プライドの高い彼がいきなり土下座なんて……)
「お願いします!」
何も言えないで黙っている海波を見て、紅華はどうしたものかと言った表情だったが、状況を説明し始める。
「なんでも竜太君が提子と一緒に帰宅してたら、転生者達にさらわれたんだって。この前の凄い速度で移動する早風切那ってお姉さんと、時空魔術を使ってくる女性の魔術師だってさ。魔術師の方は名前不明」
土下座をしたまま竜太が話し出す。
「俺では全く歯が立たなかった! ひたすら魔術で飛ばされて……何も出来なかった。何でもしますから! お願いします!」
(俺は協力したくない。今までしてきたことを棚に上げて……自分勝手なものだ)
(豪利君は間空さんに惚れている感じだったからね……好きな人を助けたいのは……わかるよ)
(……君は俺を説得しようとしているのだな……とんだお人好しだ……)
黙っている海波を見て瑠衣も「そりゃそうだよね」と言った表情で説明を補足する。
「話を聞いている分には、何かしらの役目を果たしたら返してくれるみたいなんだけど……」
豪利竜太は顔を上げて反論する。
「危険なんだっ! どう考えても魔獣召喚だっ! ソーマが提子の空間のギフトに気が付いてやがったんだ!」
「……どう言う事だ?」
「この前のヤマタノオロチは……ソーマが召喚したものだと思っていたが、召喚魔術の魔法陣から黒い手が出てきた……その黒い手が提子を探していた。彼女の能力だ!」
蓮輝が要領を得ない竜太の説明に業を煮やしたのか会話に入ってくる。
「豪利君、ちょっと状況を整理させてくれるかい?」
§ § §
感情的になって要領を得ない豪利竜太の断片的な説明を蓮輝は丁寧にヒアリングをしてまとめていく。
海波は蓮輝がいなかったら、竜太の感情任せで断片的な話から状況を整理できなかったなと思いつつその話に耳を傾ける。
「現状だと間空さんは、あちらの世界につながる鍵のギフトを持っている可能性が高く、場合によってはヤマタノオロチと同じ現象が起きるかもしれない。だけど、早風切那さんがいるであろう組織はソーマ君みたいにバカな事をする可能性が低い……んだけど、やっぱり確認が必要だね……異能者管理組合の人間とやりあってるって情報だし……」
要がそれはちょっと違うかもと、若干慌てて手を上げて発言する。
「お、お、俺が自由主義の会合に出てた時は、早風さんはちょっと危険なにおいがした。強いんだけど、た、楽しければ良い的な人間に思えた。やばいかもしれない」
海波はヤマタノオロチの戦いが終わった後に早風切那であろう女性に言われたことを思い出していた。
(確かあの凄い速さで動いていた女性剣士の事だよね?)
(ああ、中々の腕前だったな。おそらく探索者か傭兵……もしくは武道家か……」
(剣もってっちゃったよねぇ……止める暇なかったけど)
(彼女がいなければあれだけの強い斬撃を与える隙は無かっただろう。まぁ、新しい剣は紅華が良いのをつくってくれるだろう……)
(最後に言っていた言葉……あれって本当の事だったのかもね)
「……そうだな。早風には別れ際に、「あちらの世界に戻らないか」と言われていたな……」
「「「え?」」」
「何でそんな重要なことを……」
「ちょっとまって、海波君、情報共有ちゃんとしようって言ったじゃないか!」
その場にいたものが本気で驚いた後に非難の目を海波に向ける。
「すまない……迷い事だと思っていた」
(……言い忘れてただけなのに……みんなひどい……)
(まさか誘拐騒ぎになるとは思わなかったからな……)
蓮輝も若干呆れた感じだったが、暫く考えた後に要にさらなる情報がないか質問をする。
「……なるほど……要くんは……竜太くんが会ったと言う時空魔術師の女性……ゴスロリ服の事は知らないんだよね?」
「か、会合には来ていなかった。いつもは遠地寛治って言う渋いお兄さんと一緒だった。彼は話が分かりやすい印象だったかな。ほら、ヤマタノオロチとの戦いにもいたし」
紅華が誰の事を言っているかに気が付いたらしく話を補足する。
「ああ、一緒に狼の魔獣を倒してくれた人だね。動きが騎士団の人間ぽかったな。あとなんか煙を止めてたし……彼も時間系のギフト……あれ? なんかひっかかるな……」
紅華は自分の喋った事で何かに気が付いたらしく色々思考を始める。
蓮輝が手元のメモに皆の説明を箇条書きに記述していく。
「要くん、他に自由主義の会合に来ていた……魔力の高そうな人間っていなかった?」
「あ、あとは……あ、魔力だけだったら、おそらく一人、長髪の美形の男性がいたな……彼だけ纏う雰囲気が違った」
海波と瑠衣が目を合わせて驚く。
「ねぇ、要くん、それって……なんと言うか……その……芸能人じゃないかと思うくらいの……長身の人?」
「ん、んと、そうだね、なんか凄いかっこよかった。モデルみたいだったね」
(それって、ラケシスも仲間……と言う事だろうか?)
(一緒にいたのは二回……か。なんか打合せとかしてたっぽいから仲間の可能性……高いかもね)
(ラケシスが時空の門を開いてあちらの世界に行きたがる? 謎だな……)
(違う目的かもよ)
「……」
暫く一同は考え込んでしまう。
紅華が頭に手をやりながら「頭痛がする」のポーズをする。
「確認する事が増えちゃったね……」
「そうだね。僕が思うに……一旦、間空さんを探すでいいと思う」
膝をついて座ったままの竜太は蓮輝の発言で、彼の事を嬉しそうに見つめる。
紅華が若干虚を突かれた感じですぐに聞き返す。
「へ? なんで?」
「早風切那さんとそのゴスロリ服のお姉さんの組織に連れ去られたのなら……探せば彼女達の事もみつけられるでしょ?」
「あ、そっか。あたし、転生者自由主義の方に当たればなんとかなると思ってた……」
「要くんの話を総合すると、なんか支配層と言うか、幹部、首脳陣だけが集まった別組織がありそうだからね……」
(……癪だが、蓮輝の言う通りだろうな……手掛かりが少ない。ラケシスの事もあるし調査に協力しなければな)
(話を聞くと無事だとは思うけど……あ、そうか……生贄みたいのもあるのか……)
(魔力提供、ギフトだけ提供して解放される可能性も高いが……邪神の神官が転生している可能性もあるからな)
海波の頭の中には「ゼフ」の時の記憶がフラッシュバックする。かなり凄惨な状況が思い出される。
(……うへ……ひど……)
「わかった」
蓮輝が海波の表情を伺ったあと、仲間の様子を見回しながら話す。
「海波君が大丈夫だったら、みんな大丈夫だね。うん……それじゃ、ちょっと竜太君はここまでで、ギフトを知られたくない子の能力を借りないとだめだからさ」
「お、俺も協力する!」
「……」
一同は目を合わせてどうするか迷うが蓮輝が諭すように優しく竜太に語り掛ける。
「竜太君、すまないけど、君を連れて行く事は出来ないよ」
「な、なんでだ? 囮にでもなる! 彼女のためならなんでもする!」
海波は突き放すような感じで言い放つ。
「魔力感知をしてみろ……」
「え?」
竜太は魔力を感じるために目を閉じて集中をする。その場にいた人間からはほとんど魔力を感じることが出来なかった。
「……すごいな……気配を消せるのか……」
「竜太くん、すまないけど僕たちだけに任せてくれるかな。ついてきたりしたらダメだよ」
「……わかった……すまない……提子を、お願いしますっ!」
竜太が何度も振り返りながら帰るのを見送りながら、瑠衣は海波に声をかける。
「良かったの?」
「……いなくなった人間を助けたい……そう思う気持ちはわかるからな」
「……そう」
「ミクさん……仲間じゃないと良いね……」
「……そうだな」
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