第45話 異界倶楽部のアジト
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蓮輝と紅華が合流し、心配そうに海波の横に座っている瑠衣がどうすればよいか分からずに助けを求める目をしていた。
「……どうしちゃったの? 海波……」
「魔力に揺らぎが……」
「買い物は終わったんだけど、合流しようかと思ったら……突然こうなっちゃって……私が芸能人みたいとか言ったからかな?」
瑠衣は理由がわからず、見当違いの考えで混乱していた。
海波は顔を上げて心配そうに見ている三人をゆっくりと見回す。
「……すまない。頭を整理していた……質問なんだが……転生する場合に、前世で繋がりのあるものが……直ぐ近くに転生するものなのだろうか? これだけ人が多い世界なのに……」
「?」
「!?」
「!!!」
蓮輝が驚いて二人を見た後ソワソワしだし、瑠衣はどう言う事だろうと疑問に思っていた。
そんな中、紅華が答えにくそうに海波の質問に答える。
「あ~っと……その、瑠衣ちゃんと私は……その、元同僚……いや親友だった。ヤマタノオロチとの戦いの時に気が付いたんだけど……ほら。例の魔石と、瑠衣ちゃんの独特な能力で……」
「そうだった……のか?」
海波が瑠衣の方を見ると、コクリとうなずく。
「うん。私も……その時に気が付いた感じかな。ものすごく運動得意なのに、段々と隠し始めたり……なんか色々しててちぐはぐだったから……その時まで全然わからなくて……」
「……う、だってかわいい女の子になりたかったんだもん! いいじゃない!」
「言葉が違うのに口癖まで同じなのですぐに気が付くべきだったけど……なので前世でかかわりのあった人間は近くにいてもおかしくないって事ね」
蓮輝がこれ以上聞かれたら不味いと思い、話題を転換する。
「海波君、ってことは前世の繋がりのある人を見かけた……でいいのかな? 魔力が近しいものがあったとか?」
「……そうだな」
「どんな人だったの?」
「前世で……将来を約束し合った女性だ」
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言預美来と縮圧元次はビルの地下のさらにしたの切り抜かれた空間に来ていた。工事現場の様なライトが照らされ、岩盤がくりぬかれ、むき出しの岩肌をコンクリートで固められた採掘場の様な場所だった。プレハブの様な家も設置され、電子機器がむき出しになって複雑に入り混じり、家具なども置かれていて地下秘密基地のようになっていた。
白黒のクラシックなゴスロリ姿の雲梯摩帆が二人に気が付き声をかけるのと同時に言預美来に詰め寄っていく。
「あ、元次くん、美来ちゃん。遅いよーなんかうまくいってないんだよね。はやく予言ちょーだい?」
「はぁ……そんな簡単にポンポン出ないって言ったわよね……」
あきれ顔の美来だったが、元次が他のメンバーのやる気を失った姿を見てどうしたものかという表情になる。
「どうしたんだ? 随分と威勢のいいメッセージが来てたと思うんだが……」
「昨日までね……それがさぁ、切那ちゃんが連れてきた例の子のギフトなんだけど、なんか遊園地跡で見せたような凄いの出せないみたいなんだよね。なんか知ってる?」
「すまないが切那程知っているわけではない。到着を待つか……」
しばらくすると早風切那が肩に毛布にくるまれた大きな荷物を持って駆け下りてくる。
「あーごめん。遅れた。ごめんごめん。寛治君がなんか動かなくてさ。持ってきたよ」
毛布に簀巻きにされた寛治をソファに投げる様に下ろす。
「ちょ、ちょっと、寛治君? この扱いはひどいんじゃない?」
美来が慌てて簀巻きにされた遠地寛治の毛布をとって彼を自由にするが、彼はされるがまま死体のように転がっていた。
「……寛治君……メッセージに既読が付かないと思ったら……どうしちゃったの? 悪い魔術にかかっている感じも呪いも感じないんだけど……」
「あ~なんか新規覚醒者達の中に、昔の仲間を見つけたみたいな……事言ってたかな」
「昔の仲間? ちょっと寛治くん??」
美来は寛治の肩をゆするが反応が薄かった。
「すまん……美来……ちょっと……ほっといてくれ……」
「寛治君……」
動きそうにない寛治を見て元次は、この場所でテストしていた雲梯摩帆達に進捗を確認する。
「それで、異界の扉を開くテストは……最初から躓いているでいいのか?」
「……そうだね。彼の召喚術で開く門がさ、なんか、狭いの。とーっても。巨大なヤマタノオロチを呼び出せたとはとてもじゃないと思えないの」
彼らの目の先には、茫然として針の筵と化して挙動不審になっている召田宗麻がいた。
「ま、まってくれ、まだ出来ないと決まったわけじゃ」
宗麻の前にはやる気が無さそうに椅子に座って様子を見ていた伏野一休がにらみを利かせていた。スキンヘッドで凄みのある顔と体格な上、威圧的で高い魔力を発していたため、完全に「脅し」ている状態になっていた。
「日をまたいで魔力を回復させてもこれだ……魔石何個つぶすつもりなんだお前は……」
「あの時は……魔石がもっとたくさんあった。それに召喚術は場所が重要だ。あ……あの時は4人いた……もしかして、あいつらのギフトか……?」
「……場所と面子か……」
早風切那がヤマタノオロチの召喚時の事を思い出し、状況を整理する。
「あの時は……遊園地跡に魔石を散らばしておいていたのと……あとは三人いたな。魔術師と怪力系男子と……あと、あの、君を守るそぶりをしなかった子……その子のギフトはわからないんだね?」
召田宗麻は早風切那の発言に驚いた表情をして、裏で何やら考え始める。
「……そうなのか? あいつは俺にべたぼれだったんじゃ……」
「そうは見えなかったけどね。ってことは前世の記憶を強く思い出して覚醒して心変わりしたか……ちょっと当たってみるか……」
「あ、俺、住所なら知っている」
早風切那はあっけに取られた後、見てくれだけは良い男子を蔑む様に見る。
「……ひどい男だな……なんか、アタシ、お前の事信頼できなくなってきたよ……」
周りにいた女性陣も早風切那同様に白い目で宗麻の事を見ていた。
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紅華と瑠衣は二人で公園の椅子に並んで座っていた。
ここに来る前に海波は「少し考え事がしたい」と別行動になり、なんともいたたまれなくなった蓮輝は荷物をまとめてもって「服を友達のところで作ってくる」と離脱したところだった。
「……まさかこんな事が……」
「んだねぇ……ずいぶんと狭い地域の人間が同じ場所に転生してきたもんなんだねぇ……」
瑠衣は地面を見つめながら、心ここにあらずの状態で質問をする。
「ねぇ、紅華ちゃん……どう思う?」
「どう思うって……アバウトね。海波の心次第なんだけど……前世の事をどれだけ重く思っているかかなぁ……」
「婚約してたってことだよね……」
「だろうねぇ……」
「今の海君があそこまで考え込むってことは……かなり重要な……すごい、その……良い仲だったんだよね?」
「……そうだねぇ……そうなっちゃうねぇ……」
「私、どうすれば……」
瑠衣の目に涙が浮かび始め、紅華の心も痛み始めていた。
紅華は瑠衣を抱きしめて背中をトントンと優しくたたく。
「大丈夫だって。前世の約束は前世で終わってる……と思うし。それに、海波、どうみても瑠衣ちゃんの事好きじゃん? なんとかなるって」
「……そう思ってたんだけど……好きな人の前で、将来を約束してたなんて言う?」
「……それもそうだねぇ……(困ったな……)」
紅華には実際の恋愛経験などはほとんどなく、物語の中でのことしか知らなかった。彼女はこの場面をどうすれば瑠衣にとって良い方向に持っていけるかがわからなかった。
(恋愛の神様の加護が欲しいよ……)
紅華は気高く強かった親友が精神的に弱っているのを見て、本気で神に頼みたい気分になっていた。
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