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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第43話 前世の後悔と今世の後悔

§  §  §


ここではない世界。


どこかの切り立った断崖絶壁のある海岸で……


強風が吹き荒れ、叩きつけるような雨が岩盤に吹きつけ、強烈な水しぶきを上げていた。

海面は大きなうねりを上げて、飲み込まれたら地上の生物はおろか、水の生物までもが助かるとは思えないほどだった。


黒の双剣使いゼファイトスは目の前の光景が信じられず呆然としていた。


彼らの作戦は時詠みの聖女の導きにより成功していたはずだった。

仲間と労をねぎらい、お互いをたたえ合おうとしていた。


その時、彼の目の前で起きている出来事だけが信じられなかった。


時詠みの聖女、ここまで導いてくれた指導者にして最も愛する人間。

盗みと殺戮を躊躇しなかったゼファイトスを心を持った人間に戻してくれた存在。


彼女がまさに今、ゼファイトスの天敵の時空騎士と抱き合うかのように断崖絶壁の吊り橋から落ちていくところだった。


当時のゼファイトスの鍛錬した身体と魔力をもってしても到底届くような距離ではなかった。


『ラケシス!!!』

『聖女様!』

『シスター!!』


自分と仲間達の心の底からの大声は暴風と雷鳴が混ざり合いかき消された。

絶望と喪失感に包まれる中、彼の愛する人間は天敵と共に海の中へと消えていった。



§  §  §


「うおおおおっ!!!」


海波は夢から覚めた瞬間に絶叫しながらベッドから飛び起きた。


(今のは……)

(……ラケシスが死ぬ瞬間だ……くそっ……くそっ! くそっ!!!)

(……ゼフ)

(俺が弱かったせいで! 俺のせいで! 俺があいつに勝てなかったせいで! 俺が破壊のギフトに頼りすぎたせいで!!)

(……)


海波は肌がけの布団を強く握りしめ、体中から魔力が漏れるほど感情を爆発させていた。


(ゼフ!! それ以上は! 落ち着いて!)

(……ぐっ……そうだったな……ここは違う世界だ……すまない……)

(大事な人だったんだね……伝わってくるよ)

(……ああ、とても。とても大事な人だった……)



「ちょっと! 海波! 大丈夫なの?」


異変を感じた母親の浪音(ナミネ)が慌てて寝巻のまま海波の部屋に入ってくる。


「大丈夫だ……ありがとう母さん……ちょっと嫌な事を思い出した」

「……そうなの……」


浪音は何とも言えない表情をしたあと、海波に近づきかがんで彼の手にやさしく手を添える。


「大丈夫よ。あなたの事は私が守るから。安心しなさい」

「……ありがとう」

「あ、昨日言っていた約束の時間になるわよ。早く準備しなさい」


浪音はキッチンの電気ケトルの音に気が付きゆったりと部屋を出て朝ごはんの準備を再開させた。


(……心配かけさせてしまったな……面目ない)

(僕も感情を共有できるから……気持ち……すごい分かるよ)

(母さんも……不思議な人だな。あちらの世界のシスターの様だ)

(そうだね、あのハチャメチャな父さんと一緒に暮らしてきたんだから……)

(……そうだったな)



海波はベッドから起きてカーテンを開けながら、あちらの世界と違う空の色を見ていた。


(この世界にも。守るものは出来てしまったな……)



§  §  §


海波、瑠衣、紅華、蓮輝の四人は「消失事件」の起きた郊外型ショッピングモールを見渡せる近くの高台の公園に来ていた。


少し前まではなにもない草原のような場所に慰霊碑や、献花台などが置かれ誰もが自由に行き来出来る感じだったが、数か月前からは自衛隊の特殊対策課が工事現場の様なバリケードを築き、中にいろいろな急造施設が立ち並び巨大ビルの工事現場の様な雰囲気を醸し出していた。


「ずいぶんと物々しい雰囲気になってたんだねぇ……」

「僕も知らなかったよ。ネットではなんか工事してるみたいって書いてあったけど……」

「どう見ても軍の施設だね、あれ。何と戦うつもりなんだろ?」


紅華と蓮輝がショッピングモール跡を見下ろしながら頭に浮かぶ疑問を隠せないでいた。

瑠衣が魔力を通した目を使用しながら皆に問いかける。


「ねぇ、みんな。感じるよね……あそこから」

「ああ」

「うん」

「もちろん」


彼らの魔力に覚醒した目を通してみると、ショッピングモール跡の「爆心地」と言われる中心部分あたりから何やら強い魔力の反応を感じることが出来ていた。


「ん~おそらく中心部であった爆発……爆発じゃないな……魔力による何かしらの魔術が発動してあの広いエリアをまとめて……転移、交換した感じに見えるね」

「え? そこまでわかるの? あたしには変な魔力が集まってるくらいしかわからないよ」


「ほら、紅華ちゃん、あのバリケードに囲まれた地面と、そのほかの地面の違いを見比べてみて」

「ん? あ、ほんとだ。色がくっきりと……空から見たら綺麗に丸になってそうだね」

「僕は残念ながら爆発したところを見てなかったけど……SNSとかにも上がってないんだよね。爆発した瞬間は。爆発後はそれなりにあるんだけど……情報が欲しいね」



「俺は実際に見たぞ」

「「「え?」」」


驚く一同をよそに、海波は自分の「白波海波」の記憶をたどってみる。海波が中学一年生で、家族が四人全員いて、幸せだったころの記憶を……


「当時は周りから気を使われて話す事はなかったが、三人でショッピングモールに買い物に来ていたんだ。父さんと陽花里(ひかり)と別行動して、合流しようと戻ろうとした瞬間だった……」


(あれは突然すぎて……何が起きたか理解できなかった)

(目の前の風景が突然変わるのだ。当たり前だろう)

(今の僕だったら理解できる)

(そうだな……)


「突然、まぶしい光であたりが見えなくなった後、強い風が吹いた。そのあと目の前には荒野が広がっていた」


「……え、そんな一瞬で?」

「魔法陣っぽいね。転移する奴」

「それで……(しょう)さんと陽花里(ひかり)ちゃんは……」


「フードコートの席で待ち合わせになっていたから……まとめて。だな。目の前にあったはずのショッピングモールがまとめて消え去っていた。と思っていたが、今の知識と照らし合わせると、どう考えても大規模な位置交換のギフトか時空魔術になるだろうな」


蓮輝がショッピングモール跡を見ながら納得した感じになる。


「なるほど、あそこを爆心地とすると……海波君がいた場所は……あっちだね。あのショッピングモール、やたら横に長かったものね」


「そうだな。丁度部活のスパイクと靴下を買いに行っていた時だった……」


(あの時……みんなで見に行こうと言っていれば……陽花里(ひかり)も一緒に行きたいって言ったのをうざがらなければ……そうすれば……四人で今頃……)

(……)


瑠衣と紅華と蓮輝が驚いたような表情をした後、何とも言えない感じになる。

「海くん、ちょっと落ち着こう……」


瑠衣がバッグから小さめのタオルを取り出して海波の顔をやさしく拭く。

海波は拭かれるまで自分の目から涙が流れ落ちていることに気が付いていなかった。


「すまない……どうしてもあの時ああしていれば……と思ってしまうものだな。三年も経っているのに……」


(今朝の夢も酷かったものね……)

(そうだな……君も俺も……この感情は……俺も良く経験した……)

(……)


暫くその場が何とも言えない静寂に包まれる。

蓮輝がその場を盛り上げようとテンションを上げて喋り始める。


「よし、それじゃ過去は振り返らずに今後の事を考えて行こう。僕もそれなりに魔法陣には詳しいからね」

「うん。そうだね。あたしは……ごめん、ちょっと勉強不足であまり……」

「とりあえず……現在の爆心地がどうなっているのかを知りたいけど……」

「どう見ても自衛隊だもんね……あれ」

「紅華ちゃんの親ルートとか使えないの?」

「警察と自衛隊が同じなわけないでしょ? 憲兵と軍部が仲がいいなんて聞いたことある?」

「……完全に別組織になるもんね……」


蓮輝が現場を観察しながらどうするか思案していた。


「トラックの量が多いみたいね。なんか土砂なのかな……カバーかけているからよくわからないね」

「あの付近を露天掘りしているのかもしれないね。採掘現場みたいだし」

「せめて中心部に何があるのかを知れれば……それだけでいろいろと推測できると思うんだけど……」


気を取り直した海波が会話に参加する。


「やはり、潜入して確かめないと駄目なようだな」

「やっぱりそうなるか……」

「そうなると……」

「礼音ちゃんにお願いする?」

「そちらの方がリスクは低くなるな……協力してくれると良いんだが……」


紅華がスマホを取り出しながら、礼音に向けてメッセージを手早く送る。


「大丈夫よ。その辺は話がついてるから。んじゃ現場検証も方向性も決まったし……駅前に繰り出しますか」

「え? この雰囲気なのに行くの?」


紅華が空気を読めと言わんばかりの表情をしていた瑠衣の肩を抱きかかえ、彼女にだけ聞こえる様に囁く。


「瑠衣ちゃん? この世界で幸せになるチャンスをしっかりとつかみなさい。今の海波ならころりと落ちるはず」

「ちょ、ちょっと……そんな心の弱みに付け込むのなんて嫌よ」

「大丈夫、この世界で見た恋愛系の話だとそう言うのも利用する……らしい」

「そんな、架空の話を……そもそも、あなた恋愛経験なかったじゃない!」


紅華がにこやかな顔で瑠衣の拘束を解いて背中をたたいて離れる。


「それじゃ、駅前へれっつごー」

「おー」


楽しそうに移動を開始する紅華と蓮輝の後ろを、二人は一瞬目を合わせて若干恥ずかしそうになりながらついていった。


(丸聞こえなんだよね……今の能力だと……)

(まんざらでもなさそうだが……やめてくれ……すまん。突っ込まなければ良かった)


ゼフの意識は勝手に高鳴る胸の鼓動に少々難儀していた。



§  §  §



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