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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第34話 魔獣入り乱れる

§  §  §


真直歩夢と伝地力弥は混乱に乗じて逃げようとしていたが、彼らの持ち前の正義感から狼の魔獣から逃げる転生者達を援護していた。


「歩夢! そっちきた!」

「OK! 行っけぇ!!」


歩夢のギフト「物体直進」を発動させると、錆びて朽ち果てたゴミ箱らしき塊が狼の魔獣へとかなりの速度で突っ込んでボーリングのピンの様に弾き飛ばした。


「早くこっちへ!」

「ありがとう! 助かります!」

「あっちの方逃げて。僕らもそっちに行きます」

「わかりました」


何人かの転生者は二人にお礼をした後にメリーゴーランド後の反対方向の遊園地跡の入り口へと走っていく。


「俺らも行こう、あのがれき置き場使って時間稼ぎしよう。あそこなら俺のギフトも使えそうだな」

「そうだな。ってか、魔獣多くないか?」

「魔獣だよな……やっぱ。どうなってんだこの世界……」


そこにちょうど入り口の方から走ってきた振水ユキナが二人に気が付き走り寄っていく。


「あ! 無事だったんだね! 良かった~すごい音してるから心配したよ~」


「え?」

「お、おいユキナ!! 逃げ……」


振水ユキナのちょうど真横から突進してきた狼型の魔獣が口を開けて噛みつこうとする。

彼女は思わず身をかがめてしまうが、魔獣は追尾するように頭をかみ砕こうと方向転換する。


「きゃぁ!!!」


その瞬間、どこからともなく現れた兎の仮面をつけた女性が狼の魔獣の心臓目掛けて槍を突き刺した状態で現れる。心臓付近を刺された魔獣は黒い煙と化して消えていく。


「た、たすかった……」

「魔獣が消えた……」


「あ、ありがとう、ございます」

「ん、貸しイチ」

「え? 貸し?」


振水ユキナは突然の貸し発言に呆然としてついていけなかった。振水ユキナが無事と分かった瞬間に真直歩夢はへなへなと崩れ落ちてしまう。


「そこの二人、ぼーっとしない。これをギフト使って魔獣に飛ばす。使った後はそっちのギフトで戻してまたギフトで飛ばす。おーけ?」


兎の仮面をつけた礼音は二人に向かって4本ほどの棒手裏剣を投げて渡す。

二人は慌てて棒手裏剣をキャッチするが、状況が完全に呑み込めていなかった。


「え、えっと?」

「なんで俺達のギフト知ってるんだ?」

「フフフ……私は全てを知っている。それじゃ、私は忙しい。あ、貸しイチずつね」


兎仮面はそう言い残すと突然姿を消してしまう。

取り残された三人はしばし頭の中を整理するために動けなかったが、ふと我に返り、手元の渡された武器を見て驚く。


「おい、これ、魔法の棒ナイフじゃないのか?」

「あ、ああ、これなら魔獣に突き刺さる……貫通するな……」

「やれるな」

「ああ、もちろん」


二人は笑みを浮かべると、真直歩夢は襲い掛かってくる狼の魔獣の心臓目掛けてギフトを発動させた。



§  §  §


伴戸志姫(ともど しき)は転生者自由主義の仲間に護衛されながら激しい戦いの音のする方向へと移動をしていた。


「聖女様。お気を付けください。魔獣の気配が近づいています」

「……あ、あの聖女では……」

「私たちの中ではあなたは聖女様です。絶対に守りますので、すみませんが仲間をお助けください」

「え、えと、ですから……」


伴戸志姫は本気で困っているようだったが、周囲を護衛している転生者達は無視、と言うより彼女に傷を治してもらった転生者達は彼女の熱心な信徒と化していた。

(困ったなぁ……この世界で癒しの力を使うのは……おかしかったのかな……)


伴戸志姫は記憶の戻り方が中途半端だったため、ギフトと加護の違いが判らずに無警戒に能力を使って周りを癒しまくっていた。周囲の目からみたら加護持ちの神官、聖女にしか見えず、分け隔てなく能力を使っていただける大変ありがたい偉人に見えていた。


(でも前世の仲間が後悔しているのを思い出しちゃうんですよね……)


「来ます! 数が増えた??? ちょっとこれは……」

「前衛前へ! 聖女様をお守りするぞ!!」

「「「応!!!」」」


前衛で戦える人間が手持ちの鉄パイプやナイフなどで応戦する。傷つきながらも一匹、また一匹と葬り去っていく。が、増援の多さに集団がひるみ始めてくる。


「ちょっと多すぎです!」

「何でこっちの世界に魔獣がこんなにいるんだ!!」


ドコォオン!!!


突如、仮面をつけた瑠衣がすさまじい速さで出現し、爆発するような蹴りを狼の魔獣に食らわせて盛大に吹き飛ばす。手刀に魔力を爆発的に込めると、その手をそのまま手近にいた狼の魔獣の胸に突き刺して黒い煙にしていく。


「すごい!! 格闘のギフト?」

「おお、助かります!」


「って、仲間じゃないな……」

「こんな時に敵味方なんて言ってる場合じゃないだろ!」


「私は先に行きます。では」


瑠衣は移動しながらも三匹ほど煙にしながら突き進んでいった。


「すげぇな……」

「なんだあれ。でも……どこかで見た記憶があるような……」


助けられた転生者達は残った魔獣を処理しながらも驚きを口に出していた。


伴戸志姫は傷を負った転生者を治療しながら瑠衣の後ろ姿を見送っていた。彼女の動きが気になった様でずっと動きを追っていた。


(あれは……記憶にある動き……女神さまの戦聖女……彼女も転生をしていたのでしょうか? 相変わらず……名前が出てきませんが……)



§  §  §


召田宗麻達はメリーゴーランド近くの建物の物陰に隠れて広場の様子をうかがっていた。


「大混乱だなこりゃ」

「なんか転生者にも強いやつがいるけど、大丈夫か? あんなにいた魔獣が減っていってるぞ?」


「よし、それじゃ、ほーらよっと!!」


召田宗麻が小さめのビー玉くらいの魔石を投げると、それに気が付いた狼の魔獣がパクっと一飲みにする。すると呑み込んだ狼の魔獣が二回りほど大きくなり、黒い煙をまとう様になる。


「すげぇな! ソーマ!」

「成功だな。リュー、残りを投げておいてくれ。俺とシューは召喚術を発動させる」

「え、大丈夫なのかこれ?」

「大丈夫だいジョーブ。(多分)」


巨大な狼の魔獣は、近くに動くものに対して無差別に襲い掛かっていた。突然の巨大な魔獣の出現はその場の転生者達を驚かせ、パニックになるのは仕方のない事に見えた。


「リュー君……どうする?」

「はぁ……持ってても襲われるだろうな、魔石……投げるしかないか」

「そうだね。手伝うよ」



早風切那は海波が全くかまってくれなくなったので、仕方なしに狼の魔獣をせん滅していた。彼女の目の端でおかしな行動をする一団に気が付く。


「あん?(あいつら見かけないやつらだな)」


メリーゴーランド下に入っていく二人と、外に残った二人に分かれ、魔力反応を持った何かを投げるのを見て魔獣を強化しているのを見て彼女の頭の中で何かがつながった。


(……もしかして、あいつらか? 魔獣を召喚していたのは??? これは、これは……来たんじゃないか? ついに待っていた時空系のギフト持ちが!!!)


早風切那ははやる心を押さえつけながら気配を消し、メリーゴーランド下に入っていった二人を追跡した。



§  §  §



海波は魔獣を錬成した剣で切り裂きながら騒動の渦中のメリーゴーランドへと近づいていた。その途中で奮戦する紅華の姿が見えた。


(あれって、貴志田さん? すごい迫力だね)

(ん? 紅華……すさまじい魔力だな。なにかあったのか? ……先ほど魔石を触ってから様子がおかしかったからな。何かが目覚めたのだろうか……)


「お、海波! 大丈夫そうね。情報情報、新情報。ソーマが召喚したってこれ!」

「ん? ソーマ?」


(どう言う事??)

(やはり、間空提子も目覚めていたのだ。召田宗麻もギフトに目覚めた……すまん、腹パンにこんな効果が……)

(本当に腹パンなのかな……違う気がするんだけど……そうするとヤクザが全員目覚めちゃうんじゃないの?)

(!! それは大変な事をしてしまった!!!)

(だから、違うんじゃないかと……いつもと逆だね)

(目覚めさせるには一般人にも腹パンを……それは罪悪感が……)

(だから違うと思うよ……)


紅華は海波が狼狽しているのを見て「アンタも慌てるのね」と言った目で見ていた。


「すると、今回の拉致した犯人は召田宗麻なのか?」

「みたい」

「蓮輝は無事か?」

「あ、大丈夫、礼音に任せてきたから」


「え? 私ここにいるよ?」

「あ、あ、ど、どうもー」


二人の会話を聞いていた礼音は、重石要が『重力操作』のギフトで動きを封じた狼の魔獣に止めを刺していた。礼音がすたすたと近づいてくる。


「あ? あれ?」

「ん?」

「どったの?」


いつも通りに普通の様子の礼音に紅華は一瞬固まってしまう。


「だって、私、礼音に蓮輝を任せ……ええ??」

「……任された記憶はない。方々を助けまわっていた」


「蓮輝はどこに?」

「メリーゴーランドの屋根の上にいる?」


四人はメリーゴーランド屋根を一斉に注視する。そこには元気そうに縄にまかれたままの蓮輝が興味深そうに魔獣との戦闘を見ていた。

その場にいた全員が仮面越しにほっとした表情になった。


すると突然、蓮輝の立っていたメリーゴーランドの周りの地面が光り出し、メリーゴーランド全体が中央から膨れ上がるように壊れていく。屋根にいた蓮輝も異変に気が付き、魔力をためて逃げようとしていた。


(な?)

(魔法陣? 魔術か?)


ドォォォン!!!


突然、魔法陣らしきものが膨れ上がる様に爆発が起き、蓮輝が乗っていた屋根ごと吹き飛んでしまう。あたりは煙に包まれ、目視では確認しづらい状況になってしまった。


「!?!」

「蓮輝ィ!!!」


煙の中からは黒い大蛇のような影が落ちようかという夕日に照らされて浮きあがっていた。


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「バトロワ」無視して異世界サバイバルライフ! 
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