第33話 共闘、おいていかれる蓮輝
§ § §
政所瑠衣と正津成有は遊園地跡に向かって魔力をまとって疾走していた。鼓動正史の迷いに満ち溢れたメッセージを受けて二人は急遽援護に向かっていた。
「どうやら騒ぎが広がっている様ですね」
「これだけ音が大きいと警察来ませんか?」
「来るでしょうね。時間の問題ですね。それにしても……派手ですね……魔石、本当にたくさん所持してたんですね」
ドン……ガァン! ガギーン!! ドーン! ドーン!!
金属音がけたたましく鳴り響き、それと同時にギフトや魔法を使った爆発や発光がみられ、さながら戦場のような感じになっていた。
瑠衣はその光景を見ながら前世の事を思い出していた。
(……また間に合わない……なんてことはないよね……)
「瑠衣さん、あなたはお友達の元に向かいなさい。メリーゴーランド跡でしたっけ? 私は鼓動君と合流したらあちら側のベテランを封じ込めます」
「ありがとうございます!それでは!」
瑠衣は感謝しながら、最後の連絡があったメリーゴーランド跡へと向かう。廃墟になっており、どれがメリーゴーランドか若干わからなかったが、小さいときに来た記憶を頼りにそれっぽい方向へと走り出した。
正津成有は元気よく離れてゆく瑠衣を見て普段の疑問が確信に変わる。
(この惨状を見てもひるまないとは……やはり記憶、かなり戻ってるんでしょうね。さ、片付けるとしますか……)
§ § §
「え? それじゃソーマ達が犯人だったの? ってか、あいつら目覚めたの?? やばいじゃん?」
「そうだけど、海波君なら大丈夫じゃない? 強さバグってるし」
「そうだけどさぁ……なんか、二人ともすごいねぇ……」
蓮輝と紅華はすごい剣戟の音を立てながら空中や地面でまるで分身しながら移動し、戦って激突している二人を見ていた。
それからも経緯を蓮輝から説明を受けていた紅華は、よりによって目覚めてほしくない相手が異世界の力、ギフトを持ったことに頭を抱える。
「あ~もう、面倒なことに!! 私の平穏な生活が! もう無理なの確定じゃない!」
「まぁまぁ……あ! なんか来るよ!!」
蓮輝は二人に近づいてくる高い魔力反応に気が付く。
「えっ? どうしよ、蓮輝を抱えて持っていくわけにもいかないし……ああ、もう!! 兎仮面! 任せたからね!」
「え? あっ、そうか……(礼音ちゃんいたんだ?)」
紅華は姿を消して近くにいると思われる礼音に対して声をかけると、蓮輝のギフトで固まった縄をほどくのをあきらめ、接近してくる相手に警戒を集中して武器を構える。
遠地寛治が音も無くメリーゴーランドの屋根に着地すると紅華の事を探る目で見つめる。
「いい反応だね。君たちがイレギュラー……動物の仮面をつけた乱入者だね」
「……ダンディなおじさん。何か用?」
「お、おじ、おじさん? ……ダンディ……まぁいい、警告……いや、交渉に来ただけだ。とりあえず放っている魔獣を消してほしい、流石にけが人が出てね……ちょっと無差別にやりすぎだろ……」
「? なんのこと?」
「ん? 君の能力じゃないのか……とすると、あのピエロ仮面君か……あの状態で召喚術って維持できるのか??」
遠地寛治が警戒しつつも振り返り、高速で剣戟を重ねる海波と楽しそうな早風切那を見る。
「と、するとそこの……縛られた……彼? あれ? ん? え? どうなってんだ? なんでギフトで縛ってる??? 魔獣がいるのに?」
「……私が聞きたいんですけど……」
「あ、それ、僕らじゃないです。僕らと敵対している……転生者がいて……」
蓮輝が紅華にかばわれながらも顔をうかがう様に遠地寛治を覗きみる。
「……ああ、なるほど……理解した。大規模な襲撃とかではなく……あの情報で未確認の複数の転生者グループが釣れただけなのね……切那……はメッセージ送っても反応するかな? あ、君らの敵はどこ? ちょっとお兄さん、魔獣の対処が先なのね。ちょっと協力できる? してくれない? けが人出てもいい感じな、薄情な感じのタイプの人?」
遠地寛治はスマホを取り出しメッセージを送り出す。
蓮輝は紅華と思わず目を合わせ、遠地寛治の緩んだ空気がその場を支配する。
ガウッ! ガウッ!!
メリーゴーランド跡に向かって、新たに狼の魔獣の群れの声が聞こえる。それと共に逃げてきた転生者と、メリーゴーランド下で成り行きを見守っていた転生者達がパニックを起こし始める。
「ちょっと……数が多すぎなんじゃない? これ……どんだけ優秀な召喚術師なの……」
「あたし……手伝える範囲で手伝うけど……だけど、あたしの仲間を守るのを優先かなぁ……」
「助かる、んじゃちょっとやってくるか……」
紅華は遠地寛治が何も持たずに前へ出るのを見て不安に思った。
「あ……魔獣相手だと素手だと厳しいかもね。おじさん武器は?」
「え? 一応、魔力を通せるナイフが……それは……魔力を感じる……魔法の剣か……」
紅華は背中に付けていた予備の刃付きの片手剣を遠地寛治の方に投げて渡す。殺傷力がありすぎるので転生者には使う気が無かったが、いざという時のために持っていたものだった。
「貸しておきます。ちゃんと返してくださいね」
「あ、え? こんな良いもの……借りパクするとは思わないの?」
「倒すのが優先ですよね。頑張りましょう。道化仮面が回収してくれますから大丈夫。たぶん。」
「ちっ……はぁ、わかったよ……お兄さんがんばるよ……」
(なんかこのおじさんの話し方、どっかで聞いた記憶あるんだよなぁ……)
紅華は記憶を探ってみるが、どこで聞いたのか忘れていた。
二人は追い立てられる転生者と狼の魔獣の間に降り立ち迎撃を始めた。
メリーゴーランドの屋根の上に取り残された蓮輝は小声で周りに話しかける。
「あの……僕は……おーい、礼音ちゃん……いる? ……いないよね……どうしよ。せめて手だけでもうごけばいいんだけど……」
蓮輝は周囲に全く人の気配がしないのを感じ取り、礼音は違う場所に移動した。もしくは最初からいなかったと理解した。彼は状況から判断してメリーゴーランドの屋根の上から動かないのが最善の手と考えていた。
§ § §
早風切那は激高していた。
「くそっ! 手加減してんのか?」
「気持ちはわかるが、魔獣の数が多すぎる。死人が出るぞ?」
(この人すごい強いのに周り見えてないんだね)
(そうだな、この手の者は自分の欲に忠実だ。強い相手と戦いたがる死にたがりはたくさんいたからな……)
海波は周辺で起きた騒ぎと悲鳴が気になり、早風切那の素早い斬撃や蹴りを上手にかわしブロックしながら新たに出現した狼の魔獣を一刀のもとに切り裂き黒煙へと変えていった。
(ありがとう……助けてくれて)
(いや、礼を言われる覚えはない。これは俺の意思でもある)
(それにしても……すごい数だね。魔力が強い魔法使いがたくさんいるの?)
(違うな……召喚術師が魔石を使ったのだろう。何故かそこら中に『流星』の反応がある)
(電池みたいな感じか……)
(電池……なるほど、そうだな。魔力の電池だ)
「ああ、もう! くそっ! くそっ!! せっかく楽しくなってきたのに!」
あまり本気で相手をしてくれない海波にじれて早風切那も着地した付近に狼の魔獣を見つけると持っていた剣で一刀のもとに切り裂き、黒い煙へと返していく。
「勝負は終わってない!!!」
早風切那が魔獣を片付けると、すぐさま海波へと近づいてきて魔法の剣で切り付けてくる。
(うるさいな……)
(何で邪魔してくるのこの人!!)
が、海波は余り手加減をせずにかなりの威力で相手の武器をはじき、早風切那の体のバランスを大きく崩させ、彼女の胴体をがら空きにさせる。
そこに目視できるレベルの雷をまとわせた手でかなりの威力の腹パンをお見舞いする。
「なっ!! ゴフッ!! 」
早風切那の体が折れ曲がり、やばさを感じた彼は物凄い勢いで海波との距離をとる。
「……き、効くぅ……こいつはすごい威力だ……終わったらまたやるからなっ!!! って、いってぇ……なんつー威力だ……」
こちらの世界でもかなりの鍛錬を積んだ早風切那だったが、かなりの痛さでうずくまってしまった。
§ § §
召田宗麻は予想以上に狼の魔獣が倒されてしまったこと。そして転生者グループと海波達が争っていないのを見て追加で新たに召喚することを決める。
(予想以上に熟練者が多いのか? 二十体でも軽くあしらわれてるな……)
「ちょっとまってろ」
召田宗麻は海波に見られないように場所を変えて豪利竜太の背負っていたリュックから魔石を四つほど取り出して召喚術を使用する。
今度は三十体ほどの狼の魔獣が召喚され散り散りに移動を開始する。
(なんか気持ち大きいな……まぁいいか)
目の前に放たれた狼の魔獣の群れを見て豪利竜太は感動していた。
「すげぇな! ソーマ! これだけの数を制御できるなんて!」
「……え? してねぇよ?」
「……は?」
「へ?」
「えっ??」
召田宗麻以外の三人は唖然として、彼の事をまじまじと見つめてしまう。
「適当に襲えって命令しかしてない。ほら、行くぞ。あいつらバケモンみたいな強さだからな。さくっと召喚しないと……げ、レンキが屋根の上から逃げ出せる状態じゃねぇか……早くいくぞ!」
「え、ちょっと待って……きゃっ!」
間空提子に狼の魔獣が襲い掛かってくる。豪利竜太が魔獣との間に入りバッグを盾に防御態勢をとる。慌てることなく召田宗麻が手を振ると黒煙へと変わっていく。
「近づいてきたら俺が消せるから安心しろ!」
「わかった……すげぇな!」
「めちゃくちゃだな……」
「……(もう嫌だ……家に帰りたい……)」
三者三様の反応を見せながら、ついていかないと死にそうだったので三人は諦めて召田宗麻についていった。
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