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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第30話 狼の魔獣と乱闘騒ぎ

§  §  §


引呼蓮輝は旧メリーゴーランド跡の屋根のポールの上に縄で結んで吊るされていた。

間空提子が吊るされている蓮輝の写真を撮ると、蓮輝のスマホから「王子様」と「騎士様」の方に画像を送る。既読を確認するとスマホを蓮輝の近くに置く。


「あ~それじゃスマホ、置いておくね」

「ありがとう。返してくれるんだね」

「……無くすと大変なのはよくわかったからね……いいね……あんたは。しっかりと助けてくれる人が仲間で」

「……召田君は……彼はわからないか……豪利君なら助けてくれるよ。多分」

「はぁ……あんたから見てもそんな感じか。そうだよね。客観的に見ても」


思い悩む表情をする間空提子になんて声をかければいいかわからなくなった蓮輝は、吊るされた縄と体をしばらくぶらぶらさせて遊んでいた。暫くして本気で魔力を使って抜けようとすると突然、縄どころか体までも動かなくなる。


「あれ? 動けない……ん? 縄のまわり魔力の反応? ……間空さんなんかした?」

「……そりゃするでしょ。アンタがしばらくここから逃げないようにちょっとだけ細工しただけ」

「うーん。離れている彼らがギフトを使ったとは思えないし……間空さんのギフトか……なんだろ、縄だけが固くなっているわけじゃないな……空間が固定されている?」

「……あんた本当に変わったよね。ビクビクしなくなった。前世の記憶、かなり取り戻したんだ」

「そうだね。眠りの魔法のおかげだね。まぁ、僕の持論としては……魂の記憶を取り戻さなくても、前世と似たようなことをしてしまう。なんだけどね」


「……前世と……似たこと……」

「心当たり無いの? 見ている限りは間空さんの言動や行動も中学時代と比べると「おかしく」感じるけど」


「……」



ガウッ! ガウ!!!


「うぉっ!!! なんだこいつは!」

「でかい犬?」

「違う……角がある狼?!!」


突然二人の近くで獣の唸り声と驚いた感じの悲鳴に似た声がする。二人には何やらイレギュラーな事態が起きたのだけは伝わってくる。

間空提子は一瞬驚いたが、状況を見て召田宗麻が別れ際に言っていた事だと理解した。


「(このことだよね……)始まったのかな? それじゃ私は行くね」

「ちょ、ちょっとまって。縄がほどけない……んだけど、あれって……魔獣?」

「多分そうね……まぁ、いいわ。私が離れれば自動的に解けるとは思うから。あとは適当に逃げるなりしてね。それじゃ」

「あ、間空さん? え……もしかして、僕、このまま?」


蓮輝はどう見ても魔獣に見える何かを見て、完全に動けない自分の状況を把握し、能天気な彼でもさすがに命の危険を感じ取っていた。


§  §  §


召田宗麻、豪利竜太、別行動から合流した釜背修太の三人は狼型の魔獣で人が少なくなった魔石置き場に来ていた。騒ぎの方に殆どの人が移動したとはいえ、まだ二人ほど残っているようだった。


「……よし、予想以上にくいついてるな」

「いけそうだな」

「ほんと、召喚術って便利だな……俺の魔術より使い勝手いいわ」

「あちらの世界だともっとましな魔獣呼べたんだが……しょぼいな……」

「あれでか……」

「まぁ、武器を持ってない奴ら食い殺せてないから、弱いのか?」

「それじゃ手はず通りに、しくじらないでくれよ」

「任せろ」


豪利竜太が先ほど襲った転生者から奪ったマスクをかぶって堂々とゆっくりと歩いて見張りに近づく。見張りも仲間が帰ってきたと思って完全に無警戒だった。


「お、どうした? 騒ぎの方に行ったばかりじゃ?」

「もしかして原因分かったとか?」

「ああ、それがな……」


豪利竜太に見張りの注意がいっている間に、釜背修太が残った見張りに対して『眠りの雲』の魔法を唱える。

『万能なるマナよ。万物を構成するエーテルよ、我が魔力を糧に眠りに誘う雲となれ』


普段は聞きなれない言語に見張りで残った二人の転生者が慌てふためく。


「なっ? 魔法??」

「えっ? お前ら……なに……を……」


二人は抵抗するそぶりもせずに深く眠りにつき、気絶して崩れる様に倒れてしまう。


「う~ん。俺にはそっちの方が便利に見えるけどね」

「練習次第で覚えられるさ……それにしても、やっぱり魔石の消費が多いな」

「シューの体内魔力はどうなってんだ?」

「うーん。あまり減っていない……変な感じだ」


釜背修太は小さい魔石をかなり傾いた夕日に掲げて、色が薄くなっているのをその場の人間に見せる。


「もっと大規模なものを使いたいときは……魔石の数をそろえる必要があるな」

「んじゃ次はこっちだな、あらかた魔石を頂けそうだな」

「それじゃ、新たに……ほいよっと」


召田宗麻は魔石を握りしめ、何かを念じると、何もない空間が黒く引き裂かれ狼型の魔獣が六体ほど降ってくる。


「それじゃ、君と君と君、適当にあっちの人たちを襲ってきなさい」


召田宗麻が雑に命じると、召喚された角付きの狼型の魔獣の三体はこれから襲う魔石保管所の反対方向にいる人の気配に向かって移動を開始した。


「残った君たちは適当にグルグル走り回って、メリーゴーランドまで……あ、わかんないか。あっ……とな、あのでかい建物まで走って適当に暴れなさい。あれだ。人間との鬼ごっこだ」


残った角つきの狼型の魔獣三体は従順に指示に従いその場を走り去っていった。


「ほんとすげぇな……でも、あっちの世界で見たことない魔獣な気がするんだが」

「やっぱりそう思う? 一角ウサギがネズミになっちゃう世界だから、なんか違うんだろうね。奴にぶつける巨大魔獣、何が出てくるか楽しみだな」

「……ぶっつけ本番かよ」

「あちらの世界でもぶっつけ本番だらけだっただろ。何を今更」

「たしかにな」

「この世界は息苦しいからな」


三人はテンションを上げながら、さらに魔石を獲得するために次の魔石保管所の方に、歩きながら普通に移動を開始した。



§  §  §


海波達は転生者自由主義のメンバーとほぼ会う事も無く、展望室のある屋上まで登り切っていた。蓮輝が撮影されたスポットと同じ場所、同じ位置に立って周囲を確認する。


(この建物にはいないみたいだね。最初の写真の場所……ここだと思うし)

(そうだな。大分日が暮れて印象が違うが……ここだな)

(どこいったんだろ?)

(足跡が複数人、新しいものがある。蓮輝のものもあるから、五体満足なのは確かだな)

(そんな事までわかるのか……すごいな)


「日付が今日の賞味期限のごみが入ったコンビニの袋発見」

「オセロが置いてあるね……」

「書き損じた魔法陣らしきA3くらいのコピー用紙もある」

「これで転生者の一派に拉致されたのは確定したね、大丈夫かなぁ?」

「蓮輝って製薬会社の錬金術師だったんでしょ? これくらいの魔法陣はかけると思う。記憶を思い出していればだけど」

「あ、そうか……でもオセロは一人でやらないよね」

「たしかに。なにか行方が分かるもの……あればいいんだけど……」


紅華と礼音が部屋の状況を調べて蓮輝の行方の手掛かりを探していた。

紅華が展望室の窓から外を見ると、先ほどいた屋外ホールのあたりで怒鳴り声と助けを求める声、そして犬系の吠える声が聞こえる。


「なんか下の方騒がしいね」

「そうだね。ん? 要から連絡があった。魔獣出現、気を付けて???」

「え? 魔獣? 魔獣って魔石入りの、あの魔獣??」

「……なのかな? 要の文字少なすぎるからヤバめだと思う」


海波は慌てて窓へと近づき、騒動の現場付近に落ちていた携帯式オペラグラスで覗く。


(魔獣……普通の獣ではなく、魔獣? この世界にもいるのか?)

(そんな訳はないよ。たぶん誰かの「ギフト」なんじゃないの?)

(そうか、そっちか……見たことのない魔獣だな……三匹? 獣としての意思が感じられないな……操作されている? まさか召喚術があるのか?)


「ねぇ、海波。あれどうなってるの? 見える?」

「魔獣がおそらく三匹……転生者数人を襲っている。ほとんど逃げ回っているな……対抗手段が無いのだろうか?」

「白波君。素手で魔獣の相手するの。普通はキツイ。何人かはナイフ持っているだけに見える」

「銃刀法違反あるから、長物は持てないものね……」


魔獣から逃げ回っている転生者達は、空を飛んで逃げる者や、地面を凍らせるもの、火を発するものなどが対抗しようとしていたが、仲間のギフトを見るのも初めてだったらしく、集団として統率するものが無く、各個人が自由に戦うので混乱が混乱を呼び、大騒ぎになっていた。


「……見てられんレベルだな」

「助けに行くの?」

「優先するのは蓮輝の救出だ。それが終わったら……だな」

「あ、着信……蓮輝からだ!」


紅華がスマホのメッセージに気が付き直ぐにメッセージを表示する。そこには、何かのポールに括りつけられた蓮輝の姿が映っていた。


「なにこれ?……どこ?」

「これは……メリーゴーランドだったモノかな?」

「あ、いた! あそこ!! 吊られてる? 固定されてるのかな?」

「魔獣が近くにいる。危ない!」

「礼音。武器を……」


海波は礼音のバッグから奪うように錬成した刃つきの片手剣をとると、割れた窓ガラスから一目散に飛び出し、三十メートルくらい滑空する感じでそのまま落ちていく。海波の体の周りには風の魔法をまとっている様にも見えた。


「あたしも! ……ちょっと怖いから階段!!」


紅華は一瞬後を追おうとしたが、躊躇しそのまま階段の方へと走っていった。


礼音は海波の着地音がほとんどしないのを見て感心する。


「……白波君すごいね……こちら側についてよかった……」


礼音は気配を消しながら小走りで階段を降りて行った。


§  §  §


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「バトロワ」無視して異世界サバイバルライフ! 
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