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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第22話 集会所に忍び込む

§  §  §


とある寂れた地下駐車場にヤクザ側についた転生者たちが集まっていた。

壮年から高校生くらいまでの人間が集まり殆どの者がサングラスや仮面、マスクなどをして素性をわかりにくくしていた。

サングラスをかけた転生者のリーダー早風切那(はやてせつな)が、だらける感じで囲んでいる転生者たちの表情を見渡す。


「集まったな……やぁ、お集まりいただいた皆さん。転生者自由主義の会合へようこそ……さてと」


早風切那が計画を話そうとする瞬間、壮年の男性の転生者が腰を折るように口をはさんでくる。

「ちょっと待ってくれ、早風(はやて)さんよ、大丈夫なのか?」

「なぜだ?」

「今回の新しい覚醒者がやばいらしいじゃんか……「時間操作の遠地」が逃げた程なんだろ?」

「ああ、二対一でいきなり不意打ち食らった……と聞いている」

「え、じゃぁ、今回は遠地なしか? 大丈夫かよ? あいつがいるといないとじゃ……」

「いや、彼は怪我をしていない。参加してもらうが……今は別行動だ。決行日には合流する予定だ」

「だけどよぉ……」



ヤクザの局長はそれからも作戦を聞く前から不平不満を言い続ける転生者に思わず悪態をつく。


「はぁ……高い金を払っているんだ……一人くらい何とかしてもらいたいんだが……」

「局長さん、残念ながら先日の抗争で離脱者が多くなってるんだ……もう少し色を見せてもらわないとな」

「……ちっ、足元を見やがって……」

「お互い様……だろ?」


早風切那は、場の空気が悪くなっていくのを察して話題を切り替える。


「今回は反撃のために、遊園地跡地に魔石を大量に運び込んである……前回の様に魔力切れで負けるようなことは無いと思ってくれ」

「だけどよぉ、前回、奪われた魔石を使われちまっただろ? 大丈夫なのか?」

「ああ……大丈夫だ……警備もばっちりだと思ってくれ……」


早風切那が目で合図を送り、意図を察した転生者達が取り繕うように話を合わせる。


「……あんたが言うなら大丈夫なんだろうけどよ……」

「相手の場所の目途はたってるのか?」

「それも立っている……日時と時間もな。二日後の夕方だ……現地集合、プランはその時に話す」


「すでに遊園地跡には魔石を運び込んである。警備をしっかりとしているからちょろまかさないようにしろよ?」

「わかってるよ……」

「あと、新規覚醒者には目を光らせておいてくれ。この世界の事がわかってないだろうからな」


その場のベテラン達が笑い、「新規覚醒者」にあたる高校生達は何事かと周りを不安そうに見まわしていた。


早風切那が周囲の気配を探知した後、スマホを取り出しグループチャットに文字を打ち込み始める。ベテラン転生者の何人かも気が付いたようでスマホを取りだしメッセージを打ち合う。


【行ったか?】

【多分】

【何でこんなことしてるんすか?】

【おそらく諜報活動している奴がいたから情報流した感じ】

【遊園地跡なら気兼ねなく魔石で魔法ぶっぱなせるから、誘い込むんだろ?】

【ああ、なるほど……】

【でも、俺でも気が付くくらいなんですけど、大丈夫ですか? 素人丸出しだ】

【あっちも新規覚醒者が混じっているのかもしれないな……】

【そのはずだ。隣町での抗争のトリガーは新規覚醒者だったからな……流れ星で大量に沸いたんだろう】


「おまえら……なにやってんだ? 突然……」


局長は転生者グループのベテラン達が突然スマホを打ち出す事に、かなりの違和感を感じていた。


「ああ、大丈夫ですよ、もう喋って……まぁ、今度はこっちからはめようと思いましてね……」

「あとは、未確認の新規覚醒者達も巻き込んだ祭りにすればOKだな」

「えぐいですね……」

「こっちには優秀な「加護」持ちの「治療師」がいるんだ……やりすぎてもOKだぞ」


転生者グループの視線の先にいた高校生くらいの仮面をつけた女子はその場の殆どの人間の視線が集まるのに気が付き、目を伏せて口を一文字に結んでいた。



§  §  §


召田宗麻はヤクザ達の会合をしている割と近くの公園のベンチで横になって眠るようにしていた。それを間空提子が心配そうにのぞき込み、釜背修太がヤクザ達のいた地下駐車場の方を見ていた。

しばらくすると、召田宗麻が目を見開き、がばっと起き上がる。


「ソーマ君……大丈夫?」

「ああ……気が付かれなかった……どうやら、あの廃墟……遊園地跡に魔石を運び込んでいる……らしい」

「魔石って、あの魔石?」

「この世界にもあったのか……それなら俺が活躍できるな……魔石を使えば魔法陣が無くても魔法が再現できるはずだ……」

「ああ、俺も……召喚術が大幅にパワーアップできるな……聞いた感じだと、転生者の先輩達にも魔法使いがいるみたいだな……」

「どうする? 彼らの仲間につくのか? 見ている限り……高校生もいるみたいだぞ」


釜背修太は彼のギフト「千里眼」で彼らの動向を見張りながら話を続ける。


「それにしても便利な能力だな……」

「あちらの世界でも重宝されてたからな……もっとも、「千里」は見れねぇし、魔法で守られた部屋とかは見れねぇけど……そ~考えるとソーマのその術の方が便利じゃね?」


ソーマの足元に、かなり大きなネズミが走ってくる。ソーマから持っていた餌をもらうと黒い空間の歪みが出てきて消え去っていく。


「ああ……とても便利だ……意識も共有できるからな……魔法との組み合わせが出来ればもっといろいろ出来る……大量の魔石が必要だな……」


二人の会話を傍らで聞いていた間空提子が羨ましそうな、醒めたような表情をする。


「あんたらはいいよね、ギフトがあって。ギフト無しから見ると羨ましいよ」

「魔力が扱えるだけでこの世界では随分と楽できんじゃね?」

「テイコも魔石を手に入れたら……色々試してみるといいかもな。前世の記憶が薄いみたいだし、ギフトに目覚めるかもしれない……」

「……だといいね……」


「で、どうするんだ? 魔石を奪いに行くか?」

「……いや」


「海波達をあいつらにぶつけよう……」

「……どうやって?」

「時間指定してくれたんだ。その時に誘導してやればいい。二日後の遊園地跡に……」

「その時にどさくさに紛れて魔石ゲットすんのか?」

「ああ、それもプランに入れよう。楽しみになってきたな……」


間空提子は楽しそうに悪だくみをしているとしか見えない二人を醒めた目で見ていた。


(……ああ……やっぱりあたしは男運無いんだねぇ……前世も今世も……なんで悪事に手を染める男とつるんでるんだろ……)



§  §  §


真直歩夢と伝地力弥の二人は「転生者自由主義」の会合が解散になった後、二人で家の方に向かっていた。


「なぁ……なんかさ」

「ああ、僕もそう思った」

「やばくね?」

「やばいな……あのピエロ仮面とやりあうつもりなんだよな?」

「だよな……ユキナ連れてこなくてよかったな……って大丈夫だよな?」

「力弥だけだろ、目をつけられてるのは。僕はおまけだ」


伝地力弥は若干肩を落として見るからに気落ちをする。


「だよなぁ……俺は参加確定か……腹に鎧つけていきたい気分だぜ……」

「わかる……そう言えば前回の襲撃との時にいた二人いなかったな……」

「あいつらも同い年くらいに見えたもんな……逃げたのかな……」

「俺も上手い事逃げる事考えないとだめか……」

「僕も協力する……できるだけ……」

「すまない……」



§  §  §


鼓動正史はギフトで増幅させた音を聞いていた。


彼のギフト「振動操作」で百メートルも離れた位置から地下駐車場での会話、その周りにいる転生者らしき人物の会話を盗み聞きしていた。


「さて……どうしたものですかね…………あの三人は……情報がありませんね……」


「転生者自由主義」と召田宗麻達が退散するのを見届けると、その場にとどまって暫く思案を続ける。スマホを使って連絡事項などを仲間の元へと送る。


「それにしても……会話が途切れれば筆談をしているとは思わなかったのでしょうか? あの新規覚醒者達のおかげで、作戦そのものが囮なのはわかりましたが……とりあえず持ち帰って相談しますか」


鼓動正史は周囲に一切音を立てずにその場から姿を消した。


§  §  §



政所(まんどころ)瑠衣は夜遅くに家族に怪しまれないように夕ご飯を食べた後に教会の一室まで戻る。

すると部屋では正津成有と鼓動正史の二人が何やら話し合っていた。

瑠衣の到着に気が付くと二人は会話をやめて向き直る。


「さて……政所(まんどころ)さん、話を聞こうか……」

「どうやらいろいろと複雑みたいですね……」


「……え? 何のことでしょう?」


「鼓動君から話は聞いているんだけど……この事件終わったら抜けたい子ばっかりなのかな? 最近の子は欲が無いよね……」


「え、あ……どこからどこまで聞いていたのでしょうか……」

「ライブハウスが出たところからですね。白波君の速度が速すぎで……ギフト使いながらだと追えないほどの速さでしたね……」

「え? そこまでかい?」


「あちらの世界の『魔銀等級』だったのではないですかね……正面切って戦うのはお勧めできないですね」

「……敵に回るとは思えないけど……最悪、賢者様達の手を借りないとだめそうだねぇ……あ、その前に……あまり喋っちゃだめでしょ、政所(まんどころ)さん? 組合について」


「ご、ごめんなさい……でも組織名も、場所もなにも……」

「転生者が多くて監視がある事を知ったら、隠れて悪さをする事が多くなるから面倒なんだよねぇ……まぁ、聞いている限りは大丈夫そうだけど」

「そう言う事ですか……あ、これ、回収できました」


瑠衣は布に包まれた魔石をテーブルの上に置く。


「大きいですね……」

「そうだね……政所(まんどころ)さんはこれを持っても特に変化なかった?」

「変化……」


瑠衣は怒った時に出た魔力が想像以上に大きかったのを思い出した。


「変化と言うより、持っている間は魔力が強化された感じが……」

「ふむ……記憶の方は特に?」

「そちらは変わらずですね……何か影響があるんですか?」


「これを上手に使うと、前世の記憶がさらに蘇ったり、魔法が使えたり……色々できるんだよね……君の記憶も戻らないのかなっと思って」

「……」


瑠衣は前世の記憶が大分戻っているのだが、この世界にとって問題がありそうな能力だったので「ギフト」と「加護」については隠す方向にすると決めていたが、海波も覚醒している事がわかったので、今後はどうするかを決めあぐねていた。


鼓動正史は瑠衣の表情を読む。心音もそこまでおかしくない上、彼女があまり話をしたくない雰囲気だったので、これ以上詮索をしなかった。


「あ、報告……情報共有しますね。引呼蓮輝に関しては特に問題ありません。魔力を実験に使って遊んでいる感じで悪用していません、会話の内容からも思想が真っ当ですね。貴志田紅華も魔力を……と言うより気配を普通の人レベルにする訓練をひたすらやっている感じでした。言葉通りに普通の生活をしたい様です。裏表のない人間なのでわかりやすいかと」


「白波海波に関しては、前世の性格が前面に出ている感じですね。かなりレアな例かと……ただ、今のところ、殺しや盗みなどは……ヤクザ者からの戦利品回収以外はしていないかと思われます。彼の家には特に目立ったものもありませんでしたし……」


鼓動正史の報告に、瑠衣は驚いた感じで聞き返す。


「え? 家まで侵入したんですか?」

「……すみません、今回の重要人物だったので……」

「ごめんね。叔父さんがお願いしたんだ。ちょっと彼だけが、この世界に馴染んでない上に能力も桁外れに見えたからね。政所(まんどころ)さんもそう思ってるみたいだけど……」


「……そうですね。でも……海君の記憶もあるし……海君の感情もありました」


正津成有は瑠衣の感情が高ぶって魔力が揺らいでいるのを見て彼の事をどれだけ大事に思っているかを察する。


「……一応彼らに声をかけて……仲間にならないか……と……もっと良い手を考えた方が良さそうだね……平穏か……賢者様も口癖のように言っていたな……」

「正津さん、どうします?」

「僕らだけでは手に負えない可能性があるね。援軍を頼まないとだめだけど……期待できないですねぇ。『賢者様』達が出向いてくれるとうれしいんですけどねぇ……」

「流石に人手が足りませんね……転生者自由主義を叩くいい機会なのですが……」


「あの……転生者自由主義……がいなくなれば……私は、私たちは平穏に暮らせるんでしょうか……」

「そうだねぇ……この町周辺だけ……僕らの手が届く範囲なら。平穏かもね」

「魔力を使ったいたずらや犯罪をしなければ問題ありませんよ」


「わかりました……」


瑠衣は話を聞いていて、海波のやっていることは彼らにとってどこまでが犯罪扱いなんだろう……と本気で悩んでいた。




瑠衣が退出した後に正津成有はリクライニングチェアに座りリラックスした感じで足を組んでだらけた感じになる。

一人で椅子を揺らしながら窓の外を何となく眺めていた。


「正津さん、良いのですが? 嘘を言っていることにはなりませんか?」

「この町の中なら……平穏だろうね……嘘は言っていない」

「はぁ……悪い人だな……」

「圧倒的に手が足りないからね、彼女たちも戦力になってもらわないと……平穏は訪れませんよ」


「そうですねぇ……私達の平穏はいつになる事やら……」


§  §  §


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