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ならず者・現代に転生する ~異世界の力に目覚めたので平穏な暮らしを目指したが簡単にはいかなかった件  作者: 藤明


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第20話 ベテランの転生者と対峙するが……


§  §  §


丸亀礼音(まるかめれおん)は焦っていた。


屋上に出て見張りをさぼっていたら、急激に強い魔力が出現したのと同時に打撃音がしたのを感知した。彼女は隣町の抗争にも巻き込まれていたので、また転生者達が争っているのか……と普通に気配を消して様子をうかがっていた……

(……げ、あの道化仮面……白波君?……もしかして事務所襲撃しているのはあの人? それに……あの格闘女子もかなり強い……え、仲がいいのか? ちょっと、二人で来られたら……やばい!! 逃げないと……あ、一応報告しなきゃ)


丸亀礼音は途中からギフトを駆使して、事務所の一室へと戻る。二人はすでに何か起こった事を察知し、遠地寛治は装備を確認し、重石要はマスクとサングラスを付けて誰かわからないようにしていた。


「遠地先輩、やばいのが来ました!」

「強めなのはわかるが……慌てすぎじゃないのか?」

「例の道化仮面です!」

「……え? 局長たちをやったやつだよな……「瞬間移動」のギフトか……つれぇな……」

「後、もう一人格闘少女……なんですが、こっちも強め」

「……二人か……目的は予想できるか? どっちだ?」

「……わかんないです……」

「まぁ、いい、二人とも俺のサポートを。弱そうなのを二人で抑えてくれ。「瞬間移動」の方は俺がやる」


重石要は、格闘少女と聞いて、前回の紅華の事を思い出していた。重量のある攻撃をすべてはじき返された上、とんでもない威力で蹴られたのを思い出していた。


「む、む、無理ですよ。前回、僕の事を吹き飛ばしたやつです! ぼ、僕らじゃ抑えられません!」


遠地寛治は腰の引けている重石要を見た後に、丸亀礼音を見る。どちらもハイレベルな戦闘にはついていけない印象だった。


「……こりゃほんとに……つれぇな……んじゃぁ、おまえらは「流れ星」持って離脱。俺が時間稼ぐ……二分は稼ぐからなんとかしろ」

「わかりました!!」


「ちゃんと状況を局長に報告してくれよ! 失敗も報告! 割に合わない仕事だぜ……」

「よ、よ、よろしくお願いします」

「カナメ、こっち……」



§  §  §



遠地寛治(えんちかんじ)は海波達同様、高校生の時に魔力と能力(きおく)に目覚めた。


異世界の力を使って不良をのして有頂天になっている時にヤクザにからまれ反撃し……気が付いたらヤクザグループの転生者達と対峙し……しぶしぶと仲間に引き込まれた感じだった。

要するに「海波」の先達者、未来の「海波」の姿になるかもしれない人物だった。



遠地寛治はライブハウスの屋上から警戒しながらドアを開けて気配を探る。


「君かな……お客さんは……大分かわいらしいね……」

(二人だと聞いていたが……一人だな……もう一人は姿を消しているのか? 探知しきれないな……)


政所(まんどころ)瑠衣はあまり警戒せずに出てきた遠地寛治の振舞いをみて警戒する。彼女の魔力探知能力でも明らかに魔力の質が違うのを察知する。


「……一級の能力者……ですか? その感じだと」

「まぁ、そうなるね。出来るなら……このまま引いてくれるとありがたいんだけど」

「すみません。私もそうしたいのですが、ここにある「流れ星」を回収しないとだめなんですよ」

「……そっちかぁ、やっぱり……道化仮面とやらはいないし……あっちいっちゃったか……」


「え? あっち?」


「ん? 違うの? グホッ!!!」


遠地寛治は腹部に近づく何かに気が付き、ギフト「時間遅延」を使って自分の周囲の時間の流れをゆっくりにする。

が、すでに魔力をまとった拳が自分の腹に突き刺さっている事を確認してしまう。痛みが遅れてきて顔が苦痛にゆがむ。

痛みをこらえて慌てて全力で魔力を体にまとわせて離脱を測るが、逃げようとした先にすでに道化仮面が待ち構えていた。

(くそっ、「瞬間移動」……じゃない! 純粋に「早い」だけだ!!!)


遠地寛治はギフト「時間遅延」を強く発動し、道化仮面の拳を、全力で魔力の籠った両手でガードして止められるのを確認した後にギフト「時間遅延」を解く。


ドコォオン!!!!


とてつもない打撃音がさく裂し、遠地寛治が隣のビルまで吹き飛んでいく。吹き飛んだ瞬間に石つぶてが大砲の様な威力で投げ込まれてくるので「時間遅延」を発動して全部をかわしていく。


(なんだこの、予測力……逃げ場をつぶすやり方は!)


遠地寛治は感覚を研ぎ澄まし、道化仮面の場所を確認する。急速に近づいているのを感じ、手持ちのスモークグレネードを複数個地面にたたきつける。


(冗談じゃない……あのお嬢ちゃんも加わったら……一分も持たない……あいつらには申し訳ないが……離脱だ……)


形勢が不利と判断した遠地寛治は魔力を使って高速で移動した後に、物陰に隠れながら魔力の気配を消す

(追ってこないな……危なかった……あれは準備をして複数人のギフトで絡めないと勝てない相手だな……流石にあの速度じゃ……やってられないな。「魔法使い」を集めるか……)


彼は騒ぎで集まってきた人間の中に紛れて現場からなるべく急いで離れていた。その道中でふと頭に仲間の顔がよぎる。


(……まぁ……あいつは喜びそうな相手だけどな……)




瑠衣は相手の引き際の良さに感心しつつ、ビルの上に一人取り残されていた。戻ってくる海波に向かって呆れた感じで声をかける。


「もう、話の途中で攻撃しないでよ。情報が得られないじゃない」

「すまん、隙だらけだったので思わず……」

「ギフトを使わせない内に倒す……確かに良い作戦なんだけど……卑怯じゃない?」

「仲間が傷つくよりはマシだ」

「……え? あ、あっと……仲間……仲間……」


瑠衣は仲間をさしている言葉が自分だというのに気が付くのに少々時間を要した。


「瑠衣、どうする? 追うか? 位置は把握しているんだが……」

「あ……私の目的は「流れ星」だから見逃す感じかな……」

「俺の目的も転生者ではなく事務所の人間だ……見逃す感じか……」


海波はこれからどうするか考え始めようとしたが、目の前の事務所の中の様子が変わっているのに気が付く。

「……強い魔力の気配が一つだけになったな……逃げたか……」

「そうね……残った一つが動かないから……それが「流れ星」かな……」


§  §  §


丸亀礼音と重石要は事務所の部屋で息を殺して部屋の様子を見守っていた。

丸亀礼音のギフト『風景同化』を使って二人は何もないコンクリートの壁になっていた。

部屋に入ってきた道化仮面は容赦なくヤクザ達を腹パンでのしていく。その後ろを目だし帽女子が落ち着いた感じで警戒しながらついてくる。


「良かった、持ち出されていないみたいね」

「そうだが……その、君にあまり危険なことはして欲しくないのだが……」

「……あなたが言うの? ヤクザの事務所をつぶしていく高校生なんて普通いないから」

「平穏な生活のためだ……仕方がない……」


瑠衣は海波のやっていることがあまりに「平穏」から遠のいている感じがして軽くめまいがしていた。


「平穏……平穏ねぇ……平穏とは逆の事をしていると思うんだけど? それで、何をしているの?」

「戦利品の確保だ……やはり現金が少ないな……」


「え、ちょっと海君! それは見過ごせない! 駄目よ!」

「え? ソーマに取られた金を少しでも回収しようと……」

「……他にやり方があるでしょう……」


「目覚めたときに俺のギフトを盛大に使ってしまって……バレたらやばい」

「……はぁ……現実的なんだが、感情的なのかよくわからない……それで、戦利品の確保は続けるの?」

「財布とスマホを警察に届ける簡単な作業を繰り返している感じだ……ちょっとは抑制効果があるだろう?」

「そんなことしてたら……浪音さんが悲しむよ……」

「それを言われるとな……だが、ソーマの考える手を全部つぶす。それが俺の今の目的だ」


「ああ、そう言うことね……ああ、もう……困っちゃうな……」


瑠衣はいろいろと事情を知っているため、正義と悪事の価値観の天秤が揺れに揺れていた。

そんな瑠衣の心の揺れを無視して、海波が瑠衣が手にした「流れ星」に注目していた。


「それが『流れ星』か……ただの魔石に見えるんだが……」

「そう、魔石。大規模な魔力爆発とかがあったらしくて……よくわからないけど飛び散っちゃったんだって。色々と不思議な事を起こしちゃうから回収して管理してるんだって」

「なるほど……魔術師組合みたいなものか……こちらの世界でも魔物が出そうだな……」

「嫌な事言わないでよ……魔物がいないのがこの世界のいいところなのに」

「違いないな」

「さて、あまり長居はしない方が良いと思うけど……」

「そうだな」



二人が部屋を出て行ったあと、魔力を感じられない距離まで離れていったのを確認すると、丸亀礼音のギフト『風景同化』を解除する。


「白波と委員長だったよね? 今の?」

「……あ、それ、さっき言おうとしていたやつ……あんた態度に出ちゃうから、今日のバイト終わった後に話をしようと思ってたんだけど……ね、どうしよう。あちら側に付いた方が良いよね……あたしだけ先に接触する? ……ここまで戦力差があると。ね、わかる?」

「だけど僕の借金……」


「あの感じだと、白波君がヤクザ事務所全部つぶすんじゃないかな? 払わなくても大丈夫じゃない? むしろ協力すればおこぼれを……」

「……いいのかなぁ……」

「むしろあんたがいなかったら、ヤクザの車が暴走して交差点に突っ込んでたんだからニュースになって……あいつらつかまっていたわよ」

「……うーん、どうすれば」

「……はぁ、相変わらずねぇ……」


丸亀礼音は煮え切らない重石要の態度にイラつきながらも、二人の今後の事を本気で考えていた。



§  §  §


とあるマンションの一室で豪利竜太(ごうりりゅうた)は感動をしていた。


彼は突然の召田宗麻の訪問を受けて本気で家に入るのを断ったが、無理やり部屋に押し入られ、必死の抵抗をしたが魔力で動きを封じられ、強制的に頭に魔力を流し込まれた……

そうすると前世の記憶と共に異世界の力が体に流れ込んできていた。


「すげぇ、すげえ!!」

「だろ? なんでこんな事になったか……わかったか?」


「ああ、そう言う事だな……海波の野郎……あの時目覚めたのか……」

「そうだ。テイコとシューにも同じことをして、同じように目覚めた」

「……ほんとか……あいつらもか……」


「あ、シャワー借りれるか?」

「なんでだ?」

「2日ほど家に帰ってない」

「まじかよ……」

「とりあえず戦力の確保と……やつにリベンジするまでは帰らないつもりだ」

「本気だな」

「ああ、リベンジ、成功させようぜ」

「ああ。もちろん、この力があれば……やれる」


豪利竜太は魔力で全身に力をこめる……と、突然彼の体が光り輝き爆発音が鳴り響く。


ボンッ!!! パリィン!!!


衝撃波が周囲に走り、部屋の窓ガラスが綺麗に砕けて割れてしまう。


「……まぁ、その前に。練習だな」

「……そうだな……」


隣の部屋の窓から様子を見ていた豪利竜太の妹が慌てて階段を下りながら母親に大声で言いつける。

「ママ!! またバカ兄貴が窓割った!!」


「はぁ……もう嫌……わたし、もう嫌……もう嫌ぁああ!!!」


母親は度重なる事情聴取、部屋の家具が全部なくなる事件……など異変が連発してノイローゼ気味になっていた……


「……あ、シャワーいいや……じゃ、明日、この場所に集合だ」

「……わかった……窓……どうしよう……」


召田宗麻は風通しの良くなった窓から飛び降りるように姿を消していった。


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