第18話 武器錬成と無理やりな覚醒
海波達三人は資材を「物質を粉にするギフト」で粉にして「物質を硬化させるギフト」で硬化させて道具を作る試行錯誤を繰り返していた。
彼らの目の前には、パチンコ玉のような塊や、櫛や釘のような塊が出来ていた。
「鉄と炭素を混ぜるといいんだよね? 比率はスマホで調べられるんだけど……」
「……そうだが、溶かさないとだめなのではないか? 粉だと……どうなるんだこれは」
「硬くなるだけだからねぇ……どう言う原理なんだろ? これ?」
上手に物質を固めて生成している紅華を蓮輝が疑いの眼差しで見る。
「……紅華ちゃん、もしかして、「ギフト」の理屈わからず使ってるの?」
「う、うん……こんなにゼロから作るのもあまりやってなかったし……」
「そっか……検証が必要そうだね……一応、固めたものも鋼っぽい含有率っぽんだけど……なんかほかにもいろいろ混じってるんだよね……」
「とりあえず、鉄より硬いからいいんじゃない?」
三人はしばらく思い悩み討論するが、上手く結論が出なかった。
物質の比率の話に一番ついていけない紅華が開き直った感じになる。
「ま、いっか。検証のためにも、私たちの平和のためにも作り始めますか。海波、なんか注文ある?」
「ああ、それなら……」
しばらく破壊と硬化によって武器の作成を続ける。しばらくすると紅華の魔力が付きかけて、作成の手が止まっていく。
「大丈夫か? 魔力は……」
「もうかなり……空っからよ。」
「そうか……」
「剣ひとふり……と短刀一つ……槍の穂先、鎧の手甲、すごいな。しっかり関節が稼働する……と針、棒手裏剣?……と、それは、その、なんだ塊か?」
「あちらの世界の武器とかは素晴らしい出来だね! んでも……キャラクターのフィギュアの残骸と比べると……」
「……はぁ、言わないでよ……一応それ人気あるキャラのつもりなんだけど……」
現代のキャラクターの酷い出来に比べると、前世でよく見たデザインのものに関してはかなりの出来になっていた。
海波は紅華の作った剣を持って手になじませながら、軽く振るう。流れるような動きだった。
「……そうだな、前世でみた剣はそのままに見える。実用的で……重さのバランスもすばらしい。鋳造された兵士の剣だな……グリップに布を巻き付ければそのまま使えるな」
蓮輝が鎧の手甲を持って、どこかで見たデザインだと気が付く。
「これって……紅華ちゃん、やっぱり騎士様だったんだね」
「……ああ、そうね、そうよ……もうバレてるよね……ハハハ」
「前世でよく触っていたものや、使っていたものだとイメージしやすいのだろうな。現代のものは複雑すぎて作りにくいと言う事か……」
「そうみたいね。美術的センスの問題だと思う。あたし美術の成績わるいし」
「ああ、僕のイメージ力が紅華ちゃんに伝われば!!」
「……『意思疎通』のギフト……あれば行けそうだな」
「そんなのもあるんだね……」
「転生者のギフト持ち探して、みんなで力を合わせられれば……大儲けできるかもね」
「神様もギフトを与えるときに全部を与えるのではなくて、みんなが協力できるように分けたとか……そんな神話あったよね?」
「あ、そーいえば……あったかな?」
「俺は神話をあまり知らない。無学だったからな」
紅華が右手に剣を持ち、左手に手甲を手に付けて、敵の動きを想定してブロックする動きからの剣を突き刺す動作の型を披露する。
「……うん、いい感じ。やっぱりこれだよね」
「非常に良い動きだ……前世での研鑽の賜物だな。……それで、その手甲と剣はどこにしまうつもりだ?」
「……あ」
せっかく作成したものの、持って帰れる手段を準備し忘れていることに気が付く。
「次は持ち運び用の大きいバッグ持ってこないとだめだね」
「そうだな……剣と手甲以外は持って帰れるか」
「ああ、あたしの防衛手段が持って帰れない! ……ちょっと入れ物とってくる!」
紅華は不安になったのか、一人暴走しその場を離れていく。
「だ、大丈夫かな? 魔力強化したままいっちゃった……」
「魔力も使い切っているんだ……すぐに気が付くだろう」
「……ちょっと心配だから行くね」
「ああ、すまない」
(さて……行くか)
(今日も事務所つぶしやるの?)
(ああ、母親に手を絶対に出させないためだな)
(ありがとう……そして複雑な気分だよ……やっぱりいけないことの気がするんだよね……)
§ § §
とある小さな事務所の一角で、海波にボコボコにされたヤクザの局長と、サングラスをかけた黒ずくめの長身の女性、早風切那が話をしていた。
「局長サン……大丈夫かい?」
「大丈夫なものがあるかっ! また隣の支部がつぶされたって連絡が……例のピエロ仮面に……」
「そんなに強いのかね……」
「なんでも「瞬間移動」のギフト持ちだそうだ……現に私の目にも見えなかった。連れて行った能力者達も見えなかったと言っていたぞ!」
「ふ~ん」
早風切那は一瞬にして局長の隣まで移動をする。移動した後に遅れて突風が巻き起こり、書類やカーテンが舞い踊る。
「アタシより早かった感じかい?」
「うわっ! い、いつのまに……」
「本当に「瞬間移動」だとかなり厄介だが……あの極レアギフトは魔導士に多いギフトだ……話を聞くに殴る蹴る系の格闘家なんだろ?」
「あ、ああ、そうだ。すさまじく痛い腹パンチを……」
局長は自分の腹をさすりながら顔が若干青ざめて、気分が悪そうな表情になる。
「……腹パンね……だからやられた奴全員、顔が綺麗なのか。面白い相手だね」
(相手を殺さない……ってことはあちらの世界の意識が薄いやつか……もしかして加護持ちか? まかさな……)
早風切那は局長の顔をジロジロと見た後周りを見渡し、同じように顔はきれいなのに痛さでうなっている組合員達を見る。
「それで、なんとかなるのか? そのピエロ仮面だが……」
「話から予想すると……アタシたちの他に一級の能力者三人と、最近覚醒した奴らを10人くらい集めれば……行けるとは思うけどねぇ」
「一級三人……そんなに……資金は残っているか……」
「隣町の抗争のせいで集めにくいとは思うけど、頼むよ局長さん……アタシ達だけじゃ多分無理」
「わかった……なるべく手を尽くそう……」
「それじゃお願いするよ。集まったら連絡くれ」
早風切那は事務所を出て階段を下りていく。
(はぁ、この間の「魔力大爆発事件」以来、風向き悪いね……おっかしいんだよなぁ……異能者管理組合の方はあっちで手一杯のはずなのに……久々のイレギュラーか?)
早風切那は建物の外に出ると何気なく空に浮かんだ月を見上げる。
(神様たちは何を考えてんだろうね、もしかしてアタシと同じで「退屈」しているのか?)
§ § §
召田宗麻は間空提子の部屋の前まで侵入をしていた。
宗麻が部屋の扉を開けると、カーテンを閉めた部屋の隅の布団の上でぼーっとしていた間空提子が母親が部屋に入ってきたと思い振り返ると、違う人間だったので派手に驚く。
「ひっ!!」
「落ち着け、俺だ……宗麻だ……」
「な、なんの用なの! わたしに関わらないでよ!! あいつが、あいつが見張っているんだから!! さっきもコンコンって部屋の窓をたたく音がしたんだから!!!」
「大丈夫だ……そのコンコンは、俺だ、俺。海波は今、やつの目はここにない。裏山の方にいっているはずだ」
「なんでそんなことわかるのよ!ってかどうやってここに来たの!」
「ちょっとした能力を使って……だな」
間空提子の部屋はマンションの八階だった。セキュリティもあるのに突然現れた召田宗麻に驚くのもわかる話だった。
「ああ、奴が……海波の野郎と同じ力だ……」
「何を言っているの……だめよ……話をしちゃ……どこで聞いているかわからない……」
間空提子は部屋の端っこに張り付き、召田宗麻から逃げるように距離をとる。
召田宗麻は思った以上の恐れっぷりに、自分と同じことをやられていると理解した。
「ちょっと……おまえの力を借りたい……今の状況を抜けられるから」
「嫌、いやよ!! ママ! 助けて!」
宗麻は魔力で強化された体で、騒ぐ提子の口を塞ぎ、頭を鷲掴みにすると、強制的に魔力を流し始める。
「ふが、ふがが!!!」(な、なんなの! なんなのこれ!!)
「いいから……おとなしくしろ……」
「あ、あっ、あー----!!」
提子は体をビクビクとさせながら失神してしまう。
宗麻は物を見るように提子を観察する。
(……やはり魔力の流れが変わったな……あちらの世界の儀式を真似てみたが……うまくいったのか? あとは目覚めるのを待つだけか)
宗麻はとりあえず一仕事を終えたので、冷静になって周りを見回す。間空提子の部屋も布団とカーテンだけの部屋になっていた。新調したであろうスマホの充電器だけが寂しげに転がっていた。
(……それにしても……海波の野郎、提子の部屋まで俺と同じにしてやがったのか……破壊のギフトか……厄介すぎるぜ……ギフトを打つ前に片付けないと……俺らも粉々か……無理ゲーだな、これは……作戦をマジで考えないとな)
間空提子の母親はキッチンで夕飯の支度をしていた。娘が事件以来引きこもり、攻撃的にヒステリックに騒ぐのに慣れていたので、また何かを思い出して騒いでいるのか……と思うだけだった。




