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20.王子と王子とお姫様2

久方ぶりに桃華の前に現れたのは子供の頃に一度だけ会ったアレックス・スチュワートだ。

王子様ルックを更に進化させたアレックスはまるでハリウッド俳優のようなオーラを纏って佇んでいた。


(わー・・・かっこよくなったなぁ)


親戚の子の成長に感慨深くなるあの感情が俺の中にうまれる。いやぁ、子供って成長が速い。


「桃華様、こちらは?」


「こちらは貿易商スチュワート商会のご子息、アレックス・スチュワート様です。アレックス様、こちらは・・・学友のカイ様です」


「「よろしく」」


軽く紹介をすると二人は同じタイミングで手を差し出した。すごい息が合うみたいだ。

アレックスはカイとしっかり手を握ると、俺のほうへ最高の笑顔で向き直った。


「トウカ様、もし良ければお時間いただけませんか?数年振りの再会ですし、少しお話ししたくて」


(おっ、商売のこともあるし、今どんなものを扱っているか知りたいしな。よし、付いて行こう!)


「もちろんです。カイ様、本日はこれで。剣舞の話は次の機会に」


「ではカイ様、失礼します」


アレックスの優雅なエスコートを受けて席から離れ、俺とアレックスは店から出てすぐそこの浜辺へ続く階段をおりた。太陽の光が海の青をきらきらと輝かせている。真っ白な砂浜と青い海との対比はとても涼しく、爽やかな潮風が髪や服を揺らすたびに開放的な気持ちになる。アレックスと俺は波打ち際をゆっくりと歩きながらお互いのこれまでを話し合った。家業である貿易商の両親について様々な国を回っているというアレックスの話はとても興味深く面白かった。ここ青河国にはまだ流通していない品物や、他の国での驚きの文化、体験など話のネタは尽きない。

・・・のだが、気になる。後ろがものすごく気になる。なぜならカイが俺たちの後ろに間隔を開けてついてきているのだ。カイとは店で別れたつもりだったのが、いつのまにかに後ろに居た。カイいわく。


「この浜辺を一緒に散策したかったんです。お二人の邪魔にならぬよう距離を取って歩きますのでお気になさらず」


と。


(いや、気になるだろ!どんな理屈だよ!)


心の中で突っ込むがもちろん口に出さない。横を見ればアレックスも呆れた顔をしていた。そんなわけで二人+一人の隊列?で浜辺を散歩中の俺たちだったが、不意にアレックスが立ち止まって海の向こうを指さした。


「トウカ様、あの船が見えますか?」


アレックスが指さした先、そこには巨大な帆を張った大型船が停泊していた。


「はい。すごく大きいですね」


「あれがスチュワート商会の船です。こちら側からは見えないですが、他に三隻の船と船隊を組んで世界を回っているんですよ」


(かっこいいい)


「それは心躍りますね。船の名はなんというのですか?」


「『グランドスチュワート号』です。先々代が事業を興したときに購入した船に名付けたんです。あの船はちょうど四代目ですね」


「それは・・・とても長い歴史があるのですね」


「将来『グランドスチュワート』を継承し、つつがなく航行できるように両親から日々様々なことを学んでいます」


船を見つめるアレックスの瞳は澄んでいて、遥かな目標をしっかり見据えているように見えた。こう見ると紫雲やカイよりも年上なのがよくわかる。落ち着き方が全然違う。


「玉家の者としてお力になれることがあればおっしゃってください。微力ではありますがアレックス様のお役に立てると思います」


(なんか、この若者を応援したい)


アレックスの真摯で紳士な姿勢に俺は心を動かされた。昔からのお節介気質が爆発して、できることがあれば手伝いたくなる。器用にできればいいけど、不器用だったもんで割を食ってばっかだったから弟にはお人よしだとか、お節介だとかよく言われてたけど。


「ありがとうございます」


朗らかに笑うアレックスの青い瞳が俺を射抜いた。すごいイケメンだ。紫雲やカイももちろんかっこいいが、アレックスはまた違うタイプのケメンで、背中にバラを背負ってる系イケメンだ。玲瓏豊にはアレックスみたいな見た目の人はいない。思えばさっき店にいたときも女性客からの視線が多く集まっていた。


「お礼などいりません。玉家もスチュワート家も共に発展していけるように手を取りあってまいりましょう」


「そうですね。トウカ様の言う通りです。我々はお互いに利益をもたらす素晴らしいパートナーですからね。・・・ではここらへんで近況報告はおしまいにして、後ろで参加を心待ちにしているカイ様を呼びましょうか」


アレックスがカイに向かって手を振ると、カイは早足でこちらに向かってきた。


「積もる話は済んだのですか」


「はい。お気遣いありがとうございます」


アレックスがハリウッドスマイルでカイにスマートに応えた。アレックスの横では大人びているカイですらも幼く見えるから不思議だ。たぶん紫雲が並ぶとあの妹馬鹿ぶりもあいまって小学生並みに見える可能性がある。


「アレックス様はいつこちらを離れるんですか?出港するときは桃華様と一緒にぜひお見送りいたしますよ。ね、桃華様」


(それはいいな!ぜひ俺もあの巨大な船が大海へくりだす様をこの目で一度見てみたい!)


「そうですね、ぜひ」


「とてもとてもその日が待ち遠しいです」


「・・・カイ様とは仲良くなれそうですね」


「僕もそう思います」


(おや、こんなところで熱い友情が芽生えている!紫雲じゃ絶対無理なやつだ!)


しばらくアレックスとカイは見つめあっていた。出会って間もないのに意気投合するとは、なんと素晴らしい巡り合わせだろうか。心の友ってやつかな?

俺は二人が静かに見つめい友情を築く中、そっと間を抜け出した。そして付いて来てくれたセツと一緒にその場を離れることにした。


「セツ、二人の邪魔にならないように帰りましょう」


青い海、白い砂浜、輝く太陽、玲瓏豊の美しい海辺にてイケメン二人が友情を育んでいる。そんな二人を一度だけ振り返り、俺は颯爽とその場を後にした。




後日、カイから「アレックスお見送り計画書」なるものを手渡されたのだが、港内の設備の見学や俺が港で出しているぜんざい屋への訪問がメインで、最後の最後にちょこっとだけ見送りと書かれていた。内容をセツに見せて、


「見送りに時間を長くとると余計に寂しくなるのでしょうね」


と言ったところ。


「違うと思います」


と即答されました。


え、違うの???

ここまでお読み下さりありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。次の投稿は月末を予定しております。

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