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14.外は紅色、中は黄金色(小話)

秋晴れの続く穏やかな休日。彩雲は水月と共に海辺を散歩していた。日中遥かに広がる青い空も、海も、白い砂浜も、今は全て橙色に染まっている。それぞれに付いている侍従と護衛達は二人から距離を取って後ろに付いていた。浜辺には他に人影もなく彩雲と水月はゆっくりとした歩みで散歩を楽しんでいた。




「桃華にあの事を話したわ」


「ありがとう水月。話しづらかっただろうにこのような役回りをさせてすまなかったね」


「いいのよ。話した時ね、あの子とても泣いてたの。泣き虫のあなたじゃ無理だったわ」


「はは、そうだね。僕じゃきっと無理だったよ。一緒に泣いちゃって収拾がつかなくなっていただろうね」


「きっとそうなってたわね」


「桃華と急に衣選びに行ってたのはそれもあってかい?」


「まあそうね。本当の理由は内緒だけど私から誘ったの。思いっきり泣いた後のあの子の顔、肩の荷が下りたみたいにすっきりした表情をしていたわ。今まで誰にも話せずに一人で悩んでいたんでしょうね」


「・・・これからは何も気にせず楽しく過ごしてほしいな、桃華にも、もちろん違う世界に行ったあの子にも」


「そうね。きっと向こうでも元気に楽しく過ごしているわ」


桃華は違う世界へ旅立つ前に夢の中に現れてくれた。水月の家系にはお義母様を始め不思議な力を持つ者が居るけれど、僕の家系にはそういった力を持つ者は居ない。そのせいか何も話してはくれなかったけれど、僕を安心させるような笑顔を見せてくれたのを今でも鮮明に覚えている。だから水月からあの話を聞いても素直に受け止めることが出来たのかもしれない。


歩く度に白い砂がキュッキュッと音を立て、気持ちのいい潮風が頬を撫でる。向こうの世界にも海があるならば淋しさを感じたとき、海を見て玲瓏豊を思い出してほしい。

でも本当は玲瓏豊を思い出すのはほんのたまに、なんなら思い出さずに忘れてしまったっていい。向こうの世界で玲瓏豊を忘れるくらい幸せに過ごしてくれたらそれでいいのだ。


「秋も深くなってくると、この時間は風が少し冷たいわね」


水月が止まって果てしなく広がる海を見ていた。並んで同じ方向を見つめる。さっきまで空一面の橙色だったのが、いつしか薄紫色に変わっていて夜の訪れを知らせていた。


「確かに冷えてきたね、暗くなってきたしそろそろ屋敷に戻ろうか」


風邪をひいてしまったら大変だと思って言ったのだが水月は緩く首を振ってぽつりと言った。


「もう少しだけ一緒にいましょ」


水月を見ればその横顔には美しいほほ笑みが浮かんでいる。けれどいつもの朗らかさはなく、その笑みにはなんともいえない切なさが滲んでいた。


「そうかい?じゃああと少しだけ」


せめて身体が冷えないようにと水月の肩を抱き寄せる。腕の中で水月は身体を預けるように、その小さな頭をこてんと僕の肩に乗せた。

打ち寄せるとめどない波音を聞きながら、二人寄り添ってしばらくの間静かな秋の海を眺めた。空には白い月が薄く浮かんでいる。

今回のお話で作品に一区切りできましたので人物紹介を投稿しております。良ければ是非ご覧ください。

初心者の作品のため読みづらい部分など多々あったかとは思いますが、ここまでお読み下さりありがとうございました。桃華爛漫の次回の投稿エピソードは玲瓏学院に入学してからのお話を予定しております。

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