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その愛情、最強につき危険


その日の夕食から耐毒訓練が始まった。

最初の3つの毒は症状とどこに作用するかを教えてもらった。あとは本の順に慣れてきた時に2、3種類増やしていくらしい。


説明の途中でお姉さまに何度もやめないか聞かれた。でもお姉さま、これが出来なければあの王子様は守れないんでしょう?私だって綺麗な事だけで物事が完結するなんて思えないほどには姉が努力しているところを見て育ったんだ。


最初の食事の時間はとてもズッシリと重い空気だった。これは気遣わせない為にも平然と食べれるようにしなくてはかもしれない。お姉さまは私が嘔吐くたびに回復魔法を発動させかけては解除するのを何度も繰り返した。お父さまと義兄さまは真っ青な顔をして目を閉じたまま食事をしていた。同じく真っ青な顔をしたお姉さまが耐えきれないと言ったふうに席を立つ。


「ごめんなさい、わたくし、ちょっと」


それを聞いた、それまで静かに食事をしていたお母さまが声を発した。


「ベアトリス、席に着いて最後まで食事をしなさい。」


お母さまはひと息つくと続ける。


「ルイーズは泣き言ひとつ言わず食事をしています。それを応援するわたくし達も泣き言ひとつ言わずに食事をするのが道理です。」


そしてお母さまはこちらを向いて言う。


「ルイーズ、貴女の志の強さにわたくしは敬意を表するわ。とても高い志だけど我が家では決して手の届かないものではないから、ダメだと思うまで目一杯頑張りなさい。わたくしは力添えを惜しまないから必要な事が在れば何でも言いなさい。」


「お母さまありがとう。

お姉さま、わたくしこんなの直ぐに慣れますわ。そうしたら食事はまた楽しいものに戻るから、それまでお付き合い願いますわ。」


「ええ、もちろん。もちろんよルイーズ。」


お父さまと義兄さまは泣き出してしまった。

お姉さまは席に着き、静かに食事を再開した。

お母さまは満足気に少し微笑み食事を再開した。


私はこの力強い安心感をあの子に届けたかったのだろう。少し時間はかかってしまうけど必ず側に行くから待っててね。私は心の中で誓うと気合いを入れて食事を再開した。




平民ながらにまあまあの計算能力を持っていた俺は王城の政治管理省財務部の雑用係として登用されていた。簡単な計算を繰り返す仕事内容だ。もらえる給料は最高だが、職場の環境は最悪だった。平民の俺には立場がない。トラブルを軽くしたり回避する能力が自分にある事を知った。嫌な気付き方である。


その日もミスを押し付けられ、むしゃくしゃした気持ちを棟の横の井戸で顔でも洗って落ち着かせようとしていた所だった。スッと白いハンカチを差し出される。顔を上げると上等なお仕着せを着たメイドと目があった。


「姫さまからです。それと、魔法省が庶務計算係が足りないと嘆いていたので真面目な仕事に自信があり職場環境に不満があるのなら転属を希望した方がよろしいかと。財務部は平民には厳しい職場ですから。」


少し離れたところに立っていた少女が赤い目元のまま目礼をした。そして俺の職場は話を持ちかけてからあっという間に変わり周りの環境は驚くほど好転した。

平民の俺を心配してくれた泣きはらした目をした少女は大丈夫だろうか。

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