デモンズとの対峙
ひと足先に魔王城へとやってきたデモンズ。
「なんだこの女々しい装飾の数々は!俺の城はもっとおどろおどろしくしていたはずだ!マリアナ、貴様の仕業か?」
「あら、もうここに来るなんて、オズモンド皇帝閣下。それとも父上と呼んだら良いかしら?」
「逃げなかったのは褒めてやろう。さぁ、お前の身体を俺に差し出せ」
「あの魔晶のことかしら?あら、あんなのとっくに解除したわ。寧ろ、私にそれができないとでも思ってたのかしら?」
「なんだと!?解除しただと?あれは特別性。それこそ、ハイエルフの女王でもなければ解除できん代物だぞ」
「呼んだかしら。お久しぶりと言えば良いかしらオズモンド皇帝」
「貴様はイーリス?何故、ここに。そうかあやつの仕業かそれであやつはどうした?」
「天に返したわ」
「そのようなことできるはずが無かろう。俺のかけた呪いを解除するなど。まさか。そういうことか。お前がハイエルフの女王として有名だったイリスだったとはな。逃した魚の大きいことよ。だが、それを知ったのなら。今度こそ、ワシに跪かせれば良いだけだ。コイツらのようにな」
デモンズが指差した所には、変わり果てた元王国の王妃たちがいた。
「オズモンド様に逆らうものに死を」
年老いていた姿から若くはなったがその姿は、ピンク色のハルピュイアの姿と成り果てたウォータ。その側では、種をくださいと懇願しているキリン。かつて王妃であったウォータからその座を奪おうとしていたキリン。立場が完全に逆転していた。オズモンドは自身のお気に入りを魔物の姿へと変え。気に入らなかったものは、このように魔物の子を産むだけの家畜としたのだ。気に入られたのは、ウォータ・ルビー・ローズマリー・クイーンの4人で、家畜とされたのはナデシコとキリン、その他、各国の女性だ。この4人にはそれぞれ魔物としての別の名が与えられた。第一王妃となったルビーにはコウギョク。第二王妃のローズマリーにはロスマリヌス。第三王妃のウォータにはシズク。第四王妃のクイーンにはエンプレス。デモンズが好んで魔物とするぐらい気に入っていて、ウォータがハルピュイア。ルビーがユニコーン。ローズマリーがアルラウネ。クイーンがメデューサ。それぞれの姿を変えた。
「イーリスよ。貴様がハイエルフの女王イリスだったことに驚いたが。どうだ。かつて友好関係を築いていた国の元王妃たちの現在の姿は、コイツらは好きでこうなったがな。
「オズモンド様、この雌を捕まえれば良いのですね?」
「うむ。その隣の女もな」
「かしこまりました。このような姿にして、ずっとそばに置いてくださる貴方様のために」
「愚かじゃな父よ」
「!?この俺に向かって生意気な口を聞くかマリアナ」
「これを見て、どう愚かでないと言える?」
「我が妻たちがどうかしたか?」
「結局、父も人間に恋をしてしまったということだ。それもそうだ。私も父の血を継いでいる。遺伝だったということだ」
「何を言っているマリアナ?この姿のどこが人間だというのだ」
「気に入ったものを限りある生しか生きられない人間として側に置きたくなかった。父のエゴであろう」
「!?そんなことはない。俺が好きなのは人間ではなく、このものたちだ」
「何が違う?人間を魔物に変えたから人間を好きでない?それは屁理屈じゃ」
「!?屁理屈など。もう良い。貴様の身体を乗っ取ることはやめじゃ。ワシ自ら、娘であろうがお前を滅して、魔物の王に返り咲こうぞ」
隠れていたマリィ・ミリィ・ネイル・アラクミーが四方から襲いかかった。それを身を挺して守るコウギョク・ロスマリヌス・シズク・エンプレス。
「不意打ちだとマリアナ、汚いであろう。大丈夫か」
斬られた魔物がかつての人間の姿へと戻っていく。
「そんなダメだダメだダメだ」
「良いのですオズモンド様。ドゥライに女として見られていないことはとうの昔に気付いていたのです。息子の嫁に手を出すクズだとは思いませんでしたが。そんな私にオズモンド様は女の喜びを思い出させてくださいました。守るのは当然のこと。その剣が魔物払いであったとしても。ねっ。大好きなオズモンド様のお役に立てたのです。この上ない喜び。どうして、泣いているのです。魔物の王を愛した人間が死ぬだけのことです。いつものように利用していたとそう言えば良いのですよ」
「違う。利用など。好きだった。お前のことが大好きだったのだ。共に時代を生きていたいと。だから限りあるものではなく魔物に。俺はお前たちにそばにいて欲しかったのだ。死ぬなウォータ」
ウォータがニッコリと笑いながら消えていく。
「そんな。嘘だ嘘だ嘘だ。マリアナ、貴様ー」
「お待ちくださいオズモンド様。貴方は私に何度もカルメルのことを忘れさせようとしていましたが、私はずっとカルメルと違い私だけを見ていてくれるオズモンド様と比べて、優越感に浸っていたのです。とうの昔に、それこそカルメルを裏切ったあの日に、私はオズモンド様のことだけを毎日考えていました。カルメルと違って逞しくて男らしいオズモンド様にいつもドキドキしていたのです。だから生きてください。私たちの屍を越えて、必ずやもう一度魔王の座に」
「ルビー、もうしゃべるな。おい、嘘だよな。消えるな。消えるな。消えるな。マリアナ、貴様、よくもよくもよくもーーーー」
「オズモンド様、私たちのために怒ってくださりありがとうございます。娘が魔物の子を産んでいた時、薄々おかしいと思っていました。でも、あの時には既にオズモンド様に身も心も奪われていたのです。夫であったサンフラワーは確かに剣豪として名を馳せていました。それもあって、子育ては私に一任していました。娘は縛り付ける私に鬱陶しさを感じていたのではないか。目の前で恍惚な表情を浮かべる娘を見て、自分も素直になって良いのだと。オズモンド様が何やら人と違うことにも気付いていました。それでも、私たちは国を売った売国奴。オズモンド様に縋るしか無かったのです」
「そんなことはない。魅力的なお前をほったらかしにしていたサンフラワーがバカなだけだ。だからそう自分を責めるな。俺が色んな女に産ませた娘を使って国を内部から壊した結果だ。お前が売った訳ではない」
「やっぱりオズモンド様はお優しいですね。大好きですよ」
「待て、ローズマリー、逝くな逝くなーーー。マリアナー絶対に許さんぞ」
「オズモンド様、初めてお会いした時、キングを殺した貴方にやられまいと私がしたことを覚えておいでですか?」
「あぁ、糞の中に飛び込み、糞まみれになっていたな」
「えぇ、そんなことをした相手に普通は近づかないのに、貴方は近付いて、私の身体の隅々を愛してくれた。その時、比べてはいけないのに比べてしまったんです。キングはこんな私を愛してくれただろうかって。その時に、既に私自身堕ちていたんでしょう。だから一緒にどこまでも堕ちていくと決めました。魔物となることでオズモンド様が気にしないのであれば喜んでなろうと。私たちに対して負い目を感じる必要はありません。私たちがオズモンド様を守りたかっただけなんですから」
「クイーン、おい。待て、俺はお前の息子に酷いことをしたんだぞ。感謝してるみたいなことを言うな。死ぬな。死ぬんじゃない。クソーーーーーーーー。マリアナーーーーーーーー覚悟しろ」
「どうだ?これでも父は人間を愛していなかったと?最後のエンプレスには聞き覚えがある。貴様が娘の1人に名付けた名前であろう。どうしてそんな名前を新しい名前に?まだわからぬのか!」
「我が妻たちを殺したお前を許さん。決着を付けよう」
「決着を付けるのは私ではない。カイルだ」
「フン、知らんがすぐに殺してお前と決着を付けるだけだ」
こうしてマリアナ現魔王からの突然の指名を受けてカイルがデモンズと対峙することになるのである。
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