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ヴェスパラスト大陸記  作者: 揚惇命
最終章 真実をその手に掴み悪を討て

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ゾンビの治療薬

 スパーダたちが時間稼ぎをしてくれている頃、カイルはイーリスの元に向かっていた。

「スパーダにオックス、俺が帰るまで死ぬんじゃねぇぞ」

 そう言って別れて、数刻。森の中を彷徨っていた。

「うわっ。ごめんなさい」

「良いのよ〜こちらも前を見てなかったから〜。ってカイルちゃん?」

「ミューラ?どうしてここに?」

「あぁん、会いたかったわ〜私の可愛い坊や〜」

「うぷっ苦しいよ。ミューラおねぇちゃん」

「あっごめんね〜。魔王様ったら久々に帰ってきた私に厄介ごとばっかり、イーリスが作る薬の材料のため研究室にも誰だなんて、そのせいでカイルちゃんと全然会えなくなるし。ほんと失礼しちゃう。あぁん、久々のカイルちゃんの声・匂い・もう抑えきれない」

「今はダメだ。ゾンビの治療薬のため母さんを探しているんだ」

「そうなの?それならここをまっすぐ向かって、焚き火が見えたら左に曲がって、熊が傷付けたような爪傷がある木を右に曲がって、すぐのところにいるはずよ。それにしても入り口で会うなんて、運が良かったわね」

「はっ?入り口?」

「ひょっとしてカイルちゃん、ここが何処だか知らなかった?ここは迷いの森、今言った道順でしか先に行けないけど帰る時は真っ直ぐ歩くだけでこうして入り口に着く不思議なところなのよ」

「行きで真っ直ぐ歩いて場合は?」

「それは勿論入り口に戻るわね。!?。どうりで何かおかしいと思ったんだ。進んでる気がしないなって」

「私に会えて良かったわね」

「うん。ありがとうミューラおねぇちゃん。後でご褒美あげるね」

「あぁん。待ってる〜私、ずっと待ってる〜」

「ミューラおねぇちゃん、もう一つ頼み事しても良い?」

「なんでも言って〜」

「スパーダとオックスは、魔王国に必要な人材だ。ミューラおねぇちゃん、2人を救援して」

「うんうん、救援するする〜だからカイルちゃんも後で癒してね」

「うん。ミューラおねぇちゃん」

 カイルはミューラの言う通り道を進むと野営地が見えてきた。

「こんなところに野営地を敷いていたのか」

「誰かしら?ってカイル様!?ご無事で良かったです」

「マモーネ?どうしてここに?」

「魔王様ったら四天王遣いが荒いんですよ。迷いの森を抜けてきた敵を捕えるためにここで防衛線を敷けだなんて、真っ直ぐ進むしかできないゾンビに突破できるわけないのに、お陰でカイル様とも会えず。欲求不満なんです〜。だから、良いですよね」

「ダメ、今は。それより母さんは居る?」

「そんなぁ。イーリスなら。カイル様が御褒美をくれるなら教えてあげても良いですよ」

「ずるいやり方だな。わかったよ。じゃあ、これで良いか?」

「はい。その逞しいものをここにお願いします」

「仕方ないなぁ。お前の中は本当に名器だ。絡みついて俺のモノを残さず搾り取ろうとうねっている」

「あぁん、これが欲しかったんです〜。イーリス様は、野営地の中心で、人間の女の子2人とかつてマリアナ様と共に戦った伝説のケルベロスのケルベガー様と伝説のベルゼブブのモスキト様と共に真ん中の大きな治療施設に居ます〜。もうダメーーーーーーーー」

「まだ、満足してないだろう?」

「はひぃ」

「もっと欲しいなら俺の頼みを聞けるよな?」

「なんなりと〜」

「お前の中にいる姉をスパーダとオックスの救援に向かわせろ」

「!?どうしてそのことを」

「聞こえているだろう。ゲキーネ」

「まさか名前まで知られてるなんていつ気付いたの?」

「お姉ちゃん」

「入れ替わって楽しんでいたことを俺が知らないとでも」

「全く敵わないわね。これも惚れた弱みってやつかしら。良いわ。退屈してたのよ。守るのが得意なマモーネ。攻撃が得意なゲキーネってね。攻撃も守りも疎かにしないなんて強欲でしょ」

「あぁ、そうだな。異名に相応しいんじゃないか。この事は黙ってなさいよ。そしたら今度2人でしてア・ゲ・ル」

「それは楽しみだ」

 こうしてゲキーネがマモーネのフリをして、救援に向かった。

「カイル様は、知っててお姉ちゃんも愛してくれてたの?」

「あぁ」

「黙っていてごめんなさい」

「良いんだ。それより案内してくれるかい?」

「はい」

 真ん中の大きな治療室名前でマモーネが話す。

「イーリス様?」

「マモーネ、どうしたのひょっとして敵が中に?」

「いえ、カイル様がお越しに」

「カイルが!?すぐに通して」

 カイルが中に入るとイーリスに抱きしめられる。

「カイル、会いたかったわ」

「さっきもあったよ」

「お母さんはいつだって息子に会えたら嬉しいものなのよ。それでどうしたの?ひょっとしてスパーダたちに何か?」

「違うんだ。ゾンビになった人を元に戻せる薬なんて作れないよね?」

「そのことをここに向かう途中で、この娘たちに言われてね。マリアナに頼んで、ミューラの研究所からありったけの薬を集めてたのよ。もう少しでできるわ」

「カイル王子様、勝手なお願いなのはわかっています。ですが、プリンスも被害者なのです。どうか助けてください」

「わかっている。そのためには、彼に目を覚ましてもらわないと。それができるのは彼が愛していていつも抱きしめているあの3人の女ゾンビだけだろう」

「はい。彼女たちは、エンペラード王国の元貴族の娘です。名前をマミ・ハート、ユミ・スペード、アカリ・ダイヤ、そして、キマリ・クローバー」

「!?キマリってあのキマイラか?」

「はい、彼はあまりのショックでその記憶を消してしまったようですが、私たちは覚えています。王族に近しいものたちが集められた空間で、1人の女の子が連れて行かれて魔物に改造される様を。その女の子の脳でAIを高め。頭をライオンに、胴体を山羊に、背中に鷲の翼を、そして尻尾に蛇。そうして作られたのがあのキマイラなのです。潜在的に覚えていたのでしょう。それかもう1人いた幼馴染の女の子を忘れないためにそう名付けたのかわかりません。いつからかプリンスはあのキマイラをキマリと呼ぶようになったのです」

「そんなことが。わかった。必ずこの薬で救うことを約束する」

「ありがとうございます」

「ちょうど調合が終わったわ。カイル、くれぐれも気をつけるのよ」

「母さん、行ってくるよ」

 カイルはこうして戦線へと急いで戻るのだった。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

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