オックスは魔王に忠誠を誓う
オズマリア軍の第一陣の攻勢を凌いだ魔王軍は、城へと戻っていた。
「魔王様、御無事で何よりです」
「あっネイル〜ただいま〜、はい。これ戦利品」
「これは、知恵の冠ですね。では、オズマリア軍の先鋒は魔物だったのですね」
「うん。ゴブリンとオークとコボルトだったよ〜」
「というか魔王様のそのお姿は?」
「エヘヘ。こんな力を得たの〜」
マリアナはネイルに指先を向けるとネイルが子供の姿になる。
「魔王ちゃま、これは、あまりにもはじゅかちいです」
「ごめんごめん。ネイルは若いから必要なかったね〜」
ネイルにかけた若返りの魔法を解除する。
「ゴホン。魔王様、オークも排除したと言っておきながら後ろのオークは?」
「すまぬ。魔王様に対しての今までの非礼を詫び、忠誠を誓うことを決めたオックスと申す。このような姿で戦働きはもうできそうにないが許してくれ」
「勝手なやつだな」
客間からカイルが出てきた。
「お前は!?オズモンドと名乗るデイモン様が危険視していた人間の男!」
「あぁ、お前の腕を切り落とした男でもあるけどな」
「そうであったな。人間ながらあっぱれな強さよ。かつて、攻めた際に相手をした男によく似ている。あの男も強かったがデイモン様には敵わなかったようだが」
「へぇ、俺によく似た男か」
「えぇ、おそらくファインでしょうね。オズモンドと聞いて、一瞬戸惑いましたが、やはりカイルから聞いた通り私の知るオズモンドではなかったようで安心しました」
「その姿はエルフ?だが、その姿はかつて人間国を攻めた際に俺が戦った男が守っていた女?どういうことだ?」
「こういうことです」
イーリスはそういうと姿を人間に変えた。
「成程、お前もまた人間を愛してしまった者だったということか。俺は、愚かな選択をした。デイモン様と共に歩めば我が妻アレクシアは殺されないと思ったのだ。俺は昔から色んな人間の女を肉鎧にしてきた。それがオークとしての務めだったからだ。人間どももオークの下半身につけられた人間の女を見て攻撃を躊躇う。その隙に粉砕するのが我らオークの本分だった。だが、俺は間違えていた。本当に大事なら戦場に出してはならなかったのだ。俺は、アレクシアと離れたくない一心で、俺が守れば良い。そう考えていた。その結果が、お前に片腕を落とされ。コルトの野郎にもう片腕を落とされる結果となったのだ。どうだ惨めであろう。もう戦うことのできないオークなど」
「そんなことはありません。オークだろうとエルフだろうと人を愛してしまったことに変わりはありません」
「フッありがとう。少し、心が軽くなった気がするよ」
そういうとオックスは下半身の力を緩めアレクシアからそれを引き抜き。服を着た。
「オックス様?まさか、私に飽きたのですか?」
「馬鹿を言うな!大事な存在だからこそ労わる気持ちが大事だと学んだのだ。お前は魔物ではなく人間なのだから」
「そのようなこと。私にとっては、オックス様の下半身が居場所なのです」
「馬鹿者、これからは共に森にデートに出かけたりのんびりとした時間をゆっくりと歩んでいこう」
「オックス様!はい。ずっと私を側に置いてくださいませ」
「あぁ。勿論だ。改めて、俺は誓う。生涯、我が妻はアレクシアだけだとな」
「良い話だ〜マリアナちゃん、泣けてきちゃったよ〜」
「マリアナ、貴方、すごく若くない?」
「イーリスちゃんは、歳とったね〜」
「何よ。歳相応って言いなさい。辛かったわね。息子が親の転生体にされるなんて」
「父のことは許さない。私とライトの可愛い息子を檻の中に閉じ込め、転生体として利用したことを。その身を持って償わせてやる」
「えぇ、私もファインを殺したことを絶対に許さないわ。久々にハイエルフとしての魔法を解禁しちゃうんだから」
「イーリスちゃん。ということは久々にコンビ、マリリスの結成だね」
「えぇ、この魔王国を滅ぼそうっていうなら根絶やしにしてあげましょう」
「まさか、かつて魔王国を震撼させたマリリスが現魔王様とこの御仁だったとは。雪女風情などと罵ったことを含め数々の無礼を謝る。俺は、今後はマリアナ様を魔王様として、仕える」
「ありがとう〜オックスちゃん。じゃあ、その腕治してあげないとねイーリスちゃん」
「えぇ、オックスだったわね?こっちを向いてくれるかしら?」
「何を言っている?魔法のスペシャリストと言われるハイエルフといえども切り離された腕を治すなど不可能だろう」
そこに数匹のオークが入ってきた。
「王よ。御無事でしたか。良かった」
「お前たち、まさか死んだと思っていた。俺のせいですまぬ」
「何をおっしゃいます。我らのために頭を下げてくださった。あの時、我らは序列ではなく貴方様を生涯の王と定めたのです。貴方様の斬られた腕はこちらに」
そういうとイーリスに腕を渡すオークたち。
「ありがとう。これで完璧ね。だって、物がここにあるんだもの」
イーリスは、何やら呪文を唱えた。
「リ・グロース」
オックスの腕が綺麗に引っ付いた。
「これでどうかしら動かしてみてくれる?」
オックスは恐る恐る握ったり開いたり、曲げたり伸ばしたりを繰り返す。
「こんなことが可能なのか?あんなにずっと続いていた斬られた痛みですらまるで無かったかのようだ。これでアレクシアを抱きしめられる」
「オックス様!苦しいです」
「すっすまない。嬉しくてつい」
「ほら、こうです」
「こっこうか」
「はい。心地良いです」
「あぁ、俺もだ。この幸せのため、マリアナ魔王様のため、この魔王国のためこのオックス、今一度武働きをさせてもらおう」
「頼りにしてるよ〜オックスちゃん」
「で、マリアナはいつまでその姿なの?」
「ずっと〜気に入っちゃったし」
「まぁ、良いんじゃない。歳を取らないハイエルフと違って雪女は歳とるものね」
「酷い、私が年増って言ってるよね。それ」
「さぁ、どうでしょう」
「全く、愉快だ(人間と共に生きるか。全ての魔物がこうであれば、それもそれで素晴らしいせかいやもしれんな)」
「まとまってるところ悪いんだけどさ。まだ第一陣を凌いだだけだからな」
カイルの言葉に皆がまぁ良いんじゃないって感じであった。
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