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ヴェスパラスト大陸記  作者: 揚惇命
最終章 真実をその手に掴み悪を討て

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いざ過去の世界へ

 ここが本当にレインクラウズクリア王国?俺が知っているレインクラウズクリア地区には、こんな大きな城は無い。それどころかこんな大きな街も行き交う人にどうやら俺の姿は見えないらしい。兎に角、俺の母さんと言われているあの売国奴の女に会わなければ何も始まらない。王城へと向かう俺。王城で俺が見たのはひどく落ち着かない様子の隣にいる男に諭されている王。

「まさかエルフとの間に子ができるとは思いませんでしたよ」

「馬鹿!このようなところで何を申している。イーリスが魔族の元エルフであることを知っているのは、俺とお前だけなのだぞ!迂闊に話すで無い馬鹿者」

「すまねぇって。でもよ。そんなこと言ったとしてよ。今の義姉さんを知ってる誰が信じるんだ?」

「口は災いの元だ。知っている人間が少ないに越したことはない。それよりも産まれる子がエルフであった時、ワシはどうすれば良い。流石にイーリスは、姿を人間に見せる高等技術の魔法を使いこなしているが、我が子には無理であろう」

「なら、少し耳の長い男の子として、暫く国民には披露せず王宮内で育てれば良い。子供が産まれたことだけを発表してな」

「全く、悪知恵だけはよく働くなリーパー」

「兄さんには言われたくないよ。全く、どうやってあんな美人なエルフを口説き落としたのさファイン兄さん」

 どうやらこの2人は兄弟のようだ。話を聞く限り、ファインと呼ばれていた方が俺の父で、隣にいるリーパーと呼ばれている男が俺の叔父さんのようだ。今の世界には2人とも既に亡くなっているのだが。何故、父はあの売国奴が魔族のエルフであると知っていながら子を成したのか。理解に苦しむが。この2人が交わらなければ俺が産まれなかったことを考えると。何とも言えない気持ちになるな。どうやらこの扉の奥で呻き声を上げている声の主が俺の母らしい。じっくり見てやる。その忌むべき顔をな。俺が部屋に入り、その女性を見ると、話しかけている。勿論、俺にじゃなく。自分のお腹を触りながら。

「産まれてくる私の可愛い可愛い坊や。魔族として産まれないように細心の注意をしたけど。無理だったらごめんね。だって、簡単に産み分けられるなら苦労はしないもの」

 何が可愛い可愛い坊やだ。今から5年後には、その口で、父を殺し、この国を滅ぼした男のモノを頬張り、国民のためと勝手に納得して命乞いをする売女が。うわー。急に画面が切り替わる。これは、産まれて間もない頃か。

「ほぅ。これがファイン王とイーリス王妃の御子でございますか?今日から貴方の傅役を命じられたランダスおじいちゃんですぞ」

「全くランダスったら」

「許してやってくれ、この国のために忠を尽くし結婚をせずただひたすらに職務を全うしてきた男だ。カイルが孫のように可愛いのだろう。だがランダスにカイルは渡さんぞ」

「もう、ファインまで」

 じいちゃん。若いな。俺が知ってる最後のじいちゃんは、痩せ細り、それでも俺を生かすために。うっうっ。泣くな。泣いてもじいちゃんは帰って来ない。また視界が切り替わる。これは、何処だ。

「あら、鷹?いえ、あれはフレーズヴェルグの赤ちゃん!どうしてこんなところに?ひどく傷ついている。ひょっとして、鳥賊の峡谷から落ちたというの。生きているのが不思議なぐらいよ。そう、死にたくないのね。わかったわ」

 売国奴の女がフレーズヴェルグに触れると傷がみるみると塞がっていく。

「マジ助かったんだけど〜通りすがりの見ず知らずのエルフの人、サンキューって感じ〜」

「流石、怪鳥と称されるフレーズヴェルグね。こんなにエルフとわからぬようにしているのにバレるなんて」

「どんなに姿を偽ってもさ。その身を覆う匂いまでは取れないわよ。決してね」

 この鷹が俺を過去の世界に送ってくれたあのフレーズヴェルグのヴェルンだってのか。今と全然違うし口調が。

「そうね。でもね。私は、愛する人と人間の世界で生きると決めたの。あの人とあの人との子供が私の支え。2人に何かあったら私」

 この売女がまた戯言を。お前は1年後には、その支えが肉の塊となっている側で、その支えを殺した男のモノを頬張り、服従の言葉を誓うんだぞ!恥を知れこの売国奴が。

「あっそ。覚悟を決めたエルフは強しってね。助けてくれた御礼に、何かしてあげるわよ」

「素直に行く場所が無いって言えば良いのに」

「ちげぇし、全然ちげぇし。一宿一飯の恩を返すだけだし」

「そういうことなら。近々、カイルに鷹狩りセットを渡すのね。その鷹を貴方にやってもらおうかしら」

「アタイが鷹?誇り高きフレーズヴェルグのアタイが?」

「えぇ、お嫌かしら?」

「やってあげるわよ。要は、カイルって子が心配だから御守りしろってことでしょ」

「えぇ、物分かりが良くて助かること」

「ハァ。マジ、あり得ないんだけど。御礼で鷹の振りさせられるとか」

 また視界が切り替わる。目の前には父だと思われるファイン。その横には売女。俺の隣にはじいちゃん?

「カイルよ。お前ももうすぐ5歳となる。この国では、5歳を迎える男児に鷹狩りセットを渡す習慣がある。お前も立派な鷹使いになるのだ」

「えっこんなのちっともうれしくない」

「どうかしましたか?カイル?」

「ううん、なんでもないよ。ははうえ」

「では、さっそく鷹狩りに」

「ごめん。ちちうえ、りーぱーおじさんにようじをたのまれてたんだった」

 また視界が切り替わる。これは何処だ?扉の隙間から覗き込んでいる?

ここまでお読みくださりありがとうございます。

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