最終章・強化戦士のちから
「ふぅ、」と、一息つくシルバー。
「ここのお方達はこんなに野蛮なんかね?」
と、シルバーが先っきまで隠れていたガブリエルに聞く。
「うーん、私も上の人から詳しく聞かされてないので分かりません☆」
と、舌を出したながら少しふざけた風にシルバーに言った。
「まぁ、さっきみたいな人が他にも居ると思いながら進めばいいか……」
「あの〜」
後ろから弱々しい男の声が聞こえる。
「あんたも、ここにおるゆうことは“強化戦士”と言うことでいいですか?」
見た目は白髪で見えてるのかわからんほどの糸目の細々とし、身長は約175cmほどの男が立っていた。
「強化戦士?なんの事だ、俺はただここに勝手に連れてこられた身分でな。」
シルバーが白髪の男に対して答える。
「あれ?ここには戦士以外の者は来れないはずなんですが……」
と、少し戸惑いながら考える方言がめちゃくちゃな白髪の男。
「あ、俺の名前は、“治癒の強化戦士”ソフィーと、申します〜、よろしゅう。」
自己紹介をしながら手を差し伸べるソフィー。
「お、俺の名はなんの強化戦士か、わからんが名前はシルバーと言う、よろしくな。」
手を握り返す。
「お、シルバーはん、あんた怪我しとるで。」
と、ふくらはぎ辺りにかすり傷があった。
「およ?あぁ、多分さっきの戦いで怪我したんだろうな。」
「ワシが治しちゃる!」
と、ソフィーが傷口に、手をかざし治癒の能力をかけた。
「治ったで。」
かすり傷は跡形もなく治っていた。
「おぉ、ありがと。」
「へっ!そんな傷治さなくても今から大量にできるぜぇ!」
身長が約180cmくらいあるオールバックで髪の毛が腰あたりまで伸びている赤髪に所々に黒髪が見える男がソフィーの後ろに立っていた。
「ソフィー!あぶねぇ!」
「おっせぇわ!!」
「ぐっ!?」
ソフィーの左肘に蹴りが入り「バキバキ」と、骨が砕ける音が聞こえながら遠くへ飛んでいく。
「お〜、飛んだ飛んだ」
笑いながら赤髪の男が言う。
「お前誰だ!名前だけ言って帰れ!」
「俺の名は“血の強化戦士”スカーレットだ、じゃあな!」
と、帰ってい……
「て、帰るかぁ!お前ら殺しに来たのに帰るかぁ!てか、帰るとこねぇよ!」
キレッキレのツッコミをするスカーレット。
「そうかぁ、帰らないかぁ……やだなぁ」
めっちゃ嫌そうな顔をするシルバー。
「おいおい、せっかくこんなに楽しいことやってるのに……もっと楽しそうな顔しろよなぁ?」
「ほう、お前はこんな殺し合いを“楽しい”と、言うのか。」
一瞬にして二人は戦いの姿勢になり、スカーレットが踏み込む瞬間。
ゴギャァ!!と、先程吹っ飛ばされたソフィがスカーレットの腕へと蹴りこみ腕を折る。
「どや、お返しやで、まぁお返しと言っても、わしの腕は完治してるけどなぁ。」
「あ゛ぁ゛?ふざけんな!俺は治癒能力は苦手なんだよ!」
そう言いながらスカーレットの折れた腕の周りに血がまとい、血が消えて腕が見える時には治っていた。
「治癒能力苦手て、お前結構ちゃんと治ってるじゃあないか。」
「あ?ここにいるヤツらはこんくらい出来んだろ。」
確かにと思い、シルバーと、ソフィがうなずく。
「はぁ、さてさてお楽しみの時間が取られちまったんでぇ、お二人まとめて砕いてやるぜぇぇぇ!」
スカーレットが後ろへのけ反り叫ぶ。
「来るぞ、準備をしろソフィ。」
「ってますよォ!」
シルバーは、手を前につきだし手のひらを下へ向ける、ソフィは手首だけを曲げ手のひらを後ろに向けた。
「レーヴァンディア!」
「アルヴァトリオン!」
シルバーの手には緑色の全体にヒビが入った刀が、ソフィには金箔が入っているような白い杖が現れた。
「おぉ?お前らも武器持ってんのかァ…じゃあ、俺も使わないとなぁ?」
そう言い、スカーレットが手のひらを地面に向けると、血が垂れてく。
「来いよ…ガンドレッドォ!」
スカーレットの手のひらの血がショットガンのような形をした瞬間、血が激しく飛び散りそこには紅くまるで、血で作られているかのような、全体にヒビが入ったショットガンがあった。
「おいおい、こっち近接なのにあいつ遠距離持ってんぞ。」
「よっしゃぁ!死ねやぁ!」
ドパァン!と、液体が爆発するような音が聞こえると共にソフィの腹部に多数の穴が空く。
「おいおい…勘弁しぃや…いくら治せると言ってもこっちも痛いんやで!」
ソフィが勢いよく地面を踏み込みスカーレットの懐へと潜り込む。
「あぁ、銃相手なら近くに行けば勝てると思ってんのかァ?あぁ!?舐めてんじゃねぇぞ!」
スカーレットが、ショットガンを持ち替えずにそのままソフィの顔面へと銃口で殴り付ける。
「グフッ!」
ソフィが遠くへ飛ばされると同時にシルバーが仕掛ける。
「いくらお前が銃を持ってるとしてもそのたまに当たらなければ問題ないし、近接攻撃も当たらなければ問題ない。」
と言いシルバーがスカーレットの腕へと刀を向け切り落とす構えをとる。
「あ?当たらなければ問題ねぇだァ?舐めんなつってんだろ…」
スカーレットがそう言い終わると刀がスカーレットの腕へ当たる直前にシルバーの五本指全てが弾け飛び刀を落としてしまう。
「ッ…!?」
「ケッ!俺の能力も分からねぇのに突っ込んでくるバカはお前らぐらいだよ…まぁ!俺はそんなバカが大好きだぜぇ!」
スカーレットが、シルバーの顔面へと蹴りこみを入れバゴォンと、音とともにソフィと同じ所へと飛ばされる。
「シルバーはん!指見せてや。」
シルバーは、無言でソフィに指が無くなった右手を見せる。
「この程度なら一瞬で完治出来ますわ。ちょいと痛いけど我慢してや。」
と言い、ソフィが持っているアルヴァトリオンを細かく折りシルバーの指の断面に刺し込みぐりぐりする。
「いででででで!グリグリすな!」
「しゃーないやん、よく差し込まんとちゃんとくっつかんでな。」
刺しこまれたアルヴァトリオンは形が変化し、元からあったような指になった。
「お前の能力すごいな、治癒力高すぎじゃん。」
「せやで死んでなければなんでも治せる!」
バァン!と音と共にスカーレットが語りかける。
「なぁ!おしゃべりと回復は終わったかぁ!?さっさと始めようや!ゴミ共がよォ!」
「こい、レーヴァンディア」
シルバーの呼び掛けに応じレーヴァンディアが浮き回転しながらシルバーの、手元へと戻り、パシッと受け止める。
「ゴミ共!第2ラウンドだぁ!」
「仕方がない、こちらも第2ラウンドと行こうか……」
そう、シルバーが言うと目の色が黒から銀色へとじわじわと変わっていく。
「な、なんやあんさん…目の色変わっとるやないか。」
ソフィも、シルバーの目が変わることに対してものすごく驚いている。
「一応、相手も本気で殺しにかかってきてるし何よりあいつは強いしな……」
「いや、目が変わることと強さ何が関わっとんねん、よォ分かりませんわァ。」
と、シルバーの真面目に言う言葉にソフィは「いやいや」と、手を振りながら答える。
ドォン!
シルバーの目が完全に銀色になったと同時にスカーレットが、手に持っていたガントレットが形を変え、スナイパーライフルのような形になり、こちらに撃ってきた。
「ライトニング……」
スカーレットの発砲と同時に、シルバーも能力を使っていた。
シルバーの能力を使った瞬間、さっきまで喋って動いていたソフィが動きを止め、スカーレットの発砲時に発生する爆発の閃光すらも動かずに止まっていた、もちろんそこに込められていたスナイパーライフルの銃弾すらも、空中に止まっていた。
「ん?なんだ、この弾は…」
シルバーは玉を見てそう言った。
シルバー以外の物が止まっていたのだ。
「この弾まさか、血か……?」
シルバーは空中に止まっていたスナイパーの弾を触り確信へ至る。
「そうか、あのガントレット形が変わっている…俺のレヴァンディアと、似てるな…まぁ、そんな事はどうでもいい弾はソフィには届かないようにしたし、あとはあいつを倒すだけだ。」
そういいシルバーはスカーレットの近くへと歩く。
「さて、スカーレット終わりだライトニングソード。」
手刀にライトニングをまとわせスカーレットの胸を突き刺し貫通させた。
「これを使えばすぐに終わるからな……」
シルバーは手を引き抜いた後にライトニングを解除したと、同時にスカーレットの胸から大量の血が吹き出す。
「ゴプ……な、何が起きやがった…おいおいいつの間にか俺の胸に穴が空いちまってんじゃねぇか…愛が詰まってる俺の…しん…ぞうが……」
スカーレットは胸を押えながらそういい後ろに倒れた。
「あれ?」
ソフィは、まだ何が起きたか分からない状況で固まっている。
「第2ラウンド直ぐに終わっちまったな……よし行くか、ソフィ。」
シルバーがそう言うとソフィが何が起きたのかすぐに理解し「おう、」と返事をした。
「おいおい……第2ラウンドはまだ始まったばっかりだし俺を置いていくなよォシルバー!」
スカーレットが立ち上がりシルバーに抱きつく。
「な、心臓を貫いたはずだぞ!なぜ死んでない!」
スカーレットの胸には確かに向こうが見えるほどの穴が空いていた。
「なぁ、知ってるかぁ?心臓貫いても血が通えば誰でも生きていけるんだぜぇ?」
スカーレットが不気味な笑顔を作りシルバーにささやく。
「俺の能力はなぁ……」
スカーレットが能力について言う時シルバーが話をさえぎる。
「あぁ、知ってる、どうせ血を操れるんだろ?さっきお前の心臓をぶち抜く時に球を確認したら血だったからな。」
スカーレットが、キョトンとした感じで「知ってたかぁ〜」と、笑った。
「いつまでも抱きついていんじゃ無い!」
シルバーの背中が輝きその光がスカーレットの体を貫く。
「グゥッ!いくら死なねぇつっても痛ぇもんは、痛ぇからな!」
スカーレットが、シルバーから引き剥がれた時、スカーレットのガンドレッドで、シルバーを撃つ。
「死ねやぁ!」
「さっき銃から出るのは普通のタマだと思ったから切ったが、切らない方が良さそうだな、」
シルバーが弾に当たる瞬間にレーヴァンディアの側面で血の弾を全て付着させ、ライトニングで高速で血を乾かせた。その間まさに光の速さの如く。
「あ?何が起こった?て、これさっきも言ったわ!ムカつくぜ!」
スカーレットのガンドレッドがだんだんと、形がうねうねと変わり、スナイパーライフルが3m位のレールガンへと、変わった。
「……レールガンは聞いてない。」
シルバーが、レールガンを見て口を開きながら思考が停止する。
「シルバー!思考停止してる場合ちゃうでな!はよ動かんかい!」
シルバーが「は!」とした時にはレールガンが放たれる瞬間だった。
「グッパイシルバー♡」
スカーレットのその言葉と同時にレールガンが放たれる。
「くっそ!避雷針立てるか盾で防ぐかの二択だぞ!」
「しゃーない、わしが本気見せちゃるわ…来い、アルヴァトリオン……」
アルヴァトリオンが、ブンブンと回りながらソフィの手の中に収まり、ソフィが、そのアルヴァトリオンを放たれたレールガンの弾に突き立てた。
「ソフィ!それじゃいくらなんでも無理だろ!それだったら俺のレーヴァンディアの方がマシだぜ!?」
「まぁ見てな!そろそろ来る!」
レールガンの弾がソフィのアルヴァトリオンにぶつかった瞬間、レールガンの弾が全て消えた。
「あ゛ぁ゛!?俺のレールガンはどこいったァ!」
スカーレットが地面の石を蹴りながらかんしゃくを起こすと、ソフィが
「あぁ、全部空気になった。」
と、言った。
「ソフィ…お前そんなすごい能力だったんだな…てっきり治療とかの類の能力だとばかり思っていたわ…」
「そんなわけないやん、ちゃんと戦えるでな〜」
シルバーと、ソフィが話しているとスカーレットがものすごくキレたと思いきや、スンと、なった。
「もういい…お前ら、2人ともぶち壊す…」
スカーレットが首に爪を立て首に指を突き刺しながら言う。
「何やってんだあいつ。」
「自滅…て訳でもなさそうやな…」
「血の戦士…解放!」
スカーレットがそう会うとみるみるうちにスカーレットの肉体が弾けていき最終的には人の形をした血の塊となった。
「おいおい、あれって力が増しましたよ的なやつか!?」
「そんなもんじゃないですよ!戦士の解放です!力が増しましたよ、てもんじゃないですよ!」
シルバーとソフィがスカーレットから、目を離し再びスカーレットの方を見ると人型の血の塊が100体以上に増えていた。
「ッ!?ライトニング!」
再びライトニングで光速になり、周りが止まった。
「ライトニング、フルバースト!」
シルバー両手の手のひらを前に突き出しデカいビーム砲のような技を繰り出し終わった時ライトニングの光速が終わった。
「ハァハァ、流石に消えただろ…」
「また、意味わからん能力使ったんか、わしが一瞬わからんくなるからやめてや!」
ソフィがシルバーに向かって怒る。
「ゴポ…ゴポポ……」
「まだ生きてんじゃねぇかよ……根こそぎ吹っ飛ばしたんだぞ……」
「あいつ、声帯が無いからゴポゴポ言ってる…気持ち悪!」
約100体のスカーレットが違う種類の銃のガンドレッドをシルバー達に向け撃ちだした。
「やばい…ライトニング!」
シルバーがソフィと一緒に光速で動き弾を全て回避する。
「ゴポポ……」
スカーレットの半分が撃つのをやめ、血で作った刀を持ちシルバーの元へ走っていく。
「おい!ソフィ!必ず弱点があるはずだ!とにかくあの血液人形をどうにかするぞ!」
シルバーがソフィに言うとソフィが案を出した。
「もしかしたらあいつは心臓がなくても問題ないだろうけど脳みそはどこかにあるんじゃないか?」
「…確かにぃ〜そうなれば話は簡単になる!」
そう言うとシルバーが弾を避けるのをやめる。
「ソフィ!向かってくる奴は頼んだ!」
「任せろぉ!全部空気にしてやる!」
ソフィが、向かってくる血液人形をアルヴァトリオンで戦い、シルバーは後ろで弾を消しながら細い線状にしたライトニングを無数に放ちスカーレットの脳みそを探す。
「ゴポポ……!」
スカーレットが、シルバーを中心にし銃と刀で襲いかかる。
「体が血液なら全部わしが消しちゃるわ!」
大量に押し寄せるスカーレットをソフィが全て消していきその間弾は、全てソフィが当たり当たった部分を速攻で治すを繰り返しシルバーを援護する。
「ソフィ!もう少し待ってくれ!」
「こんなんだったら何時間でも何年でも持ちますわぁ……やっぱ嘘!普通に弾は痛い!」
スカーレットの数の暴力にソフィ1人で戦い、シルバーはスカーレットの脳みそを探しながらライトニングを打ち続け、そしてついに。
スカーレットの脳みそを貫いた。
「お!脳みそあった!で、もう貫いた!」
貫いた瞬間、血液人形が一瞬ピタリと止まりただの血液と戻った。
「よし、俺らの勝ちだな…」
「やったね、シルバー!てか、シルバーてなんの戦士なの?」
勝利した事で喜ぶシルバーにソフィがそう問いかける。
「ん?戦士?あぁ、実は俺知らないんだよね、自分がなんの戦士なのか、最初は間違えて送られてきたのかと思ったけど多分ここにいるやつは全員なんかしらの戦士なんだろうな。」
と、シルバーが説明し、ソフィが「そっか。」と返した。