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2:知らぬ間に売られていました。よん。

「あなたたちを捨てたわけじゃないのよっ。ほら、旦那様が病気だからお金を稼がないとって思って」


 まぁ、貧乏でしたからね。


「一度も帰って来ないままで、お金を稼いだからなんだと言うのです? この家に稼いだお金を入れてましたか?」


 情に訴えようとする継母に異母弟は冷たく返しますね。


「そんな言い方しなくても……。お金は、その」


 入れてないですよね。私と執事でお金の管理していましたし、送金されて無いし持って来ても無いです。言い訳が続かないですね。


「どうせ、自分のためだけに使って私たちのことなど思い出しもしなかったのでしょう。今さらノコノコとやって来た理由もお金が無くなり行き場が無くなったからでしょうけれど、貴族法では平民のままで結婚したあなたは、父上が亡くなった時点で平民に戻ったので、私が継ぐこの男爵家とは無縁の人間です。ここにいらっしゃる、国王陛下の意向を受けられた後見人様が立会人ですよ」


 お金のことを追及されて口籠った継母に、畳み掛けるように異母弟が次期男爵家当主として絶縁宣言してます。

 えっ、えっ、と戸惑う継母。


「あなたは貴族では無いの。法律で決まっていることよ。私の家族は夫の家族と弟であるキィ、そして何より私たちを見捨てずに追い出すこともしなかった偉大なお姉様。弟のキィも婚約者とその家族、私とお姉様が家族だと思ってるの。あなたは他人よ」


 ええと、偉大ではないわよ、私。

 そして異母妹も追随して大きくて太い釘を刺してる辺り、本当に実母なのに嫌っているのね……。


「な、なんてひどい。私は母親よっ」


「家出しといて、十五年も放置しておいて何を今さら。どうせ、貧乏から脱した男爵家に父上が居なくなったことで金をせびりに来たのでしょうが、生憎とアンタみたいな女に出す金なんて無いですから」


 喚き出した継母に、異母弟がフンと鼻を鳴らして拒否してるわね……。


「お金なら大丈夫よっ! この地味で可愛くもない娘を売ったお金があるから!」


 ……私を指差すのは止めてください。

 というか、えっ、私、売られているの? 父の許可も無いのにどうやって?


「はぁ? 姉上を売った? お前、何を頭に虫が沸いたような話をっ」


 あ、異母弟がキレたわ。


「お姉様を売ったですって? アンタが娼婦になればいいでしょうが!」


 ああ異母妹もキレてしまったわ。


「し、娼婦だなんてっ。貴族の妻がなれるわけないじゃないのっ」


「いえ、あなたは貴族ではありません。王城文官の私が証言します」


 継母が喚いたところで後見人のレンホさんが冷静に口を挟んできました。レンホさん、奥様と娘さんを大切にしているから、継母の自分勝手さに怒っていらっしゃるのかしら……。


「な、た、他人が口を挟んでこないでっ」


「国王陛下より命じられてこの男爵家に関わっている者です。他人ではありません。あなたは国王陛下の命に逆らうと? 罪人として捕らえられますが」


「ひっ……」


 罪人の言葉か国王陛下の命に逆らうという言葉に恐れを抱いたのか継母が黙りました。


「伺いたいことがあります。義姉上を売ったとはどういうことですか」


 これまで黙っていたドレイク様が口出ししてきましたね。……あら、だいぶ低い声で威圧的ですけどドレイク様も怒っていらっしゃるのかしら。


「あ、アンタは何よ」


「私はカティの夫で近々子爵家当主となります」


「し、子爵……」


 男爵家より上ということは理解出来てるようで良かったです。

 そして、私も売られているという意味を知りたいですね。


「あの、その……。夫が死んだわけだし。私の産んだ子じゃないし。焦茶色の髪と同じ色の目をした平凡な色合いの地味な子だし、私の子と違って夫に似た可愛いとは言えない顔の子だから……売っても問題無いかなって」


「問題あるに決まってるでしょう! 私たちの姉上を売るとかっ、お前こそ身体を売って稼げばいいだろうにっ」


 ボソボソと喋る継母。

 まぁ嫌われていなければぶたれたり、腕を抓ったりされてないわよね……。

 でも売られるとは思わなかったわ。

 そして異母弟が憤慨しまくってるわ……。


「そんなっ。母に対して酷いじゃないの!」


「酷いのはアンタよ! お姉様を売るとか!」


 異母妹もすかさず切り返してますね……。


「というか。契約書を見せてください。物によっては破棄出来ますし」


 レンホさんが冷静で有り難いわ。

 私、今、自分が継母に売られたという事実にちょっと衝撃を受けていて他人事な気持ちになってしまっているし……。


「契約書……」


 継母は、国王陛下の意向を受けたレンホさんに、それこそ威光を浴びているのか、素直に出してますね。


「これは……無効になりそうですね。契約内容は、オリーヴ嬢をユジェン前伯爵の後妻に、というもので、契約者の名前が書いてありますが、日付が男爵が亡くなった後なので、あなたが契約しても平民としての契約である以上成立しません。但し、この金額のお金が使用されていなければ、ですが」


「お金なら無いわ……。使っちゃったもの」


 レンホさんが契約書は無効と言いつつ、支払われたお金が使用されていると厄介、と言ってますね。

 そして案の定使ってしまったのか。


「は? 使っちゃった? ふざけるな! 勝手に姉上を後妻と差し出す契約など無効だっ! お前が使った金額を返せっ」


 異母弟の憤慨ぶりを見てると血管が切れそうで怖いわ……。

 そして私も契約書を目にしたけれど、この金額を全額使っているのなら、継母が返金するのは、難しいんじゃないかしら。結構まとまった額よ、これ。


「そんな……」


「この金額だと娼婦として身売りしても足りないかもしれませんね」


 継母が異母弟に怒られて肩を落としているところへ、レンホさんが溜め息をつきながら言ってます。そうですよね、結構な金額ですからね。

 ……どうしましょうか。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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