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2:知らぬ間に売られていました。さん。

 取り敢えず話が一段落したところでお茶を四人で飲みながら、異母妹の新婚生活について尋ねましょうか。

 後見人の方が来るのが先か、継母がやって来るのが先か。

 ……出来れば後見人の方には知られたくないですけどね。醜聞ですから。


「キーシュ様、後見人様がいらっしゃいました」


 ……やっぱり世の中そんなに上手くはいかないわよね。先にいらっしゃいました。


「ああ良かった。知らせておいた甲斐があった。早々にいらしてもらえた」


 うん? あなた、後見人の方に継母のことを知らせていたってことなの?

 この疑問は、執事に案内されてきた後見人の方が「手紙を読みましたよ、平民の行方不明だった元後妻が訪れるとか?」という言葉と共に現れたことで解決しました。いや解決じゃないのよ……。


「ええそうです。レンホさん。貴族法では戸籍上もう親子でもないはずなのですが、そういうことは分からない人なので後見人としても口添えを頂けたらと思いまして」


 レンホというのは後見人の方の名前。国王陛下が選定して下さったこの文官さんは、伯爵家の出身。現在のとある伯爵の弟にあたる方。

 成人すると継ぐ爵位の無い貴族出身の男女や貴族の後継と結婚出来なかった男女は、須らく平民に戸籍が移ります。

 その中で王城勤務の武官や文官或いは侍従や侍女などは全員一代限りの爵位を得られます。


 レンホさんは伯爵家出身の平民に戸籍が移る前に王城の文官として登用されたので、一代限りの爵位をお持ちの貴族。当然貴族法にお詳しい。

 然も国王陛下から後見人に選定されるだけあって優秀なお方で、宰相補佐の補佐というお偉い方だ。


 年齢は三十七歳だったか。

 宰相様が六十歳に手が届く年齢で、国王陛下が退位され、王太子殿下が国王の位に就かれてから大体五年くらいを目処に新たな宰相が誕生するのが我が国の通例。

 当然新たな宰相様は補佐の中から選ばれる。現在は三人の補佐がいらして、皆さま五十代目前。誰が宰相として選出されてもおかしくないようだ、と商会の会長が情報を掴んでましたね。

 秘匿情報ではないから、私の耳にも入ったのだろうけれど。


 さておき。

 レンホさんはその三人の補佐の方全てを補佐する立場のお方。つまり、どの方が宰相に選出されてもレンホさんが新たな宰相の補佐に選定されることは確定という凄い方。

 この辺りも商会長経由で耳にしている情報。そんな凄い方が貧乏男爵家の後見人を王命とはいえ、引き受けて下さったことは本当に感謝しかない。


 そのような凄い方だけに、我が家の醜聞を知られたくなかったのだけれど。

 でも、完全な第三者の後見人の方が立ち会ってくれるのであれば、継母が何やら騒ぎ立てても我が家は困ることが無いのかしら。


 そう考えると異母弟の判断は正解だったのかもしれないわ。


 私がそんなことを考えた直後でした。

 レンホさんにも同席して頂いて手紙を読んでもらい、後見人としても文官としても貴族法に抵触することを宣言します、と頼もしいお言葉をもらったところで、執事が少し不機嫌さを露わにした声で、継母がやって来たことを告げたのは。


「キーシュ、カーティミー! ああ、あなたたち大きくなって……」


 ニコニコと笑いかける継母を見た私の感想は、老けたな……でした。まぁ十五年も経過していれば、老けますよね。

 ただ、ピンクブロンドの髪もイエローグリーンの目も変わらないし、双子が歳を取った顔と言える程度にはやっぱり親子なので似てます。

 でも目尻の皺とか、手荒れとか見るに、それなりに苦労したのかもしれませんね。


「近寄らないでもらいたい。あなたは戸籍上、平民で私たちとは無関係なので」


 ……あら?

 貴族家の当主としては正しい対応だけど、異母弟ってこんなに冷たい声を出せたのかしら。


「な、何を言ってるの。私は母よっ」


 声を荒げる継母。


「私たちを捨てて病のお父様も見捨てて、お姉様に嫌がらせを行い手を挙げていた挙げ句、家を出て行った人の何を母親と見るべきなのでしょう。私たちを見捨てなかったのはお姉様ですわ」


 異母妹も随分と冷たい声ですね。やっぱり苦労をかけたし、捨てられたって気持ちが全面に出ているところから察するに、色々思うところはあるのでしょうね。

 そして私のことを持ち上げてくれてありがとう。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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