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1:弟妹に婚約者を見つけました。さん。

 結婚しない私ですので、執事と共に領地を見て周り、時には後見人の意見を聞くために後見人にも領地へ行ってもらい、男爵家の領地では芋が主要農産物なので、芋を特産品にするためにどうするのか、ということを祖父の側近だった人と話し合ったり領民を何人か招いて話し合ったり。意外と忙しい日々を送ることになりました。


 同時に貧乏男爵家なので、我が家に家宝という物も存在しないし、辛うじて家を維持して領地を維持出来るだけの金銭しかないので、働きに出ました。

 領地のことは私が素人考えで発言しても内容を吟味して計画を立てて実行に移すまでに至るのは、彼らじゃないと出来ません。


 学園に通っていたのなら、もっと知識が得られたかもしれないし、領地の発展に繋がる何かを発見したかもしれないけれど、それは所謂「〜だったら」とか「〜してれば」という、たられば、というもので。無いものねだりです。


 無いものは無いのだからねだっても仕方ない。


 そこで後見人の方に仕事探しを頼んでみました。

 一応下位貴族なのでそれなりに教育を受けさせてもらっていた私は、後見人の方が「これなら」と納得出来るだけの常識とマナーが身についていたようで。


 それなりの規模の商会で売り子として店先に立つことが出来ました。

 もちろん最初は勝手も分からず、右往左往で商会の人たちに教えを乞いながらではありましたが。


 それからふた月を過ぎた頃。休憩時間に気分転換を兼ねて淑女教育の一環で習っていた刺繍を簡単な小物入れに施していました。

 双子の誕生日プレゼントすら買ってあげられない家だから毎年、私が双子に手作りしてました。もう十一歳の双子たちに手作りプレゼントなんて恥ずかしいだけだろうとは思うものの、双子たちが楽しみにしていると分かれば、作り甲斐があります。そうして出来上がった品を、商会長が目にして。


「オリーヴちゃん、刺繍の腕前が中々だね。ドレスの刺繍ってやってみない? その分給金を弾むよ」


 という一言をもらい、夜は商会お抱えの刺繍工房で二時間ほど働かせてもらえることになりました。

 そして商会長のお勧めとして何点かのドレスを下位貴族の令嬢や夫人が購入して気に入ってくれたことで私の顧客になってもらえました。


 となるとお給金は更に弾んで。


 働き始めて二年のうちには、少しずつスープのみで中身が無かった物から野菜が入ったスープに、そして肉もいくらか入るような物に我が家の食卓が変わり、執事やメイドたちどころか後見人まで私のおかげだ、と喜んでくれました。


 食事が改善され、私も双子も少しは新調した服を買えたり、執事やメイドに少しだけ給金を上乗せしたり。ということが三年経過した頃には出来るようになって。


 ついでに素人考えで発言した領地の農産物である芋の改良も上手くいって、甘みの強い芋が出来、芋を使ったお菓子まで出来て、それが少しずつ売れ始めました。

 このお菓子も私を雇ってくれている商会で試しに売り出したら売れるようになって、商会長が更に喜んだし、領民にも少しずつ還元出来るようになり。

 私の給金もまた少し弾むことになって。


 自分の結婚は諦めましたから。

 異母妹の持参金用に少しずつ貯めることまで出来るように。持参金がそれなりにあれば、婚家で異母妹が大切にしてもらえるわけだし。

 異母弟は嫁いで来てもらうわけだから、このまま領地の発展と維持を頑張ってもらうしかないんだけど。


 あと、双子の学費にもなりました。

 学園側は入れなかった私のことを覚えていてくれて、双子が入学する時は、いくらか学費を安くしてくれました。学園側に支払った返金されなかった私の入学金分だけ安くしてくれたとか。有り難い。


 そうして双子が学園に入って少しした頃、今度は双子の婚約者探しを始めました。


 双子が見つけてきてくれればそれはそれでいい、と思っていたけど、万が一を考えてこっそり。


 異母弟の方は後見人の方が嫁入りしてもらえそうな令嬢をピックアップしてくれて。

 異母妹の方は商会長の力を借りて探しました。


 なんだかんだで学園卒業する間際になっても双子は相手を見つけなかったので、私が話をすると、双子は私が探してくれた相手なら、と喜んで受け入れてくれて。


 異母妹の嫁ぎ先は子爵家の嫡男。良い縁談。

 異母弟のお相手は男爵家の長女。良い縁談。


 そうして成人年齢である十八歳に達した双子は。

 異母弟より先に異母妹が、本日結婚しました。

 異母妹の晴れ姿に安心した私は、気付けば二十五歳を迎えていました。


 異母弟も二ヶ月後には結婚するので、その間に私は生家を出て商会長に紹介してもらった一人暮らし用の借家で暮らしながら平民として、手に職を持った独身女性として生きていく。

 結婚は貴族子女としては諦めましたが平民ならばゆっくりとお相手を見つけられるかもしれない。そんな希望を持ちながら。

 ーー生きていく、はずでした。


 僅か十日後。

 この計画が崩れるなんて私も使用人たちも後見人の方も領地を守ってくれた祖父の側近だった人も、そして双子も、誰一人として思いませんでした。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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