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12:穏やかな日々。と思っていたら。に。

 オレインさんが領地に帰られてからまた暫く。


「今年の誕生日はお祖父様が居ないけれどおばあちゃまが居るのね」


 朝食の席にてアディが嬉しそうに言って、もうすぐアディの誕生日だと知りました。

 料理長がアディの大好きなビーフシチューと大きなケーキを作るそうです。


「アディ、欲しい物はあるかしら」


 誕生日が近いと聞いてしまったのだからプレゼントを準備したい私が尋ねたらアディがうんっと大きく頷きました。


「子犬がほしいです、おばあちゃま!」


 子犬。

 それは私がプレゼントとして準備出来る範囲では無いですね。アルバン様に確認しないとならない案件です。どうしましょうか。


「では、お父様におねだりしてみたらどうかしら」


 まぁ無難にそう言うしか出来ませんね。


「お父様に?」


「ええ。お父様が許してくださるのなら、子犬を連れてきましょう」


 一応商会に勤めていた私は、犬を飼っている知人も数人知っています。その中のどこかで子犬が産まれているのではないか、と思うのです。


「分かりました。お父様にお願いしてみます」


 早速アディはリサさんにアルバン様の休憩時間に話せるよう、頼んでいます。リサさんが直ぐにアルバン様の執務室へ足を運んで行き。

 夕食の時間で話を聞く、ということになったとのこと。アディは既にワクワクした顔で夕食の時間を楽しみにしていて。


「それまではお勉強をしましょうね」


 私は苦笑しながらアディに淑女教育の勉強を受けるように促しました。尚、淑女教育は私が教えるわけではなく、きちんとした家庭教師。それはそうです、男爵家の私が伯爵家の令嬢に教えられることなんてないですし。

 抑々、下位貴族である男爵や子爵と上位貴族である伯爵家以上の教育は結構違うというのは聞いたことありますし。

 学園でも下位貴族クラスと上位貴族クラスで分かれるくらい教育内容は違うそうですし。とはいえ、成績順なところもありますから、下位貴族の子息子女が上位貴族のクラスに食い込むこともあるそうですから、まぁ一概には言えないみたいですけどね。


 さてその夕食時。

 アディはアルバン様に子犬を誕生日プレゼントとして所望しました。


「子犬か。構わないけれど、心当たりが無いな」


「アルバン様、それでしたら、少々伝手がありますので尋ねてみます」


 私が口を挟めばアルバン様が目を細めて嬉しそうに頷く。アディの願いが聞けそうだから、でしょう。


「オリーヴさん、よろしくお願いします」


「ええ。アディ、でも子犬が産まれているのかどうかは分からないから、もしダメだったら違うところを探しますので誕生日に間に合わないかもしれないわ。それでもよくて?」


「はい、おばあちゃま。私待ちます」


 そんなわけで、明日商会長に手紙を出して打診してみることにしました。

 ……そういえば、私が伯爵家に来てから変なトラブルが起きても困ると思って、あまり手紙を出していませんでしたね。

 商会長に心配をかけているでしょうし、子犬の件だけじゃなく、色々と近況を書いておきましょうか。

 だって私を売ったという継母に怒ってくれて、私を買ったお金を自分が出すとまで言ってくれた人ですから。

 心配をかけていることは分かっていても当たり障りの無い内容でしか手紙を書けないと思って、元気にしてる、程度に連絡しただけですし。

 下手に商会長と連絡取って、アルバン様の不興を買ったら……と思うと中々手紙も書けなかったですし。

 今ならアマーニ様が亡くなったこととか私の現状とか書いても大丈夫だと思うのです。


 仮に伯爵家の使用人に手紙を検閲されたとしても困らない内容のつもりですし、アルバン様が私の手紙を目にしても不興を買うことは無いでしょう。

 その上で子犬の件を打診しておく方が会長も安心して探してくれるはずです。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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