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7:すれ違っていたようで。いち。

「アンタ……じゃなくてあなた?」


 アディナ様がなんて呼べばいいのか分からないような顔で私を見る。……確かに。

 オリーヴと呼んで欲しい、というわけにもいかないわよねぇ。


「お祖母様かしら」


 私がポツリと溢すとアディナ様は不思議そうに首を傾げた。


「おばあさま? でもオバサンじゃなくて、あなたは、リサと同じくらいじゃないの?」


 リサさんが私と同じ年齢くらいに見えるのか、私がリサさんと同じ年齢くらいに見えるのか。

 そこを突っ込むのはやめておく方が平和かしら。


「リサさんは十七・八歳?」


「私は十六です」


 成人年齢に達していなかったか。でもこれくらいの年齢って大人に見られるのは嬉しいわよね。白い肌がほんのり赤く染まって照れているところは可愛らしいわ。


「アディナ様、リサさんと私は九歳年齢が違いますね。私は今年二十五歳ですから」


 私の年齢を告げればアディナ様だけでなくリサさんまで驚いた顔です。うん、内心は聞かないでおくわね。


「そうなのね。じゃあおばあさまでいいの?」


 年齢に納得してもらってなにより、と言うべきかしら。いや、年齢からすれば「おばあさま」は、ちょっとキツイけれど。まぁ書類上は義祖母に当たるわけだし、自分から「お祖母様かしら」と言っているわけだから「おばあさま」で良いのよ、うん。


「アディナ様、おばあさまではなくておばあちゃまというのはどうでしょうか。可愛いと思います」


 私がそれでいい、と言う前にリサさんがそんな提案をするとアディナ様が“可愛い”という表現が気に入ったようで、コクコクと首を縦に動かす。


「それがいいわ! おばあちゃま。おばあちゃまってよぶわ!」


 可愛らしい呼び方を気に入ったみたいだし、まぁ私もその方が可愛いと思うので、受け入れることにした。そこにゼスが改めて戻って来て。


「オリーヴ様は、物事の本質を捉える目でもお持ちなのでございましょうか」


 と言い出した。

 どういう意味か全く分からないわ。


「そんなものは持ち合わせてないと思うわ」


「併し大旦那様のお気持ちをご理解されていたようでしたから」


 ゼスが複雑そうな顔でそんなことを言う辺り、おそらく前伯爵様はアディナ様にお会いしたかった、というところかしら。


「アディナ様に前伯爵様もお会いしたかった?」


「……はい」


「つまりゼスが勝手に前伯爵様と孫娘の交流を断っていたのね?」


「左様ということに、なりましょうな」


 大切な前伯爵様のためを思っていたのに、実はそうでは無かったと分かって、ゼスは軽く息を吐く。気持ちを切り替えてアディナ様に目を向けた。


「アディナ様、大旦那様がお会いなさるそうですがきちんとご挨拶出来ないようでしたら、次からはお会い出来ません。よろしいですな」


 あー、なんとなくゼスとアディナ様の関係が見えてきたわね。厳しくすることがアディナ様のためだと思っているゼスと、甘えたい盛りで厳しくされると反発してしまうアディナ様、といったところかしら。アレだわ、我が家の執事と双子たちを思い出すわね。


「ゼスなんて嫌いっ! 出来るもん!」


 あー、益々双子たちの小さい頃を思い出すわね。


「アディナ様、嫌いと言うのではなく、私は出来るから見ていてください。と伝えてみてください」


 膨れっ面のアディナ様に目線を合わせて言う。


「私は出来るから見ていてください」


 素直に言い直す辺り、やっぱり根は素直なのね。


「ゼスも出来ないようなら、ではなくて、出来るか見ていますね、と伝えることを勧めるわ」


 私とアディナ様とのやりとりの後でアディナ様が素直に言い直したことに何か感じ取ったようで、ゼスがまた複雑そうな顔をしてから。


「ご挨拶が出来るか見ていますから、よく見せてくださいませ」


 改めてアディナ様に寄り添うような言い回しに変えたら、アディナ様が「うんっ」と元気いっぱい、笑顔いっぱいで返事をした。

 淑女教育でいくと減点だけど、今の状況なら許されるかしらね。

 ゼスも苦笑したけれど、注意しなかったし。

 さて、それじゃあ改めて夫にお会いしましょう。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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