プロローグ
「結婚おめでとう、カティ」
「ありがとうございます、お姉様」
異母妹のカーティミーが今日結婚します。貧乏男爵家の我が家と子爵家の嫡男なんて縁組は本当に奇跡的でした。
カーティミーの隣に立つ裕福ではないけれど、堅実な領地経営で借金も無い子爵家の嫡男・ドレイク様は、嬉しそうに笑うカーティミーを微笑ましそうに見ている。
素敵なお相手で良かった、と心底思う。
「あなたとキーシュには本当に苦労させられたわ。私、あなた達双子が嫌いで憎かったのよ」
ようやく本音を言える、と口にすればドレイク様がギョッとした顔で私を見て、笑みを湛えながらも目が笑ってない私に気づいたのか、カーティミーを守ろうと半歩前に出てきて私の出方を窺ってます。それからチラリとカーティミーを見て心配そうな表情を浮かべる辺り、ドレイク様はカーティミーを大切にしてくれるようで安心しました。
そして、私の本音を聞いたカーティミーは。
「知っていましたわ、お姉様。でも。私もキーシュもお姉様のことが好きですので諦めてください」
結婚式を挙げる幸せな花嫁の笑顔のまま、私の本音に動じることが無くて。
ーー逆に私が動揺してしまいました。
「知っていたの?」
「もちろんですとも。でも。お姉様は私とキーシュを見捨てなかった。今日を迎えられるのは、お姉様が私たちを見捨てなかったから。この一言に尽きますもの」
……何も知らずに呑気に笑っているだけの異母妹異母弟だと思っていたけれど、どうやらその認識は違っているらしいことに気がつきました。
「何も知らないと思っていたのに」
「知らないこともありますけど知っていることもありますわ。そして私たちはお姉様に見捨てられなかったからこそ、生きているのですから」
……本当に知られていたみたいね。
お読み頂きまして、ありがとうございました。