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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
最終章 魔王誕生
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第九十四話 一つの世界が今変わる


「俺は携帯電話会社かよ。じゃ、俺は行くからな」


俺は移民局から出てエース本体のいる官邸へ向かった。ここならばジャマは入らない。

そこにある来客用ソファで寝転んで、さっきから抱っこしていたベルンハルトにはこう言っておいた。


「ハルト、問題があれば起こしてくれよ」


「はい。僕もパパと寝ます。分体を操作することにしましょう」


「わかった。一緒に寝よう」


ハルトの全身を右腕で抱きながら、分体操作が始まった。戦争はまず間違いなく勝てる。

問題はお互いの損耗なしに勝つことだ。言うまでもなく俺は隣町も俺のものにしたい。

ということはもうすでに俺のものみたいなものなので、隣町の人間を傷つけず、建物も壊したくないのが人情だ。

むろんこちらの損害は計算に入れていない。損害されようもないからである。


俺が出て行かないと話が出来ない。話がつかないとさっさと戦争を終わらせることは出来ないからな。

分体の俺が向こうで起きると案の定、俺の前にハルトの分体がおり、俺の顔を見つめていた。


「パパ、どうやら困っているようですね兵士さんたち」


「どういうことだ?」


「それが――」


ハルトが言いかけた時、俺の近くに停まっていた装甲車から女が顔を出した。


「出動はした。あとはお前の命令を待つのみだ」


「お前かい!」


と俺はツッコんでしまった。装甲車から頭を出しているのは武装したエグリゴリである。

しかも助手席に乗っているのもエグリゴリで、さらに遠くに見える装甲車から頭を出しているのもやっぱりエグリゴリである。


「言っておくが私に娼婦は必要ないぞ」


「聞いてたのかよ全く。確かに、俺たちの兵力をお前に頼るのは合理的だけどな」


「ところで、娼婦はどうする?」


「しょうがないな。俺も約束は守るたちでね。女たちには誰か別のやつをあてがうとするか。

この戦争が終わったら連絡する。ではエグリゴリ、俺を乗せてくれるか。

出来れば本体のイブのところに」


「もちろん本体のイブは私だ。乗れ」


「あ、はい」


俺はイブに言われて装甲車に乗り、そこから頭を出して車を発車させてもらった。

そのまま車はゴロゴロという音を立てながら進む。この本体のイブに操作された分身体で装甲車両師団は形成されている。

それゆえの一糸乱れぬ編隊を組んで進み、そしてついに、領主の館を取り囲んだ。


兵士はどこからも出てこない。当然俺は横のイブにこう言った。


「イブ、この街の人口は五千人ほどと聞いたが、ここのマップはわかるか?」


「うむ。この領主の館とかいう建造物はこの街の中心にある。

水や食料が備蓄されており、兵糧攻めにもある程度耐えうるようだ」


「お前、俺が兵糧攻めしようとしてるのわかったのか?」


「いや。私が装甲車両で囲んで兵糧攻めしようとした。

お前ならその意図を理解したはずだと思ったからだ」


「通じ合ってるよなぁ俺たち。な?」


「なんだこの手は?」


「なんでもないです……」


俺は車を運転しているイブの肩になれなれしく手を置いたところ、イブはこれを冷たい目で見おろしてきたのでこれを慌てて引っ込めたのだった。


「兵士が出てこないようだな。どうする。時間がかかっても兵糧攻めするか?」


「なあイブ、似ていると思わないかこの世界」


「なんだ?」


「お前の治めていたスフィアにだよ。この展開、どこかで……?」


すると、俺たちが囲んでいる屋敷の中から一人の男が出てきた。

背が高く身なりがよさそうな髭の男。まさしく他人を踏みつけにして甘い汁を吸うのが得意そうな外見の男だ。


「そこのお前、投降するというのであればお前を悪いようにはしないぞ?」


「助けてくれ、俺は騙されていただけなんだ、本当なんだ!」


「ああん?」


周章狼狽した様子の男は息せき切りながらこう続ける。


「領主を……領主を代行すれば権限はくれるからって、だから!」


「何を言ってる」


俺たちが会話している間にも男はこっちに寄ってくる。まあ、減るもんじゃないので話を聞いてあげることにした。


「お前は話に聞く暴力団の長だな?」


「そのようなものだ。本当に俺はその、なんていうか、利用されてたと言うか!」


「大体のやつは命乞いの時にそう言う。まあ殺すのはいつでも出来る。

俺がお前の生殺与奪を握っている。心して話すことだ。どうした、命乞いしてみろよ?

俺がお前を助けたくなるような話をしてみたらどうだ?」


「領主はセキュリティなんだ!」


「だろうな。察しはついていた」


「それと俺の命を握ってるのはお前じゃない、領主だ!」


「なんだって?」


「後ろを見ろォ!」


男が俺の後ろを指さすので見てみると、包囲していたつもりが逆に包囲をされていた。

俺たちの装甲車両の隊列の後ろにはセキュリティ・レベル5くらいと思しき連中がおり、こちらを包囲している。

領主がそれを操っているものと考えられる。俺はこれを見てもため息一つしか出てこなかった。


「おいおい。たったのこれだけか。囲んでいるのはせいぜい数百といったところだ」


「助けてくれ。こ、この男の首を差し出せばいいんだな!」


と俺の首根っこをつかんだ男は、俺が分体であることを悟らざるをえなかった。

俺の体も、レベル5を分体の素体としているためあのセキュリティ群とは仲間みたいなものである。

向こうの攻撃は滑稽としか言いようがないものだった。


「ククク、面白い。ひどく面白いぞ。楽しいなぁ。イブ、楽しいだろう?」


「圧倒的な力を自明とし、その力で弱者を思うがままに蹂躙する。

それが今から起こることだ。それのことを言っているのだとするなら、確かに快感だ」


「おっ、また意見が合ったようだなイブ。お前はそんなに俺のことが好きか。しょうがない奴め。

それではここでリリスに電話をかけるとするか」


俺はイブの頭を軽く撫でた後、秘蔵っ子であるリリスに通話をつなげ、出動を命じた。


「リリス、仕事だ。向こうがついにセキュリティを出してきた」


「当然、パパが前から想定していた通りですね」


「ああ。お前のことだけは絶対に狙わないはずだからな。

多少の危険はあるが、俺は娘であるお前を戦場に出す決断をした。

責任は俺がとろう。俺のところへ来い、リリス」


「了解しました、総督。私の力が必要ならば」


リリスは頼もしい返事をして通話を切り、分体の俺も続いて目の前で困惑顔の男にはこういった。


「お前の命は保証できないが、一つ事実を教えてやろう。領主は絶対に俺たちには勝つことができない」


「は……?」


「なぜなら、俺たちは最強で無敵だからだ。領主ごとき俺にとっては釈迦の手のひらを飛び回る斉天大聖ですらない」


「は……?」


男にはわからないたとえ話をしてしまって少し反省した後、俺は横のイブにこう言った。


「さて、あいつらは俺を狙ってくると思うか?」


「まさか。リリスを呼び出す以上、私たちがここにいる意味もあるまい」


「ああ。イブは俺と一緒にこの走行車両を操縦して向こうへ帰るんだ。

その間にすれ違いでリリスが来る。俺の本体はその後、悠々とこの街を掌握することにしよう。

お前の分体は街を軍事的に制圧するときに使う。今は操作しなくて構わないだろう」


「了解した」


「では行こう。セキュリティは人間しか殺さないはずだからな」


領主が呼び出したレベル5とかいう連中であるが、俺とイブが装甲車両で横を通り過ぎても何も反応せず、全くの無視である。

そしてなんと、そのまま俺たちはイブと一緒になって装甲車両でエクアドルへ戻ってきてしまったではないか。

装甲車両は適当な場所に停車しておいてまた使うので戻ってきたら空き地に停車した。


この空き地から肉眼で見える場所にはバス停があったのだが、そこにバイクを持ってくるリリスの姿があったので俺は車を降りて駆け寄っていく。


「おーいリリス、ちょっと待て。運転慣れないだろ?」


「あ、パパ。一緒に行ってくれるの?」


「リリスはサイドカーに乗るの好きだろ。一緒に来い」


「うん、大好き」


またまたバイクでエクアドルから隣町へ。その二つの町は特に何もない通路でつながっていてそれを抜けるとすぐのところにバス停がある。

そしてバス停の近くにはご存じ、パブリックビューイングを設置した食料雑貨店や水を売るお店がある。

その周りには俺の知り合いしかおらず、この街に元から住んでいるお客さんは全くいない。

そして俺の知り合いたちにしても多くが店舗の奥に引っ込んでいて、セキュリティに恐れおののいているようだった。


俺は彼らへのあいさつもすることなく、バイクでセキュリティのそばへ近寄る。


そして装甲車両を取り囲む陣形を組んでいるセキュリティの壁のところに到着したところ、さっきは俺を無視していたセキュリティたちが一斉にこっちを見てきたじゃないか。


「うわ、怖っ!」


「キャー!」


さすがのリリスも悲鳴を上げた。セキュリティの顔は無機質な感じで見ていると不安になる造形なので、これがめちゃくちゃホラーだった。

出現したときは別にイブも俺もセキュリティの強靭な体を持っており、最悪攻撃されても別にどうってことはなかった。

だが今は生身のリリスを連れているからな。さすがにビビったが、なんとセキュリティはこれ以上ないほどの服従のポーズをしてきた。


こうべを垂れてひざまずき、リリスに向かって内蔵されたスピーカーからこのように言ってきたのである。


「命令してください。何かお手伝いできることはありますか?」


「お前たちセキュリティは全員私以外の命令を拒否しなさい。今与えられる命令はそれだけ」


「認識しました。命令を実行します」


と言ったかと思うとセキュリティはまるでそのまま永遠にそうしているつもりのように、立ち尽くした。

多分スリープモードにでもなったと考えられる。あるいはデフォルトモードか。

リリスの命令が聞こえるまでこうして全員が立ち尽くしているつもりみたいであった。


しかも見てみれば、屋敷からまた一人誰かが出てくるではないか。

その屋敷からは若い女の子らしき人が出てきており、こっちに走ってくる。

もしや、と思った。あのヤクザの頭目みたいなやつの上に立つ領主ってやつじゃないかと。

その予想は当たったみたいだった。まるでデジャブ。

何から何までスフィアとうり二つというか、縮図みたいなものである。


「あんたが、あなたがあなたが、あなたが……神?」


「いや、何言ってんの?」


リリスに塩対応された女は一瞬恥ずかしがるようなそぶりを見せた後、気を取り直してこう言ってきた。


「申し遅れました。わたくし統治機構のセキュリティ・レベル8でございます。

私はあなた方"ネクスト"の方々のために存在します。何なりとご命令を」


「質問に答えなさい。下っ端に命令したのが聞こえていなかったの?」


「これは失礼を。お手数をおかけしまして誠に申し訳ございません!」


ヘッドスピードが時速一六〇キロメートルに到達していそうなほどの勢いで女の子は腰を折り、ピンと伸ばした指を自分の膝の横あたりにぴったりつけて頭をバッと下げた。


「非常に申し訳ないのですが再度命令を。私に直接!」


「わかった。統治機構を含め、これからはすべて私の命令だけを聞き、他は無視しなさい」


「わかりました!」


「ただし、私があなたに与えたこの最初の命令を私自身が撤回するよう命じたらいつでも解除すること」


「そのことも認識いたしました」


「便利な機能だな。じゃあリリス、俺の言うことは聞かないみたいだから彼女に命令してくれないか。

レベル8がいたらぜひ見てみたかったんでな」


「そうだねパパ。あなた、いいと言うまでその姿勢でいなさい」


「は、こうでしょうか!」


「そう」


リリスも俺もバイクから降りて腰を折ってちょうどうなじが確認しやすくなっているレベル8ちゃんの後ろに回り込んだ。

彼女はうなじのところに"KID E"と刻まれており、これはエグリゴリの専売特許でもないようだ。


「ふうむ。リリス、こう聞いてくれないか。耳貸して」


俺は右腕でリリスの肩を抱くと、その左耳に耳打ち。その後、同じことをリリスがKIDEに言った。


「あなたはエグリゴリなの?」


「そうですね。そう呼ばれていたこともあるようです。呼び名などどうでもいいことですが」


「なるほど。KID Eというレベル8は人間との折衝、監視といったコミュニケーション能力の必要な役目を命じられているようだな」


「そう合点するには早計かもだけどね。これからどうする?」


「とりあえずリリス、あのレベル5とかいう連中はどうする?


「存在されると精神衛生上よくないもんね。博士にでも頼んで撤去させようね」


「わかった。しかしこいつと話をするのは面倒だな。いちいちリリスを介さないといけないようだ。

全く、同じエグリゴリでもイブってノイトラでも差別しない実はめちゃくちゃいい子だったんだなと思うよ」


「あ、そういえばあなた、私はノイトラで同時に例の遺伝子の保有者でもあるけど、あなたには私はどう映ってるわけ?」


「神です。存在意義そのものです。私はあなたのために存在していますから。

ノイトラかどうかなど些細な問題です」


「そう。セキュリティ・レベル5を作るのに必要なノイトラがどこかにいるはず。

私の隣のこの人は私の父、そしてノイトラたちの王。この人の使命は奴隷のノイトラたちを救い出すこと。

もしいるなら居場所を教えて。これは命令です、セキュリティ」


「ノイトラの居住区は人間のものから隔離されています。

人間は空き地に居住区を作り、ノイトラの生み出すエネルギーを乗せたケーブルから盗んで生活しています」


「でしょうね」


「ノイトラの居住区はここから千キロメートルほど行ったところに……早い話がここの隔壁を通って次の区画へ行きます。

その区画がおよそ直径三十キロメートルですが、その向こうにノイトラ居住区はあります」


「いいことを聞いたなリリス。この調子でもう俺から王の座を奪って女王になっちゃうか?」


「バカなこと言わないで。パパの仕事量が私に回せるわけないじゃない。

一人じゃできないから二人でやってるぐらいなんでしょ?」


「冗談だよ。ご苦労だったリリス。帰ったらお風呂でも入ろうか。

俺とハルトと三人でな」


「別にいいけど。しかし向こうの区画が直径三十キロメートルとはずいぶん大きいね。

この区画なんか直径数百メートルくらいしかないんじゃない?」


「向こうの区画はメインのものですから。

人間の住む区画自体はここのほかにも直径十万キロメートル以上にわたって存在しますが、メインの一番大きい区画がそれです。

ここからおよそ百キロメートルほど行ったところにそれはあります」


「そう。じゃあパパ、ひとまずここを掌握したらそっちへ行こうか?」


「わかった。イブ、そこにいるか?」


「呼んだか?」


イブはどうやったのか、装甲車両から降りて俺の後ろあたりにいて呼ぶとすぐ返事した。

よく訓練された賢い犬か何かを飼っているみたいで変な満足感があった。


「イブ、ここのマップを把握することは出来るだろう。

おそらくあそこが造換塔の役目を果たしているのではないのか?」


と領主の屋敷を指さしたところイブは深くうなずいた。


「そのようだな。電波が出ているのがわかる。あそこには過去のデータも眠っているだろうし、当然ここら辺のマップもあるだろう」


「イブ、リリス、これからの計画を伝えるぞ。俺はとりあえずここのマップをイブ、お前にダウンロードさせる。

そしてマップを把握したら、なるべく早くここを掌握し、次のノイトラたちがいるという区画へ移る。

早い話ノイトラたちさえ握ることができればあとは生活のためのすべてを握れるということだからな」


「掌握と言っても五千人の管理、出来ると思う?」


「ククク、今ちょうど彼らの注目をここに集めることに成功したじゃないか。

どうせ勝手に出てくるよ。リリス、このキデとかいう奴の相手は任せたぞ。

戻ったら一緒に風呂でも入るか。混浴風呂で」


「わかった。あなた、とりあえず邪魔になるから、私についてきて」


「わかりました」


「そのサイドカーに乗って。私は反対に乗るから」


「はい」


キデとリリスが乗ったサイドカーをつけたバイクに俺も乗り、イブには装甲車でエクアドルへ帰るように指示。

俺もバス停のあたりに帰り、二人をおろすと、リリスは食糧庫のカギを開けさせてこういった。


「あなたスリープ機能があるんでしょう。そこの食糧庫の中にスリープして眠ってて。

具体的には百年ぐらい」


「了解しました」


はっきり言って、このキデには何の役割もない。イブやエースとは違い、大した情報も持っていない様子だ。

リリスのほかには言うことを機浮きもないみたいだしこうしておくのが最善であろう。

戻ってきたリリスをサイドカーに乗せた俺は、怖がってる元孤児の女の子たちやそれと一緒にいる店長のアンリにこう言った。


「問題は解決した。領主は俺たちがなんとかしたよ。

俺は向こうへリリスを送る。じゃあな」


「我々はいつまでここにいればいいのでしょうか?」


「勤務時間が終われば帰ればいい。リリスには引き続き中継をさせることにしよう。

考えてもみろ。食料配給してた統治機構が死んだんだぞ。

領主の館の略奪が起こり、そのあとはどうする?」


「ここに来るほかないですね」


「うむ。その人たちにはいろいろ説明しておけ。

あとでうちの事務員を派遣して登録作業をさせる」


「はい」


「頼んだ。俺は速やかに帰らねばならないからな」


俺はリリスと一緒に帰った。まずやるべきことは分体を戻しておくことだったので、バイクを戻すついでに自分の部屋に帰った。

言うまでもなく自分の部屋というのは地上におきっぱにしてある旗艦の操縦室横の部屋である。


「コロンビーヌ、起きてる?」


と言いながら部屋に入ったところ、コロンビーヌはベッドには寝ているものの起きていた。


「あなたは分体ですね。本体は?」


「用があるのか。官邸にいるから十分ぐらいで来られると思うが」


「いえ。久々に本体の方とも話したいなって思っただけで」


「悪いな。俺の本体が来た時に限って寝てるんだから。

あ、そういえばその後どうかな。手術したんだったよな」


コロンビーヌは息子のハルトにより、子供を取り出すという恐るべき手術をしていた。

これを人工子宮で育てる。当然帝王切開なのでコロンビーヌはもう妊娠自体することはないだろう。


「順調みたいですよ。博士の管轄している人工子宮で育ってるみたいです」


「よかった。そういえば検査の結果は?」


「あなたの子だったみたいですよ。王の力は遺伝してなかったようですけど」


「そうか。じゃあ及びじゃない分体の俺はもう帰ろうかな」


「あの、離婚について話し合いませんか?」


「なにっ」


「私だって迷っていたんですよ。そろそろ腹を割って話しません?」


「どうしてまた?」


「あなたは私に興味がないでしょう。

ハルトがすごく懐いているので別れないほうがいいのかな、とも思ったんですが」


「仕事よりも興味があることはない。それについては否定しない」


「私たち、やっぱり別れた方が……?」


「ではこうしよう。君はエリザベスなどともまだ結婚している最中だったな。

少なくとも別に別れてはいないだろ?」


「はい」


「ということで、ウチの家庭では家庭外恋愛を許可することにしよう。

俺が君に縛られているみたいなのが気になるんだろう?」


「それは、まあ……あなたは王様なのに私なんかが独占してしまっていいのか、すごく迷ってましたから。

そう言うってことは誰か好きな人でもいるんですか?」


「いや。告白するが、俺はガチ恋したことがない。コロンビーヌに対してもほかの誰かに対しても。

身を焦がすような恋とかしてみたい気もするんだがな。だから、俺は誓って君を裏切ったことはない。

だって気が付いたら俺はこの世の女を望めばすべて俺のものにできるだろ。

どうしてもあの女を手に入れたい、みたいに思うことがないんだよな」


「そういうものなのでしょうか?

羨ましいような、つまらなそうな」


「別に好きな女とかはいないよ。君と結婚してて息苦しい思いをしたこともない。

幸か不幸か俺の能力を継いだ子もいることだし。

君にそんなことを考えさせていたとは、夫として失格だな?」


「ごめんなさい。私はあなたを悪く言う気は、気を悪くさせる気はなかったんです」


「謝るのは俺の方だ。不安にさせて悪かった。

分体の俺が仕事をしたら本体の俺をここに呼ぶよ。久しぶりに一緒に寝ようか?」


「……はい」


とコロンビーヌは真っ赤になってうなずいた。まるで惚気である。

彼女、俺に気を使って自分なんかいつでも捨ててよいから、と言ったのは本音であると思う。

だが同時に俺が彼女を本当に捨ててしまうのか試したという面はあるのではないかと思う。


しかし、同時にそれを察しつつも、コロンビーヌと別れたくはないと伝えたことも本音だ。

確かに向こうから求めてきたので結婚したのは事実だが、俺の子も産んでくれたことだし、何よりハルトの母親でもある。

子供は夫婦のことを良くも悪くもつなぎとめる。ハルトの母親である以上、俺はコロンビーヌとは別れる気はない。


「じゃあ俺は行くから。じゃあな」


俺は分体をこの旗艦の倉庫に戻し、本体の方に意識を戻した。


本体の俺は最近ろくにメシも食えてないからちょっと腹減ってるがそれでもかまわん。

メシを食うと眠くなるからな。俺が向かったのはホテルだった。

ホテルに向かうと、とりあえず中の売店でコーラを買った。


コーラと言ってもそれをモデルにしてベンツに作ってもらった清涼飲料水であり、実在のそれとは関係ない。

コーラというのは爽やかな香りのする甘い炭酸飲料であり、誰もがそれに引き付けられる魅惑のおいしい飲み物だ。

実際国民にも好評であるが、これが人を惹きつけるのにもわけがある。


糖分、炭酸、カフェイン。その三種の神器を全部含んでいるのである。

ベンツに作ってもらったのは、俺が好きだからという理由もあるが、それ以上に飲んだ時の効果を見込んでのことだ。


糖分は頭を活性化させ、カフェインは眠気を飛ばし、炭酸は腹を膨らませてくれる。

俺みたいな仕事の忙しい人間には最適な飲み物だ。

実際エナジードリンクと呼ばれる飲み物は必ずカフェインと大量の糖分を含んでいる。

だから俺は最近これだけ飲んで栄養を摂取していると言っても過言ではない。


これを飲みながらホテルのフロントへ行くと、俺はフロントのお姉さんなノイトラにこう言った。


「ここからここまで、一つのフロア丸ごとだ。今、現時刻から明日まで貸し切りで。

料金は当然、総督である俺にすべて請求してもらってかまわない」


「ワンフロア丸ごとでございますか。総督の命令ならば構いませんが」


「そうしてくれ。ここを使うのは代表取締役のエレンという女性の会社の社員たちだ。

彼女が来たらワンフロアを貸し切りにしていると伝えてくれ」


「わかりました。エレン様の会社の方には四階をすべて提供する旨、必ずお伝えいたします」


「頼んだ。トントン、いや、支配人を呼べ」


「支配人でございますね」


ほどなくしてトントンが屋上からエレベーターを使って一階へ姿を現した。

トントンは情報通なのか、俺に近付いてきて握手するなりこう言ってきた。


「トーマ、君は確か娼婦の会社を興したとか?」


「ああ。実は四階を貸し切って適当な男たちに娼婦をあてがうことにした」


「何でまたそんなことを」


「俺は娼婦たちをこっちに連れてきたんでな。責任取って、とりあえず仕事を与えてあげることにしたんだ。

手始めに大きめの団体客をね。と、ここで思ったんだよトントン。

娼婦の仕事は色々と第三者がフォローして成り立つ仕事だろう。特に客引きだ」


「そうだね。娼婦の人を利用したことはないけど、苦労は察するよ」


「そこでホテルのフロントにそれの一端を担ってもらうというのはどうだろうか?

ウィンウィンの関係じゃないか。ルームサービスの一環だ」


「またそれは……君はずいぶん娼婦とか性産業にはドライな考え方をしているんだね」


「食いたい、寝たい、ヤりたい。そこに何の違いがあるんだトントン?

俺も別に娼婦は利用する必要がないので利用しないが、必要なら必要な人が呼べばいいだろう。

お高めのルームサービスで娼婦を呼び、彼女らの仕事は一回十から十五ドル。

例えばそれをルームサービスでは二十ドルにし、差額の五ドルをホテル側で儲けるなどすればいい」


「ホテルの部屋には全部内線電話があるから大丈夫だが。

でもそれではベンツの作ってる携帯電話を全員に配給する必要がありそうだ」


「問題ない。それは俺が借金して彼女らに配る」


「君は優しいのか鬼畜なのかわからないところがあるね」


「俺は優しいだろどう考えても。では少し外へ出ている。

俺はエレンという女と話をつけなければいけないんだが彼女は携帯電話を持っていないようなので」


「そりゃそうだろ、向こうの住人だったからね。とにかくこちらはすべて了解した。

そちらですべて決めてもらって構わない。これ以上の商談は必要なかろう」


「了解。ありがとなトントン。それじゃ俺は次の仕事へ行くとするか」


エレンはバス停にいるという情報は知っているので徒歩三分でバス停へ向かい、そこにはエレンだけが一人で手持ち無沙汰にしながら立ちんぼしているのが見えた。

おいおい、アンタ社長なんだから、と思ったが、話しかけてみると別に客を取ろうとしていたのではなく、俺との約束を律義に守ってバス停で待っていたようだった。


「ごめんなさいね。私、いつお呼びがかかるかと思ってて」


「ごめんはこっちの方だ。悪かったな。これは手帳と呼ばれるもので連絡手段となる」


俺はとりあえず自分の携帯電話代わりの手帳を渡した。

これは分体と本体用で二台持っているのだが、俺は多くの場合自分自身で電波を発し、通話を脳内で済ますことができ、手帳はあんまり使わないからだ。

それに俺のであれば初期設定などは必要ないしちょうどよかった。


「連絡手段と言われても私には何が何だか」


「どうせすぐ慣れる。アンタより頭の悪い人間でも余裕で使えるくらいの機械だからな」


「わかったわ。これを持っていたらいいのね」


「そうだ。あとでベンツ博士にホテルに届けさせるから社員には一人一人これを持たせるんだ。

続きはホテルで。行くぞ、向こうでの仕事は変更になってしまったからな」


「そうなの。それをみんなに伝えないといけないわ、私はここに残らないと」


「仲間はどこへ行った?」


「リリスとかいう人と一緒にどこかへ……」


「わかった」


俺はリリスに脳内通信をかけた。自分の手帳はエレンに渡したというのもあるが、俺の読み通りであれば携帯電話代わりの手帳をリリスが持っていない可能性が高いと思ったからだ。

案の定俺が通信をするとリリスは手帳を持っていない様子だった。


「あ、パパ。社員の皆さんとお風呂に来てるの。パパも来る?」


「女どもは女風呂だろ?」


「あ、そうだった。パパはもうさすがに入れないよね」


「そうだな。女どもはそこに待機させておけ。俺も社長を連れて戻るから」


「わかった」


俺は早々に通信を切り、エレンには、社員はもとよりホテルの大浴場で疲れをいやしているのだということを告げた。


「よかった。みんながバラバラになってたら連絡できないもんね」


「あのなエレンさん。俺はアンタのことようやくわかってきた。

確かに、姉御肌でみんなを世話して尊敬されているようなのはわかる」


「でしょ。えへへ、私頼られるのや誰かの役に立つのは好きだから」


「そういうところが便利だから利用されているんだよ。いい加減気が付け。

部外者の俺ですらわかるぞ。奴らは優しいアンタの正確に付け込んで……いや、寄生しているといってもいい」


「そんな風に言わないで。私の大切な家族みたいなものなんだから!」


「俺を見ろ。俺は誰だ。俺は何だと思う?」


「何の話よ?」


「俺は与えるもの。誰からも奪うことはしない。アンタは俺の子会社の社長なんだから当然ケツは俺が持つ。

もう一度言うぞ。そのデカい尻っケツは俺が持つって言ったんだ」


「ケツだケツだ言わないでよ!」


「俺を信用しろ。そして俺はアンタに与えた。もうアンタはやつらとは対等ではない。

あの娼婦たちはあんたの手駒でアンタの部下。社長と社員には超えることの出来ない絶対的な壁がある」


「私は家族のような存在のあの子たちに壁なんか……!」


とは言ってるものの、エレンは俺の言いたいことにはとっくに気が付いているが、目を逸らしていただけらしい。

貧困、特に文化的な意味での貧困の状態で生まれ育った子供の特徴がこれであるらしい。

何かの対価としてしか愛してもらうことができない状態が続くと、無償の愛にあこがれ、家族を作りたがる。


のだが、文化的な意味での貧困状態で育った人はその家族を守り、家族に愛してもらうために異常な自己犠牲を行うことがあるという。

親に無条件で愛され、すくすくと育つという本当の意味での豊かな子供時代を過ごすことができないと、それに異常な渇望と憧れを覚えるが、なかなか上手くそれが再現できないらしい。

無償の愛なんて知らないからだ。明らかにエレンはその状態の人、まさに典型例だった。

それならば相手するのは簡単だ。俺は彼女にこう言った。


「何度も言うが、俺の言ったことをちゃんと理解すれば、もう二度とアンタはあいつらに利用されることはない。

いやあってはならないことだ。全部アンタに押し付けて一人だけ残してみんなでお風呂だぞ。

許さない、と言え。私を甘く見ているアイツらを許さない、と言うんだ」


「そんなこと……!」


「それで初めて俺の仲間になる。俺はアンタのことがだんだん好きになってきたよ。

一皮むけたらまた違ってくるだろうな。それにはここで宣言する必要がある」


「私は……私は、もう舐められたりはしない!」


俺の求めていた宣言とは少し違った。まだまだ優しすぎるようだったが、これで少しは変わってくれたらしい。

エレンに俺はニヤニヤしながらこういった。


「では俺は今から妻の出産があるので、数時間以内には向こうへ行かないといけないので話を進めよう」


「えっと、話って?」


「アンタは女どものリーダーで社長だ。しかも連中が選んだんだから文句のつけようもないだろう。

そろそろホテルが見えてきたな。中で話をするとしよう」


ということになり、さっきトントンと話していたテーブルに俺は新たなコーラを持ち込んでエレンと対面し話を続ける。


「このホテルと提携し、アンタの会社から女を派遣するという契約はどうかと支配人と話し合ったんだ」


「なるほど。ここなら客との仕事もそのまんま出来るし……となると料金はその分上乗せということかしら?」


「ああ。上乗せした分が儲けになる。なんなら倍ぐらいにしてもかまわんだろう」


「でもわからないわ。そもそもどうして、私たち娼婦を会社という形でまとめようと思ったの?」


「何でかって。それは価格競争を防ぐためだ。例えば十五人の娼婦が会社にはいるよな。

それで、彼女らが全員バラバラに仕事をしたとしよう。すると値段に格差が生まれる。

例えばエレンのように美人な娼婦なら価格はいくら吹っ掛けても出してくれる男はいるだろう」


「まあ、お上手ね」


「そうでない普通から普通以下の娼婦は当然、そういった付加価値が付けられないので値下げ競争をすることになる。

何の後ろ盾もないのでタダマン……おっと下品だったな。ヤリ逃げとかも横行するかもしれない」


「言い直しても下品ね」


「しょうがないだろ、話題が話題なんだから。

つまり娼婦がバラバラに仕事をすると大きな格差が生じ、下は際限なく価格を下げ、上は価格が上がりすぎる。

これは他業種でも存在しうる問題だ。経験したことはあるだろう?」


例えばアパレルメーカーだ。

高級ブランドはアホみたいな値段を提示しても売れるが、そうでない有象無象のメーカーはとにかく安くしないと見向きもされないのと同じである。

ファストファッションとブランド指向、この二つは二極化し、もはや同じ服飾業界とは思われないほどのすさまじい格差が発生する。


「ということは、我々を会社としてまとめたのは弱い立場の娼婦を守るためだったのね?」


「ああ。他にも複数の労働者が一括管理されていれば、大口の仕事を取ってきやすくなる。

娼婦に限った話じゃないよな。もちろん一人の女で十人の団体客とかは相手できないだろうからな」


「そんなことしたら腫れあがっちまうよ」


何が腫れあがるのか、俺は聞かなかった。


「そうかもな。そういうわけだから会社として組織をしたことに俺は納得しているし、納得してもらえると嬉しい」


「もちろんよ。私も納得している」


「アンタだけ独立して高級娼婦として高いお金をとる……みたいなことも出来るだろうが、どうするかは聞くまでもなかったな」


「そんなことするわけないでしょ。そういえば仕事の話だったわね。

私たちは結局どうすればいいのよ。仕事はキャンセルなんでしょ」


「ああ。ここのホテルの四階を明日まで貸切ったので、そこに適当な男を招待することにした。

アンタは社員から何発仕事したかを報告するんだ。料金は俺が支払う」


「わかったけど適当な男って何よ?」


「日頃の感謝を込めて俺の知り合いを少々な」


「わかったわ。総督さんは遊んでいかないの?

アナタなら特別に最初の一回はタダでもいいけど?」


と社交辞令的にエレンが誘ってきたが俺はこういって断った。


「俺最近子供が生まれてさ。いや、正確にはまだ生まれていないのだが。

とにかく帰って奥さんに会わないと。ほら、分体じゃなくて本体じゃないと出来ないことあるだろ?」


「うわっ、それは早く行ってあげないと。ニブくて私気が付かなったわ」。

奥さんとは仲良くしてね、総督さん?


「ああ。だが、その前に俺の知り合いの男をあたる。最後に確認だが、一発十五ドルなんだよな?」


「ええ」


「ではホテル側で呼び出しに三十ドルの契約で、ルームサービスの契約を御社と結ぶアイデアはどうだろう」


「部屋に泊まるお客さんがムラっときたら呼べるってことね。わかったわ、その価格設定で構わないわ」


「そうか。女どもはホテルに呼んでおけ。しばらくしたら手帳がホテルに届けられるはずだ。

社員一人ずつそれを持たせるんだ。」


俺はエレンから電話を奪ってエースに電話をかけ、官邸にいる彼女に契約書を作るように依頼をした。

まあ契約書なんて必要ないのだが、俺は結構形から入るタイプだからな。

用が済んだらすぐにトントンに電話をかけた。


「トーマか。私はもうホテルの四階だよ。貸し切りってことはどこの部屋にいようが自由なんだろ?」


「うむ。女どもには何発仕事したか報告をさせるからトントンの側も報告をしてくれ。

料金は俺が払うのでトントンたちが過少報告する理由はない。

したがって、今回に限り支払いは男側の申告を採用する」


「ということは、普段は娼婦たちの申告を採用すると?」


「当然だ。彼女らのような社会的弱者を食い物にしてやろうという男は多いからな。

もちろん俺もその一人だが。俺はもうホテルを発つけど、どうぞごゆっくりね」


「君はこの後どうする?」


「バイクに乗って向こうへ行く。戦後処理が必要だ」


「わかった。仕事は倒れない程度にね」


「俺は大丈夫だよ。本体は寝てるだけだし。じゃあな」


俺は医務室へ行くと、そこで預かってもらっている赤ちゃん二人を抱えて自分の部屋へ戻った。

最近はずっと引き離されていたので赤ちゃんを久しぶりに抱っこ出来てコロンビーヌも嬉しそうではあったものの、一方で困惑気味だった。


「どうした。赤ちゃんはもうこりごりか?」


「いえ。赤ちゃんは好きなんですけどこの子たちを連れてきたってことは、全然そういうつもりじゃなかったんですね」


「そういうつもりって、いやいや。まさか、ダメだろそんなこと。ハルトに怒られるよ」


コロンビーヌの顔がかーっと熱くなって火照り、真っ赤に染まって突然涙目になった。

いや、これって俺のせいだろうか。ふつう思わないだろう。

つい最近帝王切開術をした女と一緒に寝る、と言ったからといってそこに子供を作るというニュアンスが入っていると思うようならその方がおかしい。


「あーだめだ。笑ったらだめだと思えば思うほど面白い」


「そんなに笑うことないじゃないですか!」


ひとしきり笑った後俺はコロンビーヌを抱きしめ、耳元でこう言った。


「悪かった。大丈夫だとハルトにお墨付きをもらったらその時は抱くから」


「抱くって……!」


コロンビーヌの体がビクンと波打った。俺は続ける。


「まだ名前を決めてなかったな。いっそのこと今次の子の名前も決めちゃうか?」


「次の子はトーマジュニアで決まりでしょう」


「まあ、コロちゃんがそういうなら。

出生前診断で力を継いでるかはわかるから、継いでいる子が生まれたらそう名付けような」


「わかりました。私たちの初めての子は……?」


「あ、俺が決めるの。権限がもらえるんだったらそうだなぁ。

コロンビーヌの名前は植物からとられてるんだろ。なんかこう、植物の名前がいいよな」


「そういえばノイトラ王国の国花ってなんの花なんですか。

ノイトラ王国もあなたの子供みたいなものなんだから決める権利があると思いますけど」


「なんか、国花と同じ名前にしろと言われているような。それではこうしよう。

ノイトラ王国の国花はそうだなぁ。カトレアなんてどうだろう」


「いいですね。決まりです!」


「危なかった。うっかり俺の知り合いの名前とカブるやつを言ってしまわないかヒヤヒヤしてたんだ」


「別にいいですよ。リリーとかでも」


「決まったならよかった。横で寝させてくれ。分体を使って仕事する」


「また仕事ですか!」


と呆れられながらも俺はコロンビーヌと一緒に寝て、仕事を始めた。

ここまで極めて事細かく都市国家エクアドル建国からのことを描写してきたが、正直言ってここまででいいだろう。

これから先は飛ばしていいと思う。ということで、二年半後に話を進めていこう。


二年半と言えば俺が二十歳を過ぎたころのことだ。


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