表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
最終章 魔王誕生
89/96

第八十九話 世界最古の職業は娼婦である

「こいつはひどい。いくらなんでもそれは少なすぎるだろう。

リリス、これじゃ一週間に一度ぐらいしかお風呂に入れないじゃないか」


「だねー」


「まさか。そんなにたくさん入りませんよ」


「営業妨害するわけではないが、ちょっと話をしよう」


「はい? お客様、どうされました?」


「実はちょっとこの辺で食料品店でも作ろうと思ってたんだが、ちょうどいい。

建築出来たらあんたを雇うことにするよ。時給は二十ドルで」


「そんなに」


「マジマジ。今から領主と交渉に行くが、領主と交渉が決裂したとしても構わずここに食料品店を構えることにするよ」


「それは困ります。そんなことしてここが潰れたら私、仕事がなくなりますよ」


「だから時給アップして雇うつってんだろ、わからん奴だな!」


「ちょっとパパ、ちょっとでも頭に来たらすぐ怒鳴るのやめて」


「すまん」


俺はその後、領主のいるという城への道すがらリリスにかなり怒られてしまった。


「もう。パパってそう言うところあるよね。女性への優しさが足りてないというか」


「そうかな。自分ではわからないが。ああ、そうだ。

さっきの女はやめとくか。ルックスがいいので店員にちょうどいいと思っていたがバカなようなのでやめておこう」


「そんなこと思ってたの?」


「もう済んだ話だ。さて、領主はどう出てくるかなと」


領主の城に女工の案内でたどり着いた俺たち。衛兵と俺は目が合った。

至近距離まで近づき、衛兵の持ってる剣が振り回せば俺に届くぐらいの距離まで来て俺はこう言った。


「こちらは隣町の都市国家エクアドルの総督だ。先日独立してね。

こちらの領主様に挨拶に来たのだが入れてもらえるか?」


「領主様はお前らのようなガキにいちいちお会いにならない!」


「帰れ。さもないと殴って追い返すぞ!」


「なるほど。では俺が今言ったことを領主に伝えておけ。

そういうことなら逆に領主の方がこちらへ来てくれるというわけだな。

待っていよう。では二人とも帰るとするか。収穫はそれなりにあったからな」


そう言いながら俺が衛兵に背中を向けるとリリスは心配そうに聞いてきた。


「こんなあっさり……領主と話をしなくてもいいの?」


「バスで続きを話すとしよう。行くぞ」


俺達は来た道をまっすぐ帰り、領主の城へと続く冷たくて暗い道をバス停へ向かって黙々と歩いていく。

するとそこへ一人の女性が声をかけてきた。


「お兄さん、横の二人は?」


「この二人か。こっちは今日知り合った。名前も知らない。

こっちはリリスだ。それよりあんた見たところ立ちんぼってやつじゃないか?」


「お兄さん身なりがいいね。私たちみたいな者は珍しいかい?」


「いや。ただ横に二人女を連れている俺によく声をかけてきたなと思ってな」


「お金持ってそうだもの」


「あっそう。ホレ、金ならやるよ」


と言って俺はポケットを適当に探り、十ドル紙幣を何枚か懐から出して女にやった。

女はこれを受け取ると嘆息してこうコメントした。


「すごい。これで一か月は仕事しなくても暮らせるよ」


「ちょっと総督、あなた奥さんいるでしょ。臨月近い奥さんがさぁ!」


「心配するなリリス。そいつは情報料だ。

俺はあんたに興味はないが、アンタの知り合いで若い子を紹介してくれ。十代前半くらいでも構わない」


「小さい子が好きなの?」


「ああ、俺は子ども好きだからな。連れてきたらあんたにあと百ドルやるよ」


「わかったわ。今すぐ?」


「今すぐだ。二人とも先に帰ってていいぞ」


これにはリリスどころかさすがに女工すらも呆れていた。


「そ、そんな。いくらなんでもそれは……総督、見損ないました」


「パパなんて大嫌い! このロリコン犯罪者!」


ここら辺になるともうバス停に近いため、リリスたちは二人してバス停に走って行ってしまった。

一人取り残された俺はもちろん、他に用があるのでその辺の売店の女に声をかけた。

それは俺とも顔見知りの女で、我が都市国家エクアドルにやってきてくれた主婦のうちの一人だ。


彼女はまだこちらに家をもち、住んでいるが、我が都市国家エクアドルと契約して委託販売の業者になっている。

水を委託販売し、売っているのだ。その彼女が水を売っている屋台にはブリュッヘルも護衛としてつけられていた。


「よう、王様。さっき何を娘っ子たちと騒いでたんだ?」


白髪が目立つも、筋骨隆々としていて顔や体は傷が目立つ歴戦の勇士ブリュッヘルがいるので水の売店は威圧感がすごい。

だがそれでも客自体はかなり入っていて、俺は水を販売する女に声をかけようとしたが忙しくてそれどころではないのでブリュッヘルと話をすることになった。


「ちょっとな。水の販売は順調か?」


「ああ。手ぶらで帰るようだな?」


「そうでもないさ。実はこの近くに食料品店を作ろうと思っている。

お前も知ってる通り、ベンツの作った光合成プラントは様々な植物を育てられる。

原理的には全ての植物を育てられるからな。しかも現在家畜を育てる牧場まで存在している。

これらを売ることで利益を得ることは可能だ、そうだろう?」


「それはそうだが、都市国家エクアドルは未曽有の人手不足だ。

人員が足りないのではないか。トラック運送だって増やさないといけないはずだが」


「うむ。ちょうどそれを考えてたところだ。あ、待ち人が来たようだな」


俺は二人の女の子を連れて戻ってきた売春婦の女を発見し、会話を中断して急いで大通りの方面へ戻った。


「大急ぎで連れてきたよ。十二歳のサラと十三歳のミナ。この子らが私の知っている中では一番若い子だよ」


売春婦のおばちゃんの紹介だけあって二人の子供はやせており、栄養状態が悪そうだった。

むろん他の人と同じでこの少女たちも風呂には入ってないが、俺の鼻はとっくにマヒしてるのでその臭いは別にしてこない。


「そうか。ご苦労。約束のカネだ」


「ありがたく受け取るよ。じゃあごゆっくり!」


その後取り残された俺たち三人なわけだが、ミナと呼ばれた方の子はもう片方の子とこう話していた。


「よかったね。少なくとも清潔感はあるし、上品なお客さんで」


「でも初めてだし怖いって……!」


「お前ら孤児か?」


「そうに決まってるじゃん」


「そうか。俺は人手が欲しくてな。働ければまじで誰でもいいんだ。

俺はこの辺に食料品店を建てようと思うから、お前らはそこで店員をやるんだ」


「は?」


女の子たちは俺の話をじっくり聞くと目を丸くして驚いた。

よかった。ちゃんと話の理解力はあるようだった。


「なんだ。私はてっきり変態のお客さんかと思って……!」


「失敬な。なんでお前らみたいな汚い痩せたのを抱かないといけないんだ。

女は尻と胸とタッパがデカイ方がいいに決まって……いや、まあその話はいい。

とにかく一緒に来い。お前らも、うわさぐらいは最近聞いてるんじゃないか。

街はずれのバス停のことを」


「あそこに近づいたら死ぬって聞いた!」


「私も!」


「あっそう。とりあえずお前ら、汚いしみすぼらしいからな……いっしょに来い。

拒否権はない。俺はお前らをこれから誘拐するってわけだ」


すると怖くなったのか二人は黙った。俺は黙った二人をバス停に連れて行き、バスでエクアドルに帰った。

帰り着いてバス停を降り、二人は我が都市国家エクアドルの光景を見て相当に驚愕したようだ。

俺はてっきり反対のことを想像していた。俺達よりも地下都市の方が発展してるんじゃないかと。


滅相もない。どうやらこの地下都市の連中は次のような歴史をたどって住み着いたものと思われる。


まずここは元から非常に膨大な人間の手が加えられた半人工惑星だった。

で、ここには統治機構の物理的実体が置かれ、中央部分にスフィアが設置された。

その後星間移民団の船、のようなものが北極付近に墜落してしまったのだろう。


生き残った人々はどうにかして赤道付近に住み着くことが出来たものの、かつての技術力は失われた。

恐らく、統治機構が活動していた当初から働かされていたノイトラが今でも酷使されているようである。

その彼らの作るエネルギーを偶然発見してこれに寄生。

どうにか生きながらえている、という状態らしい。

だからむしろ地下都市の連中のほうが技術水準は低い。

だから俺がリリスにさっき言っていたように、ここに高度な技術があるかもという言い分は事実と異なる可能性が高いかもしれないが、まあそのことは今はいいだろう。


「こんなところに連れてきて私たちをどうしようっていうの!?」


とサラが言うのは当たり前だ。俺は面倒くさいので持っていた手帳を使い、アンリを呼びつけた。

彼女は俺に心服しているから、すぐに飛んで来た。

彼女も特にこれと言って決まった役目を与えられていないノイトラだ。

そういうノイトラは発電することでお金を得て色々と買い物できる。


ただし、お金もなく仕事もなく、発電のための能力の寿命もないというノイトラもいるだろう。

そういう場合でも、別に旗艦ミレニアムアヴァロン号の居住区に住む分には家賃も光熱費も食糧も無料である。

アンリはコロンビーヌとエリザベスを共有している。

体の関係があるかは不明だが、エリザベスはその二人に加え、アルとも関係を持っている。


モテモテである。俺だってエリザベスは魅力的だと思うが、アンリはそんな彼女と一緒に船に住んでいるのだった。


「お呼びでしょうかトーマ様。しかしこの子たちは?」


「ねえ、この巨乳のお姉さんは一体?」


「ああ、お前らにはそう見えるのか」


うっかり俺は質問に質問で返してしまった。やっぱり初見だとアンリは豊満な体をしたセクシーなお姉さんにしか見えないらしい。

しかも自分のセクシーさに極めて無頓着な所があり、よく俺とも混浴風呂に一緒に入る。

俺だって実の兄弟姉妹でさえなければ、と思うくらいアンリは美人だが、アンリを呼んだのには理由があった。

俺は改めて質問にこう答えた。


「この人はアンリと言って俺の腹違いの姉だ。これからお前らは、この人に絶対服従するんだ」


「わかったけど……そんなことしたら戦争になるよ?」


「どうして?」


「だって――」


ミナが語り始めたのはこういう話だった。

要約すると、自分たちは貧しい子供で、親を亡くしている。

特にサラは悲惨で元は親が金持ちの家柄で裕福だったが親父が放蕩息子で、財産を食いつぶしてついには一家離散。

母親はヤクザ的な組織に身を寄せて娼婦の仕事をしていたが、最近死んだので自分もヤクザに身柄を支配されていて客を取ることになったという。

ミナも似たようなものだという。ミナは残念ながら、と言ったらいいのか客を取ったことはあるが、サラは今回が初めてだということだった。


そういうわけだから、自分たちを意のままにしようとするのは勝手だがヤクザと戦争になるぞ、ということを警告してきたのだった。


「ヤクザと戦争だと。ククク、面白い。

俺達が今まで戦ってきた物に比べたらヤクザなんて……なあアンリ?」


「ええ。片腹痛いといったところでしょうか」


「まったくだ。もう大体わかってると思うが一応説明しよう。

アンリにやってもらいたいのはまず、こいつらを風呂に入れて飯を食わせ、ここの家を契約させることだ。

領収書は全部俺にツケておけ。アンリはこれから向こうで食料品店をやり、こいつらを従えて働くんだ。

食料品店は最低限読み書き計算は出来ないと仕事にならないからな。

こいつらがそれも出来ないようなら、外で客引きでもさせろ」


「そんな勝手な」


とミナが言ったが、俺はそれにこう答えた。


「ならヤクザのところに帰りたいのか?」


「それは……嫌だけど」


「サラ、お前は良家に生まれて教養があるとかだったな。

読み書き計算は出来るだろうから、客の相手を頼む。

それとこいつの面倒を見ろ。店の外で客引きでもさせていろ」


「わかりましたけど……」


汚くてみすぼらしい孤児の二人がアンリに連れられて街の中心街へ歩いて行った。


「ううむ、我ながら良いことをしたな」


俺は三人の後姿を眺めながら嘆息した。彼女らの世話代は全て俺にツケられる。

俺は銀行にカネを借り、借用書を彼女らに渡す。あとは働いて返してもらうというわけだ。

もっとも、その借金を返すために彼女らに払う給料も俺が出すわけだが、うまく行けば俺も儲かるし彼女らもヤクザからは解放される。


「よし、これからはどんどん隣町へ進出していくか」


数時間後、俺がホテルで風呂に入っていると何故かアンリが混浴風呂に一人で入ってきたので俺はびっくりした。

てっきりガキ二人と入ったのかと思っていたからだ。

アンリは何の遠慮もなく、やわらかくてすべすべして、大理石みたいに白くて丸い肩を俺の肩に押し付けて湯に入ってきた。


「トーマ様。とりあえず仕事は終わりましたよ。

お風呂に入れてごはん食べさせて賃貸物件も契約しました。

今は精神的に疲れたのか、新居で眠ってます。もちろんシェアハウスです」


「そうかご苦労。その様子だとゆっくり風呂には入れなかったか?」


「ええ。彼女らを洗うのに苦労しましたから。ゆっくり浸からせてくださいね」


「ああ。大変なのはこれからだがな。今回のはいいモデルケースになった。

困窮している向こうの奴らを拾って世話して、借金漬けにして働かして返してもらう……ヤクザの手口と一緒だな」


「またまた、ワルぶっちゃって。あの子たちをカワイソーと思ったから助けたんでしょう?」


「まあ、それはあるよ。だが俺はあくまで二人とはカネの上での関係でありたい。

憐れんだから助けた、じゃない。カネの上での関係なら対等でいられるだろう。

一国の王であるこの俺と、貧乏で身寄りのない最底辺の孤児とでもな」


「トーマ様が言ってらっしゃったのはこういうことだったんですね」


「なにっ」


「金で人を支配するですよ。僕はてっきり文字通りの意味かと。

こういうことだったんですね。彼女らはきっと、お金の悪い面しかまだ見たことがないんです。

でもいい面だってある。お金にはお金でしか対抗できませんから」


「そうだな。貧困や困窮、借金苦といったことに、どんな精神論やキレイゴトも意味をなさない。

カネはそれらを吹き飛ばす。いや、カネにしか吹き飛ばすことは出来ない!

別に慈善活動家を批判する気はないが、彼らだってカネがなきゃ慈善活動は出来ないはずだろう」


「そうですね。僕も頑張らないと」


「ほどほどでいいよ、ほどほどで。わかっていると思うが、ガキ二人と一緒の店番だ。

まず間違いなくヤクザがやってくるだろう。そういう時はアンリも強いから頼りにしてる」


「わかりました」


「それにブリュッヘルやアルが詰めている水の販売所ともすぐ近くに店を構えるから、何かあったら駆け付けるはずだ」


「ええ、僕一人で十分だとは思いますが――」


「そういうことだったのね」


話に割り込んで登場したのは、もちろんお風呂なので湯けむりに紛れた全裸のリリスだった。


「リリス。お前は女風呂に行けよ」


「全く、言ってくれれば私も勘違いしなかったのに」


「俺ってよく話が長いと言われるんだよな。説明してもよかったが、絶対うっとうしがられると思って」


「まあそれはそうだけど」


「否定してくれ!」


などと話しながら俺たち血のつながった三人で和気あいあいと時間を過ごし、結局三人で新たな仕事に出た。

今回はもうバスは使わない。俺は一旦船に戻り、バイクを取ってきた。

これを使ってトンネルに入り、そこから地下都市へ下って、辺境のエクアドルにやってきた。


俺はバス停前で待っててくれた二人にサイドカーに乗るように促し、リリスは何度か乗ったことがあるのでひょいとサイドカーではなく俺の後ろに乗ってしまった。


「サイドカーでいいだろ。お前胸がデカいから集中できないんだよ」


リリスは俺の苦情を軽く受け流してこう返してきた。


「実の娘でしょ。ほらトントン、サイドカーに乗って」


「実は僕これに乗るの初めてなんですよね」


「大丈夫、体育座りしてたら勝手に目的地に到着するから」


怖がるアンリを促してサイドカーに乗せ、出発。十五分ほどで目的地に着いたら、今度もまた水の販売店をやっている主婦に話を聞くことになった。

土地勘があるのはやっぱり地元の人間だからな。


「よう、また会ったな。水商売は順調か?」


「パパ、言い方」


「順調ですよ。ただ、さっきからあの娼婦が総督を出せと怒ってますよ?」


「ああ……あれね。まあ、あの女でもいいか」


主婦が指さした先には、先ほどミナとサラを紹介してくれたベテランな感じの娼婦がいた。

彼女、この大通りに面した商店街に明るいようだから土地勘はあると思われた。


三人で娼婦のところへ行ってみると娼婦はかなり怒り狂っていた。


「ちょっとあんた、あの子たちをどうしたの。アタシがヤクザに叱られちまうだろ!」


「まあ、そうだろうな。すまないと思っている。

カネはやったろう。実はあのバス停でバスに乗れば安全な街へ出られる。

俺の街だ。ヤクザは来ないからそこに身を隠すといい。

たしか俺の街にまだ娼婦はいなかったと思うから、アンタ向こうでなら今より稼げるかもな」


「それよりあの子らを返しておくれ!」


「俺は忠告したぞ。ヤクザに殺されたくなかったら俺がかくまってやると言ってるんだぜ。

まあいい、ガキは返さない。うちで働かせることにした」


「何を勝手な……!」


「それより聞きたいんだがこの辺に不動産屋さんはいるか?」


「不動産? この辺の土地ならヤクザが持ってることが多いわ」


「おお、それは良いことを聞きましたねトーマ様?」


「そうだなアンリ。ということは無断で店を出してもいいというわけだな。

文句言いに脅しに来たらブッ殺すちょうどいい機会というわけだ」


これを聞いてベテラン娼婦は常識人らしいコメントを残してその場を去った。


「どっちがヤクザだかわかりゃしないよ……!」


その後俺はすぐに横のアンリにこう言った。


「あの女を連れ戻してこい。無理やりで構わん。

死なれたら後味が悪いからな」


「はい」


「その間俺は援軍とともにここに新たなお店を建築することにする」


この辺は土地がいくらでも余っている。隣町とはいえここもまだまだ辺境だからな。

ほどなくしてトラックが到着。運転手はもちろんイブの分体のエグリゴリだ。

運転席から出てきたエグリゴリは挨拶もそこそこにこう言った。


「早速始める。建設予定地はどこだ?」


「この辺土地が余ってるから適当にどこでも」


「承知した。食料品店というのはコレのことでいいのか?」


エグリゴリは手帳を見せてきた。その画面には合衆国にあった食料雑貨店の店舗が映し出されていた。

原始的だが、最低限屋根があって壁があってお客さんが買い物している店舗内にも二、三人くらいなら店員が入れるスペースがある。


「エグリゴリ、二階に事務所を設置して事務作業が出来るようにしておくことを忘れるな。

それに在庫を収納しておくための倉庫も小規模ながら併設する。

また、照明と暖房、冷房が必要だから発電設備と電気工事もするぞ」


「了解した。お前は壁を。私は電気工事を行う」


「わかった」


俺とて建築はもう慣れたものだ。我が都市国家エクアドルでの基本的な建材は全て同じ高密度プラスチックである。

これは耐熱性に難があるものの、強度と腐食耐性が極めて高い。

これを粉末状にしたものを三次元プリンターを使って積み重ねることでどんな形のものでも作ることが出来る。


三次元プリンターを使って、とりあえずは事務用の机にキャスター付きの椅子を作り、商品棚、買い物かご、カウンターを揃える手はずになっている。

その待ち時間の間に、俺はもちろん建材を使って建築する。

この建築法も以前に解説した通り極めてシンプルだ。


基礎工事であるとかコンクリートが乾くのを待つ時間といったものがないため工事は爆速で進む。

日本の大工がやるように建材を少し切除することで凹凸を作って、これをハメ合わせる。

これだけでも十分に接合強度は高いのだが、ここに熱を与えると融解する性質を用い、凹凸を作るときに出てきた端材を溶かして接着剤に使う。


これで接着は完了だ。この接着が取れるようなことがあるとすれば、人為的な破壊か火事ぐらいしかありえない。

いずれにしろ建物全体を木っ端みじんにするような衝撃でも加わらないとこの接合は外れない。

また、このプラスチックは熱には弱いものの、燃えると大量の二酸化炭素を発生させる。


もちろん吸い込めば有害だが、消火剤にもなる二酸化炭素を大量発生させるので火事になることはまずありえない作りになっている。


「ひと段落したかな?」


まず建物の外装と裏の倉庫が完成したところで俺はこう言い、さらにこう続ける。


「アンリ、ガキのおもりがあるので俺は分体を稼働させる。残りはお前たちでやっておけ」


今回は意識して小さいギャグをいっぱい入れてみました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ