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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
最終章 魔王誕生
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第八十話 未知との遭遇

こうして俺達の新生活が始まったところで工事も最終段階へと移行し、アーセナルと旗艦の連結。

戦車の製造、戦艦の建造などが居住区の地下への建設とともに進められていった。

そして何より、地上のプラントによってアーセナルに積み込む莫大な量の燃料、食糧、弾薬などが次々と生産されてはアーセナルの超巨大倉庫の中に積み込まれていった。


何しろ旗艦でさえ無補給でいくらでも活動できるという破格の代物だったが、アーセナルは背甲部分に超巨大な光合成プラントが作られているのである。

つまり物資を生産する巨大倉庫なのだ。しかもアーセナルは旗艦の数倍の大きさを誇る。

ただし、旗艦と連結するアーセナルは俺の勝手な提案によって急遽出発直前になってから生活インフラと居住区が整えられることになったが。


二週間の予定だった工事は三週間に伸び、その一週間の間にも、ベンツが地上に作った砂を有用な資源に変えるプラントなどの活躍で大量の物資がアーセナルに積み込まれていった。

出発直前の博士によれば乾燥食糧数万トン。冷凍食糧が約十万トン。

ガスタンクや燃料タンクは数万バレルも貯蔵され、これはすべての戦艦、旗艦、アーセナルが時速二百キロメートルで二十四時間、不眠不休で走り続けても一年間もつという。

しかもすべての船には太陽を受けて燃料を精製する人工光合成プラントが設置されているため、燃料が尽きることはほぼ全くと言っていいほどありえない。


だいたい、万が一の時は船に乗っているノイトラの発電でどうにかなるしな。

しかも五十名のノイトラがコールドスリープされたままなので最悪の場合は最後の手段として彼らを起こして発電してもらうという手もある。

こういった奥の手を残しておくのは俺も博士も、予備や切り札、奥の手、貯蓄といった言葉が好きなのでわが艦隊らしさが出ているといえる。


そして暦など大して意味はないが、ノイトラ王国歴紀元後六年の九月二十三日の午前十時、俺たちはついに赤道及びさらにその南の氷河で覆われているという南半球へ向けて艦隊を出発させた。


俺たちの艦隊のフォーメーションは最前線に砲台をも取り付けられた巨大戦艦。

その後ろに物資を満載したアーセナル。さらにその後ろに俺たち旗艦がある。

俺やベンツと言ったこの旅における主要人物が乗り込み、さらにはコールドスリープしたノイトラが眠っている。

この船にはバイクや戦闘機も積載されているのでやろうと思えばリリスと一緒に俺は空からの攻撃も出来るというわけだ。


その旗艦の後ろには超巨大物資貯蔵庫で、かつ居住区もあって多くの人が住める第二のアーセナルが連結されている。

そしてサイドにアーセナルが一機ずつ並走しており、アーセナルの外側にも一隻ずつサイドに巨大戦艦が配備。

一番後ろにも走行車両が走り、最後に、上空をヘリコプターが飛んでいるというフォーメーションだ。


むろんヘリは武装している。旗艦以外のすべての操縦は大量につくられたエグリゴリが担当。

このフォーメーションでほぼ不眠不休で俺たちは走り続けた。

旗艦は以前と同じように、俺とベンツとエースが三時間ずつ操縦しては交代する流れ作業をシステム化し、実に一週間もの時間が流れた。


不眠不休だったので、この船は時速二百キロメートルを常に保ち続けていたはずである。

一週間は二十四時間の七倍だから、百六十八時間のはずである。

それに二百をかければ約三万キロメートル走った計算になる。


そしてまたローテーションで俺の番が回ってきて、俺は操縦席から窓を眺め、横でベルンハルトと遊んでいるリリスにこう言った。


「リリス、コレ一体いつになったら……?」


「景色が恐ろしいほど変わらないよね。三万キロメートル以上は走ってるはずなんだけど」


「この星やっぱデカすぎる。やばい。気が狂いそうだ。明日一日はとりあえず休憩を入れる」


別に体はそこまでしんどくないのだが、一週間同じ仕事を続けて何の成果もみられないと、人間こうなって仕方がない。

まぶたの筋肉がピクピクしてくると、俺のストレスが限界に達し始めていることのサインであると、自分で経験上知っていたし、今がその時だった。


「うん。パパこの一週間、三時間睡眠しかできてないしいいんじゃない?」


それに船に設置されたプラントは一日休んでいるだけでも物資を補充してくれる。

俺はとりあえずローテが回ってきたので三時間の操縦を終えたら精神的な疲れが限界に達したことを自覚し、イブやベンツに休ませてくださいと申し込むことにした。


よだれかけを汚しているベルンハルトは俺のことを多分父親か兄とでも思っているらしい。

俺のことを「トントン」と呼び、手をつないで歩かせてくれるくらいには心を許している。

そろそろ二歳である。彼と一緒にベンツを訪ねると部屋にいたエースは「博士はいないよ」と答えた。


他に行くところがあるとは思えないのでラボに行ってみてもいない。

それでは、と思ってベルンハルトを連れまわし秘密の部屋へ向かった。


秘密の部屋というのはもちろん、人工子宮を設置しているところである。

そこにベンツはいた。俺に背中を向け、人工子宮プラントの方を見つめている。

プラントの中には、受精卵は違うがある意味育った子宮は同じなのでベルンハルトとは兄弟と言ってもいいような子供が二人いた。

大きさからすると臨月くらいである。もうすぐにでも生まれそうだ。


プラントの右下にはいつも通りラベルが貼ってあり、左のプラントには【エリザベス・マックアリスターとアンリ・ネイの子、ルカ・ネイ】


と書かれていたので俺は目の前のベンツに聞いてみた。


「よう博士」


「ああ。どうしたのかね二人とも?」


「おお。このエリザベスとアンリというのはまさか?」


「ああ。許可はちゃんととってるよ。二人ともね」


「やっぱりそうなのか。こっちのは?」


俺は右側のプラントを指さした。右側のラベルには全く知らない二人の名前が書かれている。


「ああ、それは無作為に選んだ二人のやつで。ああそうそう、ベルンハルトもここで生まれたんだよ?」


まだ二歳にもならないベルンハルトなので、話しかけられてもまともに会話にはならない。

俺は適当にこのベンツ親子に話を合わせた後こういった。


「ところで、この子はコロンビーヌに預けて少し休憩を取ろうと思うんだ。

具体的には一日くらい。船の点検は俺がしとくから博士も休んだらどうだ?」


「ふむ……そういえば昨日、エグリゴリくん、いやイブくんに言われてたことがあってね。

まあ詳しい話はアーセナルに戻ってからにしよう」


「ああ。久しぶりにエリーの料理が食べられるな」


「私も楽しみだよ。さ、行こうか」


ベンツ親子は手をつなぎながら俺と一緒に艦橋へと歩き、アーセナルに住んでるコロンビーヌを訪ねた。

もちろんベルンハルトは遺伝的にも育ち的にも母親であるコロンビーヌがもちろん一番大好きだ。

余談だが、イブはあまり懐かれてはいない。それでコロンビーヌの姿が見えるともちろん彼はコロンビーヌの胸に飛び込んでいき、感動の親子の再会という運びになった。

それ自体は大変結構なのだが、ひとつ、アーセナルの中の雰囲気が妙であった。


みんなどことなく暗い顔をしている気がしたし、俺たちが遊びに来てもコロンビーヌしか部屋から出てこない。


「コロンビーヌ。気のせいならいいんだが、このアーセナル、何かあったのか?」


「実は……この子がいるところではちょっと話しづらいのですが」


「なら通信してくれ」


と言って俺はコロンビーヌに通信を入れた。


「聞こえるか?」


「どうも王様。実は私と一対一で通信するのは初めてですよね?」


「そうだったかもしれないな。それで、ここでは何があったんだ?」


「実はですね。このアーセナル内で一週間の間にとんでもないことが起こってまして」


「それは?」


「私と子供たち以外のほぼすべての人が肉体関係を持ってしまってたんですよ」


「はい?」


「エリーはアラン=ミシェルさんとドラクスラーさんの二人とも関係してしまいました」


「どうして?」


「知りませんよ。シシィちゃんもあの悪い男たちの魔の手にかかってしまいました」


シシィはまだ十五である。あの悪い男たちというのが誰のことかわからないが、いずれにせよ犯罪臭がする。

エリザベスが関係を持ったというのも無理やりに近いものではないだろうか。


「別にそれはいいが……なるほど。要するにアーセナルの中はドロドロだってわけだな?」


「ドロドロなんてものじゃないですよ。いつ刃傷沙汰が起こるかと私は怖くて。

だからベルンハルトが向こうに行っててくれてるのは不幸中の幸いだったのですが」


「おいおい。あの子のためを思って連れてきたっていうのに。

アンリとブリュッヘルはどうしているんだ。あの二人は一応男だが」


「ブリュッヘルさんは常識人ですからなんとか止めようとしていたんですが。

実は隊長が今回大変でして。とにかくベルンハルトは向こうに戻してください」


「わかった」


俺は通信を切り、横のベンツにこう言った。


「博士は向こうへ。コロンビーヌもベルンハルトを連れて向こうへ行くというのは?」


「そうしましょうか。ちょっと避難させてもらいますよ?」


「それは構わんが私は君に話があると言っただろう」


「ああ、それって――」


「私の口から聞くのが筋ではないか?」


「なにっ」


何と横にイブがいた。俺は反射的に全身がビクッとなりすぎて体のどこかの筋がおかしくなったくらいである。


「おおイブ君だったね。君の口から話をどうぞ」


「そうだったな。イブ、話って?」


「人工衛星は私のGPSと繋がっているのだ。従って宇宙から、私の位置が正確に把握できる。

そのデータによるとあと一週間ほど行けば赤道にたどり着けるようだ」


「赤道?」


「赤道は夜でもある程度の温度が確保されており、人間が地表と地下に街を作って暮らしているようだ」


「へえ」


「そのようだ。といっても、あまり外に出ると有害物質を吸い込んだり紫外線を浴びて死んでしまうがね。

恐らくシシィ君はそこから来たと思われる。そこでノイトラを補充しようではないか。

味方になってくれるものも多いはず。シシィと言葉は通じたから、向こうの人とも言葉は通じるだろうし」


「そうだな。俺らは物資が豊富だし、技術力も半端じゃなく高い。

向こうでも歓迎されるんじゃないかな。よし、一日休んだらそこを目指すぞみんな」


「ウム。ところでコロンビーヌくん、一緒に帰ろうか」


「はい博士。ベルンハルトもおいで」


といってベンツ親子とコロンビーヌは俺の背後の通路を通って旗艦へ戻っていった。

俺はイブとともに取り残されたのだが、イブはなぜか妙に楽しそうにしている。

まあ、五年ぐらい一緒に居る俺でなければまず気づかないぐらいに微妙な変化ではあるが。


「どうしたイブ。アーセナルに興味があったのか?」


「ここには赤ちゃんが多いだろう」


「えっ、そんな理由?」


「しかしここはドロドロなのだな。私が掃除をしてやってもいいのだがどこが汚れているのだ?」


エグリゴリはその辺をきょろきょろ見回しながら言っていた。


「おい。人の話盗聴してる上にそれは違うぞ。この場で言うドロドロというのは人間関係が非常に複雑で爛れているという意味だ」


「爛れているとはどういうことだ?」


「性的な関係が乱れていて複雑であるということだ。特にノイトラは性別があいまいだから、複雑化しやすいようだ」


「なるほど」


「人間は性的関係のパートナーが自分以外とも関係を持つと嫉妬するんだ。

ドロドロしているということは、その場の人間たちがお互いに嫉妬しあい、自分のパートナーを守ろうと攻撃的になっている状態のことを言う」


「では私たちにはそれは当てはまらないわけだな?」


「お前は誰とも性行為などしないと思うが……お前はどうなんだ?」


「私がお前の関係に嫉妬するかだと。興味はない。私には関係のない話だ」


「言ったなお前。俺は想像したらメチャクチャ嫉妬しちゃうよ。

お前がほかの男となんかするところを想像したらな!」


「私はそのようなことはしない」


「まあいい。お前赤ちゃん見たいんだったな。ちょっと行ってみるか?」


イブは無言で承諾し、俺についてきた。と言っても俺もアーセナルの中はよく知らないのだが。

通用口から入ってすぐのところに居住区があった。扉がいくつも並んでいるのですぐわかる。

そのうちの一つをノックしてみると、エリザベスの部屋だったらしく、彼女が一人で出てきた。


「よう、エリザベス。トントンの部屋はどこだ?」


「言わないでください!」


「なにっ」


エリザベスは怯えたように自分の手で顔を隠した。まるで俺に殴られるとでも思ったかのように。


「どういうことだ?」


「エリーは悪い子です! すみません、すみません!」


「事情を話せ」


「私を怒りに来たんじゃないんですか?」


「コロンビーヌからずいぶん妙なことになっているとは聞いたが」


「はあ。始まりは五日前でした。皆さんで酒宴を開いたんですよ。

私も出来る限りの料理の腕を振るいました」


「そしたら妙なことになったのか?」


「はい。最初はシシィちゃんとアンリくんでした。

元々あの人は彼女に優しかったのと、彼女も最初からまんざらではない感じでしたが」


「ほかには?」


「もうしっちゃかめっちゃかですよ。私も気づいたら食事用のホールで裸で寝てました。

そして気づいたんですよ。結婚してる人たちもパートナーをそれぞれ交換しちゃったことに」


「なんでそんなことに?」


「さあ。ストレス溜まってたんでしょう。

でも本当に私を怒りに来たんじゃないですか?」


「くどいぞ全く。まあ話はだいたいわかった。結局その後も関係が続いてしまったカップルがいるってことだな?」


「はい。シシィちゃんにドラクスラーさんが手を出して実の父子のアンリさんと相当なケンカに……」


「ていうか、アンリは元々親父のことが嫌いだっただけだと思うけどな」


「いつか刺されますよあの人。私も手を出されたみたいですし」


「ああ、親父は五年前からエリーのことお気に入りだった。

俺の嫁にどうだとよく言ってたしな。まあいい、話はわかったから俺は行く」


俺はもうこれ以上付き合ってられないので部屋を出た。


「どうする? 赤ちゃん触りに行きたいか?」


「別に今すぐにというわけでは」


「それなんだが、一旦戻って博士に相談しに行こう。帰るぞ。

めんどくせぇ、こんなところには興味は失せた」


「了解した」


艦橋から旗艦に戻り、三階の操縦席に戻って、エースのそばで立っているベンツを発見した俺は彼女の背中に声をかけた。


「ハカセ、例の件で相談がある」


「例の件って私わかんないよ?」


言いながらくるっと振り向いたベンツに俺はこういった。


「知っての通りイブは赤ちゃんとか可愛いものが好きらしい。

で、さっき見たあの人工子宮だがいつ生まれる?」


「排水して肺呼吸に移行させることはもう十分可能だが、私にそんなヒマはないのでやっていなかった」


「確かに。睡眠とれない生活してて乳児を増やすなんて無理に決まってる。

育てる親も未定だしな」


「そうだろう。エグ……イブくんと君が育てるというなら私は全然かまわないが。

ただ、育てるなら二人とも育ててくれよ」


「ああ。じゃあイブ、博士についていけ。エース、操縦はもう必要ない。

俺についてこい。イブも分体に指示をして艦隊とヘリを停止させろ。

ただし中央にいる旗艦を操縦するエースと息を合わせて行え」


「認識した」


「わかった」


そうじゃないと玉突き事故を起こすからな。スピードが落ちてきたところでベンツとイブは廊下を歩いていく。

俺はそれを見送り、すぐにエースにこう言った。


「赤ちゃん用の服はどこにある?」


「まあ一応リネン室にあるけど……」


「実は俺、隠された特技があってね」


「なに?」


「裁縫」


「へえ。でもお医者さんの息子って考えると意外でもないかもね」


「だろ。まあ別に人に自慢できるほどできるわけじゃないけど」


俺はリネン室にあまり行かない。二度か三度入ったことがあるだけである。

エースと一緒に入ってみたところ、ちゃんとリネン室にはミシンが一台だけあった。


「ミシンか。誰か使える人いる?」


「私がやるわ。そう言っているからにはトーマは使えないの?」


「ああ、ミシンはちょっと」


「何作ってほしいの?」


「こういうのを作ってほしいんだけど……」


俺は紙に図解して例のものを描いた。


「なにこれ変なの。でも可愛いかもねこれ」


「作れる?」


「難しそうだけどなんとか」


「三つほど作ってくれ」


俺もエースと一緒に例のものを作った。

それは後頭部に天使の輪のようなクッションが当たるようになっている、背負う形の幼児の転倒時のケガ防止用装具であった。


「あ、このクッションのとこにウサミミつけてもいい?」


「注文多いなぁもう……」


とはいいつつもエースはデキる女だ。俺の注文一つ一つにこたえ、オーダーメイドのクッションを三つほど作ってくれた。

そうこうしている間にリネン室にも廊下の方からけたたましい叫び声が聞こえてくるのを俺たちは否が応にも耳にし、目を見合わせた。


「新生児がやってきた。ああ恐ろしい」


「私が恐ろしいのは、生まれたばかりの赤ちゃんをイブが世話する気だってことだけどね」


「本人やる気だけはすごいあるからな。見に行ってみよう」


俺はクッションを手に持って廊下に出た。そこにはやはり、タオルケットのようなものにくるまれたやかましい肉の塊を大事そうに抱えるイブとベンツの姿が。


「よう。赤ちゃん用のグッズ作ってたんだ。今はまだその子らには要らないけどベルンハルトにはこれ、いいんじゃないかな」


と声をかけるとベンツは俺の方を怪訝な顔して見つめてきた。


「血筋的にこの子は君の甥っ子になるわけだけど、ちゃんと二人で育てられるかい?」


「そういう博士は子育ての経験は?」


「人工子宮でなら」


「それは子育てとは言わないと思うが。ま大丈夫だ。

イブのわがままを聞きたいからこうしたとはいえ、俺もやるべき事はやるつもりだ」


「頼もしいことを言うね。じゃ、君たちに任せた。私はまだ少しやることがあるので」


博士は俺に、見知らぬ人と見知らぬ人との間に生まれた知らない赤ちゃんを託すとどこかへ消えていった。

まあ、別にそれ自体は全然かまわない。俺は血のつながった子だろうと繋がってない子だろうと、どちらも平等に興味がない。

俺は赤ちゃんの世話はちゃんとすると心に誓っているが、それはイブを愛してるからだ。

彼女が赤ちゃんに興味があるからだ。

赤ちゃんを世話するのも全てそのイブのためであると割り切っているから、逆に我ながら世話はキチンと出来ると思っている。


腕に抱いていた赤ちゃんが知らない人――つまり俺だが――にびっくりして泣き出してしまったようである。


「あらあら。これからこの人はパパになる人でしゅよー?」


などとエースが赤ちゃんをあやそうとしていた。イブはどうしていいかわからず、無表情でオロオロしている。


「イブ、赤ちゃんが泣いたら俺を呼べ。そしたらこうするんだ」


俺は腕の中で泣いている赤ちゃんを見下ろしながら、低い声で一言、こうつぶやいた。


「だまれ」


ピタっと泣き止んだ赤ちゃん。ほらどうだ、とでも言いたげな顔をして俺はイブの方をみつめた。


「なるほど効果的のようだ。今後言うとおりにする」


小学生の時、初めてまともに読んだ漫画が寄生獣でした。

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