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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
最終章 魔王誕生
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第七十六話 大パーティーだ

「コロンビーヌたちもぜひ子供を連れて参加してくれ。乳幼児の世話がある君は損かもしれないが」


「そうですか。私もこの子を連れていくことにします」


「しかしそいつ、君が産んだのでもなければ望んだわけでもない子だが……」


「恐れながら愚問ですよ王様。紛れもない私の子なんですから」


「失礼した。じゃあアル、邪魔したな」


「待てよ。俺も行く。じゃあな」


アルは意外にも俺たちについてきた。園を出てしばらくしてから理由を聞くとアルは例の連絡船までの道のりを歩きながらこう答えた。


「あんな子供だらけのところに置いていくなよ!」


「そういえばコロンビーヌに男の影がなかったな。俺はてっきりアンリと……」


「さあな。今どこへ向かってるんだ?」


「連絡船だ。博士に会いにいく」


「王様、まじで博士のこと大好きすぎだろ。なんで博士と結婚しなかったんだ?」


「別に結婚してもよかったが、俺は別に博士を独占したいわけではない。

博士のことは大好きだ。それはアルの言う通りだけどな」


「ふーん。俺は好きな女なら独り占めにしたいがね」


「だから結婚したんだろ?」


「この場だから言うが、俺はコロンビーヌのことも好きだし、王様のことも好きだ。

可能であれば全員俺の手で独り占めにしたい。男ならみんなそうじゃないか?」


「それは言えてるな。いやお前どさくさ紛れに何言ってんだ」


「初めて見た時から可愛いとは思ってたんだ。でもだんだん男型になっていって。

俺はてっきり博士にでも恋をしてるのかと思っていたんだが……それがまさかな」


アルの言うことにはずいぶん含むところがあるようなので俺は特に反論せず、閉口した。


「おっ、見えてきたな。あれだな」


「何をする気だ?」


「何でしょうね?」


俺が指さした先には例の連絡船が停泊していて、まるでアリの大群のようにゾロゾロとトラックが列をなして体内を出入りしている。

その一部は俺たちの船に乗り込んで荷下ろしして出てきている。

また、ほかにも俺たちの船からガスタンクを運び出したり、砂を運び出したり食料を積んで運び出しているものがいるが、それ以外のものもいる。

彼らは連絡船から家畜の入った檻を丸ごとトラックに乗せて走っている。


それが行く先は居住区から結構遠い。目測だが約一キロメートルくらいはある。

すべてが居住区の周りにコンパクトに収まっているこの街ローレシアにしては珍しい。

トラックを目で追うと、俺が旅立った時にはなかったかなり開けた場所がその先にあり、しかもそこには土と青々とした芝生があるではないか。


「おおっ。放牧地と牛舎があるじゃないか」


「あれは養鶏場じゃないですか?」


と言ってシシィが指さした先には、牛のためのものと思われる牧草地から傾斜した道が数十メートル伸びていて、ちょっとした高台にこれもやはりふかふかしていそうな土が盛られた広場があった。

ここに養鶏場を建設するつもりであるようだ。トラックは傾斜した道を通って、高台の広場に建設された建物の中に消えていき、戻ってくると荷台は空であった。


「ふーむ。これなら卵や乳製品に困ることはなさそうだな」


「当たり前だが養鶏場や牧草地で働くノイトラも必要だ。

俺達が旅立った時と比べて格段に発展しているようだな」


「そうだな。人口が増えてるのはいいことだ。俺の力が増しているということだからな」


「じゃあそろそろ俺らもパーティーでごちそうになりに行こうか?」


「ああ。知り合いがいるから連絡船に挨拶しに行こうと思う。シシィとアルは好きにしていてくれ」


「わかった」


「確か陛下は博士と秘密のお話があるんでしたよね」


「二人にしてくれると助かる」


「わかってますよ。博士と会う時は言ってください」


「じゃあ連絡船へ行くから付き合え」


「はい」


俺達二人でさっそく向かったのはもちろん連絡船だ。中の構造は不案内である。

タラップのそばで俺たちが入るか入らないか迷って渋滞していると、頭上でよく知った声がした。


「トーマこっち。シシィもおいで」


「なあエース、俺たちにも手帳くれよ」


「うーん、最初からそうすればよかったかな。ついてきて」


俺はタラップの上から呼んでいるエースの尻を眺めながら階段を昇る。

そして船内へ入り、エースの先導で廊下を歩きながらやはり尻を見つつ続ける。


「そういえばあれから探し人は見つかったか?」


「ぜんぜん。地表やS極付近にいるのかもね」


「エース、もう満足しただろう。地表へ俺と一緒に来るんだ」


「それは別にいいけど……ほかに必要なものはある?」


「せっかくこの街に人口が増えてきたところだ。仕事場は増え、みんなそれぞれの場所で働いている。

ノイトラを連れて行きすぎたくはない。となるとスフィアから連れてくる必要がありそうだ」


「それなら私に考えがある」


「あ、博士」


ベンツが廊下の向こうから出てきた。地獄耳だ。話を全部聞いていたみたいである。


「ノイトラたちはコールドスリープさせる。地表にはいかないが、私もしばらく船に乗せてくれ」


「一緒にスフィアに行こう。あ、博士。ちょっと二人になりたい」


「わかった。二人ともちょっと外してくれる?」


「アレのことかしら……わかった。シシィ行きましょ」


「何の話か心当たりあるんですか?」


「男と女の秘密の話。詮索は無用よ」


またもやエース特有の知ったかぶりが始まった。

俺はそれを聞きながらベンツと歩き、廊下に設置されたドアからよくわからない部屋に入ってきた。

配管がいっぱい張り巡らされた部屋であることから空気清浄室か機関室のようなものだろうか。


下へ続く階段があることから、メンテナンス用の一般船員は使わない部屋かもしれない。

俺たちはその階段の踊り場で話を始めることにした。

ベンツは手すりに尻をもたれかけさせ、そこだけの一点で体を支えながらこっちを上目づかいで見つめてくる。


「話って……愛の告白とかじゃないんだろ?」


「博士は知っているのか。イブとエグリゴリは同一人物だと」


「ふふ……それに続く言葉も私は予測している。イブの遺伝子を複製した子供を作れと言いたいんだろう?」


「そうすれば確かめられるだろう」


「その必要はない」


「もういるのか!? イブのクローンが!?」


「いや。詳しくは造換塔のデータを見ればいい。ついてきてくれ」


ベンツが手を引っ張って下につれていこうとするので、されるがままついていく。

すると階段の下には映画館のような設備が存在していた。


「面白いだろう。ここで映像を見ることが出来るんだ」


「造換塔のデータって言ったが、何百何前年前のデータがあるのか?」


「あまりに古いものはないが、約四百年前のデータが残っている。

君も知っての通りエースくんがイブを生んだあとの記録がね」


「それは……!」


「そう。百聞は一見に如かずだ」


ベンツは約五分ほどカチャカチャとキーボードを鳴らしたり何かのスイッチを入れたりしながら準備を開始。

その後、スクリーンのようなものにでかでかと一枚の写真が映し出された。


「まるでエグリゴリそのものじゃないか」


それが俺の第一声だった。写真のイブはどう見てもエグリゴリ本人にしか見えないほど酷似していた。


「我々にもまだよくわかっていないが、要するにイブは統治機構にとっても相当な重要人物であったということだね」


「イブの持つ遺伝子は特別とのことだが、それは一族単位か個人的なものかそれとも持っている人は沢山いたのか……?」


「たくさんいたんじゃないかな。それが災厄とかいうので滅んだんだろう」


「博士、これ知ってたのか。いつから知っていた?」


「リリスを作ったあと少ししてね」


「なるほど。じゃあ俺はそろそろスフィアに行こうかな」


「そうかね。実は私たちもスフィアへ行こうと思っている。

君たちに大量の食糧を渡したから、また取りにいかなくてはならないからね」


「何かゴメンな」


「気にしないで、お互い様だよ。あ、私はパーティーは欠席する。

君らの持ってきてくれた砂は興味深い。処理するプラントを作らないと」


「ありがと博士。どのくらいで出来る?」


「一日あれば。これを君たちの船に積んでやろう。

プラントを増やしたい場合は向こうの私に相談すればいい」


「わかった。科学力がこれだけ高い博士なら薬とか作れないの?」


「造換塔にはものすごい量のデータがある。四百年前のイブのことさえも記録されているほどだね。

だが、医療に関するデータは正直全く見当たらないんだよ。

特にノイトラの体は特別なんだ。ノイトラの疲弊……つまり能力を使っていくうちにエネルギーを作れなくなって死ぬことも本来、そうならないよう治せる医者が、技術があったのだが」


「失われているのか?」


「残念ながら」


「ところで博士」


「どうした?」


「俺はここまで約二か月弱。それはもう長いこと単調な旅をしていたんだ。

博士と一緒だと俺、いつだって会話が弾む。博士を旅に連れてくればよかったと何度思ったことか」


「ありがとね。でも君、この手を見たら……言い忘れてたけど結婚おめでとう」


俺の指にはめてある結婚指輪をベンツがぶしつけに指さしていた。


「それはどうも」


「誰としたか知らないが結婚したんだろ。私だって君と同じだよ。

私にとっても君が一番会話の弾む相手だ。そんな君と何か月も一緒に閉じ込められたら私、絶対なんかしちゃうから」


俺はその言葉に一瞬閉口した。色々言いたいこともあるが、俺には博士の言葉は次のように聞こえた。

結婚さえしていなかったら、まだ俺のことが好きだと。

博士から目を逸らしながら辛うじてこう答えた。


「言えてるな。船内は間違いが起こりやすい。スフィアについてきてくれるんだったな?」


「ああ。ただしこの連絡船と君たちの船を並走させてね」


「それでいい。よろしく頼む。ありがとう。じゃあな」


俺達が話している間にシェフたちがフライパンをおたまでカンカンと叩くけたたましい音が聞こえ始めた。

ここは外壁に近いからか、結構よく聞こえた。


「おっと、そろそろシェフたちが集まれと言っているようだね」


「またいつぞやみたいに、ごはん持ってきてやろうか?」


「そういうの年寄扱いって言うんだよ。シシィとかいう子と一緒にご飯食べておいで」


「ああ」


実は俺たちはさっき昼ご飯を食べたばかりであるが、まあいい。

シシィを拾って連絡船のタラップを降りてレストランの方へ向かった。

レストランでは、こういう催しのようなことは多分初めてなのだろう。


余っている椅子やテーブルを片っ端から引っ張り出してきて、人工太陽前のいつも暖かい広場の前にそれらが並べられていた。


「シシィ、席を取っておこう。さて知った顔は来てるかなと」


俺はシシィの横の席を勝手にとり、キョロキョロと周りを見渡す。

すると遺伝子的には自分の子である赤ちゃんを抱いたコロンビーヌとアルが歩いてきた。

その後ろにはやはり赤ちゃんを抱いたシスターと、保育園のガキどもがずらずらと群れて歩いて来る。

俺はその先頭の二人と赤ちゃん一人にこう言った。


「よう二人とも。そうやって歩いてるとまるで新婚だな。アル、ルカと別れてもいいんだぞ?」


と俺は聞いた。酷いことを言っているようだが、ノイトラ王国の国民は、離婚に関しては割と軽いフットワークで行うことが出来る。

というのも、親父がエグリゴリに語ったように、男が女を養う代わりに子供を産むというのがこの時代における結婚という概念である。

もちろん時代が進めば同性婚だったり、その他伝統的な概念から外れた新しい概念もあるだろう。

この時代においてはそうだという話に過ぎないが、それでも、ノイトラの場合はシングルマザーになっても平気だ。


子供の教育費、家賃、貯蓄、老後の備え、税金、光熱費などといった世知辛いワードはいずれもノイトラには無縁のものである。

だからシングルマザーでも全然平気だし、結婚自体しなくていい。

それゆえにマリーやミリーなどは俺の同意なしに俺の子供を作ろうとしたぐらいだ。


だからというわけではないが、王である俺でなくてもノイトラ王国においては、モテる男は事実上一夫多妻が可能だ。

子供を産む側は結婚せずシングルマザーでも大丈夫なので、男はその相手さえいれば複数の相手に同時に子供を産ませることも可能だ。

だから、実はもうすでに俺が知らないだけで俺の腹違いの弟妹がたくさんいるかもしれない。


「冗談きついぞ。そろそろパーティーの始まりか?」


「ああ。博士は来られないそうだ。好きな席に座ってくれ」


「じゃあここで」


とアルが俺の横の席を取ったからかもしれないが、コロンビーヌも俺に断り、俺の斜め前の席に座った。

つまりアルと向かい合わせの席だ。ほどなくして俺もよく知ったアンリとミリーとマリーという三人組が俺たちの席の近くにやってきて席を取った。


「ようアンリ、二人も久しぶり」


「久しぶりですね王様。アレですか。もう地表の探査は済んだ感じですか?」


「どんな感じなんですか?」


と二人は聞いてきたが双子で顔が一緒なのでどっちが何を喋ったのか俺は全く見分けられない。

だがアンリが助け舟を出してくれた。


「二人ともいっぺんに喋るんじゃない。トーマ様、博士からの伝言です」


「どうした?」


「聞き忘れたことがある。トーマ様は誰とご結婚なされたのかと」


「え、そうなんですか!?」


「私も聞きたいですそれ。誰と結婚されたんですか。やっぱりエリーでしょうか」


「いや。それより紹介しよう。こちらはシシィ。地表生まれのノイトラだ」


「皆さん初めまして。お話は陛下からかねがね」


とシシィが頭を下げた。コロンビーヌやアンリはおとなしい性格なので、同じく大人しそうで純朴そうな年下の子をどうにかするタイプじゃない。

だがマリーとミリーは年をとっても丸くはなっておらず、シシィのことを試すようなことを言い出した。


「初めまして。聞いてたってどういう?」


「ですから皆さんは天使と言ってエグリゴリさんの部下だったと……」


「今は王様の部下です」


「それよりシシィ、話の流れ的にアナタを紹介したってことは王様はアナタと結婚したの?」


「それってノイトラ王国の王妃になるってことだよわかってるの?」


「いえ、私はそんな……」


「シシィをあまりイジメるな。俺が結婚したのはエグリゴリだ」


「……は?」


相変わらず口数の多いマリー達姉妹からコロンビーヌまで、その場にいた全員が思わず絶句していた。

そのような反応が返ってくることはわかっていた。

エグリゴリショックとでもいうべき衝撃から一番最初に立ち直ったマリーが俺を疑わし気な目で見ながら言ってきた。


「え、で、でも王様、エグリゴリとじゃ……あの、デキませんよ?」


「わかってる。だが結婚は必ずしも子供を作るためにするものでもないだろう」


「そ、それはそうかもしれませんが」


「実際付き合ってみると可愛いんだぞ、エグリゴリも」


「まず王様でないと付き合うところまでいけませんけどね、アレと」


「まあそうかもな。俺の周りってノイトラばかりだろう。そうすると結局、望めば手に入るんだよな。

やろうと思えば俺はお前たち全員を妻にすることもできる」


が、エグリゴリは違う。四年もの間じっくり時間をかけて付き合ったが、その付き合うチャンスすら普通の人間にはまずありえなかった。

そしてその上でそれなりの苦労を経て結婚したはいいが、本人がいつ心変わりするか、結婚にどこまで本気かすらも不透明だ。

だからこそ魅力的だと思う。ノイトラにはそれはあり得ない。

ノイトラは俺の望む限りなんでもしてくれる。誰を妻にするかも全くご自由だ。正直それではつまらない。

俺はみんなにこう続ける。


「まあせいぜい……いや、なんでもない。ご飯をたべよう」


パーティーで出てきた料理はバターやチーズ、卵、肉を大量に使っているのでそれはもうカロリーの高いご馳走がならんでいた。

俺はただでさえ好物のナッツやアーモンド類を毎日大量に食べており、ナッツは栄養や脂肪分が豊富だ。

そのためちょっと太り気味なのである。胸が大きくなったのも多少なナッツのせいだろう。

だからパーティー料理にはそれほど手は付けなかったが、みんなには大いに楽しんでもらった。


とんでもなく大きなピザにバターやクリームを大量に使ったお肉ごろごろの濃厚シチュー。

チキンバターカリー。とろとろオムレツ、ステーキ、ハンバーグにケーキまで。

それにシシィと俺が好きだと言うのでチーズとベーコンをカリカリのパンで挟んだクロックムッシュも大量に作ってくれていた。

さらにそれの変化形としてパンの上に目玉焼きまで乗せてしまったクロックマダムなる料理も出ていた。

まるで結婚式でもあったみたいだ。


クロックムッシュとマダムは特に子供たちに大人気で、あとからあとからシェフは追加を作って補充してくれた。

この街には五十人からの成人が住んでおり、それぞれに子供がいたり、すでにある程度大きい子供がいる状態で移民してくる人も居るなど、思ったよりも大所帯になっていた。

そのうえ人工子宮で育てる子供までいるのである。


彼らの多くは連絡船で運送業者として働く移民だ。それ以外にこの街で仕事と言えばせいぜい発電所ぐらいのものだからな。

そのうえ、今回連絡船は家畜を連れてスフィアから戻ってきたようなのだが、その家畜を世話する牧場の牧夫も連れてきていた。

その牧夫がノイトラなのかまでは知らないが、まあいずれにせよこの大所帯の欠かせない構成員だ。

彼らもパーティーに参加し、いつのまにやら宴もたけなわ。パーティーは五、六時間も続いてからようやく終わった。


俺はそういうバカ騒ぎが好きなタイプじゃないのでほどほどのところで切り上げて船に戻り、操縦室に戻った。

その右手側にあるいつもの俺の部屋にもどってしばらくしたころのことだった。

俺の部屋のドアをノックし、アルが外側からこう声をかけてきた。


「もしもし王様。客が来てるぞ」


「今行く」


ドアを開けるとおなじみのメンバーがいた。アンリとコロンビーヌ、そしてその血を引く赤ちゃんのベルンハルトはアルが抱えていた。


「よう。二次会でもやるのか?」


「別にやってもいいが……二人は連絡船でスフィアへ行くらしい」


「なんで?」


と聞くとコロンビーヌはこう答えた。


「博士には悪いですが、どうやら時期が来たみたいですね。私はこの子を連れて地表へ向かいます」


「だからそれはなんでだよ」


「戦力が必要ということなんでしょう。私はノイトラですから。つまりあなたの部下です」


「アンリも同じ理由か?」


「僕は元々、別にここにも居場所はないですからね。コロンビーヌが行くなら僕も行きます」


「……ふむ。なるほど、二人に少し注意事項を話しておくか」


「え?」


「立ち話もなんだし、食堂へ行くぞ」


食堂へ行ってもせいぜい出るのはコーヒーぐらいのものだ。俺は三人にコーヒーを出してこう告げた。


「いいか、わが船にはコールドスリープ機能があり、それを行えば二か月くらいの航海も一瞬だ。

第一、その方が食料も消費しないしな。ゆえに妊婦や体調のすぐれない人はお断りしている」


「……それが何か?」


「お前たちその様子だとうまく行ってるようだが、妊娠とかはしてないよな?」


コロンビーヌは俺を馬鹿なことを言っているとでも言いたげな冷めた目で見てからあっさりこう答えた。


「私、子供が出来るようなことの経験ありませんから」


「あ、僕もです」


「同い年のアルはもう子供もいるのに?」


「はい」


「はい」


まあいつ誰と何をするかなど人それぞれである。俺は即座に考えを改めた。


「悪かったな。二人を今まで何度もくっつけようとしたのは俺だ」


「ええ。ですが王様、そういう感情なしに私たちは結びついていますから」


「そうか」


「ですから我々は問題ありません。トーマ様こそ妊娠の可能性はないですか?」


「は?」


俺は耳を疑った。素で聞き返したのだがアンリは難しい表情を浮かべて俺の胸を凝視する。


「いけませんよ。コロンビーヌ、君も気づいていただろう?」


「まあね。私たちが最後に見たのは十五歳の時の王様だけど、それより明らかに可愛くなってしまってますよ?」


「なにっ」


「ええ。ふっくらムチムチになってるじゃないですか」


「アンリ、それは誤解だ。俺は船の飯が美味すぎてちょっと肥えてしまっただけだ」


「もしかして好きな男性が?」


「といっても男性なんて船には……」


と言いながらアンリがアルに疑惑の目を向けた。この話を深堀されると都合が悪いので俺は適当にごまかすことにした。


「バカな。ありえん。まあとにかく二人とも、船に乗るんだったらコールドスリープだぞ。

行くときはこっちの博士にやてもらおう。帰りは向こうの博士に解凍してもらう。

まあ解凍はいつのことになるかわからないが。さあ二人とも、今日は泊って行くといい」


こうして俺はアルたちに疑惑を――その疑惑は的を得ていたが――持たれているのを何とかごまかし、部屋に戻って眠りについた。



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