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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
最終章 魔王誕生
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第七十五話 赤ちゃん大集合!

「そうですね。行きましょう」


村の中心部へ着いた俺たちは、アンリの計らいでレストランへ赴くことになった。

全員で日の光の注ぐテラス席に座り、各々好きなものを注文した。


俺はお米を食べたい気分だったのでお寿司を注文した。

もちろんお寿司といってもコメと生魚の切り身や生ハムのスライスなどを合わせているだけで、素手で握ってもいないし酢飯も使っていない。

俺が生ハムのお寿司が食べたいと言ったら、この店のシェフが以前に作ってくれたものだ。


アルは船では食べられなかった凝った料理を。なにやらフルコースを注文していた。

シシィはよくわからないのでとりあえず俺と同じのを注文することをしたらしい。


三人で寿司など食べ、アンリはピザを、エースはいつも通りゲテモノを注文していた。

それらをみんなで食しながらようやく話は始まった。


「今は皆さん忙しいのでここには僕らしかいないんですよ」


「というとどこへ行ったんだ?」


「母親組は上にいるはずですよ。子供たちはほとんどみんなコロンビーヌのところにいますね」


「そういやコロンビーヌは保育所をやってるんだったな」


「ええ。それで、ここにいるのは博士などごく一部で、ほかの人は船に乗ってスフィアへ遠征しているんですよ」


「遠征してどうすんだ?」


「スフィアの特産は肉と卵、乳製品なんですよね。丸一日あればそれらは手に入ります。

その代わりに我々は見ての通り大量の人工光合成プラントがありますから、それで作ったガスを売ってますね。

燃料として人気なんですよ。薪より高い火力が出るんで料理にも暖房にも使えますし……」


「ふむ。では博士を呼んでくれ。いるんだろ。話がある」


「帰ってきてそうそうベンツ博士に会いたいんですか。トーマ様も好きですねぇ」


「そうなんだ。王様は博士が好きだよな」


「そうだな。俺は博士の――」


「ちょっと待ってください。ベンツ博士って?」


シシィは信じられないといった顔をしながら俺の言うことを遮った。

俺とアンリとエースとアル。この四人は顔を見合わせ、しかるのち、その際に何かが通じ合ったかのように俺はシシィにこう答えた。


「ベンツは双子なんだ。びっくりするぐらい似ている双子だからな」


「あ、そうなんですか。その片割れがここにいるんですね」


「そういうことなんだ。よし、じゃあみんなここからは自由行動にしようか。

俺はベンツに会って話すことがあるからアルはコロちゃんにでも会ってくるといい。

シシィも自由にしてていい。俺についてきたいならそれでもいいが」


「もちろんご一緒しますよ。おスシ美味しいですね」


「美味しいね」


「博士は確か太陽の方に。案内しますよ」


「またね」


エースが俺に手を振った。俺は軽く手を振ってアンリやシシィと一緒に席を立った。


「ちょっと待ってアンリ。博士は船の中に案内したいんだがいいかな?」


「博士はトーマ様のこと好きで好きで仕方ないですからね。何でも言うこと聞くでしょう」


「そうかな?」


「そうですよ。だいたい、来いと命令すればノイトラなんですから来ますよ」


「それはそうだが」


と話しながら俺たちは人工太陽のそばにやってきた。この集落は非常に規模が小さいのですべての場所が徒歩圏内なのだ。

だからレストランから徒歩数分でここまでやってこられた。ここに入ると、相変わらず人工子宮の水槽が並ぶ陰気な部屋にベンツが一人でいた。


「よう博士。俺だ。トーマだ」


後ろから声をかけるとベンツはゆっくり振り返り、俺と目が合うと声を裏返しながら大声で言った。

さながら久しぶりに家族に会えた犬みたいだった。


「え、どうしてここに。何か船にトラブルでもあったのかい!?」


「いや、ないけど」


「そうか……よかった。久しぶりだねトーマ君。時に、向こうのベンツとはどうしてるかな?」


「元気してるよ。地表に行けたんだ。こちらは地表生まれのシシィというノイトラだ。

地表でのびのび元気に過ごせてるよ博士は。アンタの方も順調みたいだね」


「見ての通りだよ。こちらは人工子宮で新たな子供を作ってるところだ。

人数は多ければ多いほどいいからね。さて今日はどうしたのかね?」


「船に来てほしい。見てもらいたいものがある」


「わかった。もちろんすぐ行くよ」


「シシィは……いっしょに来てもつまらないが来るか?」


「行きます」


ということになり、徒歩数分のところにある船に俺たちは戻り、倉庫の空いているスペースに所狭しと積まれた大量の箱を博士に見せた。

しめて数トン以上にはなるこの地表の砂を見せられた博士はそれを手に取ってすくい、さらさらと指の間からそれを流しながら、それはそれは不思議そうにつぶやいた。


「ええと、これは一体どこでどうしたらこうなったんだね?」


「地表の砂だ。これがとにかく莫大に存在しているんだが、なにか有効活用法はないかな?」


「これらは水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウムなどの混合物だ。

ほとんどは白っぽい外見をしたアルカリ性のもの。そして加熱や酸との混合で大量の二酸化炭素を排出する。

ぶっちゃけ目に入ったら失明の危険がある。地表は危険なところなんだね」


お、恐ろしい。地表には液体の水がほとんどないうえ、ちょっとした毒物の砂があり、強い紫外線も降り注いでいる。

およそ生命体が暮らせる環境ではない。


「塩化ナトリウムって……塩か。それに炭酸水素ナトリウムって聞いたことあるな」


「重曹だね。掃除や料理に使ったりするあれだ。その二つは人体にそれほど危険はない。

だがこれはいいニュースだねトーマ君。どうやら地表には有用な資源が大量に存在しているようだ」


「それに南半球の大部分は氷に覆われた氷河だとも言っていた。つまり水がたくさんある」


「おおっ、では……ククク、面白くなってきた。きみ、核融合というのを知ってるかな?」


「まあ一応。でもそれが何って言われるとねぇ……原子力発電とかと何が違うの?」


「全然違うよ。原子力というのは、放射性物質といわれる極めて希少で重たい原子のことだ。

放射性元素は半減期と言ってモノによっては十万年以上の長期にわたって放射線を出すことで、少しずつエネルギーを放出していく。

逆に言えばそれが短ければ短いほど多くのエネルギーが短時間で一気に放出される。

それを人為的にコントロールしようというのが原子力技術だね」


「あ、そうなの」


「え、なんの話をしてるんですか。地表の砂と関係あるんですか?」


シシィは効いて当然のことを口にした。俺はなるべく冷たく聞こえないようにしながらあしらった。


「博士が言い出したってことは必ずあとで繋がってくるって俺は知ってるからね」


「そうですか……」


「嬉しい事を言ってくれるね。ま、それに対して核融合というのは全く逆。

重い原子より軽い原子の方がやりやすいんだ。特に水素。

水もあればこのように水素を含んだ砂も大量にあると来ている。

我々は当たり前のようにエンジンで物質を精製しているのだが、それの原理も核融合のはずなんだよね……」


「つまりエンジンではそれの逆をやっているということか?」


「そうなるね。エネルギーを入力して物質を生み出す。

というわけだから、この砂はこちらですべて預かろう。

カルシウムやナトリウムといった肥料に使えるものも含まれているし、処理はこちらでやっておこう」


「うーむそうか。思ったほど大した役には立てなかったな」


「あれば嬉しいけど、別になくてもやっていける。といったところかな。

その代わり地表にチーズや卵、お肉などを持って行ってあげてくれ」


「わかった。親しい仲とはいえタダってわけにはいかない」


「えっ。だから使い道もあるんだし砂と交換と言ってるじゃないの」


「砂と食糧じゃ釣り合わないだろう。船に大量のガスを積んできたからそれも持って行ってくれ」


「助かるよ。よし、交渉は成立だ。あ、そうだ。そういえば大事なことを言い忘れてたよ」


「何だよ博士。怖いよ!」


「いや別に怖くはないんだけどね。こちらの階層でも牧場をやることになったんだ。

だから牛さんやニワトリなどをスフィアから連れてくる予定でね。あ、着信が」


「ちょっとま――」


俺は言葉を失った。何とベンツは着ていた白衣のポケットからスマホみたいなのを取り出したのだ。

正確には黒っぽい板で、両面が液晶画面みたいになっている。

なんと画面が点くとスマホみたいな機械はほぼ透明になり、まるで空中にディスプレイがホログラムで描画されてるみたいだ。

これによって手に持って歩きスマホしていても周りの景色は十全に見える設計になっている。


博士は電話に出てなんどか相槌を打ち、その後これをポケットにしまった。


「待たせたね。ちょうど船をこちらに入れてくれと連絡が」


「ちょっと、それなに!?」


「なにってちょっとした手帳だよ。君たちの作ったノイトラ王国のシステムは次のようなものだった。

ノイトラは発電所で働き、働いた分の給料を金貨で払う。そして食料を買ったりサービスを受けたりして給料を消費する。

まあ別にそれでもよかったのだが、これは造換塔と直接つながり、無線通信で――」


「つまりどういうこと?」


「発電やその他の仕事での給料がデジタル上のデータとして支払われ、この手帳に全部収められている。

お買い物はこれを持っていたら全部自動で出来るというわけだ。通信もできるよ」


「……」


俺は絶句した。ノイトラ王国を出る前は「紙幣は偽造防止技術がないから金貨を鋳造するしかないね」などと言っていたのが俺たちノイトラ王国の国王やその側近たちである。

もはやこの街では紙幣という文明をひとつすっ飛ばしていきなりキャッシュレス決済。


古めかしい固定電話しかないはずだったのにいきなりスマホの進化版みたいなアイテムを使っている。


「人間ていうのは適応力が高いね。博士だって俺と出会った当初は今と比べたら何も知らないのに等しかっただろう」


「それが五年もしないうちにこうだもんね。いくらお手本があるとはいえ、時折自分が怖くなるよ」


「さすがは博士」


「これは君たちには必要ないだろう。それより私は出迎えをしなければね」


「俺たちもすぐにスフィアに行きたいんだ」


「待ってくれ。知っての通りここは働き手が少なくてね。

スフィアとの連絡船に働き手がほぼ全員乗っているんだよ」


「なるほど……赤ちゃんたちは沢山作ってるが大きくなるのはずいぶん先だしな。

ああそうだ博士。シシィがついてきていたので言うのを忘れていたんだが、ちょっと二人になりたい」


「あっ、いいんですか。女性にそうやって声をかけたら浮気になっちゃいますよ?」


「何を考えてるんだシシィ。俺と博士に何もあるわけないだろ。真面目な話だ」


「そうだよ。真面目な話だ。だけど待ってくれ。搬入と搬出の作業をしてくれる働き手が帰りの船に乗ってるんだ。

さあ行こうか。ちょっとこの船どかさないといけないんだ」


と言ってベンツは倉庫を抜けて三階の操縦室までやってきた。俺とシシィもそれについていく。

操縦席について操作をするベンツの後ろで俺はこう質問した。


「博士、どかすって?」


「船は下の弁から入ってくるからね。ここはちょうどその真上に位置してしまっている」


「なるほど。うっかりしてた」


ベンツが一キロメートルほども船を動かしてから、すぐポケットの中の例の"手帳"で船に通信。

ほどなくして俺も完成まで見守ったこの街の連絡船がぬっと下から顔を出した。


「よし、横に着けよう」


ベンツは操縦席からまだ離れず、連絡船の――もちろんこの船は貨物船も兼ねているが――横にわが船を停止させようやく操縦席を立った。

そして相変わらず俺たちを置いてきぼりにする通信テクノロジーを使って船にいる仲間と通信する。

博士が歩きながら通信するのに合わせて俺たちも船の廊下を歩いていく。


「私だ。レオラくん。驚くなよ珍客だ!」


「レオラか。会うのは久しぶりだなぁ……」


レオラと最初に出会ったのが十五歳の時だから、今はもう二十歳ぐらいである。

異母妹のミシェルというノイトラと仲のいい子だった。ムチムチした二の腕が印象的な子で、ひそかに子豚ちゃんと内心あだ名をつけていた。


「いや、トーマ君だ。無事地表に到着し、地表生まれのノイトラを仲間にしたということだ。

いや、一人だけだけどね。それで、荷物を運んでもらいたくてね。動けるクルーは?

ああそう。まあそれだけれいば十分だろう。いや、ごめん。

トーマ君が私のことをね。うん、借りたいらしいから。うん」


突然、博士は俺の方を振り向いてこう言ってきた。


「砂とガスはどのくらい運び出す?」


「全部だ。帰りはノイトラをたくさん載せていくから船の動力は心配ないはずだ。

ガスは極低温で固体化してあるから扱いの方は博士に任せる」


「わかった。問題ない。ウチでも極低温ガスは扱ってるからね。

それじゃ運び出す荷物は倉庫の白い砂の入った箱と燃料庫のガスタンクだ。

全部だ。ああ。代価は食糧だ。肉、卵、チーズ、ミルクその他。

ただし食糧庫の古くなった奴は全部出してしまうよ。うん。それじゃ」


「博士、レオラは連絡船の船長なのか?」


「まあそのようなものだよ。どうする。懐かしい顔にでも会ってくるかね?」


「いや。古いチーズとかは運び出すんだろ。だったら無料でパーティーでも開かないか」


「お、いいね。じゃあパーティー中に少し二人で話そうね」


「そうしよう。世話になるな博士。じゃあシシィ、アルのとこにいくか」


「アルさんはコロちゃんとかいう人のところへ……?」


「ああ。道は覚えている」


ということで、船から降りて少し居住区から外れたところにある保育園へ行ってみると、なかなかの騒音が響いていた。

居住区から少し離して建設しておいて正解というものである。


「うわっ、奇声を発するような歳の子供いたっけ?」


「ずいぶん賑やかな所ですね。子供は何人いるんでしょうか」


「さあな。とにかくこの街はすごい変わりようだ。保育園も大変なことになってるだろうな」


さらに保育園に近づき、外のフェンスと顔が触れるくらいまで歩いてきた俺は、敷地内の砂場の方でどこかへ向けて歩いているある女性の尻に目がいった。

俺はまあ確かに、胸より尻派ではある。これまで俺は女の胸よりも尻について言及することの方が多分多かっただろうから、それは分かっていると思う。

その尻には見覚えがあった。保育園の玄関自体は開いている。セキュリティは甘々だ。


入口から堂々と入ってその女性に声をかけると、振り返ったのは懐かしのシスター・マリアンヌだった。


「あらあら。トーマ君じゃないの。大きくなって!」


「生きてたんですか!」


「いや、誰も死んだなんて言ってないと思うんだけど……アナタあれからずっと私が死んでたと思ってたの?」


「えっ……まあそうですけど」


この人は俺の故郷にいた人で革命軍の元構成員。現在は革命が成ってしまったので革命軍はもうない。

で、この人の住んでいた街は焦土と化し、連絡がつかなかったので俺はてっきり死んだと思っていた。

だがまあ確かに、死んだとも生きているとも誰かに言われたことはない。だが忘れたことはなかった。


「久しぶりですねシスター」


と俺はようやく事態を飲み込み、納得して笑顔を浮かべながら言った。

シスターは約四年半ぶりくらいに会うが、当時と比べて格段に熟れてきている。

体が一回りほど太くなった気がする。大木が年輪を重ねて大きくなるように、俺は女性が加齢とともに太くなることを全面的に歓迎する。

俺はどっちかというと熟した女性の方が好きなので昔の若々しく元気なシスターより、今の落ち着いた雰囲気で変わらず子供たちの世話をしているシスターの方が好ましく思う。


「あなたがいればコロンビーヌも頼もしいでしょうね」


「そうだといいけど。それで今日は奥様を連れて入園のご相談?」


「奥様って……コレ奥様に見えたんですか?」


シシィはかわいい子だ。顔立ちだって整っている。それは否定しないが、大人の女性の魅力については皆無だ。

ましてこの保育園に入れるほどの年齢の子供がいるようにはどうあがいても見えないのだが。


「ごめんなさいね。失礼しました」


「私はシシィと言います。地表生まれのノイトラです。十五歳です」


「それはまあ……じゃああの二人に会いに来たのね」


「多分そうですね。ちょっと入っても?」


「どうぞついてきて」


シスターの導くままに俺たちはついていく。シスターは黒い着物をいつも通りに身にまとっている。

修道服というやつだろうか。ボディラインを隠す服なのに、それの表面にシスターの体の凹凸を見出すと、ただの布なのに俺は妙な興奮を覚えた。


俺が尻をガン見しているとはつゆ知らずシスターは保育園の廊下を奥へ向かって歩いていく。

園は学年ごとにクラスが分かれており、数字や文字を教えている教室もあればおもちゃとお昼寝用の布団がしかれている低年齢用の教室もある。

それらが中央を貫く廊下の左右に配置されていて、外は運動場になっているというわけだ。


園内は非常にうるさい。十六人子供を作るべしとは言っていたがそんなものじゃない。

五歳以上の子供も見受けられるし、子供は二十人以上いるようである。


俺は子供など嫌いなので無視してどんどん先へ進み、一番奥の右側の部屋にアルとコロンビーヌがいて話しているのを発見し、シシィと一緒に部屋に入った。


「よう二人とも。久しぶり」


と声をかけると、アルと向かい合っていたコロンビーヌがこっちを向いた。

腕には一歳児くらいの赤ちゃんを抱えている。

哺乳瓶でミルクも飲ませているようだ。顔立ちからしてどう見てもコロンビーヌの子だ。


「ああ、もしかしてそいつか。あのぉ、ほら、ベンツの。名前なんだっけアル?」


「ベルンハルト・ディーゼル=ベンツ。ベンツとコロンビーヌの子だな」


「えっ、あの二人そういう関係だったんですか!?」


「相変わらずシシィは反応がいいな。あ、そうだ。コロンビーヌ、よかったら手帳貸してくれないか?」


「お久しぶりですね王様。もちろん構いませんけど……」


両手が塞がっているのでアルは手帳って何のことかわからないままコロンビーヌの体をまさぐった。

そしてお目当てのものが見つかって俺に見せてきた。


「手帳ってこれのことだろ王様?」


「ああそれそれ。悪いなコロンビーヌ」


「いえいえ。でも船に乗ったほうの博士はこういうの発明してくれなかったんですか?」


「そうだな。発明してくれた方の博士に連絡でも入れようかと」


「あの……」


シシィは初めて触る手帳を操作中の俺にこっそり耳打ちしてきた。


「あの二人の距離感。元夫婦とかでしょうか?」


俺はこっそり耳打ちし返した。


「シシィ。そんなことは気にしなくていい。実を言うと俺も知らない」


そんなやり取りをしつつも俺は手帳を操作し、なんとか博士に電話をかけることが出来た。


「あ、もしもしコロ――」


「俺だ。作業は順調か?」


「トーマ君か。なるほどね。じゃあ今は保育園か」


「保育園の子供も連れてパーティーと行こう。レストランにはその旨を伝えておいてくれないか?」


「了解だ。肉や卵にバターにチーズ。ずいぶん残ってるね。

我々のシェフは優秀だが一時間くらいは時間をくれたまえ。

皆へ知らせるのは任せろ。この手帳はグループに一斉送信機能もあるのでね」


グループに一斉伝達と聞くとますます俺はSNSを思い出した。


「ああ。荷物の方は?」


「順調だ。コロンビーヌくんはアル君と二人にしてやってはどうかね。

そこに用はもうないだろう。こっちに来ないか?」


博士ですらコロンビーヌとアルは仲良しであると認識しているようで俺は微笑を禁じえなかった。


「それもそうだな。じゃあ博士、またあとで」


俺は電話を切るとコロンビーヌの着ている服のポケットに手帳を忍び込ませた。


「ありがとな。コロンビーヌ、一時間後に太陽の前の広場でパーティーがある。

俺らの船の食材はまだ食べられるが古くなってるので新しいのを積んで帰るつもりなんだ。

どうせならってことで、大量のご飯を作ってもらうことになった」


「そうなんですね」


「コロンビーヌたちもぜひ子供を連れて参加してくれ。乳幼児の世話がある君は損かもしれないが」


「そうですか。私もこの子を連れていくことにします」


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