七十一話 お前の正体は
「なんじゃこりゃ!」
俺の目の前には黄色と黒のカンバンが四枚、穴を囲むように四角の形になるよう並べられていた。
Keep out!と書かれているカンバンを見て俺は思わず吹き出してしまった。
「ぷふっ。アイツ形から入るタイプなんだなぁ……」
真面目なエグリゴリらしい。俺は仕方なくその場にしゃがみこんで耳に手を当てた。
「こちらトーマ。どこだエグリゴリ。会いたい」
「今始発駅の階段の工事中だ。お前と通信をするのも久しぶりだな」
「そうだな。あと何時間くらいかかりそうだ?」
「八時間もあればホームと階段が完成する」
「そうか……」
俺はちらっと太陽のほうを見た。太陽は沈みはじめており、八時間どころか二、三時間もあればこの辺は凍り付いた死の世界になってしまう。
ここで待っていてもよかったが、背に腹は代えられないので俺はおとなしく船の方に戻るのだった。
船に戻って食堂で親父やトントン、リリスといった近しい人とメシを食べている時だった。
急に思い出したようにエグリゴリから通信がかかってきた。
「私に会いたいと言っていたな。面と向かって話さなければいけない内容なのか?」
「別に今話してもいいが、それだとお前に会いに行く理由がなくなるだろう?」
「それを失念していた。だがわざわざ会いに来る必要性はない。今そこで話すがいい」
「エリザベス。エレノア、エルザ、エーデルガルト、エヴァ、エステル、エメリ、エマ」
「何を言っている。バグったのか?」
「お前、ツッコミも鋭くなったな。お前はKID Eだったな。
それではEで始まる名前を手当たり次第に挙げれば一個ぐらいお前の琴線に触れるようなのもあるかもなと」
「言っている意味が分からない」
「また新しい名前を思いついたらまた付き合ってくれよな。
エウロパ、エルメス、エレナ、エミリー、エスメラルダ」
「エースがAで始まる名前に反応したということか。だが無駄だ。私はエグリゴリ、それが本名だ」
「いや、別にエグリゴリって名前が気に入らないからじゃないぞ。
それは統治機構に与えられたお前の名だ。
とはいえいくら何でもそれを変えて俺色に染めてやろうとまではさすがに……」
「私に新しい名前を付けたいのか? よかろう。好きな名で呼ぶがいい」
「エグリゴリでいいよ。当分はな。悪い、妙な時間を取らせたな……切るぞ」
俺は通信を切ると早速家族たちに知恵を借りようと試みた。
「みんないいか。ちょっと知恵を借りたいんだが」
「なんだ?」
「エースはアリスという名前に強く反応していた。そしてそのうなじにはKID Aと刻まれていたんだ。
そのことから、エースはもともとアリスという名前だったんじゃないかって気がするんだよな」
「お前の言いたいことはわかった。みんな、エで始まる女の名前を言ってみよう」
「親父……そこまでお見通しされるとちょっと恥ずかしいよ」
「気にすんなって息子よ。男が新妻のことを四六時中考えるのは、いたって自然なことだ」
「そ、そうだよな。考えうる限りの名前を言ったが反応はなかったんだよ。
エリザベス、エルザ、エミリー、エマ、エステル、エレナ、エレン、エルメス……」
「うーん……トーマ、私は思ったのだが、エグリゴリって本当にそうなのかな?」
「そうなのかな、とはなんだよトントン?」
トントンは食器を置いて少し顎に手を当て、あのお決まりの考え事のポーズをした。
そして虚空の一点を見つめながらこう答えた。
「私にはエグリゴリが女だとは別に見えないけど。かといって男には見えないのだが」
まあ、別にエグリゴリの性別など今更どうでもいいことである。
性別云々以前に、人間じゃないからな。
「言われてみればKID Eって……子供ってだけだから女とは限らないが」
「そうだよね。だから一応エで始まる男の名前もストックしておこうじゃないか」
「な、なるほど……」
「男の人同士で結婚ってその……いいの?」
リリスが言ったことに対し俺はちょっとふざけてこう言った。
「俺のいる場所がノイトラ王国だ。俺こそが法律だ。俺が国王だからな」
「おお、なんかパパかっこいいね!」
「リリスもエで始まる男の名前考えてくれるか?」
「うん。イーサンでしょ、エリックとかエリッヒとか、エドガーとかエドワードとか?」
「うーむ。そういえば女性名でエリカって名前があったのを今リリスのおかげで思い出した」
「パパはそんなにエグリゴリさんが女の子であってほしいわけ?」
「な、なに怒ってんだよ」
俺は困惑した。ただただ困惑した。だがトントンは絶句している俺に諭すようにこう言ってきた。
「あのねトーマ。ここ最近、君は新妻のことばかりで娘のことがなおざりになってたからね……」
「ちょっと待てよみんな。みんなはリリスのことをどう思っているんだ?
俺は未だにリリスに対する態度を決めかねてるよ。三歳児であると同時に大人より賢いわけだからな」
リリスはちゃんと夜中にトイレに行けるし、頭いいし、通常の三歳児並みの扱いをしなくていいのはわかる。
かといって、全くの大人として扱うには不安定なところもあって対応を決めかねている。
少なくとも夜一緒に寝るなどということは今後全くない。
「リリスはもう十分大人だ。お前はそうは思ってないのかアラン?」
「見てわからないか。リリスは不安なんだ。今まで独占してきたパパが離れて行ってしまうようでね」
「まったく、どうすりゃいいんだよ」
俺はもうこれ以上話をすることは全く望むところじゃないのだが、俺とリリスは実の親子だ。
めんどくさいからと言って無視したり逃げたりすることはできない。
「リリス。焼きもちやいてるんだろ。わかった、今日は一緒に寝るか!」
「イヤ。一緒に寝るのは別にいいんだけど私がわがまま言うからしょうがなくみたいな態度がシャクにさわった」
とリリスは早口で一気にまくし立てた。どうやらリリスは怒ると早口になるタイプらしい。
「ふははっ、怒ると早口になるのは父娘で一緒だな」
「笑ってる場合か。リリスのペペなんだろ。なんとかしてくれ」
「そうだな。リリス、今夜は観測所のベンツのところに泊まったらどうだ?」
「あ……それいいかも」
「だろ。お前のパパとこれ以上話しても悪循環だ。行って来いよ」
「わかった……」
何故か素直に親父の言うことはよく聞くリリス。リリスが食堂を出て行ったところで俺は親父に聞いた。
「おい親父、子育てしたこともないくせになんであんなに……?」
「簡単だ。ベンツもリリスもお前が相手してくれなくて寂しい同士だからな」
「それは……まあ認めるが」
「それに忘れたのか。俺は子供の扱いは自信ないが、女の扱いには慣れている」
これにはトントンたちも呆れてものが言えなくなっていた。
「そう言われるともう何も言うことはないよ親父。ちなみに俺は子供の扱いも女の扱いもドがつく下手くそだ。
この場合俺は観測所へ行ってフォローでも入れた方がいいのか?」
「いいんじゃないか。なんだかんだ言ってもお前とあの二人の関係性ではお前の方が上だからな」
「上っていうと?」
「あの二人はお前に愛されるためなら何でもするってことだ。だからお前の方が上だ。
お前はあいつらを気遣ってやるのもいいし、そうしなくても別に構わないと思うが」
「うーん……わかった。俺は帰ってねる」
「そう来たか……!」
親父は笑った。トントンたちは困惑顔だ。親父と俺はなんだかんだで通じ合っている。
俺は八時間後にトンネルが開通すると言われていたので寝ることにしたのだ。
起きて、ベッド横の棚の上に外しておいた腕時計を見るとちょうど時間だったので俺は身支度して、この船に唯一存在する窓である操縦席の窓から景色を確認。
生身で活動できる時間帯であることを確認すると外へ出て、この船のすぐそばにある大穴の跡地に来た。
相変わらずカンバンが掲げられている。
「エグリゴリ。こちらトーマだ。そろそろトンネルに入っても構わないか?」
と通信を入れると、エグリゴリはすぐに応答してきた。
「こちらから連絡を入れようと思っていたところだ。ハッチは内側から開けるのでそこで待機しておけ」
「了解」
やはりエグリゴリと一緒に居ることは俺にとっては非常に居心地がいいものだ。
少なくともリリスよりは。娘というのは父親にとって本当に難しい存在である。
特にリリスは子供として接したらいいのか一人前として接したらいのかもわからないので余計にコミュニケーションが困難だ。
「今開ける」
地面に掘削されたトンネルのフタが開かれ、エグリゴリと対面。俺は早速階段を下りて地下へ潜った。
地下には元々照明が設置されており、エグリゴリらしい無機質で無骨なホームと階段が一望できる。
線路も列車の車両も同じく無骨で飾らない。むき出しの壁や階段には特にそそらないのだが、降りてみるとそうでもなかった。
「おいおいここは天国か?」
ホームと線路には大量のエグリゴリがいた。一人や二人の分体じゃない。十人以上はいる。
そのうちの一人が俺に声をかけてきた。
「次の駅まで続く敷設には、あと四十日あれば可能だ」
「うむ……ご苦労。その分体はまだ消さずにおいてくれ。少し話があってきた」
「だろうな。ただ会いに来るだけではあるまいと思っていた」
まあ、昨日はただ何となく会いに行く気だった。エグリゴリの前で名前をペラペラと羅列するのだ。
だが拒否されたのでそれは中止した。エグリゴリの言う通り俺は今回、顔を見に来たのとは別に話があって来たのだ。
「今俺たちが扱える技術では真空でかつ重力のある環境で飛べる船は作れない。
一応無重力の宇宙空間ならばなんとかなるだろうが……」
「要件を言え」
「早い話、お前に技術的に相談したいことがある。この地表には空気があるから、飛行機や気球、それにヘリコプターといったシステムが使える」
「ヘリコプターなら作ってやろう。簡単だ」
「えっ」
「確かに……私のミスだった。人工衛星はお前たちには必要のないことだったな」
「だからお前の技術を借りたい。ヘリコプターを作れると言ってたが航続距離は……?」
「お前はバカか。ノイトラが乗っている限りは無制限だ」
「ふむ……しかしちょうど四十日か。俺は船でスフィアまで戻り、さらに多くの移民を募る。
そして戻ってくる。そのつもりでいたのだが……空からの調査を済ませてからでもいいか」
「私の工事は間違いなく中止となるだろう。ヘリコプターの製作によって以外の理由で。
分体に早速仕事をさせるので、お前は少し私の話に付き合え」
「話に付き合えだと? それは願ってもないことだが……何か用でもあるのか?」
「お前はヘリコプターや宇宙、地球、海といった知識を持っているが、本来あり得ないことだ。
情報を集積する造換塔にさえそれらの情報は全くないか、あっても断片的なものだ。
お前はどんな電波も通さないはずのスフィアの中でいったい何を受信しているというのだ?」
「お前になら話してもいい。俺はスフィアのノイトラであると同時に、地球の人間の記憶を持っている。
通常知りえない知識を持っている理由だ。お前は次に、なぜその知識を持っているか疑問に思うだろうが……」
「思う」
「残念ながらそれには答えられない。よくわからないというのが本当のところだ。
が、何かの理由がつけられるかもしれない。俺はこの間、確率論の話をしただろう?」
「ああ」
「ランダムな地球人の記憶が、ランダムにスフィアの誰かに受信されることがあったとしよう。
だがその場合、ノイトラの王である俺にそれが受信されるというのはたまたまにしては確率が低い話だ。
だいたい数十万分の一の確率なわけだからな。逆に、ノイトラの王にはそういう特別な力があると考えるのが自然だ。
遺伝子の壊れた不良品のことだから、お前ら統治機構もあんまりよくわかってないんだろう?」
「最後の問いに関していえば、イエスだ。やはりお前は面白い。地球のことを私に教えろ」
「別に……そうだな。天の川銀河と呼ばれる銀河の中に太陽という恒星があって、八個の惑星をこれは従えている。
確か三番目に太陽に近い公転軌道を持っているのが地球で、表面には前にも言ったように海という水で覆われている」
「それで?」
「それでと言われてもな。お前ら統治機構を含めすべてはそこで始まった。
さっきも話に出たが確率論的な話として、宇宙に地球以上の栄えた文明があって、たくさんの人口がいたとする。
それなら、生まれてくる人間は地球外文明のほうが多数派だ。よって、地球に生まれてくるってこと自体が不自然なほど低確率になる。
このことから地球こそが宇宙で最も進んだ文明、あるいは宇宙で唯一の生命を持つ星であると考える妥当性が出来るんだ」
「よくわからない……」
「そして俺たちはその地球の後継者だ。一目瞭然。見た目や遺伝子もそうだし、言語や文字も継承している。
その俺たちが今ここにいると言うことはつまりその推論はますます当たっている可能性が高い。
宇宙には地球由来でない文明は存在しない、という推論のな。
恐らくもう地球は滅んでいて、この天体も地球から遠い場所にあるかもなぁ。
あ、今思い出した。お前は俺のことが気になってるかもしれないがちょっと聞いてくれ。
この天体をいつまでも天体というのは呼びにくい。名前を付けよう」
「私はそれに関与しない」
「わかったよ。全く言うと思った。よし、アングラと名付けよう」
「アングラ……?」
不思議そうな顔をしたエグリゴリに俺は由来を一から説明しだした。
「アングラというのはだな、まあつまりアンダーグラウンド、この星は地下の床面積がすごく広いから、そこからとった」
「アングラ……何か懐かしい響きだ。驚きだ。この私が、何かを懐かしいと思うとは」
「なにっ。お前がKID Eだって言うからEで始まる名前いっぱい考えたのに。
なんだなんだ。実はアンジェラとかそんな名前だったりするのか?」
「それはない。だが……アングラ……アングル……アングロ……? 少し違う気もする」
「アングロサクソン? アングルランド、イングランドか?」
「イングランド……?」
エグリゴリに反応があった。案の定だ。地球の知識を持っている俺でなくては絶対にイングランドなどという言葉は出てこない。
それなくしてエグリゴリのもしかしたら本人でさえ忘れてしまってるかもしれないほど遠い過去を掘り起こすことは出来なかっただろう。
もうこの機を逃すと次はない気がしたので俺はさらに畳みかける。
「イングランドとは……セシルがそうだったように紳士と淑女の国だな。
人種差別や身分制度が激しい国で大ブリテン島においては経済力、人口のいずれでも歴史上ほとんど常に最大であった王政国家だ……」
「私はなぜ……私は一体……」
「もしかしてこのEっていうのはイングランドの頭文字なのか……?」
イングランド風の奴と言えばセシルだな。久しぶりに会いたいなぁ。
などとのんきに思っていた俺に突然鳥肌が立った。
俺の意識とは関係なく、脳が勝手に演算した結果、脳が勝手に興奮して鳥肌が立ったのである。
だから、俺が何故自分が興奮して鳥肌が立ったのかについて理解するのには、その生理現象が起きてから数秒後のことだった。
「ま……まさかお前……いや……そんなことが……?」
「何を言っている?」
俺はエグリゴリの体をぎゅっと抱きしめた。向こうは抱きしめ返してはこないが、かといって嫌がりもしない。
「何の真似だ。私にそんなことをしても意味はないぞ」
「なんてこった。どこまで皮肉に出来ている。俺の運命ってやつは近くで見ると悲劇、遠くから見れば喜劇なんだろうな。
何のことかわからないと思うから、今から説明をさせてほしい」
「説明しろ」
「まずお前、今の自分の姿をどう思う。それはずっと前からそうだったんだろう?」
「当然だ。古い記憶は定かではないが、私はこの姿で仕事を始めた。スフィアの人間を監視する仕事をな」
「俺もまだ深く呑み込めてはいないんだが……間違いない、やつの仕業だ!」
だいたい、あの男の存在は完全に謎であり、そもそもエースと出会う前の男がどうしていたかも謎だった。
あの男というのはエースに心臓をあげたとかいうあの男である。
きっとどこかで残骸になって転がっているに違いない。
その男がスフィアに細工をし、その記憶を失ってエースと旅をし、もう一度スフィアに戻ってきた、それで間違いないだろう。
「いいかエグリゴリ。お前の本当の名は……イブだ。間違いない!」
「何を言っている。私はエグリゴリだ」
「いやお前はイブだ。畜生なんで気が付かなかったんだ。お前の顔はリリスとも似ているのに……!」
いや、リリスに会うことがなければそのことは絶対に気が付けなかっただろう。
エグリゴリは恐らくイブだ。ただし、正確にはかつてどこかで生存していたイブをもとに作られたレベル8セキュリティだ。
「イブの遺伝子をお前は何らかの形で保有していた。それをあの男は回収しに来たんだ。
そしてついにはエースがスフィアの中にそれを残した。お前はその時に相当ダメージを負って記憶を失っているに違いない」
「私がイブだと。何の冗談だ?」
「冗談なんかではない。イブの遺伝子なら博士が何とでも出来るから、確かめることは可能だ」
「私は認めない。私が元人間だったなどと」
「全くとんだ笑い話だ。俺はお前と子供を作れなくても構わないから結婚したってのに、俺とお前の子がすでにいるんだな」
エグリゴリは寒気でもしたように顔をしかめて自分の体を自分の腕で抱きしめた。
「お前が嫌ならイブの名前は出さないようにする。エグリゴリ、子をなすということは自分の生きた証を残すということだ。
お前が統治機構のひとつの駒としてではなく、確かにここに存在したことを証明すること、それが子をなすということだ」
「私にそのような機能は実装されていない」
「またそれか。お前には可能性がある。自分で思っているよりも遥かにな。
リリスのことをお前の子だと認められないのなら今はそれでもいい。
だがお前は選んだ。統治機構の道具としてではなく、スフィアに閉じ込められていた俺たちを自由にしてくれだろう。
お前が本気を出していれば俺たちがここまで来ることは絶対にできなかった」
俺は熱くなってエグリゴリの顔に自分の顔を近づけながら興奮して赤い顔をしてこう続ける。
「俺たちが成し遂げることすべてがお前の功績だ。俺達はお前の生きた証そのものだ。
来い。ヘリコプターを作るんだったな。もし頭が混乱してるなら今はそっとしておくが……」
なんとエグリゴリは俺を抱きしめて胸に顔を埋めてきた。
俺は条件反射でぐっと体に力が入った。エグリゴリに抱きしめられて殺されかけたことがあるためだ。
「どうしてお前はそんなに私に優しいのだ? 私は人間を何千人も殺してきたのに……!」
「お前が好きだからだ。お前だって俺に優しいだろ。混乱させるようなことを言って悪かった。
思い立ったらつい口から出てしまったんだ。困惑させるつもりはなかった」
「……私は一体何をしているのだ?」
と言ってエグリゴリは俺から離れ、周りをキョロキョロ見渡し、まるで目撃者がいたらビームでも撃って殺そうとしているみたいだった。
「無意識に学んでいたんじゃないか。今のお前の気持ちは、ほかの人間たちがやっているこれが相応しいと」
「私はお前にどうしてほしいのか自分でもわからない。私はお前をどうしたいのかわからない」
「んなこと言われてもお前じゃないんだから俺にはわからないよ。
でもそれだけ流暢に話せるようなら大丈夫だな。ヘリを作るぞ。
確か船の中に博士のラボがあったから博士に言ってそこを使わせてもらおう」
「うむ。交渉はお前に任せた」
俺達は地下から戻り、突貫工事で建てられた狭小な観測所へ向かった。
するとそこにはもちろんベンツのほかにリリスもいるわけである。
俺は挨拶もそこそこにリリスの顔を穴が空くほどじろじろ見つめる。
「な、なんなの……?」
とリリスはおびえている。足がすくんで逃げられもしないようである。
俺はリリスの顔を改めてまじまじと見つめ、やっぱりエグリゴリに似ていることを再び確認した。
「リリス、博士に話があってきた。お邪魔する」
「わ、わかったけど……」




