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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第二章 解放の戦士
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第五十七話 無限の彼方へさあ行くぞ!

それからの模様を、あえてカットさせてもらおう。ここから二年弱という時間の経過を挟む。

この間には様々な変化が各地で起こり、それはもう枚挙にいとまがないほどだ。


まず、エグリゴリ主導の鉄道が一か月かけて完成。車掌や運転手もいないし路線や車体の点検業者もいないが、とりあえず開通。

ちなみにエグリゴリいわく、飛行機がカニ型ロボットで直されていたように、この鉄道もカニ型ロボットに命じて修復することが出来るのでそういった業者は要らないとのことだった。

これにより移民流入は一段と加速。また、追加で貨物列車とその駅を併設したことによりわが王国と隣国である合衆国とで貨物の往来が増加した。


別に貨物なんか必要なくてこちらで作れるのだが、造換塔を使わないに越したことはない。輸入できるモノは輸入した。

これにより、ついにノイトラ牧場のみんなを休ませることに成功し、やっと人数が足りてきたので労働シフトを組めるようにもなった。


発電所はこれまでノイトラが入っても出ていくことはなかったが、シフトをしっかり決めて働けるようになった。

具体的には八時間労働のシフトを三つに分けて行い、仮に八時間睡眠だったとしても労働者には八時間の自由時間を確保。


あえて娯楽は子供向け遊園地とかスタジアムでの子供のスポーツ試合とかを多めにし大人向けはせいぜい酒場くらいにしておこうとトントンとの悪巧みで決まった。

この方が人口が増えやすそうだからだ。実際いい年の大人だと、八時間もの自由時間は暇すぎてツラいらしい。


酒場で出会ったのか職場で出会ったのかは知らないが結婚した夫婦の数も、その間の子供の数も順調に増えていった。

人口の激増に伴い、初期メンバーだけではさすがに負担が大きいので、ついにわが王国は建国から三か月後には官庁と省庁を創設。


管理事務所を増員して教育し、ようやくエースのほかにもコンピュータを使って事務ができるインテリお姉さんが増えた。

ほかにも食堂の職員やケータリングを専門とする国営会社、それに様々な雑貨や家具、嗜好品を販売する店員。

あと砂漠のホテルやレストランの従業員など、発電に関わらないノイトラの職場も増えた。


それと、各国に散っていた親父やトントンの率いる革命軍たちは徐々に我が国に参集し、建国から一年もすると完全に本部機能がノイトラ王国に移転した。

もはや各国で諜報したり情報工作したりする時代じゃなくなってきたってことだ。革命軍の機能や存在意義はもはやそれじゃない。

もはや革命軍は親父やトントン、そしてその子である俺の役に立つことが存在意義となりつつあった。


革命軍は有能な人材も多い。医者や弁護士、学校の教諭などこの時代では相当なエリートと言える大卒のしかもノイトラじゃない人間たちが移民してきてくれた。

これにより念願だった親父のワンオペ医療から親父も国民も、建国半年ぐらいでようやく解放されることになった。


親父が医者だったのは潜伏のために詐称していたことがあっただけなのだが、意外にもちゃんと治療はできていた。

なんだかんだ親父も有能な男だからな。だがワンオペで数千人を診られるわけもなく、途中から仕事を放棄して砂漠のホテルでカジノをやっていた親父だ。

だが責められまい。あのまま肩の荷を下ろさずに働いていたら死んでたところだからな。人間、適度に逃げることも大切だ。


このような人間の流れを各国は邪魔しなかった。まずは合衆国やその同盟国などが俺たちと国交を結び、友好的に接してくれた。

次に王国だが、これは態度が二転三転したものの建国から二年弱が経過した今は落ち着いている。

というのも国王や大臣などといった王政の重役が次々と怪死する事件が起きた。


ある者は焼き殺され、ある者は地上にいながらにして溺死していた。アルとコロンビーヌの二人がやったとみて間違いなかった。

当然、これは俺が止めることもできたはずなので王政は事実上国王の俺の意思で王政の者が殺されたと判断。


猛抗議が行われたがある日を境に突然友好的になった。新しい王の就任だ。

新しい王は上手いことやって先代とその家族から王位をかすめ取り、我が国に手を差し伸べてきたのである。

もちろん分体ではあったがちゃんと国王とも面会して物理的に握手し、種々の契約書や条約にサインして友好関係を結び、移民を募った。

この王国領土にある核爆弾を使うことにならなくて本当によかった。


さて、わが国が大きな目で見て変わったところと言えばそのくらいだ。

インフラが整備されて人口は増え、経済は活気づき、医者や歌姫なども移民してきた。

ノイトラたちは自由に、かつこのスフィアのどこの国よりも楽しく快適に過ごすことができるようになった。

子どもも増えた。ノイトラたちも恋をしだした。あのノイトラ牧場で死を待つだけだった二千五百人弱までもが、だ。

そして俺が仲間にしたアンリ達と同様に神の兵隊として働いていたほかの天使たちも。


人間関係も多様に変化し、俺もついていくのがやっとだ。例えばトントンとベンツが結婚した。

そして一か月くらいで別れた。子供はできなかった。二人いわく"あれは一時の気の迷い"だったそうだ。

あと、信じられないことが判明した。俺には腹違いの兄と姉が一人ずついたことが判明したのだ。


別にそれ自体は信じられないというほどのことじゃない。

むしろ弟や妹じゃなく兄と姉だったのは、親父は俺の母を最後の相手としていたのだ、と辛うじてフォローのしようもある。

ところが、俺の腹違いの兄というのがアンリだということが判明した時はさすがに俺も親父もアンリ本人も驚いていた。


だが、よくよく親父から話を聞いてみるとなるほど、ある種納得のいくストーリーが浮き彫りになった。

親父によると過去にノイトラの王を生んだ一族はわかっているだけでも俺の母やトントンの家系だけじゃなくほかにも二つあった。


先述の通りノイトラはどちらかというとノイトラ同士の結婚より、女性との結婚より、男性を選ぶ傾向がある。

つまり男はノイトラにモテやすい。ましてや親父は女にもノイトラにも人気の出るタイプの男だ。

その家系の者に近づいて子供を産ませるのは容易かっただろう。道理でアンリがノイトラの王について俺と出会ったときにはもう詳しく知ってたわけだ。

母から王様について聞かされていたと言っていたがこういうことだったみたいだ。


ちなみに、姉の方はというとノイトラと人間のハーフなので必ずしもノイトラが生まれるとは限らない。

だから普通の人間の女性として生まれていたそうだ。そのせいで親父は会うつもりもないらしい。

それがよかったか、悪かったかはわからない。正直言うとあまり興味もない。


だって有能でカリスマ性があり、革命軍から慕われていてスラム出身なのに非常にインテリで努力家あると同時に、人間のクズでもある親父の子だ。

母方の血ならともかくとして、俺は別に会おうとも思わない。

俺の血筋にもびっくりしたが、とにかく話を進めていこう。建国から二年弱。俺は十四歳の誕生日を迎えた。


言うまでもなく国王誕生日は祝日。そして今日、俺にはもう一つ吉報が届いた。

俺が住んでいるのはもちろん砂漠の宮殿。砂漠と言っても乾燥しているだけで実は気温は低い。

スフィアの熱循環は地球と同じく水を基本としたシステムだ。

流れ込む水は極めて大規模かつ高性能な浄水場を通ったあと、熱せられて水蒸気となって天へと昇る。


スフィアは地球とは違い、それほど高いところに天井があるわけではなく、したがって水蒸気が天へと昇っても冷めることがない。

その水は温かいまま大陸中央部によく降水するが端っこの方であるここら一帯には降らない。

だから冷たいし乾燥もしている。まさに神に見放された土地というわけだが、そこで住むこともノイトラならば可能だ。

ノイトラさえいれば、例えば火星などの惑星をテラフォーミングして住むことも可能だろう。

多分、俺はこのスフィアの外にあるのはそういった惑星であると考えている。


地球と違う環境を持つ惑星。そこにスフィアがあるに違いない。それを今日、俺は確かめるのだ。


「どうしたアンリ、伝令など前時代的だぞ」


「しかし大切な用がありまして。一緒に参りましょう」


「大切な用だと。一体全体……?」


俺は宮殿の玉座に座っていた。といっても、移動が面倒なので宮殿の入口の応接間のすぐ前が俺の部屋であり、玉座になっている。

なんだか締まらない建築だが、俺は誰かに権威を誇っているわけじゃない。

権威を誇りたきゃ荘厳な宮殿の奥深くに大きな玉座を置けばいいが、俺にそのつもりは毛頭なかった。

エグリゴリの不便な玉座を思えば、それをマネする気にならなくて当然だろう。

そんなカジュアルな玉座に座って英気を養っていた、というかまあ、本当のところを言うと昼寝をしていた俺をアンリが神妙な顔をして訪ねてきた。


アンリは俺の腹違いの兄と分かり、親父や俺とも少し付き合い方を変えて前よりもっと親しく付き合ってくれるようになった。

それ以外は特にこの二年弱で変わったところはなく、浮いた話も聞かない。そんなアンリが俺に用とは。

と思っているとアンリは待ちきれずにこう言ってきた。


「エースさんと博士のプロジェクトがついに完成しました」


「早かったな! 二人とも王国の仕事の片手間だったのに大したものだ!」


「ええ。全くです。あの二人がいなかったら我々の旅はここへ来るまでも来てからも相当に遅れていたでしょう」


「そうだな。よし、一緒に行くか」


この狭間の世界前の砂漠から列車でエレベーター前まで二人で旅し、そこからエレベーターで上がる。

ここにはバス路線を通しているので今度はバスに乗った。そして揺られること数十分。

住宅街からかなり離れたところに建設されていたのが例のプロジェクトの研究所に我々は到着した。


その研究所は一つの町と見まがうほどの広大な敷地を確保しており、エースとベンツを主任として研究員が数十名かかわっているほどの巨大プロジェクト。

何しろわれらがノイトラ王国のみならず、スフィア全体にとっても重要な巨大プロジェクトなのだ。

これ以上重要な計画などない。俺たちがバスを降りて研究所の入口へ近づくやいなや研究員が出迎えてきて、俺たちは何度か行ったことのある例の格納庫の入口に立った。


その格納庫にはエースとベンツたちに研究を任せておいた船がある。そう、宇宙船である。

宇宙船の研究にはあまりにも大きな壁があまりにもたくさん立ちはだかっていた。


まず外の世界でわかっていることは真空であること。そしておそらく気温も極めて低いであろうということ。

そして汚染の災厄なるものが広まっているということ。恐らくではあるが、真空で空気もなく、音も光もないだろうということ。


しかも地形もわからないし、宇宙船を作るうえでありとあらゆる情報が欠けていた。

それらをすべて解決するためにはオーバースペックなほどの完全無欠の機体が欠かせない。

必要は発明の母。それに参考材料になるデータはスフィア内や造換塔内に存在しており、ベンツたちはわずか二年足らずでこれを完成させたという。


格納庫に入るとベンツが待っていた。四十五歳になる彼女だが相変わらず若々しい。好きなことを仕事にして生きてるかもしれない。

そしてそれよりおそらく数百歳年上だが、これもやはり二十台のように見えるほど若々しいエースもベンツのそばにいた。

そしてこの二人が立っているのは宇宙船の脚の下。宇宙船はお世辞にも格好いいとは言えないような奇っ怪な姿をしていた。


宇宙船と言ったら男の子のロマン。それが期待してきてみればなんと格好の悪いことか。アンリも露骨にがっかりしていた。


「ええっと、コレ、当初の計画とまるで違いませんか……?」


「何を言うか。これこそ究極の外界探査船その名もミレニアムアヴァロン!!!」


「それ、ベンツ博士がお付けになった名前ですか?」


「ああ、エースさんと二人で考えたよ」


「そうですか……しかしこの奇っ怪な姿はいったいどうして?」


アンリはもしかしたら抗議をしたら姿を格好よく変えてくれるかもしれないと期待してるみたいだが遅い。

どう見ても、満面の笑みを浮かべているベンツにそのつもりは毛頭なさそうだった。

ベンツは嬉しそうに自分の作った愛する宇宙船について説明してくれる。


「えー、まずこの頭部分だが……」


「それ頭だったんですか。てっきり……」


「いったい何だと思っていたのかね。全く失礼な。いいか、この頭だが、話によればこのような流線型の細長い頭しかないと結論付けた」


宇宙船の全体的な形を説明すると、機体全体が銀色になっていて、これは別に構わない。

頭と尻が先へ行くほど細くなっていく流線型、つまりアメフトやラグビーのボールのような姿をしていて、前と後ろどっちかわからないこともまあいい。

大きさは長さが五十メートルくらい。横幅が十五メートルくらい。高さも十五メートルくらいだ。

問題は胴体部分だ。左右対称に規則正しく細い足がムカデかヤスデのように大量に生えていて、かなりキモい。


しかも各脚は大量の体節を持っており、さらにトゲがたくさん生えていてまるでゴキブリの脚のようで鳥肌が立つ。

これがデカいのでまだいいが、部屋の中に出てこられたら悲鳴を上げそうだ。

頭に何のペイントも遊び心もないのっぺらぼうなのも無機質な感じがして怖い。

頭にライトがついているが、これもなんか昆虫の複眼みたいであまり直視できない。


「当ててみようかトーマ君。今君、キモいとか思ったね?」


「なっ……何のことかな博士。中に乗ったらわからないでしょ」


「やっぱりキモチ悪いと思ってたな。だがこれこそがこの宇宙船設計のキモなのだ。

ここからはこの設計を考案したエースさんから説明してもらおう」


「えっ、エースが考えたの?」


「そうだよ。じゃあ説明するね。この足はどんな足場、地形でも対応できるように設計。

一本一本から無数のアンカーが飛び出し、九十度以上の鋭角な崖でも、足場の強度さえあればしがみつける構造になっている。

そしてこの足についているトゲのおかげでこの巨体でありながら地上でもかなりの走行速度を実現できるわ。

その速度……実地試験においては最速で時速二百キロメートル以上よ」


「そんなに早くて中は大丈夫かよ」


「平気よ。それにこの足はオールが内蔵されていて、水中でも運航が出来るの。まあ入れる水場があればの話だけど。

もちろん外装、内装ともに撥水防水処理加工は万全。次、説明するわね」


「やあどうも。お邪魔するよ」


格納庫にはセシルやイザベル、それに俺の部下であるマリーやミリー、コロンビーヌ、そしてアルといったおなじみの連中が入ってきた。

話をしているうちに親父とトントンまでもが格納庫にそろった。まあそれはそうだ。

基本的にはこのメンバーを入れて旅をする必要があるからな。それでベンツたちも彼らを呼んだのだろう。


「みんな集まったね。この宇宙船は気密性も抜群、絶対に空気を漏らさないし中に入れない。

一応攻撃された時のために防弾も考えたけど、重くなってしまう。

悪いがみんな、もし万が一敵がやってきて攻撃されてしまった場合は各自で戦ってくれ」


「それは承知したがベンツ、あの見た目はいったい?」


とベンツに質問したトントン。二人は一度結婚してすぐ破局したが、かといってその後の日常的な付き合いに支障はない。

少なくともベンツはそんなことを引きずるタイプじゃないからだ。むしろ俺はベンツが結婚したことに驚いている。離婚したことには驚かないが。


「あの見た目は情報不足に適応するための策。水場にも崖にも対応しているのさ。

それにあれだけ足が多いと歩く際の縦揺れの心配もないだろう。これ結構重要なんだよね」


そう、人間型ロボットや動物型ロボットという発想がある。別にそれ自体はいい。

それの巨大版に人間が乗り込みたいという発想もある。これも、俺は共感できるしいい考えだとは思う。

だが人型や四足歩行の動物型ロボットなどだと歩く際の衝撃や姿勢変更の際の遠心力がかかり、搭乗者を気絶させる恐れがある。


それらは根本的に中に乗るのに不向きだ。だが、このキモい節足動物型宇宙船ならその心配はない。

どんな無茶な走り方をしても、多少衝撃を受けたとしても中の人のことを考えると、案外こっちのほうがいいのかもしれない。


「これの搭乗者はまず私ことエース、そしてベンツ博士、トントン」


「私はアラン=ミシェル・ロランだ」


「アランさん。トーマのお父さん。トーマ。セシル君とイザベルちゃん。

マリーとミリー。コロちゃんとアルくん。アンリくん。合計で十二名なんだけど……」


「だけどこれじゃあ全然足りない。わかるかね、諸君?」


「足りないとはどういうことだ。ノイトラは十分いるだろう。道中エネルギーや食糧、物資不足で困る心配はないはずだ」


と俺は小首をかしげながら言った。

ノイトラの発電で動くエンジンならこの船にいくらでも搭載していると聞いている。

それをまかなうための人員は十分いるはずだ。ところがこれでは足りないとベンツは言う。


「いいかね諸君。残念だが足りないのは遺伝子プールだ。わかるだろう?

遺伝子というのは多様性を保たないといけない。そうでないと子孫に病気や先天性の疾患が顕れ、血筋が絶えるからだ」


「急にどうしたんだよベンツ博士。別にいいじゃんそんなこと」


「いやよくはないでしょトーマ……」


俺は諫めてきたエースに言い返した。


「だけどエース、足りないってどういうことだ? そんなに長旅は予定してないぞ」


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