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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第二章 解放の戦士
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第四十八話 ひどく面白いぞ


「俺が大枠を作って博士がディテールを埋めてくれる。俺たちは名コンビだ。出会ってまだ数時間だけどな!」


「言えてるね。どうやら私も君のことが好きらしい。楽しくなってきた……もう疲れなんて感じない」


「あれっ。博士ってずっとこの街にいたんじゃないのか?」


「昨日この街に到着したばかりでね。そしたら騒ぎが起きて、今も駆り出されてる。

悪い気はしないけど。よし、じゃあ仕事に取り掛かるか」


俺たちはたったの三人で建設作業を再開した。実際、俺たちの作業は建設作業をするうえで最も大事な、安全性と言う点を全く無視している。

だが仕方ない。安全管理者や技術者、監督者などこの世に存在しない。

悪いがこのような品質の住居で我慢してもらうほかない。電気水道ガスはないが、それは元からだ。

それに暖房設備もあるし、なんならむしろ、元の家よりもいい家かもしれない。


俺たちは協議の結果、階段を付けた三階建ての簡易住居を十二棟、つまり三十六世帯が入れる円形の住宅地を建設。

そしてその中心に暖房用の中央塔を建設し、とりあえずこれで一区切りにして休憩することに。

だが俺は完成した中央塔を下から見上げ、腕組みをしては首をかしげていた。


「うーんなーんかアレだなぁ。何かが足りない……」


「確かにね、わかるよその気持ち。私も足りないと思っていたところなんだ」


「何がだ博士?」


「アレだよほら。貯蔵庫」


「私も思っていました。博士も倉庫の快楽に目覚められましたか?」


「何を言ってる。私はメカニックだよ。格納庫や貯蔵庫にモノがいっぱいだと嬉しいに決まってるじゃないかマリー君」


「俺たちは倉庫大好き同盟だな博士、マリー。確かに食糧庫は重要だ。建設しよう」


そう言って建設し、コピーした大量の食料を梱包。これを重機で積んでいくのは理路整然とした仕事の風景を好む俺やベンツには気持ちのいい胸のすくような光景だった。

が、まだ何か足りない。何が足りないのか自問した俺はしばらくしてようやく答えにたどり着いたのだった。


「燃料倉庫と給水塔も必要じゃないか?」


「確かにそのどちらも中央塔に必要だね」


「水ぐらい自分たちで何とかしますって王様。それに、そんなに至れり尽くせりにして大丈夫なんですか?」


「マリー君の言うことも一理ある。私は金もうけに興味のある方ではないが、例の演説からして、家賃はとらないんだろう?」


「家賃なんてとったら可哀そうだろ。俺たちは今までの奴らとは違うと印象付けることは大切だ。

しかし疲れた。博士、重機を作ったなら自分で移動用の車両を作ってみたらどうだ?」


「一旦街へ戻って演説を聞いた民衆に話をして来いってわけだね?」


「そうとも言う。マリーも同行してくれ。俺はトントンと通信する」


「えっ、離れたところにいるボスと話が出来るの? どういう仕組み!?」


ベンツが食いついてきたが俺はこれを軽くいなした。


「自分でもよくわからない。だいたい――」


ふと目を上げると、俺は目を疑った。というより自分の目を信じたくなかった。

というのも、だ。俺の目の前には再びあの殺戮機械兵が現れたからだ。

受け入れたくなかった、この現実を。だが受け入れざるをえまい。

どうやら俺は平和ボケしていた時と比べると格段にこの残酷で理不尽な世界に心身ともに適応してきているらしい。

極限状態を受け入れ、行動と思考を始めるスピードが劇的に速くなった。


この世界によく似合った機械兵だ。美しい偽物の大自然。木々が風に歌い、緑色の波のように草原がなびくこの街の郊外にポツンと現れた無骨なデザインの機械兵。

どこから来たのか。それとも気づかなかっただけでずっといたのか。


「ウソだろ!? まだ生き残りが……」


「おや、これは街の道端に転がってたやつと同じものかな?」


「ノイトラは襲ってこないが気を抜くな博士。こいつには俺が対処する!」


「生き残りがこんな離れたところにいたら、さすがに気が付かなかったのも仕方ないですね」


「ああ。街を襲う前にここで処理しておこう」


倒す手順はとても簡単だ。全力で放電した電気ショックならばこいつらの体を構成する金属を溶かしながら内部の配線などの機構を破壊できる。

そうして動きを止めたらこいつらの持っている銃でこいつら自身を殺すだけ。

異常なほど反動が少ないが威力は非常に高い銃だ。

電気ショックを行えるノイトラは少ないが、この銃なら誰でも扱えて兵士を倒せる。


え? そんな電気ショックをして、俺の体は平気なのかって?

不思議なぐらい何ともない。セーターを着脱するときは静電気でちょっと痛かったりするのだが。


「やれやれ。こいつを埋める穴を重機で掘ってくれ博士。住民が発見すると、気分を害する」


「君は優しいね。よし任せておくんだ」


「こいつ一体だけだといいのですが」


「……いや、そうでもないみたいだ」


俺は頭を抱えた。まるで俺の目の前に、運命がその姿を見せたかのようだった。

まさしく圧巻。圧倒されるほどの光景だった。まさに運命、俺がここへ来ることもすべて予定されていたことのようだ。


「なんですか……あれ……」


「考えたくはないが……」


「人類全員、皆殺しにでもするつもりか!?」


街の外に俺たちがやってきて建設作業をしていたからこの光景をみることができたのだ。

偶然とは思えない。街の外から押し寄せてくる白と黒の波のようなものは、すべて機械兵だと思われる。

目測だが、たぶん、二十万体ぐらいはいると思う。


「高いところから見てみるか?」


「任せろ!」


ベンツは重機に巨大なバケットを装着。バケットに乗ってアームを空高く目いっぱい上げてもらった。


確かに、俺の見立て通り十万体から三十万体の間くらいの数がいることが見て取れた。

地平線の向こうに見えるのは間違いなく今倒した奴だ。

さっき倒したのは俺たちが打ち漏らしていた第一波。まるで奴らは斥候だ。


あれだけの敵でも街は壊滅的な被害を受けた。この第二波はそれとはくらべものにならない数が存在する。

ノイトラの俺は死なない。それはわかっている。わかっている俺でさえこの光景を目の当たりにすると冷たい汗が首筋を流れ落ちた。


「神は人間に興味がないんじゃなかったのか!?」


「やはりあれは神の軍勢か。だとすると我々の建設はすべて無駄になる。許せんことだ」


「そうです。何とかしてあの雪崩のように押し寄せる敵を何とかしましょう」


「ああ。とにかくトントンに連絡だ。あと一時間もすればここへ到着してしまうと思うが……」


俺はもう一度トントンに通信。この際には一切の無駄なく、必要なことだけを述べた。


「こちらトーマ。街に機械兵が押し寄せている。恐らく十万以上」


「なんだって?」


「もう時間がない。一時間もすれば街の人間は全部皆殺しになってしまう」


「待ってくれトーマ。人手が足りない。この街のノイトラ全員で迎え撃っても……!」


「ぐあっ!」


「どうしたんだ!」


俺は目に激痛が走って思わずひるんで、バケットの中に膝をついてしまった。

だがすぐに気を取り直して言葉を返した。


「大丈夫、少し目に異常が出ただけだ」


「大問題だろう!」


「なんだこれは。数字……か?」


さっきの激痛が嘘のように引いたはいいが、今度は目の前に数字が浮かんでいる。

12:49:49と表示されており、右端の数字が一秒ごとに一ずつ減っているのがわかった。

どう見たって、カウントダウンだ。こんな悪趣味なことをする奴は思い浮かばないが、少なくとも、こんな芸当ができるのも一人しかいない。


「エグリゴリめ俺に何をした。何をしてほしいんだ。答えろっ!」


最悪だ。よりによって今から十三時間後に何かが起こる!

と思ったが、よく考えたら一時間もすればこの街は廃墟と化す。

そのあと何が起こっても、大したことはないじゃないか?


そんな風に思い直した俺に、下からマリーが叫ぶ声が聞こえた。


「王様見てください、妙です!」


「ん? 敵兵のことか?」


言われたとおりに前を見てみると地平線のかなたの連中が全員ぴたりと動きを止めている。

全員微動だにしない。時間でも止まったみたいだ。


「エグリゴリの仕業か……!」


「そうだ」


「ぬわっ」


マリーからもベンツからも俺のいるバケットの中は絶対に見えないようになっている。

とはいえ、そこに誰かが昇ったら絶対気づくはずだ。

しかしまるで蜃気楼のように突然俺の横、空中十メートル以上の高所にあるこのバケットの中にエグリゴリが現れ、俺は情けない声を上げながら頭をバケットの内側で打ってしまった。


「私が止めた。お前の目にカウントダウンが表示されているはずだ」


「お前に時間の概念はないんじゃなかったのか!?」


「お前たちに合わせてやったのだ。今から十二時間四十九分と五秒後に一斉攻撃を行う」


「なんでそんなことをする。お前は人間に興味がないんじゃなかったのか……生きようが死のうが」


「その通りだ」


「それに、セシルや……エースたちにも同じことをしたのか?」


「いや。王政から依頼を受け、天使を出動させる許可を出しただけだ。

あの街には天使を無効化する力を持つお前がいなかったからな」


「それはご丁寧に説明してくれてありがとう。少しは希望も見えたが……しかしなんだこのカウントダウンは。

お前……交渉とかしたことないだろエグリゴリ。人を焦らすんなら何か聞くか、要求を言え!」


「私の要求は最初から変わっていない、お前に早く私の本体のもとへ来てほしい」


「だからって大勢殺すことないだろ!」


「私は人間に興味がない……そう、言わなかったか?」


エグリゴリはべつに俺を挑発しているつもりはないだろうし、そのような表情も作らなかった。

が、人間の目にはこのようなセリフが挑発に映るということはだれの目からも明らかだ。

無自覚な煽りの天才と言える。すべて言っていることは確かに間違ってないからたちが悪い。


「意地が悪いぞテメェ……!」


「王様、いったい誰と話しているんですか?」


「神とだ」


「頭でも打ったんですか?」


「ああ、打った。少し放っておいてくれ」


俺は適当にマリーをあしらい、こう続ける。


「確かに……俺はセシルが危険だから一刻も早くお前の所へ行こうとしていた」


「ではなぜ狭間の世界に来ない?」


「お前が繰り出した機械兵を倒したり後始末をしたりで忙しかったんだよ!」


いい加減キレるぞ。いや、もう切れてるわ。とか心の中で思いながら怒りで顔を真っ赤にして俺は叫んだ。

顔に唾を飛ばされながらもエグリゴリは気にせずいつも通りの仏頂面を頑固なまでにキープしながら言った。


「私は早くお前に会いたい。故にお前が観測した一連の私の行動はそのためのものだ。

それが逆効果だったことは理解した。だが納得しない。理由の説明が必要だ」


「こっちのセリフだ! 何でここの人間を減らす必要がある!?」


「人間の力はその頭数と組織力だ。それらを取り除けば無力だ。

何故お前は、人間の支配が及ばなくなった道筋を使って、私に会いに来ない?」


うーむ。エグリゴリは基本的に口下手なのでわかりにくかったが、話を整理すると次のようになった。

つまりは、こいつは帝国の首都を壊滅させることで大統領らが独占しているルートを俺たちが自由に使えるようにしたかったらしい。

必要な物資や資金は人間のいなくなった首都から王の力を使い、ノイトラを使役して集めさせれば良いと。


だから、それに使用した機械兵を俺たちが壊し、エグリゴリに怒っていることが理解できないのだという話だった。

気分を害したのかと思うと、なんだか少しだけ申し訳ない気持ちになった俺はエグリゴリの頭に軽く手を当てて、なるべく優しい声色でこう言った。


「ごめんな。良かれと思ってやってくれたことだったんだな。

怒って悪かった。でもこんなこと、もうするなよ」


「百人までは減らしていいと言われている」


「そういう問題じゃない。俺は人間を殺すことは許さない。しかもこんな大量に……」


「お前は人間ではない、ノイトラだ」


「そういうことを言ってるんじゃない。自分と違うものを排除していったら残るのは……!」


残るのは自分だけだ。そんなのさびしいじゃないか。みたいなヌルい説得が通じる相手じゃない。

俺はそう思って最後まで言わなかった。


「この軍勢一体どこから湧いてきた。造換塔を使って作ったのか?」


「そうだ。私がここにダウンロードした」


「……無限か?」


「私がやろうと思えば」


絶望しろ。そう言われているのに等しかった。機械兵は無限。

神の気が変わらない限りこの国の、というよりこの世界の人間の大多数が死ぬ未来は見えている。

しかもその兵士たちを作っているエネルギー源が狭間の世界で奴隷として働かされているノイトラなのだから救われない話だった。

戦うも地獄。戦わないも地獄。街には人間がいる。親父はともかくとして、イザベルだけは絶対に守らねばならない。


逆に言えば、イザベルさえいなければ、この街の人間がいくら死のうが構わないから俺はセシルを助けたい、と思っていたところだった。


「今、攻撃を止められるのは俺とお前の交渉のみというわけだなエグリゴリ」


「あくまで攻撃をとめたいのか。いいだろう。時間をやる」


エグリゴリは消えた。だが、奴が残した俺の視界のカウントダウンが消えることはない。

何より、停止した幾千万の機械兵の軍勢も。


「くくく……腹を決めろというわけか。面白い。ひどく面白いぞ」 


ここだけの話、書き溜めてたこの部分をペーストして誤字脱字をチェックしてた時に、「あの海のように押し寄せる敵をなんとかしないと」みたいなセリフがあったので急いで「雪崩のような」に直しました。

海がないというなかなか想像しがたい世界を作ったものの、うっかりするとこういうミスが出てしまう。

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