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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第二章 解放の戦士
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第四十六話 この世で一番メカニック


「私、王様以外の命令聞きたくないんですけど……」


マリーはべつに胸を揉ませるかどうかについては特に言及しなかった。

そこには俺も触れずに行かなければならない。慎重に言葉を選んで言ってみた。


「そうだぞ親父。でも今のでちょっと目も覚めた」


「そいつはよかった。ちなみに俺、初めて胸を揉んだ日はそれはもう興奮して寝付けなかったぞ」


「しつけーぞエロ親父」


「ちょっと確認してみただけだろうが、そんなムキになんなよ。

結局お前どっちが好きなんだ?

男か女か……父親としてそこのところは知っといた方がいいだろ?」


「どっちにも興味がある。でも聞いた話によれば親父、俺もほかのノイトラと同じく、好きになった相手に合わせて体が変わっていくらしい。

べつに聞くまでもないことだよ。俺を見ていればそのうちわかる……なにしろ俺自身もどっちが好きかはわからない」


「なるほどな。ちなみに俺はお前の母さんがお前くらいの年にはもう手を出してたぞ」


「親のそういう話、聞きたい奴いると思うか?」


「すまないトーマ。こいつはまだトーマとどう接していいのかわかってないんだ」


「別に関係性を築きたいとか思ってないけど。あとさ、俺……親父に会った時から思ってたんだ。

女によくモテそうだって。で、思ったんだけど、まさか腹違いの兄弟とかいないよな?」


「ブブ、ぶわーか、いるわけないだろバカかお前。まったく……」


かなりの確率でこの反応だといそうな気がしたが、俺はそこにはあえて触れなかった。


「正直、いるともいないとも断言はできないね」


「おいアラン、俺の味方しろよ!」


「トーマの言うことも事実だろ。さて、倉庫も埋まってきたね。補佐官たちも体を張るなぁ」


「そうだなトントン。それに、少しずつ空が白んできたんだけどさ。

何かしてないと眠っちゃいそうだ。マリー、ミリーを呼んできてくれ」


「わかりました。さっきまたお風呂に入ってました」


「全く……」


その間に俺は例のエンジンを使って新たなモノ作りを行った。それが俺の作った電灯のコピーだった。

これを背負い、さらに俺はある実験をも新しく敢行した。段ボールのコピーだ。


パンをコピーし、これをぎっしり詰めた段ボールがある。この段ボールをコピーできないかと思ったのだ。

結果的にはこれは成功した。ほとんど一瞬でパンのぎっしり詰まった段ボールがコピーできた。


「これが出来るか心配だったんだ」


「すごいじゃないかトーマ。まるで神様みたいだ」


「これならこの首都の人間に飯を食わすこともできそうだな。

問題はそのエンジンの寿命だ。造換塔はこの世界のすべてを創造したと聞くが、その小さいのでどこまで保つか……?」


「壊れたらそのときはその時だって」


「私にはそれが理解できませんけどね、王様」


と俺の後ろから声をかけてきたのは顔の火照っている風呂上がりのミリーだった。

まあ、そうでもなければ双子の姉妹であるマリーと区別がつかないのだが。


「虫けらどもをノイトラが命を削って生かしている……その状況を変えたくて、私たちノイトラは王様、あなたに縋ったんですから」


「勘違いするなよミリー。俺たちは人助けをしているんじゃない。そうだろトントン?」


「ああ。前回使ったルートはこの合衆国領内にある砂漠を超えた先にある。

それを使うことで狭間の世界へ行ける。そこに行くのに必要なものは三つ。

道中の安全保証。そして資金。最後にセシルだ。今我々はどれ一つとして持っていない……」


「だからここにいるしかないんだ。お前たちが人間を虫けらなどと嫌うのを否定はしないが、出来れば俺の前ではやめてくれ」


「……申し訳ありません。軽率でしたね。それで私たちに仕事を与えてくれるんですか王様?

私も眠いし疲れたんですが……この街に安心して眠れるところはなさそうですからね」


「それは同感だ。この電灯を見ろ。バッテリーと電灯、そしてバックパックに食料を入れた。

二人で人助けでもしてきてくれ。トントン、革命軍の医療班はどうなってる?」


「この間トーマが会った二人はまだ健在のはずだ。ただ連絡はとれない。この街の状況が状況だからね」


「残念。学校に校医とかはいないかな? 食料の代わりに救急セットを詰めたものを渡して外へ行かせたいところだけど」


「ふむ。この学校にはまだまだ子供たちが多いし要人もいる。

校医がいたとしても、ここにいてもらった方がいいんじゃないかな?」


「ううむ、そうか。俺も体を動かしたいところだけど、しょうがない……人手は夜明けとともにゲットーのノイトラでまかなおう」


「ふふふ、だんだん王様らしくなってきたじゃないか。ノイトラたちは迷惑に思わないよ。

王の命令には心から喜んで従う。もちろん私も、遠慮なく命令してくれトーマ」


「ああ。えーと、じゃあマリー。バイクのサイドカーに乗ってくれ」


「こうですか……?」


マリーが左のサイドカーに乗ると、少しだけバイクの車体が左に傾いた。


「そのまま。動くなよ。トントンは倉庫から食料を入れた箱を取ってきて、こっちのサイドカーに乗せてくれ」


「わかった。少し多めにとってこよう」


「俺も行こう」


親父はべつに命令されてもいないのに、トントンと連れ立って倉庫へ向かった。

ほどなくして親父たちは箱で上半身が見えなくなるほど食料を抱えて戻ってきた。

多分五、六十キログラムぐらいはありそうだ。これをサイドカーに乗せ、ひと箱マリーに持たせて左右の重さは釣り合った。


「よーし行くか。このバイク、ライトついてないんだよな」


俺はバッテリーとライトをバックパックに詰め、電源を入れた。

これでバイクにまたがりながら、俺はまるでアンコウのように光り始めた。


「出発進行。マリー行くぞ。人助けこそが本当の近道だ」


「あ、そういえばイザベルとかいう女の子、放っておいて平気なんですか?」


「平気だ。あの子は飛行機に乗るのに絶対必要な子だとトントンも知ってる。

べつにくれぐれもよろしく、と頼んでるわけではないけど放ってはおかないはずだ」


「だといいですけど……本当に冷淡ですよねあの子に」


「まだ優しいほうだろ……」


一緒に寝てたらおねしょされた、などとマリーに言いふらしたりしないだけ俺は優しいほうだと思う。


「まあノイトラって女の子とは相性悪いですからね」


「そうなのか?」


俺たちはトロトロとした遅い速度で、誰もいなくて暗い夜明け前の街をバイクで走りながら話を続ける。


「私たちは女性から見たら男性を取り合う敵でしかないですからね。仕事だって奪ってますし」


「あの子もノイトラは嫌いと言ってた」


「でしょうね。すみません」


「それとも、この人助けの旅にあの子を付き添わせたらよかったかな?」


「それは……ダメでしょう。心配しなくても私はあなたに従います」


「べつにそうは言ってないが……」


俺たちはもうこの話題を終わらせて話を次に移した。それは街の大通りを進んでいると子供の泣き声が聞こえたため、俺たちはすぐにそれを確認しあったためだ。


「今の聞こえたな。子供の泣き声か」


「野良猫の声ならいいのですが」


「それはまあそうだな……」


俺たちは一旦バイクを停めて声をよく耳を澄ませて聴いてみる。

それでわかったのは、声は燃え落ちてガレキとなった家の下から聞こえてくるという点だった。


「あらら……これは無理そうですよ。可哀そうですが」


「相当な人手が要りそうだな。さてどうしたもんか……」


「おーいそこの!」


「ん?」


俺とマリーは声がした方を一斉に向いた。そちらには、さっきの女性の声を発したものと思われる女。

そしてその後ろに見知った男が二人いた。この二人はこの間医療班として俺とイザベルの面倒を見てくれた革命軍メンバーだ。

そしてその二人と行動を共にしているということは女も革命軍に間違いなかった。


「おーい二人とも。なんだぁ、そのキテレツな格好は?」


「これか。これはバイクと言って乗り物だ。この光ってるのはランプだ!」


と答えたところ、女は珍しそうにこれを食い入るように見つめる。

この非常時にも関わらずマイペースなやつだ。そして後ろの二人は俺を覚えていたようである。


「おお、キミはいつぞやの。ボスの息子だったね?」


「そういうあんたらは革命軍の医療班。その若い女性はいったい?」


「この人はディーゼル=ベンツ。革命軍の最初期メンバーにしていわゆる技術者だ」


「そして、君と同じノイトラでもある」


「なんか、薄々そうじゃないかとは思ってたけど……」


俺のバイクをべたべたと馴れ馴れしく触って子供のようにはしゃぐディーゼル=ベンツ。

長いのでベンツと呼ぶことにする。かなり若い女性に見えるが、ノイトラは若い人が多いみたいだ。

正直まだよくわかってないが、マリーの話を聞く限りだとノイトラは体からエネルギーを放出することで寿命が削れ、老化するということらしい。


そしてそれが正しいなら大多数のノイトラは老化しにくいということになる。

だって、大多数はそのエネルギーの放出が出来ないようあらかじめプログラムされていて、それが出来るのは王である俺か、もしくは俺が許可したノイトラか、もしくは神によっていじくられた奴だけなのだ。


実際考えてみると最低でも中年であると思われるこのベンツやトントンなど、年のいったノイトラもやたらと見た目が若いことが多い。


「王様、この人たちが革命軍ですか。私もあいさつしたほうが?」


「いやボスから情報は聞いている。いわゆる天使だったのだね?」


とベンツから聞かれたマリーがうなずくと、ベンツは気持ち悪いぐらい満面の笑みを浮かべた。


「そうかね。王様、と言っているがやはり話に聞く王の力が目覚めているということか……」


「はい」


「ちょっと待って二人とも。俺はディーゼル=ベンツって人に会えたら話がしたいと思ってた!」


「おお、それは光栄だねトーマ君。しかし君たちこんなところで何を?」


俺はこれを無視。言いたいことだけ言った。


「造換塔といってこの世の物質を何でも生み出せる夢の施設があるって話を聞いたことが?」


「聞いたも何も実際この目で見たよ。造換塔の下にはノイトラたちが牧場のようにしてエネルギーを絞られながら辛うじて暮らしていた」


「今俺の乗ってるバイクのエンジンもそれに近い機能があって物質を何でも生み出せる。

例えばこの家の下に子供がいると思うんだが、ガレキをどかす大きな機械とか作れたらいいと思うんだけどな……」


「ガレキをどかすだって? ふーむ。列車のように荷物を牽引するタイプか、逆にそのバイクとやらみたいに蹴散らすタイプか。

いや、この場合は慎重な作業が必要そうだね。ガレキを掴んで撤去するタイプなんてどうかな?」


「多分それがいい。トントン……じゃなくてボスたちは今学園に集まっている。革命軍は全員丘の上の学園に集まってほしいんだ」


「そうか。実は我々は学園に行くところだったのだよ。

明るくなるのを待ってね。どうやらもう脅威は去ったらしい」


「すべてトントンが……ボスが銃で撃って撃破したらしい」


「うわっ、ボスに銃を持たせたのか。そりゃいけない。敵さんも気の毒だ。

我々は避難をしていたのでよくわかってないんだよ状況が。一体どこの勢力だ?」


「トントンって見かけによらず強いんだな。しかしそんな話をしにきたんじゃあない。

敵勢力は神が遣わした機械兵だ。ベンツさんにはぜひ人命救助のための機械設計をしてもらいたいね」


「機械兵? まだその辺にあるか?」


「機能停止した死骸なら。それより人命救助のため機械を設計してほしい」


「そうか……では二人ともご苦労。学園へ向かってくれ。

聞いての通り私はトーマ君と一緒に仕事をすることになったから」


「わかりました」


「医療班の二人は、学園に避難してくる人で命の危険がある人を助けてやってほしい」


「はっ!」


医療班の二人は敬礼を返してきて、その後くるっと回転。徒歩で丘の上の学園へ向かっていった。

話をしているうちにどんどん街は明るくなり、日は昇ってきた。

街の通りには人間の死体と機械兵の死体が乱雑に捨て置かれている。

白を基調としていた街は今や赤と黒が折り重なっていて、禍々しいと形容してもいいほどの様相を呈している。


火は夜通しの鎮火のかいもあってか、ほとんど消し止められているが、それもどうやら消防士が家を壊しまくったせいもあるようだ。

あと、石で家が出来ているので柱が燃えるとすぐ倒壊してしまっているが、それが逆に幸いして火が燃え広がりにくかったのかもしれない。


だが、街が石でできているので崩れた家の下敷きになって生きている人の救助が困難となる。

そんな時にショベルカーのようなものがあれば楽なのだが。

しかしいくら天才メカニックといわれるディーゼル=ベンツでもさすがに概念すらないところから設計なんて出来るだろうか。


「ううむ、机と書くものが欲しいな」


「作ってやろう。簡単だ」


「えっ?」


俺はベンツが言うので倉庫を建設するときにも使用した高密度プラスチックのような硬くて軽い素材で机を出力。

それに合わせたイスと紙、それにこの時代の人が使いやすいようにと、黒鉛のブロックを出力してから持っていたハンカチを巻き付けて渡してやった。


「これで大丈夫かな、メカニック」


「ああ。少し時間をくれ。五分もあれば」


「そんなに?」


「ああ。ちょっと興奮してきた。イメージが湧いてくる!」


と黒煙で紙の上をガリガリと音を立てて図を描いていくベンツ。分度器や定規も作っておくべきだったか、と思ったら作図用に元々もっていた。

筆記具一式は持っていたが紙だけは持ってなかったみたいだ。俺はとりあえずベンツに全部任せて周辺に困ってる人がいないか探してみることに。


だが探すまでもない。暗かったときは誰も外へは出てこなかったが、このベンツらと同じく静かな朝を迎えたところで這い出てきた人が街の通りに散見された。


「トントン、俺だ。今大丈夫?」


「どうかしたか?」


「イザベルはどうしてる?」


「眠ってるよ。もう朝になったしあとで家に連れて行こうね」


「そうしよう。今、ディーゼル=ベンツに会った。医療班の二人が学園に向かっている」


「わかった。彼は無事なようでよかったよ」


「それと人々には学園に行くように誘導したほうがいい?」


「ああ。もう正体を隠すことは必要ないだろう。

積極的に革命軍のボスだ、と触れ回る必要もないけどね。

学園に人は集めてくれ。それとノイトラたちはどうする?」


「今食料を配ってる、これが切れ次第学園へ戻り、ノイトラたちを学園に集めて人助けをさせるつもりだ。

そのためにもディーゼル=ベンツの力が必要になってきそうだ。くそっ、早くこんな街出ていきたいのに」


「そう言うなって。遠回りこそが最も近道ということも往々にしてある。

このことはお父さんにも伝えておく。じゃあね、もう用はない?」


「ない」


俺は通信を切り、適当にその辺にいた、小学校低学年くらいの男の子とその両親らしき男女に近づいた。

そしてバイクからパンでいっぱいの箱を取り出して母親のほうに手渡した。


「これは政府からの救援物資です。家を失くして焼け出されたのなら追加で支援もありますが……」


「あの、えっと……これはいったい?」


「これはというのは……どうして一晩にしてこんなことになった、という意味でしょうか?

それならば現在調査中です。ほかに何かご質問は?」


といかにもお役所対応って感じを出しておけば勝手に家族も俺らが政府関係者だと納得するだろう。

そう思っての塩対応だったが思ったとおりになってくれた。


「わかりました。家はあれです。銃撃でボロボロに崩れてしまって……昨日は家の燃えている火で暖を取るありさまで」


「なるほど。現在街の外の郊外に、避難民用の仮設住宅を作る計画がなされてます。

運のいい人なら今夜の寒い夜も仮設住宅でやり過ごせるかもしれません。

えー、もしほかに被災して財産や家がないという人が居れば学園のほうで食料の支援が受けられます。

大丈夫、収入の高い上級国民でなくても支援は受けられるはずです。では我々はこれで」


俺とマリーはこのような流れを繰り返し、総勢で五十名分くらいの食料を被災者に分配した。

のだが、その途中で俺は気づいた。とともに、それをマリーまでもが忘れていたことに怒りたくもなった。

それというのも、俺はディーゼル=ベンツのことをすっかり忘れていてもう一時間ぐらい放置してしまっていたのである。

眠いし疲れてるので、とにかく注意力が散漫になっている。

これはいかんと思いさっきの場所へ戻ると、大量の紙が地面に落ちているのにも構わずまだベンツはガリガリとペンをとって紙に図を描いていた。


「王様、これは話しかけないほうがいいですかね?」


「集中してるみたいだ。少し様子をみるか」

ところでこれは余談なんですがセシル・ローズというのは実在したイギリスの歴史上の人物です。

で、このローズさんの苗字はrhodesと書き、これは近鉄・巨人で活躍したタフィ・ローズと同じ苗字なんですよね。

この作品に出てくるセシル・ローズ・アルバート・サー・ペンドラゴンくんの"ローズ"はrose。

バラであり、イギリスの国花を表しています。

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