表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第二章 解放の戦士
42/96

第四十二話 この世に世界で俺一人!

「あ、電話だ! トトロで見たやつ!」


「何を言ってるのか知りませんが、そう電話ですね。ただし施設の中でしか通じません」


と言ったバトラー補佐官は電話をかけ慣れているのだろうか。

古めかしい壁に埋め込まれた受話器をとると、何か妙な操作盤を操作した。

その後彼が発した言葉でやっと誰に電話をかけたかはわかった。まあ、かける前から一択だが。


「大統領。ノイトラの……例のトーマという子供をお連れしたく」


「誘拐犯役ご苦労と伝えておいてくれ」


「は。ですから彼をお連れしたく」


「何故だ。我々が会う理由はない」


「おい大統領!」


と俺は聞こえるように叫んだ。一瞬場が静まり返り、俺はバトラーから受話器をひったくった。


「大統領閣下。そこには危険が迫っている。学校へ上がって来てください。本当にお願いします」


「ここは安全だ。それともトンネルを通って脅威がやって来るとでも言う気か?」


「そうです。敵の出入り口を締め出して学園で守りを固めるのが最良かと……だから来てください」


「断る。私に何か物を言いたければ交換条件を持ってこい。私が得する条件をな」


「わかった。後悔するなよ?」


俺は電話を切った。もちろん二人からは非難ごうごうだ。


「ちょっと、あの人は怒らせたら二度と忘れない人ですよ!」


「我々に飛び火したらどうするんです!」


「遺跡まで案内しろ。フィボナッチ補佐官、少なくともアンタは俺に従わざるを得ないと思うが、違うか?」


「そ、それは……」


「どっちだ。悪いが俺は気が短い」


「わかりました。こちらへ」


「またしても賢明な判断だと思うよ、補佐官」


俺は片手に銃を持ち、もう片手で手をつないだイザベルを連れてさらに補佐官についていく。

補佐官の尻ばかり見ていたわけではないが、補佐官の上質なスーツ生地に覆われた尻がある地点で止まった。

それは研究所のBブロックだった。

そこにあったのは今まで俺がみた飛行機やあるいは話に聞く爆弾でもエースとかいう機械女でもない。


「今まで一度も動かせたことはないそうです。研究員では無理でもあなた方ならあるいは……?」


と、補佐官が指さす先にあったのはどう見てもバイクだった。

真っ黒で大きい。俺が乗ったら相当車体を傾けないと地面に足はつかない。そして銃も。


「どちらもレベル8と書いてあるが?」


「ええ。我々もそれが何のことかはまだわかっていませんが、レベル9もあるのでしょうか。

というかあれはレベル8と書いてあったのですね」


「そっか、古代文字はここでは読めないからな」


「どうしたら動くのでしょうか」


「やってみるか。エースかセシルが居ればなぁ」


俺は様々なチューブが挿入されたバイクにまたがる前にそれらのチューブを丁寧に外さねばならなかった。

バイクに二輪がついていることから、これが人を乗せて運ぶものだということはここの連中も理解しているはず。

だが、どうすれば動くのかは未知数だとのことだ。


「さて……アセンブラアセンブラ……ん、ちょっと待って」


俺は辛うじてFUELという文字が見えてそれが空だという表示が見えた。何となく燃料切れであることは伝わった。

俺にもっと英語力があればとも思うが、まあそれはいいとして、その燃料だが、ガソリンでないことは確かだ。

大体ガソリンが燃料だったらどうあがいたってこの時代に走らせることは出来ないしな。


で、考えたのだが、このバイクの燃料は何なのか。レベル8の乗るものならノイトラの俺は関係がない。

すると未知のロストテクノロジーによる燃料だろう。イザベルもレベル8には関係ないはず。


一か八かやってみるか。そう思ってバイクをいじっていると、何かの箱がぽこっと取れた。

黒くて無骨で、何やら昔の茶器のような趣さえ漂わせるずっしりとした重さのある機械のようなものだ。


「これは……」


「と、トーマさん……胸が……!」


「あん? 胸?」


「ち、ちがいますよ!!」


補佐官は俺に腹を立てた。まるで聞き分けのない子供を見下した怒り方だ。

これはさすがの俺もちょっとむかついた。で、補佐官の胸は関係ないというので自分の胸を触ってみるが何ともない。

一応服の襟から中を見てみると、なぜか胸がほんのり明るい。


「あ、鏡とか持ってる?」


「はい」


「さすがは美人さん。鏡ぐらい持ってて当然だな」


と俺は礼も言わずに補佐官に鏡を貸してもらって胸を見た。すると何かの紋章みたいなのが光っている。

そしてバイクからぽこっと取れた謎の黒い箱にも紋章が浮き出ている。

と思ったら紋章ではなくてちょっとだけフォントに装飾をあしらったデザインの文字だった。

この古代文字はセシルじゃなくても読める。俺もさんざん見たそれはKIDという文字列だった。


「なるほどね。これはそういう機械か?」


俺は渾身の力を込めて電気ショックを浴びせた。今まで人間相手に使ったこともあるので相当にセーブして使っていた。

千分の一も全力は出していない。これは全力の九割くらいでやってみた。

すると"KID"の表示が変わって"GENE"の文字が現れた。これは悩みどころだ。


GENEはジェネレーティングつまり何かを生成、変換とかそういうことをするという意味にもとれる。

が、GENEというのは遺伝子という意味ともとれる。遺伝子とくればイザベルしかあるまい。


「イザベル、ちょっとこいつに触ってみてくれ」


イザベルは黙って箱に触った。相変わらずGENEの表示は出たままだ。


「ありゃ、違ったかな」


と思いながら興味深く箱を見てみると、どうやら話はわかった。

どうやら俺の予想は片方が当たった。GENEとはジェネレーティング。

生成するという意味らしい。なんと箱は俺の理解の及ぶところでは3Dプリンタの機能があるということだ。


箱は見る見るうちにあるものを作り出した。それは銃だ。

俺の持っているデカい銃と同じものを一丁生産してくれた。

それの動作は保証済みではないにしろ、使い方次第で役に立ちそうなことはわかった。


「信じられない……何もないところから銃が出てきた」


「こいつはエネルギーを餌に物質を生成する機械ということらしい。

エネルギーの受容・変換・貯蔵・出力すべてをこれで行える超未来エンジン。

ただし外部からエネルギーを入れなくてはならなかったようだな」


「我々もやっていたはずですが」


「あと一歩何か足りなかったんだろう」


もしかするとさっきのGENEは実際、俺の予想通り遺伝子も必要だという意味だったのではないか。

つまりイザベルは必要だったのではないか。そんな気もしたが、まあ今はわからないのでどっちでもいい、保留だ。


「とにかくこいつをバイクに再度つなげば動き出すはずだ、こいつはもらっていく」


「そんな勝手な!」


「イザベル後ろに乗れ。俺にしっかり捕まっているんだぞ。絶対に離すなよ?」


「う、後ろって……」


「いいから乗るんだ。ほら」


俺が乗り、イザベルが後部シートにまたがった。エンジンも取り付け、チューブもとった。

後は動かすだけだ。あとついでに銃は回収しておいた。これで準備万端。


ハンドルについたアクセルはいとも簡単にエンジンを起動させ、バイクらしい重低音ではなく、非常に周波数の高い高音がエンジンから聞こえてくる。

バイクのエンジンが鳴らす音は高音であればあるほどスピードが出る。

それだけエネルギーが大きいということだからな。パソコンやスマホのCPUのHz数が多ければ多いほど性能が高いのもそうだ。


そしてこの人間の耳に聞こえにくいほどの超音波を鳴らすエンジンをふかし、俺はコロコロとタイヤで音を立てながら格好悪い低速でBブロックの廊下に出た。


「あ、ノーヘルだなオレら。まあいいか。補佐官、一番太いトンネルは?」


「ラウンドアバウト状になっていますから、時計回りをしているうちに幹線に出るかと」


「わかった。恩に着る」


秘書官が本当に正しいことを言っているかはどちらでもよかった。俺たちはこれで移動手段を手に入れただけじゃない。

武器を手に入れた。そして何より、このエンジンを使えば俺は物質を生み出せる。

あらゆる資源をだ。食料も水も暖房も、誰も困らせることはなくなった。俺は無敵になったのだ。


「くくく……楽しいなぁイザベル。あれ、そうでもない?」


「ま、ま、またそ、それ?」


「ククク、これで安心だな。奴らを全員ぶっ壊せる。行くぞイザベル。

スピード出すけど絶対に俺の体から手を離すんじゃないぞ!」


「わ、わ、わかった」


エンジンを一気にふかした。アクセルを全開にし、タイヤが地面に食い込みながらこれを掴んで速度を上げる。

ラウンドアバウト式の道を時計回り。言われるがままに車体を外側に傾けながら速度を上げ、円形通路を抜けて直線に入るところで速度を一気に上げた。

この世界でバイクに乗るだなんて思ってもみなかった。何という爽快で痛快な気分だろうか。


どこかの吸血鬼も言っていた。自動車などは便利なものだが、誰も彼もが乗るからかえって新たな不便を生み出してしまう。

この世にエンジンのついた乗り物に乗るのは一人、この俺が居ればいい、そんな全能感に満ち溢れた。

ただしあまりグズグズはしていられない。俺がいないということは学校は無防備にも等しい。


円形道路から直線となった。恐らくここは飛行機の滑走路にちょうどいいので、大統領もここに入れることを選んだのだろう。

外へ出ると、なんともう街の外側のトンネルへ出てしまった。ここは森の中。

ここまで出入口を街から離したところにすれば誰にも見つかるまいと考えたのだろう。

まあ確かに見つかってはないんだろうが、そのおかげで俺は外へ出られた。


この街の地下通路網はこんなものじゃないだろうが、今は探検している時間はない。


「街の外へ出たみたいだ。一刻も早く学園に戻してやるからな、それまで我慢してくれよイザベル!」


返事はないが、一応背中のほうで頭をこくんと軽く上下させる感触があったような気がするので、イザベルの了承は得られたとみなした。

街の外に出てきてしまったということは必然的に、回頭する必要があるということで、俺はさらにアクセルをべた踏みして急速に方向転換した。


「楽しいなぁ……なあ、イザベル――」


俺はバイクの運転をミスった。いや、正直に認めよう。俺はミスったのではない。

急旋回したときに突然、経験したこともないような立ち眩みに襲われて、ほぼ意識を失った。

気が付いた時最初に思ったのはイザベルを確認しなくてはということだった。

難渋しながらやっとの思いで立ち上がって、近くの草むらにイザベルが立っているのを発見してほっとした。


「イザベル、ケガはないか?」


「わわ、わ、私は平気。で、でもと、トーマ……」


「俺は大丈夫だ。ちょっと石にタイヤをとられただけ……ぐっ!」


俺はまたしても魂が抜けるみたいな脱力感と眠気に襲われてバイクに背中をもたれさせて体を支えなければ倒れてしまいそうだった。


「はあ、はあ、ヤバいなさすがに……今までこんなに疲れたことはなかった……」


「わ、私、歩いて……」


「俺と一緒にいろ。バイクを起こす。わかったら後ろにもう一回乗れイザベル」


「う、うるさい。と、トーマ、え、偉そう」


「悪かったって。とにかく乗ってくれ」


イザベルを乗せて再び自損事故を起こしたバイクのエンジンをふかせる。

気を取り直して俺は街のほうへ向かい、全速力で学園のほうを目指した。

学園は街のちょっと北側にあるが、ほぼ中央くらいの位置だ。

この時代にエンジンのついた乗り物を使うように街は想定されていない。

せいぜい馬車のスピードを想定している。バイクは例の機械兵に一体も会うことなく学園前へ帰還した。


戻ってきてすぐにイザベルをバイクから降ろして校庭の様子を眺めてみると、俺の命令は解けたのか人々は思い思いに行動しているものの、やはり校庭からは出ない。

これは本人たちの判断で出たら危険だと考えているためだと考えられるが、ということは学園の中はまだ危険にはなっていないということだ。


「何とか間に合ったか……」


「おいおいなんだお前その姿は。そいつは地下から持ってきたのか?」


相変わらず武装警察の格好をしたままの親父が真っ先に俺に話しかけてきた。

多分俺のことを待っていたのだと思う。


「親父。ああ、こいつは地下から持ってきた。トントンはどこ行った?」


「お前あいつに銃を与えたな。あいつは一度あれを握ったら豹変する。殺していい敵を殺しつくすまで止まらない」


親父が、食べ物は魚しか食べないペンギンみたいな性質を持っていると聞いた時も結構衝撃だったが


「まじでかよ。ま、敵がいないならひとまずよかったよかった。親父、造換塔と同じことが出来る機械を手に入れた」


「なんだと?」


「このバイクの駆動部だ。望んだものを作れる。しかしこの後どうしよう?」


「この後だと?」


「無事切り抜けたらだよ。大統領はどうなってるかわらない。今後どうなるかもな。

首都の被害は甚大だ。俺たちは外の世界へ行かせてもらえるのか?」


「俺たちが前回行ったときは政治家の力は借りなかった」


「そうか。でも必要なきゃ大統領に手は貸さなかったろ」


「まあな。大統領の命を救ってやったとか、その恩を感じ入るだろう、なんて思っちゃだめだぞ?」


「わかってる。大統領がそういう人間じゃないことはな……」


「どうせまた今回の依頼は無効になったとか何とか言っていい様に使われる」


確かに、親父の言う通り俺たちに理があるものの、裁判になったとして俺たちが負ける可能性は十分ありそうである。

向こうが凄腕弁護士を雇えばの話だが。


「いいのかそれで?」


「無理を通す力があるのがあの女だ。さて、お前の言う何でも生み出す駆動部を教えるか教えないか……」


親父は問題に頭を悩ませながら食堂のほうへ戻っていった。俺もそれは同感だ。

考えるとまた頭がくらくらしてくるので、その件は親父に一任することにした。

バイクを降り、イザベルの手も引きながらトントンにコールすると、出てくれた。


「トーマか。さっきからコールしてたんだが出なくて」


「地下にいたからかもな。そっちはどう?」


「もうあらかた掃討した。全く、ムカつくくらいノイトラに興味を向けない奴らだ……」


「おそらく神が仕向けたものだ。あ、そうだ。二コラはどうしてる?」


「撃たれていた。旧知の友人を亡くすのは慣れないね……」


「えっ、死んだのか。今朝まで普通に……会話してたのに……」


「ノイトラだったら死ななかったのに。ほかに革命軍のメンバーも四人ほどやられたよ」


「くそっ……俺がもっと働いてれば……」


出会ってまだ間もない人だが、俺は訃報を聞いて涙がほんの少しだけ目ににじんだ。

大統領の訃報を聞いてもこうはなるまい。

ただトントンの言っていることは絶対嘘だ。もはや旧知の友人の死にすら慣れている。

たった一人の肉親の妹の死にもそんなにオーバーなリアクションはしていなかったからな。


「よければほかの子も連絡をつけて学園へ一度集合するというのは?」


「そうしようトントン。俺は学園にいるから」


俺はバイクから降りると丘の上から下の市街地へ向けて手で拡声器を作りながら叫んだ。


「この街のノイトラは全員学園の校庭に集合だっ!」


「と、トーマうるさい」


「あ、ごめん」


イザベルに会釈してから数分後にはトントンたちが続々と緩やかな坂を上って学園の前までやってきた。

俺は多少なりともねぎらいの言葉をかけた後、話を変えてこういった。


「親父とも話したが今後どうしよう。ここを切り抜けたとして、どうやって外の世界へ行こう?」


「前回神の妨害がなかったのは偶然か、はたまた見逃してもらってただけなのか?

今度もそううまく行くとは限らない。あれがもし何度も来るようなら難しいね……」


とトントン。俺はこれに補足した。


「エースならなんとかできるかもしれない。第一セシルも必要だ。俺に考えがある」


「考えだって?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ