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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第一章 ボーイ・ミーツ・ボーイ
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第四話 ある少年兵

「しかしこんな朝からどこ行く気なんだセシル?」


「すまない。僕は諸事情あって政府から逃げていると説明したかと思う。

あ、そうだ。お金ならあるよ。これでご飯でも一緒に食べようか」


「そ、そうだな」


やはりセシルは古典的な男女観を持ってる。女の子と食事に行くときは男が奢るもんだと思ってるようだ。

とはいえ、本人がそうしたいんだからわざわざ拒否するもんでもない。

俺は大人しくついていき、ゲットーのちょっとした食堂に行き、テーブルに着き椅子に座った。

そして適当に注文をして食事が出るまでは二人きりでセシルと面と向かって座ることになる。


そして気づいたんだが、奴は俺と歩いてる時やさっきの橋の下でのことといい、話題をつなぐのにいっぱいっぱいだった様子。

こいつ、俺と同じで女の子に免疫ないタイプかと思うと俺はおかしくなってきて笑ってしまった。


「ふっふっふ、セシル、さてはお前男の自分が何か話題を振らないと、とか思ってる?」


「そ、そうなんだけど……」


「話に聞いたんだが、革命家、アラン=ミシェル=ロランとかいうやつに関して知ってるか?」


「知ってるも何も……」


セシルは周りを気にし、少し声のトーンを落として答えた。


「その人は世界の秘密を知ってしまった人、と言われてる。眉唾な話だけどね。

だって、世界の秘密についてあの人は何一つ語らない。語ってしまうといけないことなのか……」


「ペテン師じゃないのか?」


「んなわけあるもんか! 僕が帝国で逃げているときに助けてくれたのは彼らの組織なんだからな!」


「ふーん、じゃあさっきから感じてるお前の余裕の正体は彼らとのつながりってことか?」


「平たく言えばそうだよ。ただ、僕はもう子供じゃないんだ。

立派なメンバーの一人さ。この街にはある任務を帯びてやってきた」


「それって?」


「聞くか普通? 言ったらヤバイに決まってるだろ。下水を通って潜入してくるくらいなんだぞ」


「手伝ってやろうか?」


俺は、セシルにくっついていけばいずれ衣食住に不自由しない暮らしができそうな気がしていたので、もうこのチャンスは逃すまいと必死だ。


「ううむ……店を出てからにしよう」


話はあとで、ということになり、俺たちは黙々と出てきた食事を平らげてすぐに店を出た。

店を出るとセシルがまた迷いなく歩を進めていく。が、なんと橋の下に戻ってきてしまった。


「おいおい、ここで話か?」


「誰かに聞かれる心配はないだろう。トーマ、そんなに言うのなら任務について話をしてやる」


「ああ。手伝ってやる」


そうしてセシルが話し始めたことに俺は衝撃を受け、冷や汗をかいた。

この世界について俺は何も知らなかったが、どうも想像よりヤバイ世界のようだ。

ただでさえ被差別種族に生まれた。この上まだこの世界に絶望があるという事実に俺は涙が出そうだ。


「いいかいトーマ。この世界はおおむね二つの大国が覇権を競っている、と言っていい。

この国、アルル王国。男が強い社会で、女性とノイトラは低い立場にある軍事国家。

そして北にあるのが合衆国だ。共和制という、投票によって政治家を選び、雑多な民族が集まった寄せ集めの国だ」


「ちょっと待て、大陸には巨大な『裏の政府』があるんじゃ?」


「『政府』とそれぞれの国は必ずしも利害が一致しない。政府についてわかっていることは少ないけどね」


「そうか。それで、任務は?」


「待てトーマ、もう少し話を聞いてくれ。いいか、南の王国と北の合衆国があり、その他の小国はおおむね日和見。

つまり強いほうにつく。中枢の帝国の政府はそのような動きには干渉しない。

むしろ、わざわざ大陸を統一した数百年前の動きのほうが例外的かもしれないね。

統一が瓦解して以来、もうずっと戦争が続いてる。僕らは国を獲る」


「なに?」


こいつ本気か。助ける、とか戦争を止める、とかではない。国を獲るといった。


「国を獲る。そして中枢政府に戦いを挑む!」


「なんでそこまで……」


「僕にはそうしなければいけない理由がある。

トーマ、僕が君を家族同然に大切に思うようになったら、それはいずれ話してあげる」


「辛い話なのか? まあ、気長に待ってるよ。で、作戦は?」


「僕はこの国に潜入し……『あること』を確認する。すべての作戦はそれからなんだ。

逆にそれの確認さえ首尾よくいけば、この国は獲ったも同然だ。これを聞いたらもう後には戻れないぞ、トーマ」


「戻るところなんかどこにもない」


セシルは俺の返答に満足いったらしく、少しだけ笑顔を浮かべてから衝撃的なことを言った。


「それは兵器だ。この国には超巨大兵器が隠されていて一国をも吹き飛ばす威力があるという」


「だったらなぜそれを合衆国との戦争で使わない?

俺の同族のノイトラたちが戦争で使い潰されてるって聞いたぞ」


「使えない理由があるらしい……だが、間違いなく言えるのは、それはあるということだ。

なぜなら僕の家族が政府によって狙われている理由もその兵器に関係しているからだ……あまり詳しいことは言えないけどね」


「そういえば俺にはまだ言えないって言ってたな」


「悪いね、会って初日ではちょっと。ともかく、いいかい。話を整理しようじゃないか。

僕は革命家に助けられた。そして任務を帯びてここにやってきた。

それはこの国に存在するという古代兵器のありかを知ること。

そしてそれをダシに王家と交渉する。うまく行けば無血で国をとることができる!」


「ふーむ。それ、俺が手伝えることある?」


「さあね。少なくとも僕は誰にも頼らずやるつもりだったけど」


「可愛くねーやつだな。なんか手伝ってとか言ってくれよ。俺やることないからさ、暇なんだよ」


「ヒマだからって理由で国王を脅迫するやつがあるか! 全く、君という人間が読めないよ。

まあでもそんなに乗り気なら面白い。少し君にはやってもらいたいことがあるんだけど、どうかな?」


「どうした?」


「もう話の流れ的に大体わかってると思うけど、この街にそれはある」


「え、マジで? ここに古代兵器に関わる何かが?」


「そうじゃなきゃ、臭い下水道を通ってここまで来ないよ。

組織も僕を危険な目にあわすことは反対だったけれど、僕が志願したんだ。

古代兵器さえ復活させられれば、無血で戦いを終わらせられるからね」


「と、とはいえ……そんな危険な兵器をよみがえらせたらヤバイんじゃ?」


「わからんヤツだなトーマ。言ってるだろ、結果的に兵器が復活したほうが流れる血が少なくて済むんだ」


「……わかった。手伝ってほしいことがあるって言ってたなセシル」


「うん。なに、タダでとは言わない。組織が国をとった暁にはそれ相応の対価を支払おう。

まずは前金だ。これを受け取ってくれトーマ」


セシルは俺に金貨を三枚手渡した。俺は正直まだこの国の物価をよく知らないので、これがどのくらいの額なのかはよくわからない。


「お、おう。ありがとう。しかしお前ノイトラの俺を差別しないのか」


「馬鹿な。いいかい。この世に広まった宗教は、ノイトラが悪魔に魅入られたとして差別を正当化している。

きっとこれは作られたこと、僕は何らかの意図を感じならない。

逆に言えばノイトラとは何かこう、別の……うまく言えないが、世界そのものの秘密と深くかかわっているような気がするね」


それは俺も感じていた。生物にはあまり詳しくないが、次のような学説を聞いたことがある。

生物には極論、二種類の生存戦略をとるものが存在し、男女の性というところにもこれが当てはまるのだという。

たとえば細菌が細胞分裂したり、一度に大量の卵を産む生物がいる。

細菌は分裂した自分を世話しないし、大量に卵を産む生物もこれら全部を十分に世話をすることを放棄する。


つまりとりあえず数を増やし、どうにかして数パーセントでもいいから生き残らせる、という戦略だ。

これをR戦略といい、乱暴で非学問的な言い方をすれば、下等生物的な戦略だ。


逆にK戦略は少数の子供をなるべく資源や時間を投資して育てることで確実に生き残らせ、子孫を残していく戦略。

人間などの生物はこれに該当しており、同じ人間でも、途上国は子供が多いのに対し先進国ほど子供が少ない。

そして途上国ほど生き残る子供に対して死ぬ子供の率が高いのに対し、先進国では子供のうちに死ぬことはめったにない、という違いがある。


これは男女にも当てはまる。つまり、男は小さくてたくさん作れる精子、という生殖用の細胞をとにかくばら撒きたがる。

生まれた後のことは知らない。実に下等生物的な発想をしているといえる。

逆に女は、卵子という精子より遥かに巨大な細胞を有しており、これは精子に比べると莫大な資源を必要とするためあまり沢山は作れない。

言ってみれば子供を作る際の初期投資が男女でまるで違うということだ。

こう考えると、初期投資が多いのだからむしろ女同士で子供を作ったほうがいい気がしてくるが、そうもいかないようだ。


これに対し、精子と卵子の中間的細胞を仮想的に考えてみよう。

これは男女どちらとでも繁殖できるが、大きさが中途半端なため、人気が出にくい。

しかし、少なくとも男の精子よりも初期投資は多いため女には男より人気が出てもいいものだ。

ところが、結局男女ペアが最もバランスがよいため中間タイプは淘汰される運命にあるとのことだ。


つまりだ。俺たちノイトラは本来あり得ない存在。中性は存在しえない。

だから、俺たちは中間的な性なのではなく、男女を兼ね備える両性である、ということだ。

だが、中性と同じくらい両性の人間がこんなにも当たり前に存在するのもあり得ない。


なぜなら女のように子宮があって子供を育てられる柔らかで豊かな胸があれば男が抱きたくなる。

つまり、わざわざ女とも子供を作るために男としての要素を追加する意味がない。


逆に元々男だったのに、男の機能を保ったまま体に女としての機能を追加していくのはあまりに負担が大きすぎる。

どう考えても両性の人間がノイトラ、などと名前が付くほど当たり前に存在するのは不可解だ。

少なくとも、両方を体の中でエラーもださず、エネルギーも無駄に消費することなく上手く使い分けるというのは至難の業。

それを進化の過程で獲得するというのもさらに至難の業なのだ。


「俺たちは一体何なんだろうな、セシル」


「何か裏があるとは思うけど……だからこそ君にやってほしいことがあるんだ。

今日中にこのゲットーを出て、厳戒区域に行く。当然古代遺跡の発見があった区域には兵がいるが、僕がそこで目的を果たすまで何とかして……」


「何言ってんだお前。おいおいおいおいおいおい」


「おいが多い!」


「お前利用されてるじゃないか、その革命家とかいうのに!」


「僕は命を助けられたんだ、そこしか居場所はないんだ!」


さっきまで実に余裕しゃくしゃくでいたセシルが突然逆鱗に触れたように俺に怒鳴りだした。

間違いない。本心では図星を突かれたと思っているからこそ怒るのだ。

人は正論を言われると弱い。


「俺と同い年の子供のくせにそんな死地に出張って命捨てるような真似……!」


と言いかけた時だった。セシルはシュンとして下を向いてしまった。

どうやら話を聞いてみると、女の子に対してムキになって怒鳴ってしまったことを反省しているようだった。

別に俺は女の子ではないと何度言っても聞かないことはもう気にしないことにし、俺たちは話を続ける。


「とにかく、僕はこの世のすべてが知りたい。なぜ両親は殺されねばならなかったのか。

なぜ僕は生き残ったか。運命とは。人との出会いとは。この世の秘密とは?」


「俺と家族になりでもしないと話さないって話あったよな」


「ん? ああそうだ」


「なら今なろう。俺をセシルの家族にしてくれ。だから話してくれないか」


「え、ええ……」


セシルはしばし、橋の下を流れる川のほうをじっと見ていたが、やがて横に座る俺に話してくれた。


「ならトーマは僕の妹だね」


「俺は女じゃない」


「話したら、協力してくれるか。さっきまでみたいに反対するんじゃなく」


「内容次第だな……」


俺は知っている。こういう子供を使って過激なテロ行為をさせることがある、ということを。

別に正義感ぶるわけじゃないが、それを止めたいと思うくらいの良心はあった。

セシルは結局、会って間もない俺に自分のことを話してくれた。


「僕は帝国出身だ。兄弟はいない。両親とつつましく暮らしていた。

ところが一年ほど前、僕の両親と故郷はある者たちに焼き尽くされたんだ」


「ある者たち?」


「状況的に見て政府だ。正体は不明だけどね。ところがどうだ。

僕の故郷を焼き尽くして同族を根絶やしにしようとしたくせに、政府は僕を狙いはじめた」


「お前で最後だから執拗に狙ってるんじゃないのか?」


「いや。僕は一度そいつらに捕まったんだ。殺すだけならそんな手間はかけないだろう」


「なるほど。で、その時に革命家の連中に助けられたってわけだな」


「そういうことなんだ。その時に負ったケガで半年近く療養してたんだが、もう元気だ」


「バカ! 病み上がりでいきなり危険なとこに来るな!」


と自分で言っておいてなんだが、俺はその声が女の子のように高くて、まるで恋する乙女が好きな男の子を心配してるかのような響きだったので恥ずかしくて赤面してしまった。

俺の赤面が伝染してしまったセシルは顔を赤らめながらこう返した。


「ごめんね。でも僕はもうこういう生き方しか出来ないんだ……」


さて、俺たちはこのとき、長いこと橋の下でテロ行為についての話をしていた。

ここから先は正直、まったく予想だにしていなかった展開へともつれこんでいくことになる。

その一連の展開はある人物の乱入によって始まることになる。

この作品はもう二年もエタっている自身のSF小説「アークティック・モンキーズ」というのがあるんですが、これの設定とか展開を流用したものになっています。

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