第三十九話 突撃開始
「まあ、そのことは食卓にでもついてからしよう」
とのトントンの提案には誰も口を開かなかったが暗黙のうちに全員が了解し、もう満腹のイザベルまでもが一緒に食卓についた。
なお、アンドレアスは下っ端以上幹部以下、という微妙な立ち位置にいるため、この場にいることは許されなかった。
案外厳しい革命軍の上下関係が垣間見えたところで、親父は話の続きをしだした。
「まあ、正直こっちの情報も教えてもらって情報交換したいところだが、こちらの話が先だな」
「そうだな。セシルたちはどうなったんだ?」
「お前の仲間のノイトラだがな、一般人からすれば魔法にしか見えない力を使って王政の兵を虐殺した。
機械の女もいたしな。市民は大パニックになっていて話に尾ひれがついて広まっている。
恐怖とデマは感染し、誰の手にも負えないだろう。当然だな。
軽く五百年先を行く文明のレベルに想像が追いつくわけないからな」
「だ、だからセシルたちはどうなったんだよ!?」
「不明だ。恐らく王政が神に天使を遣わせと要請したはずだ。あの町は事実確認が不可能な状況になっている。
ひとつわかっているのは、本気の力を解放したノイトラ同士の戦闘の余波で街が焦土になっていることぐらいか」
俺は未だに本気のノイトラの戦闘を見たことはない。ましてノイトラ同士なんて。
下手なバトル漫画よりも大規模な個人での戦闘が行われているようだ。
「ヤバいじゃないか。セシルは生身の人間だぞ」
「お前が助けに行くのか。この状況の原因を作ったお前が?」
「だとしても行かなきゃならないだろ。少なくとも天使は俺が無力化できる!」
「ふむ……アラン、この街でこいつがしなきゃいけない仕事は?」
「今、トーマが学校を制圧する作戦を進めている」
「なんでそんなことになってる?」
「大統領の依頼でね。大統領の邪魔となる要人の子供が学園に通っている。
その学園を占拠し、ついでにその下に眠る古代遺跡を発掘する計画なんだ」
「どうしてもトーマが必要か? お前はどっちを優先する気だ?」
「いや、期限は一年後だ。トーマが今ここにいなきゃならない必然性は薄い」
「だったら……」
「向こうへは帰れない。飛行機は大統領閣下に接収されてしまった。使わせてもらうことは出来ない」
「シスター・マリアンヌを含め当該地域にいる革命軍のメンバーとも連絡が取れていない。
トーマ、ここから列車で半日あれば国境へ行ける。その後船を使えば最速二日で当該地域へ行くことが出来る。
国境越えは組織の力で何とかなる。セシルは今のところお前と同じくらい重要だ。
死体になってない限りはな。友達を救いに行け」
「出来ない。怖い。行きたくない……みんながもしかすると手遅れかもしれない……そんなの怖い……!
手に負えないうねりが俺に襲い掛かって……こんな急に……」
「急にじゃない。お前が飛行機に乗った時点ですでに相当ヤバイ状況だったはずだろ。
何しろあそこにはセシル、お前、そしてそこの泣いてる女の子が全員そろってたわけだしな」
親父はイザベルを指さした。知らない人がいっぱい家にきて怖がっているので口は開いていないものの、涙だけはあふれて頬を伝っていた。
俺なんかよりよっぽどセシルのことを心配して救いに行きたいらしいが、俺は怖い。
ここを一歩も動きたくなんかない。どこかに逃げ出して誰かに甘えたい。でもそれが許される状況じゃない。
俺の力はすべてを丸投げされてしまうほどにも強力だからだ。これが王の力。
強大すぎる力には、大いなる責任が伴ってくる。俺は宿命からは逃れられない。
「俺は……!」
俺は言葉を飲み込んだ。言いかけたところでイザベルがおもむろに席を立ったかと思ったら家を出て行ってしまったからだ。
制止も聞かずに俺はそれを反射的に追いかけた。とにかくここから逃げ出したかったからだ。
家を出て行ったイザベルは学校へ向かう坂くらいのところで立ち止まっていた。
「イザ――」
「本当のことを……は、話す」
イザベルは相変わらず吃音を交えつつ言った。そしてさらに俺に、今までにないほど長い話をしてくれた。
俺はそれを辛抱強く聞いた。それを要約すると次のような話になる。
イザベルは十歳で一年ほど前に故郷が焼かれて家族は全員死んだ。
その前にいくらかの伝承を親から聞いたのだという。
それによると自分たち一族の始まりはとある一人の女だったという。
その女の親は不明だが、出産したのはエースと言う女だという。俺はこれを聞いてびっくり仰天した。
エースは人間ではないので出産の機能はないはずだ。遺伝子を持っていないので遺伝子を混ぜるという行為は原理的にありえない。
このことから何らかの情報の行き違いがあったのだろうと考えられる。
あるいは、エースと言う名前のその人は俺の知っているエースとは別人かもしれない。
とにかくその女はどうにかしてこのスフィアにやってきた。
エースはこのスフィアに、娘を連れてくることさえ出来たらあとは何でもいい。
そこで終わってもいい。死んでもいい。それほどの覚悟と決意をもってやってきたのだという。
事情は計り知れない。あまりにも長い年月の間にそれは永遠に失われたのに等しい。
だが残っているものもかすかにある。それはイザベルに継がれた血。始まりの人は名をイブと言ったという。
セシルの一族サー・ペンドラゴン家は根っからの騎士の家系。彼らはエースの最後の願いによって設立された騎士団。
全てはイブの血を守るため、そして彼女らがいずれ古代兵器を再び持つときのために古代文字を伝承していたのだという。
彼らの役目は囮。血筋に何かすごく特別なものが隠されているわけではない。
そしていつの日かまた、イブの一族とエースが出会うとき眠っていた時は再びうごきだすのだという。
「だ、だから、わ、私は……せ、セシルに会うだけじゃ、だ、ダメ。
え、エースにも、あ、会わないとい、いけない」
「何者なんだ……」
前からそうではないかな、とは思っていた。だがこれで確定したようだ。
イザベルの家系は外から来た。エースはイザベルをここへ届けたかったのだ。
それっていったいどういうことだろう。ここは地獄だ、そう思っていた。でも天国なんだろうか。
少なくとも外の世界を知るエースにはそう見えたのだろうか。
俺はノイトラの王。特別な血を持つ存在。でもそれは何世代かに一人くらいは生まれうるものだという。
だがこの子は違う。何かこう、格の違う何か。何かだ。とにかく大事な何かを持った血筋なのだ。
「とにかくイザベル。厳しいようだが俺の意見は変わりがない。俺は助けに行かない。
セシルたちのことを信じている。そうしてここまで来たんだ。
俺は決行する。仲間に連絡をするからな。わかったか?」
「せ、セシルを……助けに行く……」
「ダメだ。ここにいろ。じゃあな」
俺は今は夕方ということで、ひとまずはノイトラの警備員とエリザベスに会いに行き、明日、ついに決行するということを伝えた。
その日の夜は一睡もできなかった。神は勝手に俺の味方だと思っていた。エグリゴリは俺のことが好きだと。
大きな勘違いだ。奴は俺のことが必要なのは間違いないが、かといって仲間まで大事にする義理はないとでも言いたいのだろうか。
のしかかってくる夜の闇の重圧に耐えきれなくて俺は深夜、家の外に出て風に当たりに行った。
もはや時期は冬。特に北の帝国では季節の進みが速いのかもしれないが、夜風に当たるのは体に障りそうだった。
でも俺にはもはや関係ない。肌寒い深夜の風も、俺の心に吹く風に比べればそよ風に等しい。
俺の心には乾いた風が吹いていた。コロンビーヌのように雨が降ればどんなにいいか。
少なくともこの寂莫とした虚しさが悲しみに変わったほうが、俺には心地いい。
俺は役立たずどころか、勝手な行動が大勢を危険に巻き込んだ。一つの街が焦土と化したという。
俺の招いた結果だ。もちろん立ち止まっているつもりは毛頭ない。
誰も手に負えない巨大で絶対的な力がこの世界を覆いつくそうとしている。
俺のヘマでさえ計算のうちとでもいうようなまるで運命のような力が。
俺はきっと止まらない。止まれはしない。八つ当たりの憎しみを込めて、俺は夜風に当たりながら街を睨み殺そうとしていた。
夜が明けて朝が来た。アンリ達に着せようと考えていたが来られないのでは仕方がない。
朝食を食べさせてもらった後、俺はマリーとミリー、そしてイザベルに言った。
「みんな銃を持って制服を着ろ。イザベルも予備の制服をカバンに持っておけ」
「ほ、本当に私たちだけでやるんですか……?」
「マリーとミリーは人を殺したことは?」
「ないですけど……」
「まさか殺さないですよね?」
「上手くいけばだれも傷つけはしない。俺たちがこれから行う作戦は上手くいけば大統領への脅迫としては十分だ」
「……あれ? 大統領は味方じゃありませんでしたっけ?」
「そうそう。大統領の依頼を受けてこれをやるんじゃないんですか?」
「いや。大統領は確かにまあそうなんだけど、作戦が成功した後も手元には大統領の娘が残っている。
さらには、地下に眠る古代兵器もな。大統領との交渉は俺がやろう」
俺が居ればこの国中のすべてのノイトラが大統領に投票する。それってものすごいアドバンテージだ。
ノイトラの参政権を与えるというのはハードル高いが、それでも大統領にとっては魅力的な提案だ。
他にも俺が大統領に与えられるものは数多くある。
それを思えば外の世界へのトンネルを大統領が使わせてくれるぐらいなんてことはないだろう。
「行くぞみんな。作戦は既に内部の協力者にも伝えてある。が、俺の命令は時間と距離を置くと無効になってしまう。
みんな、合図が出るまで待ってくれ。俺は一足先に準備をしなければ」
その後のことは、あまり事細かに描写する必要はないと思うので大胆にカットしようと思う。
重要なことがこの先いっぱいあるのだ。
この学園襲撃立てこもり事件ですら、これからの重大事件の目白押しに比べれば前座の前座のそのまた前座に過ぎないのだからな。
俺は学校へと潜入。警備員にあいさつ。ノイトラの警備員と軽く会話し、銃を持ってきていることを確認した。
次に向かったのは当然食堂。更衣室裏のちょっとした空き地にこっそりと姿を現したエリザベスも銃を持ってきたことを確認。
再度命令をかけ、俺たちは合計十人にも満たない少数精鋭での学校制圧作戦に打って出た。
この学園は極めてわかりやすいシステマチックな構成になっている。
まず初等部、中、そして高等部の三つの棟があり、上に行くほど上級生が学ぶ階層になっている。
食堂はそれぞれの棟での一階で仲良く食べ、体育施設なども当然地上のグラウンドにすべてそろっている。
ちなみに初等部は七歳から十四歳まで、中等部は十五から十八歳まで、高等部は十八歳以上となっている。
したがって、大統領の娘とリー将軍の娘がいる初等部さえ占拠すればよい。
しかも昼飯の時間ならば極めて容易く初等部のほぼ全員を一括でとらえることが出来る。
つまり合図はお昼休みのチャイムだけだ。
三つの棟が良くも悪くも隔離されているため、初等部の異変に上級生や教員が気づきにくいシステムになっている。
単純でわかりやすく効率的なシステムではあるが、こちらも利用しやすいという利点があった。
食堂でその日のお昼時、何が起こったかは言うまでもない。全員が食堂へ集まったところで、俺の仲間たちが一斉に銃を取り出した。
「ここから一歩でも外に出ようとすれば……撃つ!」
まずは俺が叫んだ。そして次に手筈通り、俺の仲間のマリーが適当に近くにいた一年生ぐらいの子供の首根っこを掴んでこめかみに銃口を当てた。
「騒いでも殺す。叫んでも殺す。いいねお坊っちゃんにお嬢ちゃんたち」
「私たちがお前たちの親に要求をする。要求が受け入れられれば、無傷で解放すると約束しよう」
当然堰を切ったようにうるさい子供の泣き声が響きだしたが泣く子も黙るという言葉もあるように、やがてそれも静まり返った。
ただ恐怖だけが募り募っていくこの広くて清潔な食堂。そしてそこへノイトラの警備員たちが入ってきた。
「ボス。校舎には誰も残っていません」
「校庭にも。初等部の生徒と教員は全員ここに収容されたようです」
「あとはそいつか」
「はい、警備員の男です。どうしますか?」
「俺たちに逆らうとどうなるか見せてやろう」
ノイトラの警備員二人は、電気ショック慣れしたあのおなじみのジジイ警備員を連れてきた。
もちろん手筈通りだ。俺はジジイの胸に手を当て、電気ショックをお見舞いした。
バチバチという音とともにジジイは気絶して動かなくなった。
更なる恐怖を与える効果は上々。うっかりジジイの心臓が永遠に止まっちゃうかもしれないが、まあ別に俺は気にすることはない。
今更人を殺してしまおうが何だろうが俺はどうでもいい。俺は銃をカバンにしまい、続いてカバンからホルスターを出して取り付けた。
そして再度銃をホルスターにしまってからマリーとミリーには万事予定どおりに言った。
「俺は予定通り交渉に入る。大統領の娘をここに連れてこい」
「はい」
大統領の娘は有名人だ。新聞を開けばたまに写真付きで記載されていることもある。
仲間は全員事前にこれを知っていた。すぐにマリーに連れてこられた娘。
事情は説明してあるので、緊張で青い顔はしているが震えあがるほど恐怖を感じてはいない様子だ。
会話にならないと困るのでそれは都合がいい。俺は大統領の娘のアリス・マクブライドに優しめの口調で告げた。
「ミス・マクブライド。手荒な真似はしたくない。君は大統領の娘だ。間違いないな?」
「はい……」
「要求は即金で一億ドル。出せない金額ではないだろう」
と、ここで俺は最近エグリゴリと話をするうちにつかんだコツでトントンに通信。
口頭で話すことなく体内通信が可能なのだ。これならば今まで以上に広範囲なノイトラへの指示が可能だ。
まだ、どのくらいの距離まで通信可能かは試してはいない。
これが本当の犯罪だったとしてもこの機能は非常に有利に働くだろうが、今回はただのお遊び程度に過ぎない。
あくまでもポーズとしての犯罪だ。さて、俺はトントンにこう連絡した。
「計画は順調。食堂にて教職員のほぼ全員を確保。もしかすると取り逃がしがいるかもだが、まあ影響はないだろう」
「よくやった。すぐ大統領に連絡しよう。それと警察に通報もしておく」
「ああ。そちらの準備は?」
「今のところ、三日で集められたのは十五人といったところか」
「この首都に革命軍の本部があるんだろ。しっかりしてくれよ」
「贅沢言うんじゃないトーマ。十人もバックアップ要員が居れば十分だろう。
とにかく今できることは以上だ。警察に伝わったらすぐ大統領が現場まで来るはずだ。
いくら大統領があの性格とはいえ、娘が捕まって身代金要求の交渉に応じないと、イメージがダウンしてしまうからね」
「そういうもんか。了解。あとは日が暮れる前に話が終わるといいんだが」
「二日がかりにはなるかもね。トイレだメシだと子供が要求してきた場合のことは考えてあるんだろうね」
「それはもちろん。じゃ、またあとで」
俺は通信を切ると、静まり返った食堂によく声が響き渡るように深呼吸をしてから声を発した。
「いいか。大統領への要求は即金で一億ドル! びた一文たりともまからないぞ!
要求が通らない場合は処刑を行う。わかったな!」
もちろん返事はない。さて、そんな辛気臭い連中と一時間も一緒に居たら眠たくなってくる。
「ふわ……」
とあくびをした時だった。トントンに通信を入れると、大統領には話が伝わり、すぐに腹心を現場に向かわせたとのこと。
「自分は現場に来ないのか?」
「まあそれも一つの手だろう。仕事を放り出して娘に構うのも、それはそれでリスキーだからね」
「たしかに」
「もちろんこの腹心の秘書官も事情は把握しているとのことだ。予定通り一億ドルを要求してくれ。
ところで子供については……対応策はあるのかい?」
「任せてくれと言ったはずだ。命令は了解した。仕事は遂行する」
俺は通信を切った。すると外から銃声が聞こえた。そこまで打ち合わせはしていない。
警察の動きまでは大統領も制御してはいない。
警察はマジで立てこもり事件だと思っているので容赦なく犯人は射殺しようとするだろう。
だが、銃声に反応して外へ出ないわけにもいくまい。俺は外へ出た。
すると警察に護衛された秘書官らしき女が校門の外におり、警官がどうも発砲して我々を呼び出したらしい。
まあ拡声器とかないからなこの時代には。俺は出て行ってやったが、これでは会話は出来ない。
秘書官は両手を上げながらゆっくりとこっちに近づいてくる。俺はそれに銃口を一度だけ向け、そしてすぐにひっこめた。
ゆっくりと歩いてきた秘書官の女性だが、はっきり言おう。俺が今から言うことは聞く価値のないたわごとだ。
だが、どうしても言いたくなったので言うが、俺はこの人がめっちゃタイプだった。いや、こんな時になんてことをと俺も思う。
セシルたちも生きてるか死んでるかわからない。だがとにかく大統領の依頼を完遂し、すぐにでも外へ出てスフィアの中枢である造換塔に行く。
そしてセシルたちを襲うノイトラをすべて味方に変えてしまい、王政らにも脅しをかけて戦いをやめさせねばならない。
それはもう遠い未来の話じゃない。もはやそれは今すぐ達成せねばならない目下の急務となっているのだ。
なのに、そんな状態でありながら俺はこの若い秘書官がかなりタイプなので、ちょっとドキドキしながら食堂のほうへ迎え入れることとなった。
秘書官はいかにも女性政治家の付き人と言った感じの立ちだ。
白系のクリーム色のスーツを着用し、ハイヒールを履くなど、この時代としては大変モダンないで立ち。
スカートが当たり前だがパンツを着用。髪もショートカットで、前髪から頭頂部まできっちりと七三に分けている。
正直自分でも驚いているのは、俺は意外とこういうタイプが好きだという点だ。
親しみやすい感じの女性が好きだと思っていたが、案外年上で真面目そうで、自分よりすべてにおいて上な人も好きみたいだ。
もちろん見逃せないのが鋭い眼光を放つ賢そうな釣り目。
女はバカであればあるほどいいと思っている男もいるらしいが、いやいやそれは損しているぞ。
俺に言わせればこの秘書官みたいに頭の切れそうな女性はそうでないよりも魅力的だ。
ただ俺は彼女をじろじろ見たせいで気づいてしまったが女性は左手に薬指をしていたので結婚しているようだ。
それで俺は突然我に返って、まあそうだよな、魅力的な女性ほど結婚してる率は高いよな。と思った。
「あなたが例の……初めまして。私はレオナルディア・フィボナッチ。大統領筆頭補佐官の者です」
「初めまして俺はトーマ……苗字は……そうだな。まあいい。この際フルネームなんか」
「話をしに来ました。話は正確に、かつ素早く行いましょう」
「そうだな。こちらの要求は一億ドル即金で」
「無理だとわかっての申し出ですね?」
「一時間待つ。アンタは無傷で返す。早くいって要求を大統領に伝えてこい」
「しかしこんな子供とは……」
「何か言ったか?」
「いえ。それでは」




