第三十八話 よう、久しぶり
「あー、なるほど。合衆国に渡したくないから消そうとしたっていうのは盲点だったな……考えもしなかった」
「何よりセシルを渡すわけにはいかなかった理由は、トーマ君もまた幼かったからだ。
せめて二人とも十代になってからじゃないとね。
あと十年ぐらい待ってもよかったけど、その時に大統領の任期が続いているとも限らない。
正直、最後通告を受けていたんだよ最近まで。そんなトーマとセシルが、コンビネーション抜群みたいでトントンは嬉しいよ」
「ふふ。俺とセシルが出会うのはそういう運命だったってわけか。あいつ、俺にプロポーズしようとしてきたよ」
「ええっ。そ、それで返事は?」
「あいまいにしておいた。俺はべつに男が好きってわけではないんだけどね……一回やってみたら案外男も悪くないかも?」
「一回やってみたらってトーマ……」
「冗談だよ。もしまた本気でプロポーズしてきたらさすがに断るつもりだ。
えーと、何の話をしてたかな。ああ、そうだ。古代遺跡の話だった。
さっき地形を見てすぐにわかったよ。ほんの少し小高い丘に学園が建っている。
学園と遺跡は直通していて、遺跡を隠すような役目も果たしてるんだよねトントン?」
「そうだ」
「と、トントン……って、な、なに?」
「ん?」
珍しくイザベルがしゃべりかけてきた、と思ったらイザベルが顔を向けているのはトントンである。
多分、ご飯をくれる人だから俺と比べても心を開きやすいのかもしれない。
猫ちゃんだからなこいつは。トントンは優しく表情を緩ませて答えてあげた。
「トントンとはおじさんと言う意味さ。僕の妹の子がトーマだからね」
「わ、わかった」
「ノイトラは嫌いじゃなかったのか。トントンもノイトラだぞ」
「トーマ、相手は小さい女の子なんだから」
「と、トントンごはんくれる……す、好き。お前、き、嫌い」
「おっと、そういう事みたいだね」
「こいつ……!」
俺は付き合うのもばからしくなって、もうイザベルと話をする気はなくなった。
もしも俺の睨んだ通り学園の地下に遺跡があるなら、セシルとイザベルを一緒に連れていくことで、兵器を掘り起こすことが出来るかもしれない。
そういう計画でイザベルに話をしようとしていた。だが、もういいと俺は考えた。
どうせセシルが好きだからセシルの後を子猫のようについてくるだろう。わざわざ俺が言うまでもないと考えた。
「ああ、しかしこの制服の予備だと、だいぶ大きいんじゃないかな。
悪いけどトーマの仲間についてはよく知らなくてね。トーマと同じサイズのしか予備は買ってなくて」
「大丈夫。ほとんどの奴は俺と同じくらいの背格好だから」
俺は紙袋を確認し、男子の制服が二着、俺の分の女子の制服と、残り五着の女子の制服があることを発見した。
予備に一着残しておくとしてあと四名。アンリ、コロンビーヌ、イザベルに着させるとしてあとどうしようか迷った。
「あ、そうだ。セシルは女の子の服を着させて、一人仲間のアルってやつがいてそいつに男の服を着させる」
「まあ何でもいいが、アルってやつは使える奴なのか?」
「もちろん。奴の戦闘能力は半端じゃなかった。手綱は握っておくから安心してくれトントン」
「わかった。しかしリスキーだ。今から本番前の予行演習をするのかい?」
「もちろん。じゃあ腹ごなしも済んだし行ってこようかな」
「まるで子供の遠足だね。楽しそうで何より。私はここでイザベルを見てるよ」
「ありがとう。行ってくる」
椅子を立って廊下を歩き、家を出た。少し西側に歩いたところに赤いレンガのレストランが見え、これを目印としてさらに街を見渡してみる。
ただ、さっき話に聞いていた安アパートに住んでいるエリザベスという情報はあまり役に立たないということがわかった。
なにしろ安アパートはアパート群と言ってもいいくらいに林立しており、その一帯の世帯数は数百にも及びそうだ。
それを一軒一軒訪ねたり、大家さんを質問攻めにするのは大変だ。
かといってレストランに行って聞いても怪しまれる。
俺はさっさと諦めて学校へ行ってみることにした。制服を着て校門前の警備員の詰所へ歩いていく。
そこにはおじいちゃん警備員が何事もなかったように椅子に座っていた。俺はそこへ近づいて行って声をかけた。
「どうも。おじいちゃん元気してる?」
「あ、お前はさっきの! このクソガキが!」
「今度こそあの世へ行っちゃうぞジジイ。それともクセになんなよって言ったのに、またやってほしいのか?」
「何が目的だ。ワシに恨みでも……!?」
「電気風呂でも入っていろ。それよりノイトラの二人。
俺は今から学園に入る。手助けしてくれるよな?」
「はい」
「はい」
「ジジイ、この二人は俺が殺せと言えばアンタを殺すと思うが……どうする?」
おじいちゃん警備員をさすがにちょっと脅しすぎただろうか。
もう半引退状態のジジイは元々弱っている足腰が余計にダメージを受けて全身を震わせ出した。
「夢でも見ているのか……もしや悪魔の使いか?」
「信心深いんだな。じゃあ二人とも、俺は爺さんをまた電気ショックするから倒れたら介抱を頼む」
「わかりました」
「では私が送ります。その制服だと初等部ですか?」
やけに親切なのは俺のせいだが、うやうやしい態度で俺に接するノイトラの警備員に俺は深くうなずく。
「クセになるなよ、今度こそ」
俺はジジイに電気ショックをお見舞いして気絶させた。
そして案内を買って出てくれたノイトラ警備員についていき、ちょっとした門をくぐって前庭へ。
ここから三叉路になっていて、一番左端のきゃーきゃーうるさいのが初等部だと警備員が教えてくれた。
「ご苦労さん。すぐに詰所へ戻れ」
「はい」
警備員は俺の言ったとおりに踵を返した。このように、力を使って他人を思い通りにすることにもはや罪悪感はない。
ノイトラとはこういう生き物なのだ。俺の言うとおりにするよう設計されている。
これもノイトラのため。俺はそう自分に言い聞かせて初等部の校舎の植え込みの陰に隠れた。
時計を見たところキリのいい時間帯だったので、そろそろチャイムが鳴りそうだと思ったのだ。
そしてあのお決まりのメロディーがほどなくして流れ出し、子供たちが外へ出てきた。
こうやってキャーキャー言いながらお外へ出てくる子供は低学年に決まっている。
まして俺のターゲットのは高学年の女の子。俺は子供の群れは無視して新しい制服に身を包んで廊下を歩く。
そして学年が上がると上に行くシステムのようであることにすぐ気が付いたので、階段を上へと上がり、五年生のフロアに出てきた。
さすがに五年生の中に混じると俺は若干の年上感は出てしまうかもしれないが、俺は一か八か、友達と話しながら歩く子供とか、わんぱくそうに走る男子たちとすれ違いながら廊下を歩く。
そして時折教室を覗き込む。お目当ての子は三つ目の教室で見かけることが出来た。
「あれか……」
ある一人の女の子と自分の机に座って話をしている地味な感じの女の子。
名前すら知らないが、彼女こそリー将軍の娘に違いないことはわかった。
だが、正直な話、この学校のセキュリティは俺にとってこれほどくぐるのが簡単であるということを証明できただけで、今回は御の字だ。
それ以上の収穫は必要ない。後は仲間を連れてきて本番としゃれ込むだけだ。女の子とかかわるのはリスキーである。
とはいえ、俺の中のいたずら心がちょっと働いてしまい、これをどうにも抑えられない自分が居るのは確かだ。
俺はこういう大人しい子は好きだ。からかいやすそうだ。見ているとうずうずと話しかけたくなってしまう。
友達が席を立って彼女が一人になったところで俺は後ろから声をかけてみた。
「君、名前は?」
「アン・リーですけど……?」
アン・リー。なんか名前だけ聞くと中国人か韓国人のようだが、れっきとした合衆国人だ。
だが、アン・リーと書くと俺の仲間のアンリと紛らわしいのでお嬢と呼ぶことにしよう。
いきなり俺に話しかけられて困惑しつつも嫌な顔一つせずに自己紹介してくれるお嬢。
天使かい君は。まあ、それを人質にとろうとしているのは俺だが。俺も自己紹介しておいた。
「俺は……」
ふと、頭に浮かんだ偽名にふさわしい名前を俺は気の赴くまま口にした。
「ジュリアン・アンドレアス。アン繋がりだね俺たち。俺のほうがアンは一つ多いけど」
「は、はあ……そうですね……」
ナンパされたのは初めてだろう。困惑するのは致し方ない。
と思っていたら、そういえば思い出した。俺は女子の制服を着ているので、お嬢からしたら極めて混乱を生む状況であるということを。
「本名はジュリアーナですか?」
「いやいや。こんな格好はしてるが正真正銘男なんだ、信じてくれ」
「何かご用ですか。私に出来ることがあればなんでもおっしゃってください」
「それはこっちのセリフだ。もし君に困っていることがあったら俺に何でも言ってくれ」
「そ、そうですか。実はその、少しだけ困っているといいますか……いえ、私が悪いのですが」
「口ごもってないで遠慮せず、ほら言ってみ?」
「は、はい……私、友達が出来なくて。この街には越してきたばかりでして……」
「父親の仕事の関係で?」
「はい。今度こそここに落ち着けるとお母様はおっしゃっていたので……なのでここで頑張ってなじもうとしているのですが……」
「さっきの子は?」
「あれはクラスの用事があって話していただけです」
「苦労してるんだね。ふふふ、まあ俺が来たからには大船に乗った気でいてくれ」
「えっ……私はただ友達が……」
「もう二度と父親の転勤に怯える必要はない」
「だから誰もそんなこと――」
「母親にもだ。それに、父と対立する派閥の子供に気を遣うことも」
「……!」
正鵠を射たという言葉があるが、まさにそれだった。
お嬢は俺に、何故それがわかるのか、とでも言いたげに目を大きく見開いて驚き無言でこっちを見つめてくる。
セシルならもっと上手くやるだろうが、俺程度でもまあこんなもんだ。
心をくすぐって、寂しい気持ちを埋めて、相手してくれれば誰でもいいのだ。
「ここは名門と聞く。そういうことも多々あるだろうが……」
「もしかしてお父様から何か命令されてきたんですか?」
「残念だけどそうじゃない。話が出来て楽しかった。じゃあまた、近いうちに会おう」
「は、はい。アンドレアスさん」
別に話をする必要はなかった。だがもしかすると、本番でこうして二人で話をしたことが何かに役立つ可能性がありそうだと思ったのだ。
俺は教室を出て下の階へ。そして一階の食堂へ向かった。地上一階の食堂には、昼飯の時間は既に終わっているので当然誰もいない。
だが片付けとか明日の仕込みとかもあるのか食堂にはいくらか人が居る。
俺は適当に一人のおばさんに近づいて物おじせずにこう聞いた。
「おばさん、エリザベスっていう人、ここで働いてる?」
「えっ、エリザベスに用なの? ねえエリー、お客さん」
「あ、はーい」
エリザベスは話に聞いていた通りの人だ。若いシスターの同期だったという人で、若いノイトラだ。
髪は帽子の中に一本たりとも逃さずに収納し、服装も極めて質素。働くために生きているといった感じのいで立ちだ。
料理の腕は相当らしい。俺は俺の言うことにノーとは言えない彼女にこう言った。
「仕事上がったら家について行ってもいい?」
「ちょっと、二人ともどういう関係?」
「あ、いいよ。私、もうすぐ上がるから」
レストランと違って個々の職場は上がる時間が早いようだ。
ただしその代わりレストランよりも大量の食事を作らなければならないので、たぶん朝はレストランより早いだろう。
しばらくして更衣室から出てきて食堂で待っている俺のところへ来たエリザベス。
俺はまた偽名を名乗ることにした。
「初めましてエリー。俺はジュリアン・アンドレアス」
「男みたいな名前だね?」
「俺はノイトラなんだ。アンタと同じで」
「……じゃあこの学校の生徒じゃない?」
「本当はね。もちろん他言無用でお願いする。ところでこの学校の地下に何かあるか知ってる?」
「いいえ……でも不思議なものを見たことがある。この学校はあくまで教育機関。
研究員なんていないはずなんだけど、明らかに白衣を着た研究員らしき人が地下へ続く階段を出入りしているのが……」
「そう。この地下には政府の秘密研究所があることは調べがついている。
子供たちに危害を加えるつもりはない。俺は研究所を奪取するように組織から命令を受け、派遣された。
エリーはもちろん俺の言ってることを信じてくれるよな?」
「もちろんだけど……」
「協力してくれと言うつもりはない。その時になったら慌てず騒がず落ち着いていてくれればいい。
誰も傷つけるつもりはない。ところで……この学校にほかにノイトラは?」
「警備員に何人か。清掃員にもいた気がする」
「わかった。じゃあ家に行こう」
俺はエリーについて外へ出て、ついでに警備員の詰所にも顔を出した。ジジイは元気でやっていた。
俺と目が合うと指さしてまた何か言ってきた。
「おい、お前この学校に何をする気だ!」
「教えてやろうか、ジジイ?」
俺はエリーのことを待たせてジジイの前までやってくるとこう続けた。
「ジジイ、俺はノイトラだ。学校へはいけない。でもこの学校に好きな子がいてな。
アンって子だ。会いたくてついには女子の制服をブローカーから買ってもらったのさ」
「全く、最近の若いもんはホレた腫れたと盛りおってからに……」
「そういうジジイは恋愛結婚してないのか。バアさんとどう結婚したんだ?」
「ワシはここで兵士をやっていた。訓練だけで定年を迎えた役立たずだがな。
一目ぼれしてしつこくつけまわして、ようやく結婚できた。今でもバアさんしか女を知らん」
「ふーん……」
それからあーだこーだとジジイが年より特有の長い話をしそうだったので俺は適当に切り上げてエリーと一緒に家へ行った。
エリザベスは俺の言うがままに家へ入れてくれた。一人暮らしの女が寝るためだけに帰ってくる。
そんな感じの部屋であることは明白だった。俺は玄関から中に入れてもらってエリーにちょっとした食べ物を出してもらった。
そんなときふと、非常に魅力的ではあるが、それをやったら人として何か大事なものを失いそうな、そんなアイデアが頭をよぎった。
俺たちは二人きりだ。そして何よりエリーは俺の完全なる言いなり。
今まで俺は女体に興味があったが、逆に受けに回ることも割と興味がある。
エリーは俺の言いなり。そのどちらもここで体験できるチャンスだった。
何より俺が命令すれば本人は望んで俺の言うことを聞く。
自覚としては自分が望んで言いなりになるのだ。悪いことは何もない。
「改めて言おう。エリザベス、俺の言いなりになれ」
「うん、わかった」
「俺はノイトラの王。例外なく我が同胞は、王である俺の命令に従う」
「私は王さまの配下です」
「裸になれと言ったらなるか?」
「お望みなら」
「ああ待て待て取り消す」
服を脱ごうとしたエリザベスを俺は慌てて止めた。俺はひよった。腰が引けたのである。
何か、人として超えてはならない一線を危うく超えてしまいそうだった。踏みとどまれたのである。
それはポジティブに評価しておこう。やっぱり相手は人間がいい。俺はそう心に決めた。
男とこういうことをやるならセシルだろう。向こうも乗り気のはずだ。
女の子ならやっぱりレオラだろうか。セシルほどじゃないがレオラだって俺のことが好きなはずだ。
何より女の子なのがいいよな。ノイトラみたいに俺の言いなりになるわけじゃないからな。
エリーは俺に制止されて服を脱ぐのはやめて、指示を待っている。
「今後一週間のシフトは?」
「あと三十四連勤です」
「なるほど。勤務時間は早朝から今頃までか。なら正午前にやるとするか」
「やる?」
「学校を襲って制圧する。エリーにも今度銃を渡すことなるかもしれない。
撃たなくていい。持っておくだけで十分だ」
エリーは更衣室を使っていた。そこに銃を隠せるかもしれないと思った。
俺の命令のいいところは命令は曖昧でいいという点と、本人は俺の操り人形ではなくてちゃんと意識も思考も連続しているという点だ。
だから銃を渡すかもしれない、と言えばエリーは自分の頭で考えて、更衣室――でなくても構わないが――とにかく学校のどこかに銃を隠すことを考えるはずだ。
「わかりました」
「ほかの者は必要ない。協力者は一人で十分だ。守衛も味方につけておいたしな。
あとは、そう……重要なことだな。着替えをしよう」
俺はエリザベスが全然気にしないので、別にそういうもんだと納得して目の前で持っていた服に着替え、制服をたたんで持っていた学生用カバンに収納した。
すると俺の体についてエリザベスがコメントしてきた。これは実のところ初めての経験だ。
「王様。何歳ですか?」
「十二歳と少し」
「それにしては胸が……ちゃんと食べてますか?」
「エリザベスは料理が得意と聞く」
「もちろんです。よかったら食べて行ってください。人にご飯を作るのは好きなんです」
「ありがとう。食べたらすぐ出ていくよ」
実はさっき昼ご飯を食べたばかりだったが、結構歩いたので別にお腹はいっぱいというわけでもなかった。
その時に食べた料理の味を俺は忘れない。会って分かった、エリザベスはとてもいい人だ。
しかも料理の腕は抜群だ。大好きだ。愛しているといっても過言ではない。
もし俺がこの仕事を達成して造換塔というところへ行ったとしよう。
そこはこの世界、つまりスフィアに張り巡らされた無線ネットワークの中枢。
しかもエネルギーを注入することで何でも創り出せるうえに、俺の声をスフィア全土へ届け、ノイトラを全員従わせる。
そうすることですべての国家権力は俺の言いなりとなるのだ。
その時にはエリザベスにはアンリ達のように、ずっとついてきてくれる仲間のように望むがまま報酬を与えたいと思った。
俺は家に帰って寝た。だが、ここからの話はそう大したことはない。
警備員のジジイに応援されながらこっそり学校へ潜入。
中等部にいる大統領のお嬢様にこっそり会いに行って話をつけたりエリザベスに革命軍から横流ししてもらった銃を渡したり、色々と。
話が動くのはそれから数日後のことだった。
その日、俺がトントン、イザベルと一緒に昼ご飯を食べていると二コラ・デ・ニッコリが会いに来た。
俺がトントンと一緒に応対しに行ってみると、二コラは事務的な報告をしてきた。
「アラン、トーマスが到着するみたいよ」
「そうか。トーマの友達のノイトラを連れてないかな?」
「そこまでは……暗号通信で連絡きただけだから。どっちへ誘導する?」
「私は魚を仕入れて料理でも作ってやるとするか。こっちへ来るよう伝えてくれ」
「わかった。いよいよトーマの大作戦も決行?」
「それは親父次第だ」
ほどなくして親父が家にやってきた。横には俺の知った顔が三人あった。
まずマリーとミリー。続いてジュリアン・アンドレアス。俺の初めて会った革命軍メンバーだ。
「よう、久しぶりだなアンドレアス!」
とあいさつしたところ彼は顔をしかめた。
「おいおいトーマ。なんで親父さんじゃなくて俺に先に挨拶すんだよ逆だろ普通」
「そうだぞ。お父さん泣いちゃうぞトーマ」
「父親面すんじゃねーよ。それよりマリーとミリーも無事でよかった」
「はい。命令に背いたことはその、謝罪します」
「でもやむを得ず……セシルくんから離れてしまいました」
「ああ、それはいい。別に……」
「そういうことだ。今回分かったのは、お前の力は時間と距離が関係していて、遠くなると解除されるってことだな」
「そうらしいな。セシルたちはどうした?」
「そのことだが、少しまずいことになってな……」
「なにっ」
「まあ、そのことは食卓にでもついてからしよう」




