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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第一章 ボーイ・ミーツ・ボーイ
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第三話 転機


えー、話を歴史に戻そう。そういうわけで俺たちノイトラは奴隷解放されたあともいい待遇では生きられなかったらしい。

歴史は一度進んでも後戻りすることはある。俺たちは奴隷に逆戻り、いやそれ以下だ。


確かに俺の読んだ本にも、国が孤児院を整え、ノイトラを養育して兵士にしていると書かれてあった。

もちろん事実上は強制収容所だ。ノイトラが不用意に子供を産まないように管理している側面もある。


確かによくわかる理屈だ。この世界の技術水準は多分十九世紀ぐらい。戦争は小銃を持って連隊が運動するのを基本としている。

それならば屈強な男をわざわざ徴兵するのは費用対効果が低い。

もうこの時代になってくると、戦争では屈強な体をしていればいい兵士というわけではなくなってくる。

むしろ現代戦では的が小さい小柄な兵のほうが向いているのだそうだ。


立派に育った成人男子には、国家としては女性と結婚してたくさん子供を作り、仕事をしてそれらを養ってもらいたいのだ。


銃をもって突撃するのならノイトラでも可能だ。

そして俺たちはこうして孤児院に詰め込んで効率よく育てて戦争へ駆り出すのがコスパがよい。

俺はいてもたってもいられずシスターを探して夕方になってきた孤児院の中を走り回った。

やがて、運動場で子供の逆上がりを応援していたシスターを発見すると俺はそこへ子供のように駆け寄っていく。


「シスター! ねえシスター!」


「ん? あら、どうしたのかしらトーマ君?」


シスターは俺の名前をしっかり覚えていた上に、振り返って優しく微笑みかけてくれた。

あれ、ミシェルが言ってたほど悪い人じゃないんじゃないのかな。

と思いつつ俺はシスターに言った。


「俺、ここから出たい!」


「あらあら。同室の子とケンカでもしたの?」


「兵士になんかならない。俺、ここを出る!」


「出るってアナタね……出て行っても行く当てはないでしょう?

ご両親はあなたを匿うことはできないわ。法律で決まっているの」


「でも!」


三か月後、ルームメイトと脱獄する。それも悪くはないが、お尋ね者になってしまう。

色々図書室で考えているうちに気が変わって、シスターに相談して合法的に出て行けるのならそれに越したことはないじゃないかと思ったのだ。

シスターは複雑そうな顔をした後、懐から薄い布を取り出した。


「腕章よ、これをつけて十二区じゅうにくゲットーへ行きましょう」


「……なにそれ?」


「ノイトラの人が住んでいる場所よ。さあ送ってあげるから。みんな、ちょっと出てくるわね!」


シスターはそういうが早いか俺の手をとり、運動場を抜けて玄関を開け、通りに出る。

通りには馬車に乗った人や古風なファッションを着こなした男女が行きかい、俺たちは割と目立っていた。

シスターの導く方へ歩いていると、町の商店街で店を構えているおっさんなのだろう。

中年の男が俺たちのほうへ酒の臭いを漂わせながら歩いてきて声をかけた。


「シスター、へへ、ガキをゲットーに送るのかい?」


「ええ。失礼しますね」


「気を付けてな! 奴ら女嫌いで有名だぜ!」


「ええ、わかっています」


本で読んだとおり、やっぱりノイトラは女嫌いのようだ。つくづく俺は思う。

転生じゃなくて男のまま転移がよかった。この世界の男のなんと暮らしやすそうなことか。

ノイトラも駆り出されてるとはいえ基本的に戦争には男がたくさんいってるはずだ。


ただでさえノイトラと女に需要のある男だが、戦争で男そのものが少なくなってるならもっと需要が高いではないか。


畜生。悔しい。それはさておき、シスターはその後も数度男に絡まれつつも俺を無事ゲットーへ送り届けてくれた。

何故分かったかと言うとあまりにもわかりやすかったからだ。


城壁で囲まれ、その上には大砲が備え付けられた城塞都市であるこの町のさらにその中に壁があり、厳重な鉄の門がある。

その奥にノイトラが収容されているゲットー、つまり隔離された居住区があることはあまりに明白だった。


「ついたわよ、十二区ゲットー。いいことトーマ君。ここで三日生き延びなさい。

私はいつでも孤児院で待っているわ。あなたにもいずれわかる。兵士としてお国の役に立つことが一番いいのよ。

中でもあなたは珍しい男性型のノイトラなんだから、隊長になれる素質もあると思うわ」


「ちょっ、シスター。まるで俺がここで生活できないと知ってるみたいじゃないか」


「ふふ……待ってるわ」


シスターは俺を見捨てて塀の外へ出て行き、俺は仕方がないので門の中に入って、シスターの去っていく背中をまるで捨てられた子犬のように見送る。

そんな俺を見かねたのか門兵の親切なおじさんがこう声をかけてきてくれた。


「お前さん、行くところがないのか」


「うん」


「シスターの言う通りだ。ガキとはいえここでは三日と生きては行けねえよ」


「なんでだよ!」


「みんな各々の生活でいっぱいなのさ。悪いことは言わねえ、孤児院に戻れ」


「おじさんはノイトラか?」


「いや、俺は兵士だ」


「俺は……自由になりたい。壁に囲まれているなんてまっぴらごめんだ」


「好きにしろ。だがここからは出ないほうがいい。腕章をつけて外へ出たら捕まって連れ戻されるぞ」


「だったら外してやる!」


「腕章を外して外へ出て、ノイトラだとバレたらお前……死罪だぞ。

もちろん兵士である俺がやらなきゃならん。馬鹿な真似はしてくれるなよ」


さらにこの世界の株が下がる情報が出た。まあ薄々気づいてはいたが、この腕章をつけてないと殺されても文句は言えないらしい。

そしてこのゲットーの中でなら腕章はつけてなくてもいいようだ。腐った世界だ。


「わかったよ。とにかく……なんでもいい。俺はここで独り立ちしてやる!」


「まあがんばれ」


おじさんは無理だと決めつけたように半笑いで言った。俺はほかにあてもないので、ゲットーの中を散策する。

周囲は数百メートル程度と狭いゲットーにまばらな家が立ち並ぶ。人口密度は低い。

まあせいぜい千人くらいの人口だ。そしてやはりというか、道行く人はとにかく男性が少ない。

たまーにおじいさんか、小さい少年が居るほかは男がいない。戦争へ行ってるんだろう。


ミシェルたちも同部屋の先輩を「アニキ」と言っていたが、そういう男型のノイトラが特に戦争へ駆り出されているようだ。

と、そんな時。俺が道をあてもなく歩いていると一人の少女が声をかけてきた。


「お前、トーマじゃないか? どうしてこんなとこに!?」


「……誰?」


俺は条件反射で言ってしまった後、しまったと思った。向こうはこちらを知っているのだから、忘れているのは失礼にあたる。

少女は一瞬悲しそうな顔をした。


「そ、そうだな。まああの時以来会ってないからな。私は六歳まで一緒にいたアーニャだ」


「そのアーニャが何か用か?」


「と、トーマ変わったな。いつからそんな目をしていたのか」


「だから何の用だよ」


俺がもう一度聞くとアーニャはあきらめて答えてくれた。


「こほん。えっとね、うーん。とにかく私とトーマは六歳まで学校に通ってた。といってもゲットーの青空教室だけど……」


「俺がその……貰われていく前のことか」


「そう。今頃は十二歳だろ。ちょうど最近、トーマどうしてるかなって思ってたんだ。

なんで孤児院にいない? せっかくゲットーから出られたのに!

兵士として退役したら市民権だってもらえるんだ!

このゲットーの中じゃどれだけ努力しても貰えないんだぞ!」


「そ、そうなんだな。教えてくれてありがとう」


「約束したじゃないか! 私と結婚して、いつかこの息の詰まる壁から出してくれるって、なのに!」


狭いゲットーだけあって、そのような因縁ある相手にもいとも簡単に遭遇してしまうものである、と俺はげんなりしながら納得した。

どうやら俺、まだ子供なのにゲットーで生まれ育ち、幼馴染と結婚の約束をしたりなんだか波乱万丈な人生を送っているようである。

しかし、六歳の男の子だ。女の子にお嫁さんにするとかなんとか言うこともあろうが、女の子のほうがそれを大きくなっても覚えていることはあるものだろうか?

俺は全く知らない。知る由もない。とはいえアーニャは無視できない。


少なくとも彼女を頼る以外の発想は俺にはなかった。何としてでも繋ぎ止めなきゃならない。


「約束は知らない。孤児院は出てきた」


「そ、そうなんだな……ごめん、なんか色々勝手なことを言って」


「いや……こちらこそごめん。アーニャ、俺もよく覚えてないんだけど、拾われたんならやっぱり俺たちは孤児だったんだな」


「そう。ゲットーでは有名だ、あの夫婦。男の子型のノイトラのほうが兵士としての需要があるからな」


「そうかやっぱり。アーニャ。孤児院のことすべてを話す。聞いてくれるか?」


「なんだ急に……わかったけど」


俺はアーニャを信用して話してみる事にした。


「……というわけで俺の同部屋の人がトンネルを掘っていた。脱獄だ」


「なんで出てきちゃったの?」


「正直ダメもとで言ってみたんだ、ここを出たいって。気づいたらここに連れてこられてた。

びっくりした。三日もすれば戻ってくるだろうとバカにされた。意地でもここで住み続けてやりたい!」


「ならウチ来なよ。といってもウチも孤児院だけど……」


「ありがとう、でも格好悪いだろ、三日もたないと言われて意地になってんのに、孤児院でやり過ごすなんて」


「頑固で意地っ張りなところは変わらないね」


「……とにかく、話すことはもうない。また今度どこかでな」


俺はあまりアーニャと話し過ぎているとボロを出しそうだったので逃げるようにしてその場を離れた。

そう、思えば俺はこの時運命が変わっていたんだと思う。いや、初めからこうなる運命だったのかもしれない。

その日は俺は橋の下で眠った。人生初の野宿だ。三日耐えられたらシスターには見直してもらえるだろう。

だがそれだけだ。俺は何を意地を張ってこんなことをしているのだろう。

同部屋の二人もいい奴そうだったし、一緒にいればよかったんだ。

そもそもなんで俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだ。


俺の心にそんなどうしようもない念が渦巻きながら、俺は夜になって橋の下で眠りについた。

夢を見た。日本にいたころのことだ。俺はおばあちゃん子で、甘え癖があり、正直、今でもそれは治っていないのかもしれない。


「おばあちゃん……」


そういって俺が目を覚ますと、何かの臭いが鼻を突いた。ドブのような、腐ったようなにおいだ。

うっ、と声を漏らして顔をしかめたところ、すぐそばに荒い息をした女がいた。


「あ、ああ、すまない、今フタをする」


女は橋の下にあった下水に通じる金属のフタを閉じた。いくら寝起きの頭でもわかる。

この女、下水を通ってこんなところに来たのだ。尋常じゃない事情によって誰かに追われている。


「……ん? なんでこんなところに子供がいるんだ!?」


女は今、俺がこんなところで野宿していることがおかしいと気づいたようで素っ頓狂な声を上げた。

濡れた服が胸にぴったりと張り付いて透け、正直、隠すべき場所がほぼ全部見えてしまっている少女。

だが興奮する俺ではない。全くそんな気にはなれないというのが正直なところだった。

腹が満たされ、温かい布団でよく眠った後、将来への不安もないそんな気持ちのいい朝なら興奮の一つもしただろうが。


「それはこっちのセリフだ!」


「お、おお。そうだな。すまない」


「なんなんだお前……誰かに追われてんのか?」


「君に迷惑はかけないよ。少しここに居させてくれ、頼むよ。追われてるのは確かだ」


「いいけど……」


俺はそれ以上言葉はかけなかった。明日どうしよう、それだけで頭がいっぱいだった。

それ以上の未来のことなんて考えてる余裕はない。いっそこの始まったばかりの人生、終わりにしようか。

なんてことを考えて黙っていると、恐らく少女は元来、他人との沈黙が耐えられないタイプなのだろう。


「僕の名はセシル。エルダーガルム帝国の出身だ」


「帝国って、今でもあんの?」


俺の本で読んだ知識では、その国はこの大陸をほぼ全土征服した。

ところが、徐々に傘下の国々が独立を開始し、もはや消滅したとか。


「大陸の中枢にちょこんとね。かつての領土はないけど」


「そうか大変だな。俺はトーマ。ゲットーで生まれた孤児だ」


「見ればわかる。しかしその年まで育ったんならここで何を手持無沙汰にしている?」


「教えたらセシルがここで何をしてるかも教えてくれるか?」


「ああ」


俺は説明が長くなるので最低限のことだけ言っておいた。


「……ゲットーの外にいた。だが逃げてきた。それだけの話だ」


「わかった。僕はある理由で政府に追われてる。だからここへ逃げてきたんだ。

こんなゲットーの中をわざわざ探さないだろうからな」


「ふーん。しかし政府って何の話だ?」


大陸に統一政府があったのなんて、何百年も前の話だと聞いている。

だが、セシルは俺をバカにしたように笑った。


「違うんだなそれが。例えば君、工場労働者っているだろう?」


「いるね」


「彼らはね、奴隷じゃないだけマシだと思っている。

それに、自分たちで選んだ仕事だから逃げるわけにはいかないとも思っている。

言うなれば己で己を縛っている。だから死ぬまで働く。違うか?」


「そ……そうかも……」


「上に立つものからすればどちらも大して変わりはないんだが。奴隷には賃金を出さない代わり衣食住は最低限保証しなければならないだろ?

ところが、『自由な』労働者は衣食住を賃金で賄う。結果ほとんど余りが出ないなら、奴隷と一緒だろう」


「酷い雇い主と、良心的な奴隷の主人を比べたらそうなるだろうな」


「大陸の国はいまだ『世界の王、王の中の王』とそれを戴く政府に支配されている。

だが、体裁だけは独立している。僕はその政府から逃げてきたんだ」


「大変そうだな。同情する。お前の話を色々聞いてやったんだからしばらく俺の話にも付き合ってくれるか?」


「構わないよ。どうした?」


「お前を女と見込んで頼みがある」


「うん」


「俺、十二歳なんだけどさ。今のところはまだ何ともないんだ。でも怖いことがある」


「なに、どうした?」


「そのぉ……」


俺は足をもじもじさせて、顔を伏せながら小さい声で言った。


「せ、生理というか。こう、股から血を流すあれがな……」


「怖いのか? しかし君はやせっぽちだからな、十六くらいまで来ないんじゃないか?」


「そういう問題じゃなくて、来たらどうするんだよ」


「心配ない、多分それで死んだ人はいない」


いや、死んだ人だっていないことはないと思う。

俺の聞いたところによると、股ぐらから血を流すのはかなりの苦痛を伴うのだとか。

勉強した限りのことだが、月経は色々な作用が複合的に起きるようだが、ともかく子宮の内部の壁が剥がれ落ち、また再生しまた剥がれる過程のことを指す。

何故そんなことをするかというと、妊娠の際により確実に受精卵を育てるためだと考えられている。

その割には、人間以外の哺乳類はそんなことをしなくても問題なく子宮で子供を育て、産むことができる種が多数派だ。


必要なのか、とも思うが必要だから残ったのだろう。なんにしろ俺には関係ない。そう思っていた。


「しょうがないな。よし、潜伏が終わったら君を案内してやろう」


「ど、どこに?」


「アジトだ。居場所がないんだろ、ちょうどいいよ」


「お、おれは……」


理屈の上では、それに乗る以外ないように思われた。俺は明日の食料すらおぼつかない。

かといって孤児院にもいたくない。俺はあそこにいた二人よりもセシルに興味を惹かれた。


「セシル、俺……行きたいな。そこに行けば、俺、まともに生きられるかな。

ノイトラでも。特に男型のノイトラは差別されてんだろ」


「ばかばかしい。そんな下らないことする奴が居たら僕が叩きのめしてやる」


「ありがとう……」


「その言葉、覚悟ができたと見なした」


「ああ。ところで、一つ確認なんだがセシル、お前……女の子か?」


「は? 僕は正真正銘男だが」


「……」


まあ、生理について聞いてみると妙にはぐらかすので変だなとは思ってた。

女の子だったら同じ道を通っているのだから、もっと親身になってくれていいところだ。

その後、セシルはこう続ける。


「でも君でよかった、正直男の僕がここに居ると目立つだろう。男型の君とつるんでいれば怪しくもないか」


「いや、見た目はぜんぜん溶け込んでるぞ……」


「失敬な……トーマ、本当に久しぶりだよ。こうして同年代の子供と話すのは。子供に戻れたみたいな気分だな」


言っていることが奇妙だった。同年代の子供と言ってるからにはセシルも別に俺と大幅に年齢が離れているわけでもあるまい。

なのに子供に戻れたとか訳のわからないことを。この謎が解けるのがいつになるやら、と俺は思い、質問するのはあきらめた。


「ひとまず今日は寝させてくれ。明日、日が昇ったらまた活動を続けよう」


「わかった」


俺は目を閉じ、セシルが寝息を立てるのを右耳から聞き取りながら思った。

こいつ、政府に追われているのは嘘じゃないだろう。それはそれとしてだ。

単身、一人で、大陸中央部にある帝国からここまで一人で逃げてきたとしたら不自然だ。


俺は孤児院で本を読み地理を頭に入れていたので不自然さを感じ取ったわけだ。


大雑把に言うと、この国が位置するのは大陸、とだけ呼ばれる陸地の南西部にある。

帝国は大陸中央部。そして、大陸の外側は暗黒であるとか『無』であるとされている。

帝国からこの国にやってくるまでざっと数百キロ単独で移動することになり、セシルの不自然さが際立つ。


とはいえ、セシルが俺に嘘をつく理由は全くない。よくしてくれる友達ができた、とだけ楽観的に考え、俺は寝ることにした。

翌朝、俺はセシルよりわずかに早く起きた。目を擦りながらあくびをしているとセシルも起き上がる。

そして二人とも、ほぼ同時に腹の虫が鳴って、二人で照れ笑いを浮かべた。


「はは、のども乾いたしお腹も空いた。行こうかトーマ」


「どこに?」


「飯にありつけるところへさ。僕がそばについている以上、もう二度と、君に危険や空腹ってやつは訪れない」


キメ顔で言ってくるセシルの顔をまじまじと見つめると向こうは照れて目をそらす。


「な、なんだよ?」


「いや、その……セシル、もしかして俺のこと、女の子扱いしてない?」


「当たり前だろ! ノイトラとはいえ、可愛い子を守らないわけにはいかないだろ、男として!」


「そういうの本当いいから……」


俺は心底嫌そうな顔をした。意識してそう顔を作ったのでセシルにもすぐ伝わった。


「君こそ自覚してないんじゃないのか。ノイトラってやっぱり、男型であってもちょっと女の子だよ」


「は? どこが?」


「胸だってあるし、こんなに柔らかい」


セシルは俺のほっぺをつんつんと指でついてきた。確かに俺の新しいほっぺは、この通りもっちりふわふわだ。

胸だって多少ある。顔つきも鏡で見る限りは、中性的というより、単に幼くて未分化なだけという印象の顔だ。

とはいえ、俺は男口調で喋っているつもりだし、おしとやかな仕草もしてないはずだ。


「まあいいよ、それで。中身は男だけど女の子扱いしてくれても」


「失礼でないならよかったよ。じゃあ行こうか」


セシルは古典的な男女観を持っており、立ち上がった俺とは手をつないで歩く。

俺は流されるがままセシルについていくことに決めた。

この作品の主人公はいわゆる狂言回しってやつで、物語を進める役目を果たしますが、物語を創る役目はしません。

つまりいてもいなくても、ストーリーに大した違いはないってやつですね。

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