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転生したら人権のない被差別種族だった件  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
第一章 ボーイ・ミーツ・ボーイ
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第十五話 神々の天界


その後の模様はカットでいいだろう。俺たちは荷物を言われたとおりにまとめて家を出て祭りの人ごみに紛れる。

そしてそのまま街の中を貫いている、船を複数浮かべても平気なほど大きな河の岸へやってきた。

もう日の落ちた夜なので、もしやと思ったが、やはりそうであった。


あくまで船が出るのは朝であって、夜のうちに俺たちは貨物として船に乗るということだ。

俺たちはこっそりと船に密航させてもらったが、全員船に乗ったところでこう言った。


「な、なあアンドレアス。一応聞くけど船員は俺たちのこと知ってるの?」


「一応船長はこの計画を知っている。革命軍の経営する会社だからな。

だが全員ではない。情報漏洩の危険もあるしな。あくまで悟られるようなことは避けるように。

ま、最悪の場合は俺が目撃者を川に捨てるか、カネを渡して黙らせる」


「頼むからワイロで……」


「わかった。じゃあガキはもう遅いから寝ろよ?」


「うう……枕のないところで寝るの辛いよぉ」


と俺は船の中の格納庫の、ささくれ立った木製の床に体を横たえながら愚痴をこぼした。

すると健気なアンリは俺にすぐさまこう言ってくれた。


「よければ僕が膝枕でもしましょうか……トーマ様」


「そんなことしたらお前が眠れないだろ。今日はいろいろ付き合わせて悪かった」


まあ当然と言えば当然だが、これにはセシルがさすがに突っ込みを入れてきた。


「いや、君たち本当にどういう関係なんだよ……」


「王と臣下。それ以外の何かに見えるのか、セシル」


「僕には口調が厳しいな?」


「僕が忠誠を誓うのは王のみ。それ以外は敬語を使うには値しない」


「はっきりしてるなぁ……ノイトラって、みんな王には忠実なのか?」


「いや。王の命令がなければ何も。君も無駄話をしてないで寝たらどうだ」


「取り付く島もないとはこのことだね、ジュリアン」


「お、俺に振るなよ。だがそのガキの言うとおりだ。早く寝ろ」


「はーい」


セシルはすぐに返事を返してごろんと横になり、すぐに寝息を立てだした。

こいつ、口ぶりからして結構いいとこの生まれだったと思われるが、平気で下水道を行き来したり、このように劣悪な環境で眠ったり。

なかなかワイルドな環境に適応していて尊敬に値する。

次に俺が目を覚ましたら、俺たちが乗っている舟にわずかに光が差し込んでいることに気が付いた。

俺たちは船長があらかじめ用意してくれていた、大きな木製のコンテナに入っていたが、わずかな隙間から光が入ってきている。


起き上がって何か言おうとしたがだれ一人として口を開かない。

船員たちにばれたらタダでは済まないからか。

俺はあきらめて静かに寝がえりを打った。そのまま誰とも話さず、何も考えずただ目を閉じていた。

何時間経っただろうか。急に船が止まった感覚があった。そして次のような声が外から聞こえた。


いかりを下ろせ。ご苦労さん」


「あ、これは船長!」


「定刻通りだ。よくやった。荷物を運ぶのは業者に任せてお前たちは朝飯……いや、晩は食べてないから遅い晩飯だな」


「やったー! 船長も後で来てくださいよ!?」


「私は遠慮しておこう。この港には現地妻が二人いてね」


「おっとそりゃあ大変だ。じゃ、申し訳ありませんが奢りで食べさせてもらいますんで……」


すべての話が筒抜けというわけではないが、船長が船員に金を渡して港町へ飯を食いに行かせ厄介払い。

そして業者を呼んで荷物を運び出させることになったということだけはわかった。

船長は革命軍の息がかかっているとのことなので、おそらくその業者というのも革命軍と繋がっているのだろう。


「みんな、最後の辛抱だぞ」


とアンドレアスが切り出した。俺たちは元々黙っているのもあって、誰も何も返さない。

気にせず奴は続ける。


「俺たちは今荷物の中にいる。それを運ぶ業者がやってくる。当然、その前にここを脱出する」


「あ、もういいのか?」


「ああ。小僧、何食わぬ顔で船を降りるぞ。まだ予定は未定だが、とりあえずはセーフハウスに移動する。

前回と違ってトンネルは掘ってない普通の家だ。ガキが多くてちと近隣住民に怪しまれそうだがな……」


アンドレアスは重い腰を上げると木でできたコンテナのフタを開けて出口を作り、我先に飛び出した。

俺はすぐにそれに続き、船の右舷と思われる場所へ出た。前には舳先、右手には河と対岸の街が見える。

アンドレアスが舳先で待っていたので俺はそっちへついていき、左手にある岸辺へと降り立った。


「ここがル・アーヴル。印象的な日の出だな」


「ふわぁ……ねむ……」


俺は別に日の出ごときで心を動かされるほど繊細な心を持ち合わせていない。

大きくあくびをして目尻に涙を浮かべ、ぐっと背伸びをして体のストレスを一気に解放した。

後ろからは続々仲間が出てくる。そして最後に、残骸女のエースを抱える係を買って出たアンリが下りてきたのを確認し、アンドレアスが言った。


「お子ちゃまども、行くぞ。ただしトーマ、お前は俺とこい」


「別にいいけど……ほかのみんなは?」


「セシルに任せる。あいつももともとこの街のセーフハウスで身を隠していたからな」


「そんな過去が……」


「こい。お前は父親のところへ連れて行かねばならないからな」


「そうか……わかった。みんな、そういうわけだからまたな!」


「僕、ついていきましょうか」


「大丈夫だって」


「わかったよ。じゃあねトーマ」


セシルが引率役でアンリを従え、俺たちとは反対方向へ歩いていく。

確かに大の男が子供三人を連れているよりは、子供二人のほうがよっぽど怪しくはなく、人目につかないだろう。

セシルとアンリならばどう見ても、あんまり顔の系統が似てない姉弟のようにしか見えないからな。

俺はアンドレアスのことは好きではないが、言われたとおりにその後ろをアヒルのヒナのように従順についていく。


街の路地を熟知しているらしき奴は、どんどん複雑で道幅の狭い住宅街へと入っていき、その住宅街でもさして目立たない酒場を目指して歩き出した。

酒場は明け方でも営業しているし、客の声も多少は聞こえてくる。たぶん客は漁師か船乗りかなにかだ。


「邪魔するぜぇ……」


と入口から堂々と入ったアンドレアスはすぐマスターらしき人物に声をかけられた。


「おお。久しぶりじゃねえかアンドレアス。また違うガキを連れてるなぁ」


「今日は泊めてやんのよ。二階上がるぜ」


「ああ。戻ってきたってことは出稼ぎ、上手く行ったのかい?」


「まあボチボチだ」


と答えると酔っ払いの客たちは口々に景気がいいね兄さん、とはやしたてた。

アンドレアスは無視して俺を連れ、店の奥の扉を開けた。

これを開けるとすぐ階段になっており、三階まで続く階段が見えたがアンドレアスは二階の廊下を歩きだす。

俺もそれについていくと、まだ下の酔っ払いの声が聞こえるアンドレアスの居住スペースらしき部屋で椅子に座っている親父がいた。

俺と目が合うと親父はすぐに椅子から立ち上がる。


「よう。また会ったなトーマ。アンドレアスもご苦労だった。メシならコックが作ったのがある……冷めてるが」


「いや、それはいい。それより俺は外へ出ていようか」


「構わん。お前もいてくれていい。さてトーマ。俺に言いたいこともあるだろう」


「母さんは死んだ。あんたのことを一言も責めることなくな」


「そうか」


ドラクスラーは俺の言葉に眉一つ動かさずにそういうとさらにこう続ける。


「俺にあの女への愛情を期待したのか。それともお前への愛情をか?」


「どっちも必要ない。ただ確認したかっただけだ。あんたは命をかけるに相応しい人間なのか」


「そんなことはどうでもいい。それより俺の話を聞けトーマ。お前はもう聞いたと思うが、ノイトラたちの王として生まれついた。

ノイトラは人に逆らわない。それがこの世の条理だ。お前はその破壊者とならねばならない」


「ああ。そう聞いた。なるかどうかは別だがな」


「すべてを話そう。少し長くなるがいいな?」


「すべて?」


「始まりは俺が十四歳のころだったよ」


親父は自分の十四歳からの出来事を淡々と話し始めた。といっても今親父が何歳かはわからないので、何年ぐらい前のことかはわからないが。


「俺は昔からゲットーにいた。出身は帝都だ」


「どこだって?」


「最も人口が多く栄えた街。それだけに格差も大きい。帝都はまず王族の住む宮殿があり、それを囲む城壁がある。

城壁内は古くから存在する街で、その壁の外には、帝都が発展するに従って増築されていった新市街。

古いほど内地にあり、なおかつ治安が良くて裕福だ。外へ行くほど新しく中央の目が届かないスラム街になってるってわけだな」


「帝都にはゲットーがあったって……ノイトラなのか!?」


「見りゃわかるだろ。俺はただの人間の男だ。ゲットーで生まれ育ったといったが、別に政府からそう規定された場所に住んでたわけじゃない。

ただノイトラは差別されていて貧困なことが多いんだろう。俺がさっき説明したように、最も新しい外れのほうのスラムに多く住み着いていた。

俺は最も底辺の生まれで、親は父親が一人だけ。ドラクスラーは父の姓だ。

お世辞にも良い親ではなかったが、最低限の居場所と食い物をくれた。十四歳の時に死んだが、別に俺にとっては大したことじゃなかった。

十歳の時から働いてたし、その時には親父より俺の稼ぎのほうがまだ多かったから、家計はむしろ楽になったしな」


俺はそんなことを淡々と話す親父のことを、そりゃ普通の人間のメンタルのように育つはずがないと心から納得して頷いていた。


「俺はなんだかんだで貧乏暮らしも気に入っていた。今でもたまに懐かしく思うこともあるよ。

俺が十四歳の時に、スラムでノイトラが殺されかけていた。まあよくある光景だったよ。

借金が払えなかったりとか盗みを働いたとか、まあそんなとこだろう。殺そうとしてるやつも柄の悪そうなやつだった。

その時は手が空いてたんで、そいつを殺してノイトラを助けてやった。そいつはアラン=ミシェル・ロランと名乗った。

それが今の革命軍のボス。つまり奴はノイトラだ。もっとも、それを知る人間は組織の中でもわずかだが」


「なんだと……ドラクスラー、あんたがボスじゃない方がおかしいと思っていたんだ。

ボスは全然顔も出さないし動きもない。何もしない。実質アンタがボスだとみんなが思ってる!

俺たち組織のものだけじゃない。なんなら政府だって……」


「革命軍は俺とあいつで作った組織。どちらがボスというのも別にないよ。

俺だって別に組織のナンバーツーだとかボスの右腕なんて、自分で名乗った覚えはないからな」


「それは……そうだが……」


「奴には奴の役割がある。ノイトラであることを公表するタイミングがなかなか出来なかったんだよな。

革命軍のリーダーとしてそれはまさに適任、象徴ともいえるが組織の中でさえノイトラに差別的なものもいて、今は公表すべきでないと判断した。

俺にとっては唯一相棒と呼べる存在であり、友達で、家族のようなもんだ」


「そいつノイトラなんだろ? その……母さんにやたら冷たいのはそれが理由か?」


「おっと勘繰るなよ。確かに俺にとってアランは特別な存在だが……お前には関係ない」


「関係ないだと?」


「お前に関係のある話をしているところだ。話の腰を折るんじゃない。話をつづけるぞ?

俺はアランとともに暮らし始めた。そしていつしか奴と一緒の夢を俺も見るようになった。

俺たちは世界の果てを見に行きたいってな。そして十年後、俺たちはわずかな仲間を帝都から募って旅に出た。

それからさらに一年後、世界の果てへと俺たちはたどり着いた。たどり着けないように道中は過酷な環境の砂漠になってたんだな」


「世界の果てって砂漠なのか」


「ああ。俺たちはそこから先へ進めなくなった。巨大な金属製の壁が立ちはだかったからだな。

俺たちはその時、この世は鳥かごだとようやく気が付いた。俺たちは閉じ込められていたんだ。

そして神の存在にも……この鳥かごの中を支配している神の存在にな。

神は俺たちごときのことなど大して気にしていないのか、それとも越えられないと高をくくっていたのか。

わからないが制裁はなかった。すぐに引き返して情報を探った……情報はあっけなく見つかった。

おかげで俺たちは最初の挑戦から一年もしないうちに再挑戦して、壁を抜けることができたってわけだ」


「情報……」


「セシルの祖父だ。まあそのおかげで、彼らの故郷は焼かれちまったが」


「ええ……」


俺はあまりにあっさりと親父がひどいことを言うのでリアクションする余裕もなく、何も言い返せなかった。


「セシルには申し訳ないと思っている。”天使たち”によって故郷が壊滅したんだからな。

で、肝心の話だ。俺たちは壁の外にある世界の果てってやつを見て、そこに神がいることを知った」


「神ってなんだ!?」


「わざわざ俺が説明するまでもなく、ある程度カンの鋭い奴なら気づいていることだが一応言っておく。

神とはこの世界の文明レベルを一定以下に保つために存在するシステムのことだ。

神はその実行部隊として、時にノイトラの子供たちを徴収して自らの目的のための実行部隊、”天使たち”を組織して武力を行使する。

セシルの故郷が滅ぼされたのは神の意志。そして天使たちの実行によるものだ」


「神は古代兵器の存在を知ってると思うけど……天使たちにそれを回収させたりとかはしてないのか?」


「逆だ。この世界の王族は代々、神と繋がり、神から古代兵器の管理・維持を託されている。

神は兵器を回収して廃棄しないが、かといって何も知らない者に渡すつもりもないってわけだ。

何より、技術レベルが離れすぎていて兵器が敵の手に渡ったところで危険はないに等しいことだしな」


「確かに……あの飛行機は俺たちの技術ではどうにもできそうにない」


「そう、飛行機だな。俺は外の世界でそれを知った。お前は現地へ行ったらしいな。

どうだ、飛行機以外に何か見たのか?」


「詳しく話すと長くなるんだけど……体を機械に変えてほとんど不老不死のような状態の人間がそこにいた」


「ほう……それは俺も知らない情報だ」


「言う暇がなかったからな。それで、その人間はどうもかなり昔のことを記憶しているらしいんだ。

セシルが現場でウロチョロしてる間は目覚めなかったが、俺が入ってきたところ目を覚ました。

その女の名はエース。エースを直してやれば情報をいろいろ聞けるかもしれない。

そして多分だけど……俺ならエースと古代兵器を両方直せると思う」


「そう、それが言いたかったんだな。俺はお前の血筋に眠る力が神にさえも対抗できる力だと確信している。

いいか、お前の力の覚醒条件を教えておくぞ。それはこの世界の外へ行き、そこからさらに遠くへ行くことだ。

この世界から飛び出せ。壁を超えるんだ。その先に答えはある。造換塔ぞうかんとうと呼ばれる場所だ」


「それはわかったんだけどさ、俺はどうやってそこへ行けばいい?

第一、もう二度と外へは行けないだろ。神に警戒されてるんじゃないか?」


「それは問題ない。お前は、いいかトーマ。

お前はノイトラの王だ。神の戦力はあくまでノイトラのみ……やる前から勝負は見えてる戦いだろう」


「ノイトラの王は俺だけなのか? ていうかあれだ。神がノイトラを操ってるんなら神もノイトラの王の資格を持ってるんじゃないか?」


「それはない。詳しいことを話すと長くなるので、実際に外へ行ってみてからお前が知るべきだが、とにかくそれはあり得ない」


「そ、そうなのか」


「いいかトーマ。状況を整理しよう。俺たちが求めていたのは二つのコマだ。

古代文字を読むことで、”天使たち”によって抹消されなかったわずかな歴史の残り火を知ること。

俺たちはセシルの爺さんを仲間にすることでそれを行ったが、彼もろとも彼らの故郷は消えてしまい、セシルが成長するまで待つことになった。

そしてお前だ。ノイトラの王であるお前が成長した今、神が繰り出す”天使たち”は無効となる」


「そんな荷を俺たち子どもに背負わせんなよ……」

いや、実際ですね。過去作「アークティック・モンキーズ」のアイデアを流用して作られた今作なんですが、「アークティック・モンキーズ」においてはこの辺の話が全然できなかったんですよね。

構想自体はもう五年ぐらい前からあったんですけど…

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